「GREE Platform Conference 2012」セッションレポート

世界市場に勝機を見たパネルディスカッションなどを紹介


3月23日開催


 グリー株式会社は3月23日、「GREE Platform Conference 2012」をザ・プリンス パークタワー東京にて開催した。「GREE Platform Conference 2012」は、4月から6月に公開を予定しているグローバルプラットフォーム「GREE Platform」にゲームを提供する開発者向けに開かれたカンファレンスだ。

 この記事では、午後に開かれた海外向けソーシャルゲームメーカー代表5名によるパネルディスカッションと、グリー開発本部ソーシャルプラットフォーム統括部統括部長の伊野友紀氏による「GREE Platform SDK Ver.3」についての概要説明をお伝えする。
 
 なお午前中に開かれたグリー代表取締役社長の田中良和氏の講演の様子はこちらで紹介しているので、参考にしていただきたい。



■ 見えてきた海外での勝機。メーカー代表5名によるパネルディスカッション

モデレーターを務めたgumi代表取締役社長の國光宏尚氏
Nubee Tokyo代表取締役社長の手島武雄氏
ドリコム執行役員の長谷川敬起氏
カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔氏
グリー取締役 執行役員CFO 国際事業本部長の青柳直樹氏

 田中社長の挨拶の後、昼食を挟んで開催されたパネルディスカッションでは、モデレーターの株式会社gumi代表取締役社長の國光宏尚氏を中心に、海外向けソーシャルゲームを提供するメーカーの代表者が日本と海外の市場の違いや手応えなどの意見交換が行なわれた。
 
 パネリストに登壇したのは、株式会社Nubee Tokyo代表取締役社長の手島武雄氏、株式会社ドリコム執行役員の長谷川敬起氏、株式会社カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔氏、そしてグリー取締役 執行役員CFO 国際事業本部長の青柳直樹氏の4名。

 ディスカッションは、ソーシャルゲーム市場が最も懸念している事項、「果たしてモバイルソーシャルゲームは海外で通用するのか?」という話題からスタートした。

 その口火を切ったのは青柳氏だった。青柳氏はグリーの米国子会社GREE InternationalでCEOを務めており、GREE Internationalは開発、運営するスマートフォン向けソーシャルゲーム「Zombie Jombie」を3月15日にリリースしたばかり。
 
 「Zombie Jombie」はゾンビのカードを集めてデッキを作り、カードの合成や交換をしながらデッキを強化していくというソーシャルカードバトル。絵柄はあくまで海外テイストだが、ゲームの内容は日本的なソーシャルゲームと言っていい仕上がりになっている。その中で、本タイトルは先週米国のApp Storeで4位を獲得した。青柳氏はこの成果について確かな手応えを感じているそうで、「日本のやり方でも、これを続けていけば通用するとわかった」と自信を覗かせた。
 
 青柳氏は日本と海外の収益性の違いについて問われると、「よく欧米市場は日本市場の1割と我々は言っていたが、今後やっていく施策を考えれば、欧米市場は日本の半分の収益率までいけるのではないか。海外では10万ユーザーで1億円は行かないと言われているが、丁寧な改善、イベントをやっていけば億単位の売上になるのでは」と話した。
 
 長谷川氏もこれに同調し、「実際にリリースした後、イベントをやると日本と同じように数字が上がっていく。明るいマーケットに見えている」と述べ、欧米進出が困難ではないという認識を示した。ただし、ゲームの雰囲気については気を付けた方がいいそうで、長谷川氏は「オリエンタルなものはウケが悪かった。テイストは向こうに合わせるべきとは感じている」と語った。
 
 また中国人のユーザーを多く抱えているという手島氏は、中国市場については「GDPは成長しているが、収入は日本人とまだまだ違う。その点で予測ができないので、3年から5年後に期待している」と述べた。
 
 続いて、話題は「アメリカでゲームを配信をする前に他の国でテストをした方がいいのか?」という疑問へと移った。ここで言う“テスト”とは、市場規模が圧倒的に大きいアメリカで成功を収めるために、同じ英語圏で価値観の近いカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国でタイトルを先行でリリースして、様子を見ることを意味している。

 青柳氏は、「成功しているチームは例外なくテストを行なっている。KPI(重要業績評価指標)を見て初めてわかることは多い。そこから改善をして、アメリカで勝負するのは大事」と語った。特にアプリのマーケットは変化がめまぐるしく、「初速が大事」だという。他のマーケットから学んだことをしっかりと活かして、“本番”となるアメリカでの配信のために準備をする。そのため青柳氏にとっては、実際にテストを行なった「Zombie Jombie」のアメリカでの成果は「想定通り」だったそうだ。
 
