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シルバーストーンで「グランツーリスモシリーズ15周年記念イベント」開催!

新作の発表はもちろん、サーキットでテスト走行も
各国のゲーム・自動車業界関係者が続々参加

5月15日 開催(現地時間)

会場:英シルバーストーンサーキット

ついにベールを脱いだ「グランツーリスモ6」
全世界でシリーズ累計7,000万枚は驚くべき数字。「GT5」も1,000万枚と「勢いは衰えていない(Jim Ryan氏)」との言葉にも頷ける

 ソニー・コンピュータエンタテインメントは、5月15日に世界中のゲーム関係者・自動車関係者などを招き、「グランツーリスモ」シリーズの15周年を記念した「グランツーリスモシリーズ15周年記念イベント」をイギリスのシルバーストーンサーキットで開催した。

 「グランツーリスモ」は、プレイステーション用タイトルとして1997年12月に日本で発売された。日本では2012年に15周年を迎えたということで、記念イベントなども行なわれたが、今回はワールドワイドでの15周年ということで、英国の「シルバーストーンサーキット」で発表会が行なわれることとなった。

 シルバーストーンサーキットといえば、6月13日には「2013 FORMULA 1 BRITISH GRAND PRIX」が開催予定ということで、名門中の名門。ティザーサイトが9日に公開されてから、規模の大きなイベントということもあり、新作の発表も期待できると、大きな注目を集めていた。当日は晴れ時々雨というイギリスらしい肌寒い中でイベント開幕となり、期待の新作の発表はもちろんのこと、シルバーストーンサーキットでの「GTアカデミー」輩出プロレーサーによるテスト走行やデモプレイ、そして山内一典氏の共同インタビューなども行なわれた。

 発表会に出席したのは、ポリフォニー・デジタルの代表取締役プレジデントである山内一典氏をはじめ、Sony Computer Entertainment Europe(SCEE)のプレジデントを務めるJim Ryan氏ら錚々たるメンツが揃った。すでに別項でお伝えしているとおり、期待のシリーズ最新作「グランツーリスモ6」の発表を筆頭に様々な発表が相次いだ。

主に「GT6」についてのプレゼンテーションを行なったポリフォニー・デジタルの山内一典代表取締役プレジデント
GTアカデミーなどの発表を中心に行なったSCEEのJim Ryan氏
雨の中で高速道路を飛ばしていくとシルバーストーンサーキットの入り口が見えてきた。ロンドンの北西部、1時間ほどのところに位置している
会場には試遊台が置かれ、あまり時間は無かったがプレイすることができた

すべてのエンジンを一新した「グランツーリスモ6」が登場

 もっとも大きな発表としては、すでに別項でお伝えしているとおりの「グランツーリスモ6」だ。イベントの中盤で登場した山内氏は「『グランツーリスモ』シリーズの未来の話をしたい」と切り出し「今年のホリデーシーズンに向け『グランツーリスモ6』の制作を行なっています」と発表。そして「もう1つ重要なアナウンスがあります。PS3で発売されます」と続けた。すでにPS4が発表されてはいるが、多くのユーザーを獲得しているPS3の市場に向けて発売されるということになる。

 山内氏はまずは「グランツーリスモ6」のテーマについて、「『GT5』は複雑で大規模なゲームでした。『GT6』は1度きれいにして、これからの15年を見据えてリファクタリングし、将来性の拡張性を確保します。そしてレスポンスのイイゲームにしたい」と説明。

 ゲームエンジン、レンダリングエンジンなどを一新。PS3のジェネレーションでは難しいAdaptive Tessellationを実現したほか、HDRのダイナミックレンジを50倍に高めることでよりフォトリアルなグラフィックスを可能とし、PS3のSPUを使用することで高速化を果たしているという。PS3のハードウェアを使い慣れてきたことにより、進化を感じさせる作品となりそうだ。

 さらに物理エンジンも見直され、サスペンション、タイヤモデルなどが新しくなっている。山内氏はタイヤモデルについて「横浜ゴムと共同で、1番神秘的な部分をいま進めています。ダンパーについてもドイツのKW Automotiveとやっています。エアロダイナミクスも精度の高いものと入れ替える」と語り、自動車業界とコラボレーションすることで、より精度の高いシミュレーションに挑戦していると語った。5年間に及ぶレースデータを蓄積してきたことで、「色々と興味深いことがわかってきた」と山内氏は語り、これらを物理エンジンに反映していきたいという。

