ロックスター・ゲームス、「L.A.ノワール」先行体験レポート パート2
捜査のアプローチで物語が縦横に変化! 時代の闇を暴き出せ!!


7月7日 発売予定

価格:7,770円

CEROレーティング:Z(18歳以上のみ対象)


 ロックスター・ゲームスは6月30日都内にて、7月7日発売予定のプレイステーション 3/Xbox 360用クライムスリラー「L.A.ノワール」の先行体験会を開催した。日本語版を使った先行体験会もこれで2度目。前回の「墜ちた偶像」のレポートに続いて、今回は「心の鏡」と、「天国で結ばれた夫婦」の2つのケース(事件)と、ゲームの感触をレポートしたい。

 「L.A.ノワール」は、「Grand Theft Auto(GTA)」シリーズや、「Red Dead Redemption」といったこれまでのロックスター・ゲームスのタイトルと比べ、より人間の心理、社会の闇にスポットを当てた、“社会派”のゲームである。また、登場人物達との駆け引き、現場を丹念に調査する探索パート、ちょっとしたことで事件の展開が変わるというゲーム性は、アクション中心のこれまでの作品とははっきり異なる。じっくり取り組みたい作品だ。



■ チュートリアル要素の濃い「心の鏡」。今後が気になる伏線も

フェルプスは、「心の鏡」ではパトロール課に所属している
銃砲店で発見した銃の所有者を捜す

 「L.A.ノワール」の舞台は1947年のロサンゼルス。第2次世界大戦が終結してハリウッドは黄金時代を迎えた。その一方で、元兵士達は、戦争体験の暗い影を背負ったまま日常に放り出され、生活になじめない人々は様々な事件を起こした。ちなみにこの年は、ロサンゼルスの殺人事件の発生件数が最も多い年だったという。

 主人公コール・フェルプスは、沖縄戦に従軍した元兵士である。彼は帰国後、警官となり、パトロール課、交通課、殺人課、風紀犯罪課、放火特捜課とキャリアを重ね、出世していく。しかし、彼が暴いていく時代の闇は、暗く、深い。本作に登場する事件は、ほとんどが実際の事件をモデルにしている。現在の我々の前には覆い隠されてしまった時代の暗部が、本作によって我々の前に再び現われるのだ。

 今回体験した、「心の鏡」は本作の最初の事件だ。ここでは、フェルプスは制服警官として現場に当たる。事件は黒人男性が射殺された、というもの。フェルプスは殺人課の刑事達の捜査が終わった後に、相棒と現場を調査する。このミッションはチュートリアル要素が強く、1つ1つじっくりゲームの基本を学んでいける。

 捜査では、何かがある場所では音が鳴り、コントローラーが振動する。そこでボタンを押すことで、調査パートに移行する。ただ、音が反応するのは、事件に関係ないただのゴミやがらくただったりもする。調査パートでは、対象物を実際に手に取り、様々な角度から眺めることができる。この際、左スティックで調査物を左右に動かせる。この要領で死体なども調査できる。あごを持ち顔の両側面をこちらに向けたりすることも可能だ。

 興味深いのは、調査で死体の向きを乱暴に変えたり、手袋すら着用せずに死体の衣服や持ち物を触ったりなど、現代の我々から見ると、被害者や証拠品などの扱いが乱暴なことだ。科学捜査がまだ充分に発達してないのと、刑事の現場での権限が大きいのかと、時代を感じさせられる。

 また、事件とは直接関係ないが、「新聞」という要素も確認できた。こちらは、新聞紙を読むことで断片的な話が始まる。ベテランの精神科医と学生の会話だが、テーマとなっているのは戦争後の精神的な傷についてだ。フェルプスに直接の繋がりは現時点でまだ提示されないが、気になるところである。

 「心の鏡」では、調査を進めることで怪しげなリボルバーを発見し、銃砲店へ調査に行く。事件はさまざまな点を「手帳」に書き込んでいく。銃砲店では、書き写した拳銃の特徴と、顧客リストを照らし合わせて調査を進めていく。「手帳」に書かれた事柄は、相手の意見への反証にも使える。

 証拠の収集や、目撃者などの関係者への取り調べ以外にも、本部への問い合わせも有効な情報収集だ。関係者の住所などは手帳に記録され、マップ上に目的地として設定できる。本作には目的地までの道順を表示させるような便利なカーナビ機能はないが、運転中、相棒に話しかけることで「そこを右だ」、「まだまっすぐでいい」といった助言がもらえる。また、相棒に運転そのものをまかせることも可能だ。こうすれば目的地まで自動で運んでくれるが、後述する「路上犯罪」というイベントは起きない。

 「心の鏡」は思わぬ急展開が待っており、容疑者のひとりと殴り合いを演じる場面もある。この殴り合いもチュートリアルの1つといえる。そして、大きな謎が提示されるのだ。「L.A.ノワール」はさまざまな事件を扱いながら、“大きな闇”へと迫っていく。その闇は、まだ姿を現わしていない。単発の事件も多いが、「連続殺人」といった大事件もあるという。何よりも、物語がどう展開するかに興味を惹かれた。


殺人課の刑事が去った後、フェルプス達は現場を捜査する。やがて大きな事件の手掛かりも……



■ 史実とは全く違う展開を見せる「天国で結ばれた夫婦」。やり込み要素のフリーパトロール

死体を細かく調査する。時代の価値観も感じる
「路上犯罪」。強盗との銃撃戦だ

 もう1つの事件、「天国で結ばれた夫婦」は、男が路上に飛び出した直後に、車にはねられるというショッキングなシーンから始まる。ひき逃げ事件として、フェルプスは事件を調査する。交通課の刑事に出世したフェルプスは、私服を着ている。章が進むことで服も変わっていくという。

