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趣味のUnityゲーム開発が収入に? デジタルサイネージへの応用も!
インタラクティブアート、デジタルサイネージでの空間演出にも活用されるUnity
(2013/4/17 00:00)
インタラクティブアート、デジタルサイネージでの空間演出にも活用されるUnity
ゲーム以外にもUnityの活用が進んでいる。幅広いマーケティング・ソリューションの提供を手がける企業、チームラボによるインスタレーション・アートの制作事例がそのひとつだ。
インスタレーションとは、場所や空間全体を作品として体験させる芸術様式。業務用の大型ディスプレイなどを使ったデジタルサイネージ(電子看板)として公の場に設置されることも多いコンテンツだ。チームラボでは、最新のテクノロジーを生かしたインスタレーション・アートの制作を通じて商業施設や各種イベント、起業CMなどに個性的な空間演出を提供している。
チームラボでテクニカルアーティストとしてコンテンツ開発に携わる杉野裕則氏は、Unityで作られたインタラクティブなスライドを使って、その実績と技術の詳細を紹介していった。
Unityを使って制作されたインスタレーションは実に幅広い。成田空港の出発ロビーに設置された大型ディスプレイによる空間演出や、銀座の真珠店TASAKIに設置された屋外デジタルショーウィンドウ、大阪キッズプラザ内に設置された人体構造の学習用インタラクティブディスプレイ、三浦工業の「ウルトラピュアソフトウォーター」のテレビCMなど多彩に展開している。
Unityを使う理由は、柔軟性が高い、開発が容易であるなどのポイントがある。それに加えて杉野氏は、コンテンツの要点を「美しさ」、「ランダム性」、「インタラクティブ性」とし、Unityスクリプトとシェーダープログラムで様々な表現を行なっている。
例えば、水墨画のような筆跡で伸びていく3Dの樹木。これはスクリプト側でランダムな樹形の広がりをシミュレートし、それに沿って、ジオメトリの軌跡を描くUnityの機能を使って描画されている。ごく短いコードでとても幻想的な風景を描いているのが面白い。
銀座の真珠店に設置されたディスプレイには赤外線カメラが仕込まれており、前を人が通ると画面内の模様が反応するというインタラクティブな仕組みがある。これは1台のMac miniで多数の球状剛体を物理シミュレートのうえ表示し、2台のディスプレイに表示を分散させることで実現されている。
三浦工業のCMに使われた工夫はとても面白い。完成した映像はダンサーの動きを取り囲むように水滴その他のビジュアルエフェクトが連動するようになっているのだが、これは四方を取り囲む形に設置されたスクリーンに、Unityのレンダリング結果をプロジェクターで投影することで実現されているのだ。
スクリーンは床と壁面に合わせて4つもあるが、実行されるUnityのプロセスは1つだけ。Unityでは多数のカメラを同時に扱えるため、Unity内のシーンを各プロジェクタに対応する角度にカメラを配置。各カメラから見た映像をシーン内に配置した平面(実際のスクリーン位置に対応している)に投影し、レンダリング結果を4枚のテクスチャに出力する。それらのテクスチャを実際の各プロジェクタでスクリーンに表示すれば、ダンサーを取り囲む立体的な映像空間が完成するというわけだ。
1行の計算処理も書くことなく、シーン内のカメラと仮想スクリーンの配置だけでこれを実現しているというのは、とても優れた工夫だ。Unityの柔軟性がうまく生かされた例といえるだろう。
このようにUnityの機能は、多彩な環境に合わせて制作されるインタラクティブアートにもうまく活用されている。講演を行なった杉野氏は、さらに技術を深め、応用の範囲を広げながら、将来的には「デジタルのディズニーランドみたいのを作りたい!」と意気込んでいた。さらなる進化を遂げるUnityは、今後も意外な応用が期待されそうだ。