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ネクソン、「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」制作発表会開催

新作アニメ「攻殻機動隊ARISE」の草薙素子役は坂本真綾さんに決定!

2月12日開催

会場:ニコファーレ

 士郎正宗氏のコミックを原作とした新作アニメーション「攻殻機動隊ARISE」の制作発表会と、ネクソンによる「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」の発表会が2月12日、六本木・ニコファーレで開催された。

 「攻殻機動隊」は士郎正宗氏が1989年に原作コミックを発表した。科学技術が発展した近未来の日本を舞台とした作品で、脳以外の全身を機械化した草薙素子を中心として物語が展開していく。アニメ作品としては1995年に押井守監督による劇場版「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」、2002年に神山健治監督によるテレビアニメ「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」があり、押井監督、神山監督による続編も制作されている。「攻殻機動隊ARISE」はプロダクションI.Gの黄瀬和哉氏が総監督・キャラクターデザインを務める“第4の「攻殻機動隊」”となる。

 制作発表会では、黄瀬監督、脚本と構成を担当する冲方丁氏、プロダクションI.G代表取締役社長の石川光久氏が登壇し、「攻殻機動隊ARISE」に関して、プロジェクトの概要や、最新映像を公開した。そしてスペシャルゲストの慶應義塾大学の特別招聘教授の夏野剛氏、角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏によるトークショー、さらに主要キャストの発表と、今作で主人公草薙素子を演じる声優の坂本真綾さんが登場した。

 「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」は韓国ネオプルが開発を担当する。ジャンルはオンラインFPSで、2014年上半期でのサービスとなることが発表された。

ネオプルによる、原作の要素をたっぷり詰め込んだFPSとなる「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」

ネクソン代表取締役社長のチェ・スンウ氏(左)と、ネオプル代表取締役社長のカン・シンチョル氏

 発表会で最初に行なわれたのはネクソンによる「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」の発表である。本作は神山健治監督によるテレビアニメ「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」と「攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG」、劇場版の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」をモチーフにしたオンラインゲームで、Windows向けに開発される。開発はネクソンの子会社である韓国ネオプルが担当することが発表された。

 登壇したネクソン代表取締役社長のチェ・スンウ氏は「本作は、アニメ『攻殻機動隊S.A.C.』の素晴らしさを世界中に広めたいというネクソンの想いと、『攻殻機動隊S.A.C.』をオンラインゲームにしたいという講談社様の思いで生まれました。『攻殻機動隊S.A.C.』のようなリアルで魅力的で、多くのファンを持っているコンテンツを題材にできるのは光栄なことです。オンラインゲームならではの楽しさを盛り込み、世界中の人に楽しんでもらえればと思います」と語った。

 ネオプル代表取締役社長のカン・シンチョル氏はゲームの概要を説明した。「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」のジャンルはFPSとなる。「攻殻機動隊S.A.C.」の世界を仮想体験できはる作品とするため、銃撃戦とアクションに力を入れ、さらにハッキング要素も盛りこまれる。戦場の情報を収集し、仲間の情報も活用して戦っていく。「攻殻機動隊S.A.C.」ならではの緊張感のある戦いを再現していく。

 原作での登場人物の多くは“義体”と呼ばれる機械化を身体に施したサイボーグとなっている。ゲームでも身体の“改造”が可能で、サイボーグならではのシューティング&アクションを実現する。また、思考戦車「タチコマ」も登場し、タチコマとの“協力バトル”も可能で、PvPだけでなく、PvE要素も盛りこまれる。さらに草薙素子らが所属した「公安9課」の1員になれるストーリーも盛り込んでいくという。

【GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)】
「攻殻機動隊」ならではの要素を盛り込んだFPSとなりそうだ

キャストを一新し、“攻殻機動隊”の創設を描く「攻殻機動隊ARISE」

左から、プロダクションI.G代表取締役社長の石川光久氏、総監督・キャラクターデザインを務める黄瀬和哉氏と、草薙素子を演じる坂本真綾さん、脚本と構成を担当する冲方丁氏
黄瀬氏がデザインしたキャラクターの並ぶキービジュアル
本編のスチール。これまでの作品の素子より幼い雰囲気がある