 ここでは、フェルプスが死体を丹念に調査することができた。鑑識にまかせきりの現代の日本の刑事ドラマとは大きく違い、傷跡を調べるため死体を動かしたり、ポケットの中身なども丹念に調べる。こういった点も“時代”を描写していると言える。

 そしてここで、「心の鏡」ではできなかった尋問パートを体験できた。尋問パートでは、こちらの問いに対して相手が答えた後、こちらの次の入力を待つパートがある。相手の答えに対して、「信用する」、「疑う」、「反証する」の3つから選択する。

 このときの相手の顔は、自分の発言に反して、本心をあらわにする。隠し事があると、目を頻繁にそらしたり、何か考えているかのような顔をする。正しい選択肢を選べば、事実が明らかになり、間違うと情報が得られないこともある。ゲームらしく割とわかりやすい表情を浮かべるので、尋問の最中は相手の顔をしっかり注視したいところだ。

 尋問が終わると正解数が表示され、真実をどの程度明らかにできたかの目安になる。ただ、仮に正解数がゼロでもそれによって事件が未解決になるということはないが、本来得られるべき情報が得られなったり、追及の手が止まってしまったりするため、調査が長引いたり、途中の展開が変化したりなど、物語が変化していく。これもまた本作の魅力のひとつだ。

 「天国で結ばれた夫婦」はひき逃げをした車と、派手なカーチェイスシーンもある。ここでは、相手の車に自分の車をぶつけて相手を止める。「GTA」シリーズではおなじみのアクションだ。どこで相手を捕まえるかでも、展開に変化が出てくるという。

 この事件では、死んだ男の妻、その友人、事件のあった店のバーテン等の人物が出てくる。彼等もそれぞれ秘密を抱えていそうだ。今回、面白かったのが、先行体験会に参加したスタッフの反応である。何かしきりに驚いているのだ。尋ねてみると、「いままでとまったく展開が違っていた」とのこと。筆者達のプレイが、実際にスタッフのプレイや、他の人がやったものと展開、そして結末までが異なっていたというのだ。

 具体的には書けないが、ほかがどういう展開だったか聞いてみると、確かに別のストーリーが用意されているかのように全く別の展開だった。これを聞いて、「L.A.ノワール」の自由度の高さを改めて確認できた。どこで証拠を見つけるか、どこでその証拠を使うか、誰に会うか、わずかな違いが、捜査そのものの展開を大きく変えてしまうという。筆者達は初プレイのため認識できなかったが、クライマックスの展開まで異なることがあるというのは、大変興味深い。本作は繰り返しプレイし、その“幅”を探ってみるのが楽しいゲームだと感じた。

 また、この事件の元となった事件も知ることができた。1944年8月10日にロサンゼルスに住む男性、ジェイ・ディー・チットウッドがひき逃げされた事件で、これをきっかけに近隣の道路の安全性が向上し、将来の事故防止へとつながったという。しかし2年半後、夫を失った妻のヘレン・チットウッドが「あの事件は、ひき逃げなどではなかった」と言う衝撃の告白をする。

 彼女はその夜、夫と口論になり、ナイフで彼の胸を2回刺して殺害。倒れた夫はその後、通りがかった車にはねられたというのだ。しかし、当時作成された検死報告書を確認すると、ナイフで刺された傷痕などどこにも見当たらず、チットウッドの死因は、自動車と胸部が接触した際の衝撃による肺の破裂と結論付けるものだった。結局、周りは大きく騒いだが、婦人の狂言と言うことで事件は収束した。「ひどく酔っていて、自分でも何を言ってるかわかってなかったの。再婚した今の夫を怒らせたかっただけ」と後に婦人は語ったという。

 ゲーム内の「天国で結ばれた夫婦」はこの事件を元に、独自の展開を見せている。今回筆者達が体験できた事件の顛末は、史実とは全く違うものだった。改めて元になった事件の話を聞くと、「真実」がどこにあるのか、さらに気になってしまう。ゲームでも、史実と似たような展開になるプレイもあるのだろうか、試してみたくなる。

 なお、本作ではフリーローミングスタイルのゲームらしく、ミッションの途中に別のサブミッションが発生することがある。これは各課でプレイできる要素で、警察車両で街を走っていると突然通信が入り、事件への応援を要請される。本編とは関係ない「路上犯罪」というランダムミッションだが、タイトルの表示、カットシーンの挿入、そしてミッションさながらの調査要素があったりとなかなか凝っている。もちろん、強盗との銃撃戦に発展することもある。

 「路上犯罪」は通常ミッションの合間にも起こるため、現在のミッションを優先するか悩まされることになるが、「フリーパトロール」というモードで「路上犯罪」ばかりをまとめてプレイすることも可能なので、そちらで集中的にこなすのがお勧めだ。

 というのも、「路上犯罪」をクリアすると「経験値」が獲得できる。経験値を一定量貯めるとレベルが上がり、「直感ポイント」が得られる。「直感ポイント」は使用することで有効な手掛かりを得たり、調べられる場所を表示させたり、尋問をやり直すなど、一種の超能力が使える。ゲーム後半では捜査が難しくなるため、特に必要となるポイントである。「路上犯罪」は各課で違い、前の事件の関係者が出てきたり楽しい。「直感ポイント」を溜めるためにも、フリーパトロールは積極的に挑戦しておきたいところだ。


はね飛ばされた距離や、状況、遺品など、こまかい点もチェックする

「路上犯罪」はそれぞれの課で用意されている

(C) 2011 Rockstar Games, Inc.


(2011年 7月 1日)

[Reported by 勝田哲也]