「Dishonored 2」レビュー

Dishonored 2

困難な状況を超常能力ではね除けろ!
世界観と高難易度に魅力のあるステルスアクション

ジャンル:
  • ステルスアクション
発売元:
  • ベセスダ・ソフトワークス
開発元:
  • Arkane Studios
プラットフォーム:
  • PS4
  • Xbox One
価格:
8,618円(税込)

発売日:
2016年12月8日

 「Dishonored 2」が発売され、その姿が明らかになった。本作は2016年のE3開催時期に行なわれた「Betheda's E3 Showcase」で電撃的に発表され、E3会場では作品のイメージを再現したオブジェクトのみを展示、謎のヴェールに包まれた作品だった。

 本作は前作の「Dishonored」の世界観、システムを受け継いだ正当な続編となっている。時代設定は前作の15年後、前作では幼かったエミリーが主役である。「Dishonored 2」で彼女は、習い覚えた暗殺術と、“アウトサイダー”から与えられた超常能力を駆使し、クーデターによって奪われた玉座を奪うために戦う。

 「Dishonored 2」の最大の魅力はその世界観と、緊張感にある。本作はかなり“ムズイ”。試行錯誤をくり返し、じりじりと前に進む。難関をくぐり抜けた達成感こそが本作の最高に楽しいところである。本作のやり込みプレイや、細かいシステムなどは弊誌の連載“「Dishonored 2」ステルス連載 ダンウォールに忍ぶ影”で紹介しているので、レビューではゲームの感触を中心に語っていきたい。

【Dishonored2 - ローンチトレーラー】

玉座を奪われた王女、不死の簒奪者の秘密に迫る

 「Dishonored 2」は“クーデター”から幕を開ける。前女王の暗殺があった日から15年後、新たな女王として母の命日に花を捧げ、いつものように玉座に着いたエミリー・カルドウィンの前に、突然1人の女性が現われる。彼女はデリラ・カルドウィン。前女王の姉であり、エミリーの叔母であると名乗る。

1人称視点のため普段は主人公エミリーの顔は見えないが、成績画面などで見ることができる
突然現われた母の姉デリラ。クーデターによりエミリーは追われる身になってしまう
謎のアウトサイダー。彼によりエミリーは超常能力を得るが、その誘いを断ることもできる
本作はエミリーか、コルヴォでプレイできる

 そして彼女を連れてきたサーコノス公爵が宣言する。「この国の正当な女王、デリラ・カルドウィン!」そして彼らが連れてきた機械の兵士「機構兵」と、反旗を翻した兵士達が宮殿を占領する。エミリーの守護者であり、前作の主人公・コルヴォは兵士達を一瞬で倒し、デリラの心臓に刃を突き立てる……しかし彼女は死ななかった。謎の力でコルヴォを拘束し突き刺さった剣を引き抜き、コルヴォから力を奪う。

 ここでプレーヤーは選択をすることになる。「Dishonored 2」はエミリーか、前作の主人公であるコルヴォのいずれかを選ぶのだ。今回はエミリーを選んでプレイした。コルヴォは魔術で石にされ、全てを奪われた彼女は協力者ミーガン船長の船「ドレッドフェル・ウェール」で首都ダウンウォールを脱出する。

 ここでエミリーは“異世界からの干渉”を受ける。“アウトサイダー”と呼ばれる謎の存在から超常能力を与えられるのだ。それは15年前コルヴォにも与えられた力である。アウトサイダーは忌むべき邪教とされながらも、密かに民間で信仰されている存在であり、街にはいたる所に「祭壇」がある。エミリーはその祭壇などからアウトサイダーの力が宿る「ルーン」を集めることで様々な能力を得ることとなる。今回のクーデターはなぜ起きたか? デリラの力と不死の理由は? 謎を解き明かし、玉座を取り戻すため、エミリーは敵だらけの街に足を踏み出す……。

 「ぐわああああ、ムズイ!」。本作をプレイした人が、まずこう叫んでしまうのではないだろうか。「Dishonored 2」はシビアで、ハードなゲームである。難易度設定もあり、ちゃんとしたチュートリアルもあって初心者でもすんなりとプレイできるのだが、この難易度はハードだ。エミリーは優れた剣の使い手であり、多数の超常能力を使うのだが、敵は手強くそしてフィールドに数多く配置されている。姿を見つかったらあっという間に敵に囲まれ倒されてしまう。

 ……しかし、だからこそ良いのである。「Dishonored 2」はこの緊張感を楽しむゲームだ。本作には「クイックセーブ」、「クイックロード」機能がある。1つの危機を乗り越えたらすぐセーブ、敵に見つかったらすぐロード。こまめにセーブして危険な状況をくぐり抜けていくのだ。目標に対するルートも1つではなく、多彩なアプローチが可能だ。ターゲットを暗殺するのではなく、無力化する方法も用意されている。

