「GREE Platform Summer Conference 2011」開催

スマートフォンによるグローバル戦略を説明。Tencentへの進出支援も


8月5日 開催

会場:ザ・プリンス パークタワー東京



 グリー株式会社は8月5日、デベロッパー向けのカンファレンス「GREE Platform Summer Conference 2011」をザ・プリンス パークタワー東京にて開催した。

 このカンファレンスでは、GREEの今後の戦略が語られるとともに、デベロッパーによるパネルディスカッションなどが開かれている。本稿ではその中から、グリーからの発表についてお伝えする。




■ フィーチャーフォンとグローバルに向かうGREEの方向性を説明

グリー代表取締役社長の田中良和氏

 まず最初に登壇したグリー代表取締役社長の田中良和氏は、「専用機から汎用機へ」というキーワードを挙げた。「コンピューターゲームという業態はコンピューター業界の一部で、メインフレームからPC、スマートフォンへというダウンサイジングの流れがある。据え置き型、携帯型ゲーム機がなくなるということではないが、コンピューターゲームも1つの転換点にある」と述べた。

 またフィーチャーフォンでゲームを提供しているデベロッパーに対し、スマートフォンへの参入を強く求めた。田中氏は、「PCごとにOSが違う時代があったが、猛烈に不便で、Windowsという共通プラットフォームができた。それと同じことが、スマートフォンから起こる。コンピューターや電話、ゲーム機、家電が1つ、2つのデバイスに集約される時代が来る。全てのマーケットを統合したフレームワークが10年かけてできると思う。そこで何をするかがテーマ」と自らのビジョンを語った。

 そして同社が掲げるグローバル戦略についても言及。「スマートフォンのビジネスは、世界何十億人になる。そこが次の目線。チャンスも自動的に広がる」と述べるとともに、先日買収した米OpenFeintや、プラットフォームを共通化する中国Tencentを合わせたユーザー数が8億3,000万人になるという数字を挙げた。

 しかし海外でのビジネスにおいては、自動車や家電などの産業を例に、「海外が8割、日本が2割という形にならなければ、世界で勝ち残っていけないと思っている。日本のマーケットも延びているが、安住していてはいけない。日本で得た収益を海外に投資してもらいたい」と、海外展開への積極的なチャレンジを求めた。


「専用機から汎用機へ」というキーワードを挙げ、コンピューター、電話、ゲーム機がスマートフォンに集約されるという田中氏
中国Tencentを始めとしたプラットフォームの共通化により、8億3,000万人という世界最大級のプラットフォームになることをアピール

GREE International CEOの青柳直樹氏

 続いて、GREE International CEOの青柳直樹氏が登壇。以前はグリーでCFOを務めていたが、今年1月からサンフランシスコ近辺で働いているという。その青柳氏は、ニンテンドーDS・ニンテンドー3DSの累計出荷台数が1億5,000万台であることを示し、「これだけでも大きなゲーム市場があり、1億5,000万人にどんなゲームを届けるかを考えていた。しかしこれからはスケールが1桁変わるのでは。スマートフォンは価格競争力があり、ゲーム機を買わない人も持っている」と、スマートフォン市場への期待感を示した。

 また自社の取り組みとしては、OpenFeintについて語った。「OpenFeintはランキングやアチーブメントを各ゲームに提供していて、ゲームごとにクローズドだった。そこにソーシャル機能を入れ込むことで、本当のソーシャルゲームのプラットフォームに転換する」と方向性を説明。これによりユーザー間のコミュニケーションの発生を促すという。青柳氏は、「日本で当たり前に実現されていた機能を入れ込むだけで、1億人のユーザーが活動的になるのでは。1からやっていては市場の変化に間に合わない」と語った。

 内製ゲームを北米でローンチする方針も表明した。「プラットフォーマーとして、GREEの『釣り★スタ』や『クリノッペ』でやってきたのと同じように、こういうコンテンツでいけるんだということを見せていきたい。夏から順次ローンチし、あらゆるプロモーションをやっていく」と述べた。


DS・3DSの変遷を見ながら、ソーシャルゲームで先行する日本が持つ優位性・ポテンシャルを説明
OpenFeintの今後の展開についても語られた。内製ゲームをOpenFeintに向けて夏以降に提供するという

グリー執行役員マーケティング事業本部長の小竹讃久氏

 GREEの今後の取り組みについては、グリー執行役員マーケティング事業本部長の小竹讃久氏が説明した。小竹氏はまず、「フィーチャーフォンではGREEトップからどうやって各ゲームやコンテンツに人を振り分けるかを考えていた。スマートフォンではアプリが中心になると思っている。アプリのための集客やアプリの活性化のためにどういう機能が必要なのか考えている」と述べた上で、それを実現する仕様について語った。

 小竹氏はアプリの成功には、「集客、集まった人に長く、密度濃くプレイしてもらう活性化、その上でマネタイズして収益を得る」という3ステップが必要だと述べた。中でも活性化に重点を置き、MAU/DAU/継続率を上げるための仕掛けを用意すると言う。その重要な要素となるのが、ユーザーの周りを巻き込む協力と競争だとしている。

 具体的な仕掛けとしては、まずさまざまな機能を実現するためのダッシュボード機能が導入される。その上で、アプリからの招待のインターフェイスを招待しやすいものに変更、複数種類のランキング機能の実装、称号(トロフィーのようなもの)機能の実装、電話帳やTwitter、Facebook、Gmailなどからのアプリへの招待機能の実装などを行なう。これによりユーザー間のコミュニケーションをより活性化させる。また決済周りでは、iOSのアプリ内課金に今夏より対応する予定。

