グリー、「GREE Platform Conference 2012」を開催
田中社長「10億人が利用するサービスをつくる」
グリー株式会社は3月23日、GREE Platform向けにゲームコンテンツを提供している開発者を対象にしたゲームカンファレンス「GREE Platform Conference 2012」をザ・プリンスパークタワー東京において開催した。事前登録制で、入場は無料。本稿ではグリー代表取締役社長田中良和氏が登壇したオープニングスピーチの模様をお伝えする。午後に行なわれた各セッションについては追ってお伝えする。
「GREE Platform Conference」の紹介に入る前に、昨日行なわれたGREE Platformを対象にしたゲームアウォード「GREE Platform Award 2011」について触れておくと、総合大賞や殿堂入り、各優秀賞など18タイトルの受賞が発表された。殿堂入り以上のタイトルは以下の通り。大手ゲームメーカーの有力タイトルが順調に受賞したという印象である。
・総合大賞
「FIFAワールドクラスサッカー」(エレクトロニック・アーツ株式会社)
・殿堂入り特別表彰
「ドラゴンコレクション」(株式会社コナミデジタルエンタテインメント)
・殿堂入り
「プロ野球ドリームナイン」(株式会社コナミデジタルエンタテインメント)
・恋愛ゲーム最優秀賞
王子様のプロポーズforGREE
株式会社ボルテージ
・シミュレーションゲーム最優秀賞
「ぼくのレストラン2」
株式会社Synphonie
・RPG最優秀賞
「クローズxWORST~最強伝説~」
株式会社コナミデジタルエンタテインメント
【GREE Platform Conference 2012】 | ||
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「GREE Platform Conference 2012」は、ザ・プリンスパークタワー東京地下のセミナーフロアをほぼ全域使用する形で開催された。ラウンジでは協賛メーカーのブース出展も行なわれた |
■ 田中社長「これまでゲームができなかった人にもゲームを届ける」
「GREE Platform Conference」は、昨年の「GREE Platform Summer Conference 2011」に続いて2度目の開催となる。今回は、田中良和代表取締役社長のオープニングスピーチと小竹執行役員によるGREE Platform統一戦略に関する説明を皮切りに、昼食を挟んでGREE Platformの様々な側面を扱った分科会を、5つのセミナー会場を使って終日実施するなど、プラットフォーマー単独のゲームカンファレンスとしては過去最大規模のものとなる模様だ。
大規模な受付会場はラウンジとしての機能も備えており、フロアの奥では協賛各社がブースを構え、ミドルウェアやマネタイズ、ホスティングサービスなど、GREE Platformへの展開をさらに促進させるソリューションを展示し、まさにGREE Platformの勢いを感じさせるイベントだった。
「GREE Platform Conference 2012」最大の注目点は、なんといっても今春より正式スタートすると告知されている「GREE Platform」のグローバル展開の具体的な中身とそのストラテジーである。グリーの米国法人はGDC 2012でも改めて開始時期を4月から6月と告知し、いよいよ待ったなしの状況となっている。
10分遅れで始まった田中氏の挨拶では、9割がた埋まったメイン会場を見渡しながら、スマートフォンの爆発的な普及に伴うグローバル市場の変容から語り始め、「2012年にはスマートフォンの総出荷台数が6億台、7億台に達し、この流れは新興国へも波及し、これまでPCを持ったことがないような層にも普及していく。それと同時にスマートフォンの高性能化もかつてないスピードで進捗している。2013年にはスマートフォンが家庭用ゲーム機の性能に追いつき、追い越していく。新しいコンピューティングのパラダイムに我々がどう対応していくか。そしてGREE Platformがどう対応し、どう取り組んでいくか考えてきた」と熱っぽく語った。
田中氏は、これまで日本は携帯ゲームビジネスは世界最先端をいきながらも、様々な障壁から日本以外に展開し、成功させることが難しかったことに触れながらGREE Platformについて「今回、スマートフォン向けにiOS、Android、HTML5などに対応した全世界統一のプラットフォームを提供できる。4~6月の公開に向けて開発は順調に進んでいる」と報告した。