 そうやって手探りで進みながら思わぬお宝を発見したり、サブ目標がクリアできたりする。「俺ってもしかしたらすごくない?」と思ってしまう瞬間がある。「Dishonored 2」はこの“歯ごたえ”があるからこそ独特の楽しさを持っている。この「少し進んでセーブして、何かあればロード」というシビアなゲームバランスはちょっと前のPCゲームを思い出させる。この感触をきちんと持ったやり応えのあるゲームは昨今では少ない。ぜひ本作に“挑戦”してみて欲しい。

【物語の始まり】
クーデターにより幽閉されそうになるエミリーは訓練された暗殺術で脱出をはかる
片腕の船長ミーガンはエミリーをかくまう。彼女の船が拠点となる
今作は港町など数カ所を歩き、人々の生活に触れられる場面も

超常能力、ボーンチャーム、装備、多彩なカスタマイズ

 「Dishonored 2」は多彩なカスタマイズ要素を持っている。エミリーはどのような超常能力を持ち、どのように戦っていくかはプレーヤーの手にゆだねられている。まず、ゲームプレイで気をつけたいのが「カオス度」というパラメーターだ。「Dishonored 2」は前作同様このカオス度がゲームプレイに影響を与える。具体的にはエミリーが人を殺すほど、カオス度は上昇してしまう。いわゆる“グッドエンド”を目指すには、このカオス度を低いままに抑えなくてはならない。

超常能力はルーンを消費して獲得する
心臓を装備するとマップ内のルーンやボーンチャームの位置がわかる
アウトサイダーの祭壇では多くのルーンが入手できる

 このためにはできるだけ人に見つからず、見つかる前に敵を気絶させるようにするのがいい。敵の背にそっと忍び寄り、背後から首を絞める。敵が窒息するのには時間がかかるためしばらく締め上げなくてはならない。このため1人でいる敵を狙うのがセオリーだ。

 エミリーの超常能力の取得や、身体能力の強化はフィールドに点在している「ルーン」を消費して行なう。ルーンはアウトサイダーに繋がる存在で、彼をまつる祭壇などで入手できるが、通常は忌むべきものであり、隠されている場合が多い。

 超常能力や武器は使いこなすと楽しいものばかりだ。本作の最も基本となる超常能力は「ファーリーチ」。離れたところに一瞬で飛び移れる能力で、これを使うことで物陰から物陰へと移動することもできる。本作の敵は上下方向にはあまり注意を払わないので、街灯など高所に移動するのがいい。他にも天窓や開いた窓などにも飛び込むことができるのが良い。

 「ドミノ」は敵をリンクさせる能力。数体の敵をリンクさせてからそのうち1人を気絶させると、残りの人数も一気に気絶してしまう。そして1人を殺せば全員が絶命してしまう。他にも、影に包まれた存在になる「シャドウウォーク」や、壁越しに敵が見える「ダークビジョン」、敵を一時的に記憶喪失にする「メズマライズ」など多彩な能力が用意されている。さらに追加のルーンを消費することで、対象の敵を増やしたり、降下時間を増やすことも可能だ。

 ルーンのアップグレードは身体能力そのものにもできる。体力を増やしたり、ジャンプ力を増したり、敵の攻撃をガードしやすくもできる。敵を殺すと灰にできる「シャドウキル」といった能力まで取得できるのだ。

 能力はどれもが魅力的だが、ルーンを得るには一筋縄ではいかない。各ステージにはルーンや鯨の骨で作られたお守り「ボーンチャーム」がそこかしこに隠されており、「心臓」を手に持つことでそれらの位置がわかる。しかし、取りに行くのは難しい。どのステージも敵が多く警戒が厳しいだけでなく、入り口がわかりにくいなど結構苦労する。これらをどう集めていくかもゲームのやり込み要素だ。目的のために最短の道を進むのではなく、時にはアイテム集めにも危ない橋を渡る。常にスリルを感じる作品となっているのである。

 ボーンチャームは様々な特殊能力があり、これらを集めてエミリーを強化できるし、スキルを取得することで自分のボーンチャームを作ることもできる。また、マップ内に点在する「設計図」を取ることでクロスボウやピストルといった装備も強化できる。

 強化をするためにはコインが必要で、これらはマップ内の美術品やガラクタを集めることで増やせる。隠された商人の金庫をこじ開けるなどここでも探索要素が重要となる。やり込むほど、探索するほど有利になるゲーム性であり、宝箱を求めてダンジョンを隅々まで探索してしまうRPGゲーマーの気質にぴったり合うゲーム性も持っている。