 さらに小竹氏は、協業によるアプリ開発企画を発表した。「開発支援金を出すとか、ソーシャルゲームのノウハウを取り入れさせていただくことで、成功率の高いものを作るサポートをしていく。開発や企画にも我々がコミットさせていただき、運営にも今まで以上にコミットさせていただきたい。完全に協業のスタイルを考えている。我々のコミットメントを高めて、市場でも我々も本気だということをお伝えしたい」と述べた。


アプリビジネスの成功に必要な3要素を挙げた上、それをサポートするGREEプラットフォームの新機能やアップデートが紹介された

アドビシステムズ プリンシパル プロダクトマネージャーのマイク・チャンバーズ氏

 このほかゲストとして、アドビシステムズ株式会社 プリンシパル プロダクトマネージャーのマイク・チャンバーズ氏がステージに招かれた。チャンバーズ氏はスマートフォンにおけるFlashコンテンツについて、「フィーチャーフォンで作られたFlash Liteコンテンツは、Adobe Airを使えば、Action Script 3でコードをアップデートするだけでスマートフォンデバイスで再利用できる」と説明した。

 さらにAdobe Airを使ってスマートフォンアプリを作るメリットについても言及。「簡単にさまざまなモバイルプラットフォームに展開できる」とし、Adobe AirでiOS向けアプリを開発できることを強調した。またAdobe Air 2.7ではパフォーマンスも改善され、GPUアクセラレーションも利用できる点も挙げられた。

 会場では実際に「CIRC」と「Tweet Hunt」という、Adobe Airで作られたアプリのデモが行なわれた。「CIRC」では秒間60フレームで描画された滑らかな映像を披露するなど、その質の高さをアピールした。またiPadのApp Storeで「Tweet Hunt」など、Adobe Airを使ったアプリが紹介された。Flashは動作しないとされているiOS上で、Adobe Airを使ったアプリが紹介されているというのは、皮肉交じりながら興味深い。

 今後はUnity 3DでFlashのStage 3Dがサポートされることや、端末のネイティブ機能にアクセスできるようになることなども語られた。さらにチャンバーズ氏は、GREE Platform向けのアプリ開発プラットフォームとして、Adobe Airが採用されたことも明らかにした。詳細は今後発表するとしている。


iOSとは相性が悪いと思われていたFlashだが、Adobe Airを通じてiOS向けアプリを提供できることに加え、GREE Platform向けのアプリケーション開発プラットフォームに採用されたことを明らかにした



■ Tencentとグリーの共通プラットフォームに日中のデベロッパーが年内にゲームを提供

 またグリーは同日、中国Tencent、株式会社コーエーテクモゲームス、株式会社タイトー、中国Beijing Moca World Technologyとともに、記者発表会を開催した。

 今回の発表は、Tencentとグリーが、開発パートナーの日中相互の市場への進出支援を開始するというもの。グリー代表取締役社長の田中氏は、「Tencentさんが中国向けに出されているゲームを、日本向けに提供するスキームをご用意する。また日本の会社がTencentさんに出て行くことのサポートもさせていただく」と発表の趣旨を説明した。

 TencentでGeneral Manager of Wireless Game Product Departmentを務めるDavid Guo氏は今回の発表について、「TencentとGREEにおけるプラットフォーム共通化においては、ユーザーのログインからネット上でのフレンド機能、インターフェイスやAPIも共通化されている。これによりゲームの開発者やユーザーにとって大きな利便性がもたらされる」と説明。合わせてコーエーテクモゲームスとタイトーがTencentへ、Beijing Moca World TechnologyがGREEへ、年末までにゲームを投入する計画になっていることを明らかにした。

 アプリを提供するコーエーテクモゲームスからは、専務取締役 ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏が出席。「ゲーム業界では色々なグローバル戦略が考えられているが、中国は大きな市場で、そこにコンテンツを提供することは目的にかなった1つの選択になる。年内には看板タイトルである『100万人の三國志』をフィーチャーフォン、スマートフォンの両方に提供する」と語った。

 タイトーでON!AIR事業本部長を務める庄司顕仁氏は、「中国マーケットは、今までは足を踏み入れてもずぼっと落ちてしまうような難しい市場だった。今回はTencentさんとGREEさんの協業により、しっかりした足場ができた。日本でヒットした『SPY WARS』を中国市場向けにカルチャライズしてTencentさんに提供したい」と述べた。

 Beijing Moca World Technologyからは、CEOのStanford氏が来場。「Mocaはモバイルソーシャルゲームに特化した企業。年初からこのプラットフォームを通じてゲームを展開し、大きな業績を上げている。TencentとGREEの共通プラットフォームを通じて、日本市場においても成功を収められると確信している」と語った。


グリー田中氏Tencent General Manager of Wireless Game Product Department、David Guo氏コーエーテクモゲームス専務取締役 ネットワーク事業部長の小林伸太郎氏
タイトー ON!AIR事業本部長 庄司顕仁氏Beijing Moca World Technology CEOのStanford氏GREEとTencentの共通プラットフォームに、5社が協力して挑んでいく

(2011年 8月 5日)

[Reported by 石田賀津男]