 プレゼンテーションで公開された「GT5」と「GT6」の比較映像では、カーブを曲がるときの車の沈み方などサスペンションの動きなど、車の姿勢がよりリアルになっている。今後よりわかりやすい映像も公開していくとしている。

ゲームエンジンから物理エンジンなど全てを一新。グラフィックスエンジンも新しくなり、現世代機としては最高のグラフィックスが実現される
会場で公開された比較映像。時間的な余裕がない中制作されたものということで、会場限定での公開となった

 搭載車種は1,200車種で「GT5」から200台を追加。もちろんDLCでも追加されていく。パーツに関してもエアロダイナミクス、ウイングを増やしていくほか、カスタムパーツは数千種、ホイールについても「GT5」では限られており制限が掛けられていたが、「GT6」では「その制限を突破したい」と語った。

 そしてコース。7つのロケーションが新たに追加され、合計33ロケーションを収録。合計71種類にもなる収録レイアウト数となる。「GT5」を遊んでいた方ならもちろん、すでにこのイベント開催の告知が行なわれたときからピンと来ていると思うが、シルバーストーンサーキットが新規コースとして収録されている。山内氏はコースについても「DLCで毎月増えていく」とする一方で、コースメーカーもアップデートし、コースのアルゴリズムも見直し、より自由度の高いコース設計が可能だという。

発売時の収録車種は1,200台を突破し、さらにDLCで追加車種はどんどん投入される
「GT6」では、イギリスのシルバーストーン・サーキットを含む合計7つのロケーションを新たに追加。合計33ロケーションが収録される。合計71種類にもなる収録レイアウトのうち、19種類が初収録となる

グラフィックスを一新したということで、各種グラフィックスを公開。山内氏は「なぜモデリングから公開したかと言えば、ワイヤーフレームをみてもらえれば、『GT6』のモデルが美しいことがわかりますから。できあがりは同じように見えてもモデルデータにすると汚いものがあります」という

カスタムパーツなども豊富に用意される。またホイールも多彩なものが用意され自由度が増すという
コースメーカーも一新される

 そしてさらなるポイントとしてオンライン機能についても触れている。「『GT5』では多機能だったオンライン機能だが、コミュニティ機能に関しては欠けていた」と反省の弁から入り、クラブの作成の他に「オンラインでチャンピオンシップを作ることができる」とその一端を明かした。現在でもユーザー側で苦労して実現しているチャンピオンシップだが、これをシステムレベルでサポートしていくという。

 「GT5」の欠点の1つとして「遅いユーザーインターフェイス」を挙げた山内氏は、新インターフェイスの一部を公開。ただし山内氏によれば「研究しているユーザーインターフェイスの候補の1つ」とし、製品版では異なるものとなることを示唆している。それでも山内氏は「レスポンスのいいものになる」といい、また、今回のユーザーインターフェイスには方向キーだけでなく、タッチポイントにも対応していることが明かされた。これはマルチデバイスへの対応に伴う影響の1つと言えそうだ。

 そして、そのマルチデバイスへの対応だが、「リアルドライブシミュレーターとしてはプレイステーションフォーマットがベストだと思うが、ソーシャルコミュニティなどへのアクセスなどはPS3がベストではない」と語り、スマートフォンやタブレットPCなどにWEBアプリを提供することで、ゲームを離れてもいつでもどこでもソーシャルメディアにアクセスして、繋がることが可能なシステムを作り上げる。

 こういったことと同時に、リアルとゲームの境界線上で影響し合うような様々な企画も用意されているという。山内氏はリアルで起ることとゲームとの関連性で巻き起こる予測できない新たな事象に興味を抱いているようで、その1つの例が「GTアカデミー」といえる。ゲームが上手いプレーヤーがリアル世界のレースで好成績をあげていく。これらを一端に、「『GT6』まであと6カ月くらいある。どんどん発表していく」とコメントしてプレゼンテーションを締めくくった。

