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PS Vita「『俺の屍を越えてゆけ2』お披露目の儀」開催。ついに発売日発表!
シリーズの様々な制作秘話が明らかに
(2014/4/14 00:00)
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアは、PlayStation Vita用RPG「『俺の屍を越えてゆけ2』お披露目の儀」を渋谷・セルリアンタワーにある能楽堂で開催した。
まずなんといっても大きいのは、発売日が決定したことだろう。これまでざっくりと夏と発表されていたが、7月17日発売に決定した。価格はパッケージ版が5,800円(税別)で、ダウンロード版が5,184円(税込)。また同時に、PS Vita用特製ポーチ、PS Vita用特製デザインステッカー、オリジナルストラップ、手ぬぐい型クリーナークロスが付属した「初回限定版」が7,800円(税別)で発売される。
予約特典と早期購入特典も発表された。予約特典は、山仲剛太氏により1作目の名場面がよみがえる「スペシャルコミックブック」。さらにはゲームデザイナーの桝田省治氏をはじめとしたスタッフの制作秘話、「俺屍2」にかける意気込みなどインタビューも収録されている。
そして早期購入特典は、「レア神様」男神・女神各1柱をゲーム中でお迎えできるプロダクトコードがプレゼントされる。
プレコミュ・イベントで「体験版」の配信については電撃発表されたが、より詳しい体験版の内容も明らかになった。まず最初にリリースされるのが4月24日に配信される「俺の屍を越えてゆけ2体験版(ゲームシステム編)」。これはシナリオが一切入っていないバージョンだが、桝田省治氏曰く「できることがいろいろ入っている」と言うことで、ゲーム内時間で1年くらいしかプレイできないが、1回だとゲームの一部しか遊べないという。このため「今回はコマンドをすべて試してみようとか、死なないようにしよう、ある部分に投資を集中して街を育ててみよう、ダンジョンの奥まで進んだらどうなるのか? など、テーマを決めて遊べば10時間くらいは遊べる」とかなり充実した内容となっているようだ。配信期間は明らかにされていないが、期間限定配信となる。
次が5月8日にリリースされるPSP版「俺の屍を越えてゆけ ご新規体験版 俺屍2の前にバーンとォ!遊んでみましょ~」。この「バーン」と言うところが大切で、「あっさり」モードを選択すれば、なんと!ゲームクリアまで遊んでしまえるという。しっかりモードなどやクリア後のイベントも入っていないが、「ご新規」さんにすれば、クリアまで遊べるということで、なんとも太っ腹だ。ちなみに、「俺屍2」では1作目の「俺屍」とこの体験版のプレイデータを持っていると、(アイテムが増えるなど)「俺屍2」内でお土産をもらえるという。こちらも期間限定配信。
そして発売直前となる7月上旬には、シナリオが入った製品版の冒頭を遊ぶことができる「俺の屍を越えてゆけ2体験版(ゲーム冒頭編)」(仮)が配信される。この体験版のセーブデータは製品版に引き継ぐことができる。
1作目「俺の屍を越えてゆけ」を振り返る桝田氏ぶっちゃけトーク
発表会は、能楽師によるオリジナル能「俺の屍を越えてゆけ2」からスタート。引き続き、同作のゲームデザイン/シナリオを担当した有限会社マーズの桝田省治氏をはじめ、開発を担当したアルファ・システムの佐々木哲哉代表取締役社長、音楽の樹原涼子氏、“イツ花”役の声優を務めた吉田小南美さんらによるプレゼンテーションが行なわれた。
第1作目が発売されたのが1999年。桝田氏は「ユーザーは盛り上がってたけど、流通には受けなかった」と当時を振り返り、佐々木氏も「徐々に盛り上がった」と続けた。そんなタイトルが15年を経て続編が発売されることとなる。コンセプトを聞かれた桝田氏は「長男が生まれたときに思いついた。長男が生まれた時1番泣いていたのは祖母。なぜかと考えたとき、人が生きてきた証や意味を具体的に知るのはひ孫ができたときなのかなと。この平凡な感動をゲームとして再現できないかと思った」と説明。
