2017年5月19日 18:59
「PREY」がついに発売された。筆者も現在、夢中になってプレイしている。本作はやはり「サバイバル感」がいい。舞台は“ティフォン(地球外生命体)”に襲われ、生存者のほとんど以内宇宙ステーション「タロス1」。プレーヤーは記憶を失った科学者モーガン・ユウとして、この謎だらけの世界で生き残りを賭けて戦わなくてはならない。
一番ポピュラーなティフォンは様々な無機物に擬態する「ミミック」。この怪物はわざとのように視界を一瞬横切り、そして姿を消す。敵が絶対待ち構えているのがわかるのに、謎めいたストーリーがプレーヤーの停滞を許さない。止まっていても確実に敵はいる。安全を確保するには……敵を倒すか、逃れて前に進むしかない。
謎が膨らむストーリーと、緊張感のある状況、それを様々な工夫で突破していくのが楽しいゲームである。現在、まだ中盤にさしかかったところではあるが、「PREY」の魅力を語っていきたい。生き残るために必死に道を探す、そういう体験がたっぷり楽しめる作品だ。
ぎりぎりのサバイバル体験、何が真実かわからないまま続く物語
「PREY」は非常に奇妙なオープニングから始まる。朝、ベッドから目覚めたモーガン・ユウは兄アレックスに呼ばれ彼らが勤めている企業「トランスター」への出社を命じられる。そこでモーガンは被験者として研究者を前に奇妙な実験を行なうが、突然目の前に怪物が現われ研究者を襲い、モーガンは吹き出したガスにより気絶させられる。そして、ベッドで目覚めるのだ、先ほどと全く同じ「2032年3月15日」に……。
モーガンは何らかの理由で記憶を失っており、「同じ一日」に閉じ込められていたのだ。しかしシステムに不具合が起き、そしてモーガンに接触してきた謎の人物「ジャニュアリー」の導きで、モーガンは自分が宇宙ステーション「タロス1」にいることを知る。タロス1は月軌道に浮かぶ人類最大の宇宙ステーションであり、モーガンはアレックスと共にティフォンの研究を行ない、ティフォンの能力を使って人類の能力を拡張させる実験を行なっていたのだ。
モーガンはジャニュアリーに従い、“自分”の記録映像を見る。映像の中でモーガンは自分がアレックスと対立していること、モーガンはタロス1ごとティフォンを葬るためにタロス1を自爆させるために、今のモーガンにジャニュアリーを通じて指示を出しているという。……しかし、本当にそれは正しいのだろうか。モーガンには記憶がない。アレックスは確かに悪そうな顔をしているが、ジャニュアリーと映像が正しいのか?
物語を進めていくうちに、ティフォンの謎めいた生態も次々と明らかになっていく。これからさらにまだ生き残っているタロス1の人々の思惑なども絡んできそうだ。大きくなっていく謎、進化していくティフォン、物語がどう展開していくか全く想像もつかない。サスペンス色の強いSF小説を読んでいるような気持ちにさせてくれる作品であり、物語への興味がゲームを前に進めていく原動力となっている。
そして高いゲーム性も大きな魅力なのだ。「PREY」では「ニューロモッド」という、ティフォンの特性を利用したアイテムにより人間の特性を拡張できる。ハッキング能力を高めたり、筋力を強化したり、ステルスや戦闘能力を上げられる。さらにティフォンそのものの能力を取り込むことすらできるのだ。
プレーヤーは最初非常に脆弱で、回復手段もなく、ぎりぎりの戦いを強いられる。1ブロック移動するだけでも必死の思いだ。しかし様々なアイテムを手に入れ、システムを理解し、そして能力を拡張していくと多彩なアプローチが可能になってくる。緊張感は途切れず、ゲームの幅が広がっていくのだ。ストーリーと共に“ゲーム性”にも注目したい作品だ。
能力を拡張し、難局を乗り切れ! ティフォンの力さえも我が手に……
ここからはゲームのシステム面の紹介をしたい。本作では「ニューロモッド」を使うことで能力の拡張ができる。序盤は「サイエンティスト」、「エンジニア」、「セキュリティ」の3つの項目が用意されている。
「サイエンティスト」は、治療キットや、入手できる食べ物の効果を増す能力が用意されている。さらにハッキング能力を上げることでパスワードがわかっていない扉を開けたり、ロボットなどを味方にできる。「エンジニア」は、ものを修理したり、武器を改造したりできる。さらにこのゲームで最も多用する近接攻撃“レンチ”の攻撃力を上げることもできる。
「セキュリティ」は戦闘系の強化が多い。HPやスタミナを増やしたり、ステルス能力を強化できたり、戦闘中に時間がゆっくりになる「コンバットフォーカス」が使えるようになる。ニューロモッドは限られていて、むやみには使えない。どの能力を上げるかでゲーム展開そのものが大きく変わってくる。プレーヤーによって「PREY」の進め方は変わってくるだろう。
筆者の場合は無謀に突っ込んでレンチを振り回す戦い方が得意だ。コンバットフォーカスを取得し、レンチの攻撃力を上げている。また、ハッキング能力も上げていたため、保安室のドアなどいくつかのドアをハッキングで開け、中のアイテムを得ることができた。筆者は取得していないが、オブジェクトを持ちあげる「レバレッジ」を上げておくと、ものが積み上げられてある通路を通ることができるので、こちらも魅力的だ。