 今回の発表は山内氏が語ったようにあくまでも基本部分であり、自身も「いろいろ言いたいことはあるけど、E3以降に取っておく」と語り、今後のスケジューリングとしては、来月のE3、夏のGAMESCOM、そして東京ゲームショウと、発売までに大きな発表が期待できる。「(自動車業界の)リーディングカンパニーとのコラボを用意している」という山内氏の言葉に期待しつつ続報を待ちたい。

コミュニティ機能を強化する。ユーザーがイベントを作成でき、そこへのコメントもできるようになりそうだ
快適なユーザーインターフェイスの実現に向け、現在研究開発が進められているという

今回公開されたユーザーインターフェイスの一部だが、あくまでも開発中のもので、製品版では変わるだろうとしている
マルチデバイスに対応することで、ソーシャルコミュニティにいつでもアクセスしやすくするという
「リアルとゲームの境界線」が「GT6」のテーマの1つと言えそうだ。今後、発売に向けて、様々な企画が発表されるという

GTアカデミーの成果なども発表

 発表の順序は「GT6」のプレゼンテーションとは逆となるが、今回は「グランツーリスモシリーズ15周年記念イベント」ということで、これまでの成果や「GTアカデミー」に関する発表も行なわれた。

 登壇したSCEEのJim Ryan氏は「先日『GT』シリーズのファンと話す機会があったのだが、シリーズ1作目が発売された1997年当時は4歳だったと聞き、歳を取った気分だった」と年月の移り変わりを感じたエピソードを披露。そして「『GT』は一世代周り、新しいジェネレーションとなった」とコメント。「『GT』シリーズがなければプレイステーションフォーマットがここまで来ることはできなかった」とシリーズ累計7,000万枚という数字を称えた。

 さらにJim Ryan氏は、「GT」シリーズのセールスについて「半分はヨーロッパで売れたことを誇りに思っている」と語り、モータリゼーションの本場であるヨーロッパにおいて「GT」シリーズの人気が高いことを示唆した。その昔、全く違う機会にフランスの記者と話したときに「フランスで1番人気の高いのは『GT』シリーズかなぁ」と話していたことを裏付けるデータとも言えるかもしれない。

 しかし、Jim Ryan氏も当初は「GT」シリーズの素晴らしさを理解できなかったといい、「グラフィックスは良く見えるけど楽しくないのでは? 間違っているのではないのか?」といったことを山内氏に問いかけたという。しかしいま振り返ると「間違っていなかった」としながら、その優位性について「テクニカル技術が世界一で、完璧主義者。そしてタイトルへのパッションにあふれているからここまでできた。ゲームを触るとわかる」と語った。

 発表会には日産のグローバルスポーツを統括するDirectorを務めるDarren Cox氏も登壇。GTアカデミーについて「ゲームとアカデミーのシステムがしっかりしているので、安心して選手達を送り出せる」と語った。GTアカデミー設立当初は誰もここまで計画していなかったというが、現状に留まることなく発展していくと力強く語った。Darren Cox氏は「レーシングは非常にお金のかかるスポーツ」としながら、「GTアカデミー」は若いレーサーのキャリアを磨くチャンスだとした。

 ステージにはGTアカデミーのドライバーも登場。Lucas Ordonez選手は「成功を誇りに思っている。誰もここまで成功するとは思っていなかった。今後も努力して頑張る」とコメント。Jann Mardenborough選手も「大学を浪人したときに『GTアカデミー』に参加して選手となりここまでやってきた。レーサーになろうと思っている人にはやって欲しい」とアピール。Jim Ryan氏は「このゲームは誰でもアクセスでき、誰でも夢を叶えることができる」と語っていた。

 ちなみに、過去最大規模の「GTアカデミー」が今年も開催され、7月にリリースされる「GT6」の体験版を通じて予選が行なわれるという。

今回の「GTアカデミー」の成績上位者がステージ上で表彰された。プレゼントは山内氏のサイン入りの盾
日産のグローバルスポーツを統括するDirectorを務めるDarren Cox氏
Lucas Ordonez選手、Jann Mardenborough選手もGTアカデミーについてコメント

(船津稔)