さらに桝田氏は「システムを作るのは簡単。なぜ面白いのか周りを説得するのが難しかった。人間版『ダービースタリオン』とか言って。当時例えることができるゲームがそれくらいしか無かった」と、“オンリーワン”だったゲームシステムを製品化する難しさを語った。
また音楽について苦労があったのかと聞かれた樹原涼子氏は、主題歌を作ったあとで音楽を担当することになり、和のテイストなど特段考えること無く自分の感性を信じ作り始めたところ「スーッと完成していった」という。ただ、オーダーに対して提出した楽曲が違った場面で使用されることも度々あり、自身の中では混乱もあったとか。
ちなみに樹原涼子氏が音楽に決まった経緯について、「ライブ終わったら桝田さんが楽屋に駆け込んできて『この曲をくれ!』と言ってきた。『リンダキューブ』の時も欲しいと言われたけど断ったので、悪いかなと思って『いいよ』と答えました」と、この場で明かされた。
また、裏話として恐いことが嫌いな樹原涼子氏は、恐い場面の曲を作ることはできるが、それがグラフィックスと一緒になり合っているかチェックするのが、恐いシーンを見なければならないためいやだったとか。
ここで話題は、吉田小南美さんが演じた「イツ花」に移っていった。収録当時を振り返った吉田さんは「わざわざ録音ブースまで入ってきて『いまの“バーン”は違う』とか、細かく丁寧にご指導いただいた」と他の現場との違いを語り、「ここまで愛された結果は、一生懸命演じた結果に過ぎない。若手の声優さんから『俺屍』が好きで吉田さんを知りましたとよく言われる。『俺屍』を目指してやってくれているのはとても嬉しい」とシリーズに関われたことの喜びを語った。
「俺屍」のシリーズの魅力についてアルファ・システムの佐々木氏は「システム自体のおもしろさ。そして、自分の生活など身近に“死”が感じられたとき、感情移入してプレイしたくなる」と分析。一方、桝田氏は「ニコニコ動画などの実況プレイにぴったりなゲームだったことがヒットの原因では? ただ実況されるだけで無く、見ているとプレイしたくなる」と語った。
「俺の屍を越えてゆけ2」が生まれた経緯をぶっちゃけトーク
第2部はいよいよ新作「俺の屍を越えてゆけ2」について。引き続き、桝田氏、佐々木氏に加え、シナリオの生田美和氏、音楽の樹原孝之介氏、“コーちん”役の声優・福圓美里さんが登場。
冒頭、桝田氏は「大丈夫です。面白いです。前作できたことはあらかたできる。それだけで無く、全然違った遊び方もできるようになっている」と、従来作のファンが要求するより濃い遊びにも十分答えることができると太鼓判を押した。
制作される経緯について佐々木氏は「桝田さんと話をしていて、(1作目を作って)やりそびれたこともあるし、2作目をやりたいねと話していた。本当にやろうという話になってSCEに企画を持って行ったら、あまりいい顔をされず待たされた」と説明。弊誌のインタビューでもこういった経緯は明かされているが、この時点で『俺屍』の人気が販売本数やダウンロード本数などで証明され、このあとPSP版で実績を作ればゴーサインが出ることとなった。桝田氏は「初代を作った頃に下っ端だったSCEの人たちが出世して、協力してくれた」と語り、東京ゲームショウで作っていることを明らかにしてしまったのは、そういった内部の人たちから「『桝田さん、“俺屍2”って言っちゃいなよ』といわれて言いました」とぶっちゃけた。
シナリオについては桝田氏がツイッターで募集したところ、生田美和さんが応募してきた。採用した点について「着地点が見えている」とプロとしての力量を買ってお願いしたという。桝田氏は「女性がシナリオとしては言って良かった」と語っていたが、「『俺屍』をきちんと理解した上で、桝田氏とは違う目線で切り出すことができること」ということで、何度もミーティングを重ねていった。生田さんは「桝田さんの頭の中にはまだゲームになっていない“遊びのかたち”がたくさんあって、その誕生する瞬間に立ち会えたのは勉強になった」と、シナリオ作成への苦労と共に大いに刺激になったようだ。