肝心のGREE PlatformのSDK(開発キット)の提供開始時期については明示しなかったが、その代わりにグリーの米国法人が手がけた「Zombie Jombie」、「Alien Family」のうち、「Zombie Jombie」が米国のAppStoreで4位を獲得したことについて語り、「これまでグローバルビジネスにおいて、果たして日本で培った考え方やノウハウが日本以外で通用するかという質問を受けてきたが、できますではなく、“できた”という結果を見せられた。これはあくまで始まりではあるが、少なくとも日本の会社が日本以外の市場で成功できたというひとつの大きな事例を手に入れることができた」と報告。
続けて、「これらのタイトルは現地デザイナーの手によってアメリカマーケットに受け入れられるデザインを採用したが、今後は現地開発だけでなく、日本開発タイトルも順次ローカライズして展開していきたい」と抱負を語り、「我々は今後日本以外のマーケットにもリーチしていく、あとは個別のゲーム単位でどのようにうまく展開していくか」とし、来場しているサードパーティーにも“バスに乗り遅れないよう”に奮起を促した。
田中氏は余話として、「社内で聞いた話ではパナマ、ジャマイカでは1位になった(笑)。日本の会社が、世界の人が開発したものを、全世界にものを届ける喜びを感じた」と笑顔で語り、昨日は世界中の5つの開発スタジオを“五元中継”で繋ぎ、お祝いをしたという。
気になるグローバル展開の具体的なストラテジーについて多くは語らなかったが、決済面ではPayPalをはじめとした現地の決済手段に対応していくことを表明し、ゲームメーカーの囲い込みについては、日本での12月の発表や先日のレベルファイブとの協業発表、そして今年2月にフランスパリで行なわれたUbisoftとGameloftとの協業などについて触れ、今後も囲い込みを強化していくことを明らかにした。
また、昨年、東京ゲームショウに出展し、業界関係者や一般ユーザーに直接触れる機会を設けたことを踏まえ、今年はE3を皮切りに、グローバルで同様のゲームイベントに積極的に出展していくことを表明。サードパーティーを含めた日本のコンテンツを世界に知らしめていく方針を明確にした。
そして田中氏は、昨日発表した「プラットフォーム事業者6社によるソーシャルゲームの利用環境向上等に関する連絡協議会」について改めて触れ、6つの項目についてひとつひとつ丁寧に説明しながら「パートナーに影響が出てくるかもしれないが、短期的な売上の増減よりも、どのようにしてより社会に受け入れられるサービスを提供していくかが重要」とし、「私としても我々グリーとしても、真剣に取り組み、スピーディーに対応していくことをお約束したい」と明言。プラットフォーマーのとしての責任と覚悟を示した。
最後に田中氏は、「10億人が利用するサービスをつくる」という大胆なスライドを示しながら、「我々はこれまでゲームをできなかった新興国の人たちにもゲームを提供していきたい。そういう意味を込めて10億人と付けさせていただいた。GREE Platformを通じて最終的には日本の産業自体も牽引していきたい。そのためにもまず、日本で社会に受けいられるサービスにしていくことが重要。繰り返しになるが、その実現にはパートナーにお願いする部分が出てくるが、それは必要なことだと思っている。日本の新しい産業を生み出し、海外に販売して収益を上げ、日本を代表する産業に成長させていきたい」とコメントし講演を終えた。
田中氏の講演は、以後のセッションでの発表内容との重複を避けるためか、具体的な発表はほとんどなかったが、グローバル展開でのビジョンを示すという点においてこれ以上ない内容だったと言えるのではないだろうか。唯一の懸念は、SDKの配布時期が不明確なところで、この点はその後に行なわれた小竹執行役員の説明でも同じで、GREE Platformはこの1カ月が正念場となりそうだ。日本のみのモバイルゲームプラットフォームが、6月以降は153カ国に提供可能なプラットフォームとなるのかどうか。今後の展開が非常に楽しみだ。
【今後の取り組みについて】 | ||
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GREE Platformが4~6月にグローバル対応することに伴う、いくつかの施策も発表された。「GREEレース(仮)」、「ともだち★ドッグス」といった高品質ネイティブアプリの開発が行なわれていることも明らかにされた |
(2012年 3月 23日)