 オンラインゲームの発表の次に新作アニメーション「攻殻機動隊ARISE」の制作発表会が行なわれた。「攻殻機動隊ARISE」で描かれるのは、凶悪犯罪を阻止する事を目的とした攻性(守るのではなく攻める)の特殊部隊“攻殻機動隊”の創設、そしてこれまでのシリーズ作品において謎に包まれていた全身サイボーグのヒロイン・草薙素子の物語が描かれる。

 草薙と公安9課の荒巻、後に攻殻機動隊のメンバーとなるバトーやトグサらとの出会いとともに、電脳ウィルス“ファイヤー・スターター”を巡る壮絶なアクションと電脳戦が展開されるということだ。

 本作は1本50分の4部作のアニメーション作品として制作され、第1弾の「攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain」は6月22日よりTOHO シネマズ 六本木ヒルズ、新宿バルト9ほかにて2週間限定の全国劇場上映される。その際、上映館にて「攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain」シナリオ付き劇場限定版ブルーレイが発売される。

 「攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain」は6月22日より有料配信も行なわれる予定で、こちらの詳細は公式サイトで後日発表される。また、7月26日からは「攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain」のブルーレイとDVDの一般販売もスタートする。

 ステージに登壇したプロダクションI.G代表取締役社長の石川光久氏は、「総監督の黄瀬はプロダクションI.Gの最終兵器です。この作品が生まれたのは彼を総監督として起用するというタイミング、そして『攻殻機動隊』という世界にファンを持つ作品で、2Dアニメのすごさを、世界中に知らしめたいという想いから生まれました。脚本は、彼が全幅の信頼を置く冲方です」と挨拶した。

 そして石川氏とスペシャルゲストの慶應義塾大学の特別招聘教授の夏野剛氏、角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏の3人でのトークショーが行なわれた。夏野氏は「僕は物理法則で予測できる未来世界を描いたハードSFが好きなのですが、それらの作品から僕の仕事に活用していきました。『攻殻』の描く世界は、未来の生活や、必要な技術を提示している。全ての未来は『攻殻』の中にある。経営者は全員『攻殻』を見ろ!」と語った。

 遠藤氏は「今ちょうど脳波で機械を動かす『ブレイン-マシン-コントロール』を雑誌で取り上げているのですが、最高にエキサイティングなのは脳のデータの解析で、瞬間的な記憶なら取り出せたりもできる。これまでSFでのみできたことが、現実になってきている。ハードウェアと心の関係や、身体があるからこそ時間が認識できるなど、現実の研究者が『攻殻』で語られていたテーマを取り上げている。『攻殻』が今度は何を描くか、楽しみです」とコメントした。

 トークショウはそこから自分の脳の代わりの外部脳や、身体を強化するための機械など「攻殻」で描かれている未来技術が、現実でも研究が進められていること、「攻殻」での未来への想像が、現実の研究を導いているといった形で話は広がっていった。未来はどんどん加速していくという中で、しかし、それだけではないのではないかと意見を言ったのが石川氏だ。石川氏は原作者の士郎正宗氏が、未来に対して考察する話をしている中で、士郎氏は「意外に人間は抑制力がある」と言ったという。

 数十年前に人々は「空飛ぶ自動車」という突飛な未来を想像したが、今でも車は飛んでいない。テクノロジーは突発的に進化していくばかりじゃなく、昔からの感覚を大事にして、進化を抑える部分も人間は持っている。革新性と抑制を振り子のように揺れながら進歩していくんじゃないかとそういう話になったというエピソードを披露した。

 「攻殻機動隊」はそれまでの様々なSF作品の要素を盛り込み、そして士郎正宗氏だけではなくアニメスタッフのアイデアも得て独特で、リアルな感触のある未来予想を行なっている。その未来への考察こそ現実の研究の後押しをするものだと3人は語った。

 トークショーの終わりに「攻殻機動隊ARISE」に向けて夏野氏は「この2、3年でITがグッと進歩している。『攻殻』はそれをさらに越えた世界を描いてるけど、現実の影響は必ず受けている。そこが楽しみですね」。遠藤氏は「現実から未来を予測していく『攻殻』というテーマでテクノロジーと人がどのように描かれるのか楽しみです」と語った。