【多彩な能力】
「ファーリーチ」は瞬間移動ができる。本作の基本と言える能力だ
敵の姿や視界がわかる「ダークビジョン」
敵をリンクさせる「ドミノ」
能力はさらにルーンを消費することで特性を付与できる
ボーンチャームは能力を底上げする
闇商店では装備のアップグレードが可能

ステージはさらに複雑に、敵には魔女も……危機を乗り越える楽しさ

 「Dishonored 2」の魅力は世界観にある。デリラによる市民を抑圧した支配社会、貧しさを押しつけられ怨嗟の声を上げる民衆。鯨油による産業革命で生まれた敵を焼き尽くす光の壁や、両手が巨大な刃物となっている機械兵士「機構兵」といったオーバーテクノロジーに、ポップなポスターや家具など、様々な時代が混ざり合った独特な世界が作られている。

行く手を阻む光の壁と衛兵達。彼らをいかに越えるか?
強敵「機構兵」。いかに彼らをやり過ごすかも重要だ
デリラの過去を知ることも
不気味なブラッドフライ。彼らは王国中で増加している

 今作は短くではあるが市民生活を感じられる部分もある。文化的な高層住宅の中で優雅な生活を送る市民、我々の世界とは異なる鋭い歯を持つ「鯨」の死体を見ることもできるし、電気で走る車に乗るシーンもある。ステージによっては狂気の発明家の研究所や、閉鎖された博物館を見ることができる。

 そして「魔術」だ。今作では前作以上に魔法がこの世界に影響を及ぼしている。その象徴がデリラだが、彼女に従う「魔女」はかなりの強敵となる。使い魔である「ハウンド」は倒しても頭蓋骨の姿となり何度でも蘇ってくる。有効な対処手段を見つけ、的確に対抗する必要がある。

 そしてカオスを象徴する恐ろしい「ブラッドフライ」。巨大な蜂のような生物で、人間の死体を使って増えるのか、そこかしこに巣を作って近づいた人間を襲って繁殖している。前作はネズミが疫病の媒介者だったが、このブラッドフライはデリラの活動と何らかの関係性を持つものだろうか……。

 そしてステージのギミックも凝っている。「砂塵地区」と呼ばれる地域では一定時間で砂嵐が起き視界を遮る仕掛けが有利にも不利にもなって面白かったし、電車で長い道を進むところは途中の駅での攻防がよかった。広大な博物館で探知能力に優れた魔女と戦うのは、ルートを工夫することで敵の視界をうまく限定させることができた。各ステージには多くの選択肢があり、力押しだけではない工夫が可能だ。

 今回特に面白かったのが、狂気の発明家キリン・ジンドッシュの「クロックタワーマンション」で、古くからの知人であるアントン・ソコロフを救出するシーン。拷問で弱っているソコロフを肩に担いで逃げるのだが、強力な機構兵が行く手を阻む。戦闘の時はソコロフを床に置き戦うのだが、耐久力があり戦いは厳しい。それでも何とか倒し、満身創痍でたどり着いた大広間に……機構兵が3体いたのだ。この光景は本当に目の前が真っ暗になった。

 どう考えても勝てない。しかし、実はこのクロックワークマンション全体がレバーで大きく姿を変えるからくり仕掛けの屋敷だったのだ。特にこの大広間はレバーを入れることで床全体が切り替わるという仕掛けがあった。そこでうまく機構兵を誘導し、床下のレバーを操作することで、機構兵を閉じ込め、ソコロフと共に脱出できたのである。ひらめきで絶体絶命の難関を突破する、「Dishonored 2」はこういう体験ができるのだ。

 「Dishonored 2」は世界観、ストーリーの面白さに加え、シビアだからこそ楽しいゲーム性を持っている。そして“リプレイ性”も見逃せないところだ。本作はこのソコロフを含め助けられるNPCがいる。また、ジンドッシュを含めボスは殺すだけでなく、無力化する選択肢が用意されている。

 ルーンやボーンチャーム、設計図などのアイテム収集に加え、キャラクターの育成方法や、カオス度によるストーリーの変化……そしてなにより、コルヴォでプレイした時の違いも大いに気になる。何度でもプレイしたくなるゲームだ。もっとスマートに、もっとカッコ良く、より効率的にプレイを研ぎ澄ませたいというゲーマーの気質をくすぐる要素もたっぷりだ。気合いを入れて取り組んで貰いたい。ゾクゾクするゲーム体験を味わえるはずだ。

【様々な場面】
敵の頭上は気付かれない場所が多い
音声を記録しているオーディオグラフに事態打開のヒントが
ミッションにはサブの目標も提示されている
物乞いに金を渡すと有益な情報が得られる
弱ったソコロフを担いで脱出する時、3体の機構兵が……かなり絶望的な場面だ
魔女やダークハウンズなど魔術を使う敵も登場する
砂塵の街では、砂煙で視界がふさがれる
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