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日本中のUnityゲーム開発者が集結! 「Unite Japan」レポート
「ゲーム開発の民主化」で加速するゲームエンジン。モバイルゲームの潮流も変える!
(2013/4/16 00:00)
4月15日、ゲームエンジン Unityを活用するゲーム開発者のための大規模イベント「Unite Japan」が東京・ベルサール汐留にて開催された。
Unityは、現在おもにモバイル&ソーシャルゲームの開発者から広く支持を集めている高性能なゲームエンジン。そしてこの「Unite」は、Unityを開発・販売するUnity Technologiesが主催する開発者向けのカンファレンスだ。これまでは毎年、北米・欧州を中心に開催されてきたが、近年の日本におけるUnityゲーム開発者コミュニティの盛り上がりを受け、今年はじめて「Unite Japan」として日本での開催が実現された。
本イベントではUnityへの習熟度に合わせて3トラックのセッションスケジュールが組まれており、4月15日と16日の両日にかけて40コマほどのセッションが開催。プライベートカンファレンスとしては非常に大規模であり、ゲームエンジン1つのものとしては前例がない。
セッションの中ではUnityそのもののチュートリアル的な講演のほか、GDC 2013で発表されたUnityのWii Uフルサポート(関連記事)することについても改めて報告され、任天堂の協賛により開発者向けの具体的な情報が披露された。このほかにもUnityに連動する各種ミドルウェア企業による出展、関連セッションが設けられるなど、Unityを中心に旋回し始めたゲーム開発のエコシステムが「Unite Japan」の会場に凝縮していた格好である。
その会場となったベルサール汐留には1,000名近いゲーム開発関係者が集まり、コミュニティの盛り上がりを裏付けた。本稿では昨今のUnityを取り巻く最新のゲーム開発情勢報告となった基調講演の内容をメインにお伝えしていこう。その他のそれぞれのセッションや出展の内容については稿を改めてご紹介するつもりだ。
哲学は「ゲーム開発の民主化」。コミュニティが加速するゲーム開発環境Unity
2日間にわたって開催される「Untie Japan」全セッションに先立ち、Unity Technologiesの創立者兼CEO、David Helgason氏による基調講演が行なわれた。Helgason氏は自身の哲学や業界を取り巻く環境の変化をトークに交えつつ、Unityの過去、現在、将来をつまびらかにしていった。
Unityは誕生から10年。当初のスタッフはHelgason氏をはじめたったの3名で、狭い地下室の中でプログラミングしていたという。そこには明確な目的があった。ゲームを創造するためのエレガントなツールを作るということだ。それはやがて「ゲーム開発の民主化」という哲学に昇華していく。
しかし「それより先のことは考えていなかった」というHelgason氏だが、その哲学は今日、Unityというゲームエンジンが多くの人々にゲーム開発の手段を与え、一種の社会現象となるに至って、間違いなく現実を反映したUnity Technologiesの理念となっている。
このあたりについては現状の数字も報告されているのでご紹介しておこう。
・トータルのUnity利用者数:180万人
・月あたりアクティブ開発者:40万人
・月間のゲーム開発時間:500万時間
いくつのゲームが実際に開発されているかは正確に把握できていないとのことだが、概算で1~2万タイトルだという。従来のゲームエンジンでは成し得なかった水準にまで、ゲーム開発の裾野を広げたことは間違いのないことだ。
そのコミュニティがもたらした作用として、Unityの特筆すべき機能であるAsset Storeにも言及された。Asset Storeは、Unityの開発環境にビルトインされているオンラインストア機能で、世界中の開発者がそこに、有料・無料のアセット(ゲーム開発に使える3Dモデル、テクスチャ、プログラムモジュール、フレームワークなどの総称)を公開し、販売・配布できるというものだ。これも数字を挙げよう。
・利用者数:28万人
・商品数:6,500パッケージ
・トップセラー:300万円/月
このように、Asset Storeはゲーム開発者向けの新たなミドルウェアマーケットとして大きな役割を果たしている。従来は一握りの業者のものであったミドルウェアビジネスに、全く新しいエコシステムが持ち込まれたのである。
結果として、Helgason氏が「本当にびっくりした」というほど、昨年からはさらに新たな形の高品質なミドルウェアがUnityアセットの形で多数誕生してきている。それによって、Unityでのゲーム開発がますます加速していくというわけだ。これぞ「ゲーム開発の民主化」がもたらした果実のひとつであろう。
続いてHelgason氏はUnityを取り巻く環境の変化に話を移し、モバイルゲーム開発サイクルにおいてUnityが果たす役割を浮き彫りにしていった。
まず、スマートフォンはApple Iから始まったPCに比べ、少なくとも8倍の速度で普及を続けている。代表格であるiOSのゲーム市場は2013年には2008年の400倍に達する見込みだ。それに加え、開発者のインディーズ化、トップセラー以外のコンテンツにおける収益割合の増加傾向が同時並行的に進行しており、モバイルゲーム市場はますます多様化のスピードを上げている。
そこでHelgason氏が指摘するのが、コンテンツの“半減期”だ。音楽なら10年、100年と経っても色褪せない作品が多数ある。映画なら5~10年は古臭くならない。ゲームはもっと陳腐化が速いが、据え置きやPC向けのものなら2~3年は遊び続けられる。しかしモバイルは、せいぜい半年、もって2年だ。
それはモバイルゲーム市場にコンテンツを供給することの難しさを表していると同時に、チャンスの存在も表している。Helgason氏は言う。「音楽ならビートルズと競わなければなりませんが、モバイルゲームは今この時期に存在するものと勝負すればいいのです。つまり、コンテンツホルダーに対し、開発者がより多くの競争力を持つ市場なのです」。
そこに力を与えるのがUnityである、ということだろう。Helgason氏はその上で、Unityの将来について言及した。現在Unityを開発する270名のスタッフそれぞれに大きな裁量権が与えられているため「はっきりとは申し上げられませんが」と前置きした上で、「高品質化」、「より速い更新」、「より多くのプラットフォーム対応」と3つのキーワードを挙げた。
これらのキーワードは、今後さらに変化を早め多様化していくゲーム市場に素早く適応していくというコミットメントだ。長期的視点においては持続性を重視する。Unityを永続的なプロダクトとし、成長・変化していくゲーム文化と手を取り合っていく。そのような意気込みを語り、Helgason氏のスピーチのまとめとなった。