 トークショーに続いて、総監督・キャラクターデザインを務める黄瀬和哉氏と、脚本と構成を担当する冲方丁氏が登壇した。黄瀬氏は総監督となった感想を聞かれると、「結局絵ばっかり描いてきた人間ができるかというところで、自分でも自信がないのですが、こんな抜擢を受けてどうしようかと、ごねたこともありました」と答えた。冲方氏は「とてもうれしい反面、怖いです。非常に影響を受けた作品であり、恩返しの気持ちと、挑戦の気持ちで作っていこうと思います」とコメントした。

 「攻殻機動隊ARISE」は2年半前、石川氏と士郎正宗氏が「新しい『攻殻』を作りたい」という話になり、士郎正宗氏は「プロットと、キャラクター原案」を石川氏に持ってきた。石川氏はそのプロットを冲方氏に「これで欧米ドラマの『C.S.I』みたいなのを書いてよ」と渡した。冲方氏は1ファンとして、原作者から提示されるこれまで語られていなかった「攻殻」の秘密を知ることができて喜ぶ一方、その秘密が要求する物語のハードルの高さに悩むことになった。プロット・設定・キャラクターは「おまえはこれを見せられて、何が作れるか?」と問われているようであり、黄瀬監督と綿密に打ち合わせをしながらどうこのプロットを物語にしていくか設定していったという。

 冲方氏は「ぶれてはいけないのは、草薙素子を人間として捉えること。生い立ちや、彼女の成長、ちょっとした感情や、テクノロジーが進歩したからこそ浮き立ってくる人間の生々しさが重要だなと思いました」と語った。

 一方黄瀬監督は「これから出す案件を断るな」という“社命”でこのプロジェクトを任されることとなった。黄瀬氏はまずデザインから入った。最初は士郎氏の作風に近いデザインを出したのだが、士郎氏から「もっと素子をリアルに」といわれ、作っていった。劇場版「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」のラインに近いデザインにしていった。

 そのデザインを見たとき、石川氏は「本気だな」と思ったという。黄瀬氏のデザインから思い入れを感じ、このキャラクターが動くとなるとその要求されるクオリティの高さに「ヤバイ」と感じた。だからこそ2年半という制作期間が必要になった。石川氏は黄瀬氏のデザインに、思わず身震いしたという。

 また、音楽はミュージシャンのコーネリアス氏が担当する。音楽を任せるに当たり黄瀬氏はコーネリアス氏と会ったのだが、「大丈夫ですよね?」の問いに「大丈夫です」といった感じのあっさりした出会いだったという。コーネリアス氏は会場に「今までの『攻殻』と少し違った感覚を加えていきたいなと思っています。バイオロイドにも喜んでもらう曲になればと思います」とコメントを寄せた。

 そしてここで、主要キャストが発表された。草薙素子:坂本真綾さん、荒巻大輔:塾一久さん、バトー:松田健一郎さん、トグサ:新垣樽助さん、イシカワ:檀臣幸さん、サトー:中國卓郎さん、パズ:上田燿司さん、ボーマ:中井和哉さん。これらは黄瀬監督のこだわりで選ばれた。そしてサプライズゲストとして草薙素子を演じる声優の坂本真綾さんが登場した。

 坂本さんは実は劇場版「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」で少女の体を義体として使った草薙素子の声を演じている。しかし黄瀬氏はそういったことは関係なく、オーディションで坂本さんを選んだという。坂本さんは「選ばれて凄く嬉しかったのと、これはきっと色んなご意見があるだろうなと。キャストが変わることにがんばらなくてはいけないなと思っています。少女の義体の時の素子を演じたことが役立てられるなら、うれしいなと思いました」と語った。

 最後に黄瀬氏は「今まで絵だけ描いていたのですが、これからは他のこともがんばっていかなくてはいけない。ご期待に応えるようにがんばりますので、よろしくお願いします」とファンに語りかけた。

 「攻殻機動隊ARISE」は西暦2027年の物語となる。劇場版「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の2年前の物語で、特殊部隊“攻殻機動隊”の創設が描かれるという。キャストが一新したことで作品はどう変わるのか。素子の過去はどう描かれていくのか、とても楽しみだ。また、ネオプルによる「GHOST in the SHELL S.A.C. ONLINE(仮)」もどうなるか期待したい。「攻殻機動隊」ならではの要素をたっぷりと盛り込んだ、新時代のFPSを見せて欲しい。

【攻殻機動隊ARISE】
今作では素子の過去が描かれるという。公安9課のメンバーのそれぞれの出会いも楽しみだ

(勝田哲也)