グリー、グローバルプラットフォーム「GREE Platform」発表

「モンハン」、「サガ」、「龍が如く」などのソーシャルゲームが登場


12月6日 開催



 グリー株式会社は12月6日、同社が展開するグローバルプラットフォームに関する発表会を開催した。

 同社は4月に、欧米を中心に展開しているソーシャルゲームプラットフォーム「OpenFeint」を買収。その後、日本で提供中の「GREE」と「OpenFeint」を統合し、新たな「GREE Platform」として展開することを11月に発表した。今回の発表会では、その詳細が語られるとともに、大手ゲーム会社7社が「GREE Platform」向けの新作タイトルを発表した。




■ 1.5億ユーザーでスタートする「GREE Platform」。数年内に10億ユーザーを目指す

グリー代表取締役社長の田中良和氏

 グリー代表取締役社長の田中良和氏は、最初に世界のスマートフォン市場について述べた。それによると、2008年にiPhoneが登場して以来、現在までに約11億台のスマートフォンが出荷されているという。さらに今後も急激な普及が進むことで、2015年には47億台に達するという予測を示した。

 これに対し、「GREE」と「OpenFeint」を足した「GREE Platform」のユーザー数は約1億5,000万人。これをこの1年で3億ユーザーにすることが直近の目標だという。さらに2015年に向けては「47億台のスマートフォンに対して、相当なボリュームのプラットフォームを作っていく必要があり、また作ることができると確信している」と述べた。

 また田中氏は新しい「GREE Platform」の強みについても説明。最大のポイントはグローバルであることで、「1.5億人に、すぐにゲームを届けられる。普通にゲームを作ってプラットフォームに登録すれば、全世界に同時に配信されるというサービスを実行する」とした。また1つの仕様で全世界に配信できるのでコストが低いこと、日本で培ってきたユーザーのアクティビティやARPU(平均客単価)などで高いノウハウを持つことも利点で、「デベロッパー様に大きな収益をもたらすものが作れる」とした。

 また同社は世界各地に子会社を設立しており、今回の「GREE Platform」の展開を契機に、世界の全地域に提供する大規模なサービスを考えているという。田中氏は「10億人が利用するプラットフォームを目指す。数年後には10億ユーザーになるサービスがいくつも出てくる。その中の1つになることを目指す」と述べた。


スマートフォンは2015年に47億台になるという予測。それに合わせて「GREE Platform」も成長できるとする目標とするのは、直近では2012年に3億ユーザー。数年内には10億ユーザー達成を目指す

グリー執行役員メディア事業本部長の吉田大成氏

 続いて、グリー執行役員メディア事業本部長の吉田大成氏が「GREE Platform」の詳細を説明した。吉田氏はまず国内でのスマートフォン向けソーシャルゲームについて、「スマートフォン向けの単独タイトルで、月間20億コイン(20億円相当)を消費するものがでてきている。これは世界でナンバーワンの実績になるものだと思われる。日本で得たノウハウは世界でも通用すると思っている」と述べ、海外展開にも自信を見せた。

 「GREE Platform」では、1度の開発と最小限のコストで、世界中にソーシャルアプリを配信できる仕組みが整えられる。具体的には、合計で1.5億人となるユーザーベースの統合を始め、世界全体でのデベロッパーベースの統合、デベロッパーサポートメニューのグローバル化、API/SDKの統一化、App Portalとアプリ開発・管理の統一などとなっている。

 サポート言語は当初は日本語と英語で開始され、順次拡大していく。2012年夏には欧州各国やアジア地域を中心に14言語に対応する予定。サポート体制も整えられ、ローカライゼーションサービスはもちろん、ホスティング、デバッグ、ユーザーサポート、ミドルウェアサポート、アプリコンサルティングなど、現在用意されている支援メニューがそのままグローバルに拡大展開される。アドプログラムについても、「GREE Platform」上で全世界に提供できるようにしたいとしている。

 同社はこういったデベロッパーに対してのサポートを行なう一方で、内製ソーシャルゲームのスマートフォン対応やグローバル展開も順次進める。また米国や中国のスタジオで開発しているタイトルもグローバル対応させながら全世界で提供していくとしている。


「GREE Platform」におけるグローバル展開のサポート概要を説明。また内製タイトルでもスマートフォン対応・グローバル展開を進めるとした



■ 「モンハン」、「サガ」、「龍が如く」など強力タイトルが第1弾として登場

 グリーの発表に続いては、「GREE Platform」に第1弾ゲームタイトルとして投入が決定しているタイトルについて、大手ゲーム会社7社がそれぞれに発表を行なった。