 また青柳氏は海外に向けてのゲーム調整について、「国が違うだけで、継続率や課金率が変わってくる。それはモチーフが合わないのか、ゲームが悪いのか、直すべき優先順位がわからないが、まだまだ伸びそうだなと感じている。特に南米では、2年前のままのタイトルでも、丁寧に対応することで1位を取れたりする。海外での収益性はこれからも上がるはず」と語った。
 
 最後に、5名はそれぞれ今後の海外展開の意気込みを語った。手島氏は、「元々世界展開を中心にやってきたが、引き続きアジアを中心的に責めていきたい。日本を代表する作品を夏くらいに発表できるはず」と語った。
 
 長谷川氏は、「今後は、日本市場と海外市場をわけて考える必要はなくなるはず。トップランナーになるために、青柳さんとは今後GREE Platformで一緒にやっていきたい」と語った。柳澤氏は、「全然喋りませんでしたが(笑)、私たちは日本的な面白いコンテンツを作っていくという企業なので、ソーシャルゲームでは逆張りで日本的なゲームを作っていきたい。海外で出すのは厳しいかもしれないが、限定された形で海外に出ていくと思う」と話した。
 
 青柳氏は、「『Zombie Jombie』が通用するとわかったのは、日本のソーシャルゲーム業界にとって大きい。ノウハウを応用させていけば、負けてないし、通じるだろうなということがわかったと思う。日本のソーシャルゲーム作りのノウハウを活かして、ユーザーあたりの売上と継続率を上げきれば、アメリカで先頭を走っている人たちが後ろに見えるのではないか」と述べた。
 
 國光氏は、「日本企業は、はっきり言って勝てる。これは真面目に、GREE Platformで勝てると思っている。日本勢が頑張って、まだまだ日本いけるぞ、日本人なめんなというところを皆で見せていければと思う」と語った。



■ グローバル対応へバージョンアップを遂げた「GREE Platform SDK Ver.3」

グリー開発本部ソーシャルプラットフォーム統括部統括部長の伊野友紀氏

 続いてのセッションは、伊野氏から「GREE Platform SDK Ver.3」で提供される具体的な事項について説明された。

 「GREE Platform SDK Ver.3」は、世界展開のプラットフォームへと移り変わるGREE Platform向けの開発ツールキット。伊野氏は新しい機能として、GREE Platform API群との通信が、SDKと開発側サーバーの両方でやり取りできるようになったと説明。場合によっては、SDKをほとんど介さずに直接APIとサーバーでやり取りができるケースも考えられるという。

 改善された点では、まず招待機能の充実が挙げられた。「GREE Platform SDK Ver.3」では、電話帳や、Facebook、Twitter、Gmailなどとの連携機能が実装されてより招待しやすくなる。また通知機能についても改善され、画面の上部から降りてくるようなメッセージや、プッシュ通知も表示できるようになった。

 このほかiOSでの変更点として、タブレット端末が非サポートになったこと、iOS3.0代は非サポートになったことなどが挙げられた。タブレット端末の非サポートについては、「スマートフォン最優先のため」と伊野氏から語られたが、それでもタブレットで「ある程度は動く」そうだ。伊野氏は、「これは近いうちにサポート状態にしたい」と話した。

 またWebアプリをネイティブアプリ化する「WebView App SDK」が提供される。Webアプリについては、グローバル対応の「GREE Platform」では主に課金周りの整備が間に合わなかったためサービスされないが、将来サービスされることを鑑見た時に、「WebView App SDK」を利用することでウェブプラットフォームとネイティブアプリ両方から収益が上げられるメリットがある。「ブラウザゲームのノウハウを使いながら、運用やイベント、ページ構成などができる」と伊野氏は述べた。

国が違えば、右から左に読む言語も登場する。そういった文化に合わせたコンテンツ提供の制御もSDKで可能になる

 ユーザー言語や国の区別については、People APIを実装するとした。People APIでは、ユーザー情報に国コード(Region)、地域コード(Subregion)、言語コード(Language)、そしてユーザー自身が設定する時間帯(Timezone)の4つのデータが付加されて返答される。これらを区分することで、ユーザーからの「日本にいるけど韓国語を使いたい」といった要望にも応えられる。またゲーム提供においては、国や地域を限定したり、国ごとにゲーム内容を変えて配信できるようになる。

 なお認証方式については、簡易認証(Grade 1)、フリーメール(Grade 2)、SMS/IVR(Grade 3)と3段階にわけた認証方式が提供される。ただしGrade 1とGrade 2に関しては、伊野氏は「1人のユーザーが複数のアカウントを使う可能性があるので気をつけてほしい」と話した。


「GREE Platform SDK Ver.3」は、集客、活性化、収益化の3点に重点を置いて開発されたという。グローバル化に際して、宗教上の問題や言語の違いなども考慮して設計されていることがセッションでは説明された

(2012年 3月 23日)

[Reported by 安田俊亮]