筆者は敵を見つけると全力で倒す方針だ。ミミックは素早く動き、こちらの視界外から攻撃してくるので逃げつつ戦う。また接着剤を発射する「グルーキャノン」で固めて撃つのも有効だ。強敵の「ファントム」は、大ダメージを与えてくる光弾を発射してくる。ステルスで近づき、スタンガンで動きを止めてから銃で蜂の巣にするか、レンチでボコボコにするかで対処している。敵の動きを止めてから攻撃すると「コンボ」扱いになり、ダメージが増えるのもうれしいところだ。
ゲームが進み「サイコスコープ」を入手できるようになると、ティフォンの能力を取り込むことができる。ミミックの擬態能力を使えば狭いところに入り込めるし、ファントムの光弾はかなり強力な武器となる。さらに進化したファントムからは遠距離でハッキングや物体の操作ができる能力も取得可能だ。これらはサイコスコープを使って一定時間“生きている”ティフォンを視界にとらえ続けなくてはならない。敵を調査するゲーム性も楽しいところだ。
……しかし、敵の能力を取り込むと正常な機械に人間として認識されなくなる恐れがある。タレットや各種ステータスを回復してくれるロボット「オペレーター」に敵として認識されかねないのだ。現時点で筆者はこのデメリットが怖くてまだティフォンの能力を取り込んでいない。かなり便利な能力もあるので、今後どうしていくかは、迷うところである。
巨大な宇宙ステーション、謎への興味が危険な冒険を後押しする
タロス1は広大な宇宙ステーションだ。そして「PREY」は探索すれば探索するほど有利になるゲーム性となっている。ゴミ箱の中にすらアイテムがあるのだ。使えなくなった電子部品や、バナナの皮すら貴重なアイテムである。
これらのアイテムは「リサイクラー」に入れることで分子分解され、合成用の素材に置き換えできる。回復キットや銃弾、中盤からはニューロモッドすら合成できる。インベントリーの容量は限られているため筆者は最小限の生産にとどめ、素材をため込んでいるが、こういった所でもプレーヤーの個性が出そうだ。
探索をしていくことで武器庫からタレットを見つけ出したり、メールからパスコードを探し出したりできる。「設計図」を入手できると、弾薬の調達などがグッと楽になる。また体力が少ないときなどはお茶やコーヒーがコンバットフォーカスにも使うサイキックポイントも回復してくれるのでありがたい。回復キットが少ない序盤では、リンゴやバナナでのわずかながら体力もありがたい。1しか回復しない水飲み場すらありがたかった。
「PREY」ではタロス1の“外”に出ることもある。外は真空の宇宙、どこまでも落ちていきそうで怖くなるが、ここには宇宙に投げ出された人の死体もある。マーカーは表示されているので、うまくたどり着けばアイテムが収集できる場合もある。アイテムは集めておいて損はない。生き残るためには、何だって利用するのだ。
探索中注意したいのが“話し声”だ。生存者かと思うと、違う。「俺は気が狂っているに違いない」、「確かに見たんだ」など、独り言を言っている声、実はこれは進化したミミックが死体を操るようになった「ファントム」なのだ。しゃべっているのは生前の意識なのか、それとも意味がなくしゃべっているだけなのかはわからないが、とにかく不気味で背筋が寒くなる。しかもかなりの強敵なのだ。
この他、保守点検用のロボット「オペレーター」もティフォンは“汚染”している。オペレーターは火炎攻撃でこちらのスーツに大ダメージを与えてくるので注意したい。逆にチャンバーから呼び出したり、ティフォンと接触していないオペレーターは体力やスーツを回復してくれるとてもありがたい存在だ。
「PREY」は雰囲気やスキルが重要になってくるところから、プレイする前は「バイオショック」に近いゲーム性の印象を受けたが、「バイオショック」はビッグ・ダディとの戦いが大きな山場になっているのに比べれば、本作は一気に突っ込んで倒すか、うまく戦いを逃れるかという感じで、戦闘の戦略性は比較すると「バイオショック」より低めだが、よりサバイバルに重点を置いていると感じた。また、人間ドラマがより強調されているようにも感じられる。
筆者が強く印象に残っているのは、“実験室に捕らわれた男”だ。彼は非人道的な実験の被検体で、スイッチを操作するとミミックに襲わせることができる。スイッチには男のプロフィールが表示されており、彼は人身売買に関わっていた犯罪者だという。男は「それはでたらめで、俺を助けてくれれば隣の部屋のキーナンバーを教えてやる」という。あなたならどうするだろうか?
筆者はまだまだ「PREY」の道半ばであり、これから大きなドラマが待ち受けてきそうでワクワクしているところだ。まずは物語が大きく気になるし、アプローチを変えるとゲーム性がどう変わるかも楽しみだ。何度もプレイしたくなる高いゲーム性と、結末を知ってから随所にちりばめられた“伏線”を改めて味わいたくなる凝った舞台が本作の魅力だ。腕を上げれば難易度を上げて挑戦するのも楽しそうだ。
「凝ったSFミステリーを楽しみたい」、「超能力で難関を越えていきたい」、「怖いエイリアンをぶちのめしたい」などなど、様々な欲求に応えるゲームである。ぜひ遊んで欲しい。
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