前作プレーヤーの気になるところの1つに、神様とのドラマが挙げられる。今回は百何人かの神様が登場し、その1/3が敵に回るという。そこにはドラマがあり、「地上に降りてきた神様がどんな経験をして、(セリフを)言っているのか? 言わされているのか? 言わざるを得ないのか? そういったことを感じて欲しい」と生田さんは見所を説明。ちなみに、桝田氏によれば「烏とか狐とか、ネットで話題になっている人気のある男性の神様はだいたい登場します。声が聞きたいからだいたい敵になる。その過去もある」とどういった神様が登場するかのヒントを出している。
このほかにも、新職業「鬼頭」の登場についても語られた。いわゆるバーサーカーで、コントロールがきかない代わりに強い能力を持っている。ただ、名前も無く、家系図から削られてしまうなど制約も発生する。桝田氏はこういったキャラクターについて「あざといけど演出だけど、好きでしょ? そういうの」とファンに語りかけた。その上で、「前作で出た8つの職業で足りているんです。だからそれ以外を考えたときに、コントロールがきかないとか魔法が使えないとか。削るしかない」と苦労を語った。
また敵については、特にボス敵が面白いと言い、「アルファー・システムの若い人たちが本気でやったので、1体1体ボスキャラが他のザコには無い攻撃をしてくる。仕様書を読んで『なるほど』と思ってプレイした僕がアッという間に全滅しちゃうくらい。セーブしといた方が良いですよ」と桝田氏が言うほど。かなり手応えがあるようだ。
ゲームのシステム面で言えば、今回大きいのはネットワークを使った部分だ。他のプレーヤーの街にいくことができるが、この点について桝田氏は「自分の国だけでゲームのデータの1/3くらいしか出てこない構造になっているから、自分だけで完結するのではなく、他のプレーヤーの国に行くしかない。街のどこに投資するかはプレーヤーごとに違うので、その人の街でしか売ってないものがあるかもしれない」と説明。さらに、データは非同期なので、10年経って「俺屍2」を手に取ったプレーヤーがインターネットの海の中からデータを見つけ出せば利用することができる。これが、「俺屍2」が長くプレイできる理由の1つだ。
イツ花に代わってプレーヤーを支えるのがコーちんだ。どんどん様変わりする「俺屍2」の中にあって、唯一ずっとプレーヤーのそばに寄り添っている。福圓美里さんは「明るく、空気を読まず、プレーヤーのことを少し心配して、基本的にアホ。あまり暗くならないよう、ツッコミ過ぎないように演じました」とコーちんのキャラクターを説明しながら振り返った。
ちなみに今回多数の声優さんが参加しているが、どういった基準で誰が選択したかというと、大手声優事務所の「俺屍」を好きなマネージャーさん達が選んだのだという。1度「俺屍」をプレイし直しビデオを録画し、それを見ながら「10年~20年経っても声優を続けられる実力のある人」という視点で選んだのだとか。もちろん自分の声優事務所だけで無く、様々な視点から選択していったのだという。
そしてラストは、前作で音楽を手がけた樹原涼子氏とその息子さんで今作の音楽を担当した樹原孝之介氏によるテーマ曲ライブが行なわれた。まずは前作「俺の屍を越えてゆけ」のテーマ曲である「花」が披露され、引き続き「俺の屍を越えてゆけ2」のテーマ曲「WILL」を披露。
音楽を担当した樹原孝之介氏は「『俺屍』のプレーヤーだったので、担当できて嬉しい」とコメント。桝田氏によれば「彼はこの会場の誰よりも『俺屍』のことをやりこんでいて知っている。俺よりも詳しい。だから、戦闘シーンの音楽と言えば、彼の頭の中にはもう曲がある」と言ったこともあり、「ここはコーラスが欲しいね」といった簡単なやりとりがあったが、すんなりと音楽ができていったようだ。
最後の最後に桝田氏は「安心して買っていただいてけっこうです。間違いないです」と自信たっぷりに繰り返して発表会は幕を閉じた。
(C)Sony Computer Entertainment Inc.