カプコン コンシューマー事業統括 取締役 専務執行役員の一井克彦氏

 まず株式会社カプコンのコンシューマー事業統括 取締役 専務執行役員の一井克彦氏は、「モンスターハンター Dynamic Hunting for GREE(仮)」を発表。iPhoneで配信中のアプリをベースに、GREEのコミュニケーションを追加したものになる。「友達と一緒についつい遊びたくなる特有の新機能を付加して、新たなコンテンツとして展開する」という。配信は2012年夏の予定。

 さらにカプコンからはもう1タイトル、「バイオハザード マーセナリーズVS. for GREE(仮)」も発表された。こちらもiPhone版をベースにしているが、ゲームバランスやグラフィックスは一新される。「ソーシャル要素を付加して『バイオハザード』の新たなソーシャルへのチャレンジとして展開していく」としている。配信は2012年夏の予定。


「モンスターハンター Dynamic Hunting for GREE(仮)」。iPhoneアプリにコミュニケーション性を追加「バイオハザード マーセナリーズVS. for GREE(仮)」はiPhoneアプリをベースにしつつも大幅に作り変えられる

コーエーテクモゲームスの専務取締役 ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏

 株式会社コーエーテクモゲームスの専務取締役 ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏は、「『真・三國無双』 for GREE Platform」を発表した。「無双」シリーズの一騎当千のアクションを、スマートフォンならではのインターフェイスで爽快感あふれる形に表現する。またユーザー同士のコミュニケーション機能も満載したものになるという。提供時期は2012年夏の予定。

 またタイトルは明かされなかったが、同社はこのほかにも数タイトル用意しているという。フィーチャーフォンでは「100万人の三國志」など「100万人」シリーズを提供しており、「ここで培ったノウハウをワールドワイドに展開したい」としている。


「『真・三國無双』 for GREE Platform」。「無双」シリーズの爽快感をスマートフォンで実現しつつ、「100万人」シリーズのソーシャルゲームのノウハウも盛り込む

コナミデジタルエンタテインメント執行役員の早川英樹氏

 株式会社コナミデジタルエンタテインメントは、執行役員の早川英樹氏が「DanceDanceRevolution(仮)」をソーシャルゲーム化すると発表した。コンシューマーゲームでは欧米中心に1,500万本の実績があるダンスシミュレーションゲームで、スマートフォン版も好調。「リズムアクションゲームに他のプレーヤーとの対戦やアイテムを奪い合うというソーシャル要素を加えることで、新しい『DDR』を提供したい」という。配信は欧米を皮切りに、2012年2月の予定。

 また同社は国内で「ドラゴンコレクション」を始め、複数のソーシャルゲームを提供している。これらのグローバル展開ついては「主要タイトルは状況を見ながら提供したい」としている。


「DanceDanceRevolution(仮)」は対戦やアイテム収集要素を持つソーシャルゲームとなる

スクウェア・エニックス・ホールディングス専務執行役員の原口洋一氏

 株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスからは、専務執行役員の原口洋一氏がビデオメッセージで登場し、2タイトルを発表した。まず1本目は、東京ゲームショウで発表された「エンペラーズ サガ」。同社のRPG「サガ」シリーズのタイトルで、当初は今年秋からクローズドβテストが行なわれる予定だったが、原口氏は「我々の予測以上に早いスピードでスマートフォンがワールドワイドに普及してきており、急遽スマートフォン版も同時リリースが必要と考え、制作を追加している」と述べた。配信は2012年夏の予定。

 もう1タイトルは、「ケイオスリングス」などを手がける安藤武博氏がGREEと共同開発する「ギャラクシーダンジョン(仮)」。メカ美少女の部隊を率いてダンジョンとなる惑星を探索するというもので、異型生物との戦いはオリジナルのカードバトルで展開される。「美麗なカードを組み合わせたパーティーバトル。3Dの演出シーンもあり、新たな驚きを体験していただける」という。こちらは2012年5月に配信予定。同社はこのほかにも新作を次々と準備しているという。


「エンペラーズ サガ」はフィーチャーフォン・スマートフォン同時サービスのため配信が延期された「ギャラクシーダンジョン(仮)」はメカ美少女を率いてカードで戦うダンジョンRPG

セガ モバイルニューメディア事業部 モバイルニューメディア2部部長の岩城農氏

 株式会社セガのモバイルニューメディア事業部 モバイルニューメディア2部部長の岩城農氏は、「龍が如く 絆(仮)」を発表。「龍が如く」シリーズの完全な新作で、「プレーヤー同士のつながりが重要になるソーシャル性はもちろん、『龍が如く』のストーリー性を味わっていただけるものをソーシャルゲームとして提供する」という。キャラクターデザインには「クロヒョウ 龍が如く新章」のデザイナーを起用。配信時期は国内では2012年春の予定で、海外展開は未定。

 グローバル展開については他のタイトルで検討しているそうで、「コンシューマーやアーケードでは世界各国で二十数年ゲームを売ってきている。世界各国の拠点でのカルチャライズを徹底して良質なものを届けていく」と述べた。


「龍が如く 絆(仮)」はソーシャルゲームながらシリーズのストーリー性を体感できるものになるグローバル展開は過去のノウハウも活かしながら狙っていく

タイトー ON!AIR事業本部 本部長の庄司顕仁氏

 株式会社タイトー ON!AIR事業本部 本部長の庄司顕仁氏は、2タイトルを発表。1つ目はソーシャルトレーディングカードゲーム「period zero(ピリオドゼロ)」。カードゲームは昨今のソーシャルゲームで流行しているが、本作はネイティブアプリでリアルタイム対戦が可能な、本格的なトレーディングカードゲームとして提供される。同時に、仲間との協力や共闘といったソーシャル性も盛り込む。キャラクターデザインは曽我部修司氏。カードイラストには寺田克也氏、加藤直之氏、開田裕治氏など50名以上のイラストレーターが参加。ゲームシステムデザインは遊宝洞、サウンドはZUNTATAと、豪華なスタッフが顔をそろえている。「手軽でありながら本格派、直感的でありながら戦略的なゲームデザインを、スマートフォンならではのユーザーインターフェイスを作ることで実現する」という。配信は2012年春の予定。

 もう1タイトルは、「Dead Connection(仮)」。同社が1992年にアーケード向けに展開したアクションシューティング「デッドコネクション」をソーシャルゲームとしてリメイクするもので、ギャングになって世界に君臨するソーシャルシミュレーションゲームになるという。こちらは2012年秋に配信予定。


「period zero」はリアルタイム対戦も可能な本格的カードゲーム豪華なスタッフを揃えているのも特徴「Dead Connection(仮)」は同名のアーケードゲームをソーシャルゲームにリメイクするもの
会場で上映された「period zero」のムービーより、カードイラストとイラストレーター紹介の場面。総勢50名以上のイラストレーターが参加する

バンダイナムコゲームス上席執行役員の浅沼誠氏

 株式会社バンダイナムコゲームス上席執行役員の浅沼誠氏は、「様々なキャラクターとともに世界に攻めて行く。ただ、まだ準備ができていないので、今回は国内タイトルのみ紹介する」と前置きし、3タイトルを紹介した。

 「仮面ライダーウォーズ」および「スーパー戦隊ウォーズ」は、既にフィーチャーフォン向けには提供が開始されているタイトル。いずれも2012年にスマートフォンに対応予定としている。また新作となる「ウルトラマン大戦」はフィーチャーフォン向けに12月21日配信予定のソーシャルカードゲーム。こちらもスマートフォン対応を予定しているという。


「仮面ライダーウォーズ」はフィーチャーフォンで配信中。スマートフォン対応予定「スーパー戦隊ウォーズ」も同様にフィーチャーフォン版が配信されている「ウルトラマン大戦」はフィーチャーフォン向け新作ソーシャルカードゲーム。12月21日配信予定



■ 日本のゲームが世界に誇れる文化であることを示すため、プラットフォームを作る

 最後に行なわれた質疑応答の中で、田中氏は海外展開についての思いを、自らのゲーム体験に重ね合わせながら語った。

 「子供の頃は朝から晩までゲームをしていて、日本のゲームは素晴らしいと思っていた。しかし両親やメディアはゲームを批判していて、子供ながらに自分の愛してやまないゲームがバッシングを浴びるのはなぜなんだという思いがあった。時代を経て、我々が日本を代表するゲームメーカーの方々と一緒に全世界にゲームを提供していけるのは、私個人にとっても大変嬉しい」。

 「しかし『ゲームなんて』という声は現代にもまだある。日本のゲームは世界に誇れる文化であり産業なのだということを訴えていくために、我々がグローバルなプラットフォームを作り、日本で作ったゲームが世界中で遊ばれているのだという事実をもって、我々が作っているものは世界中で価値を認められているものだということを多くの人に示したい。そういった個人的な思いも込めて、新たなプラットフォームを作っていく」。

 日本のゲーム業界にとって、海外展開は常に大きな課題となっている。「GREE Platform」のグローバル展開は、日本で独自の成長を遂げてきたソーシャルゲームの新たな展開であると同時に、ゲーム業界にとっては海外展開という課題に対する1つの選択肢となり、ある種の実験場にもなる。具体的なタイトルが出始めるまでにはまだ半年ほど時間がかかりそうだが、「OpenFeint」を利用している海外のスマートフォンユーザーが日本発のソーシャルゲームにどう反応するのか。この先の動きはとても興味深いものになりそうだ。


(2011年 12月 6日)

[Reported by 石田賀津男]