ニュース

ついにNintendo Switchが中国に上陸!

中国の洗礼を受けた任天堂。発売時期、価格、タイトルは発表されず

【ChinaJoy 2019】

8月2日~5日開催

 中国最大手のTencentと任天堂は、中国最大規模のゲームショウChinaJoy 2019の会期初日に合わせて中国メディア向けの記者会見を開催し、両社のパートナーシップや、Nintendo Switchの展開プランの概要を明らかにした。ただし、期待されたNintendo Switchの中国での発売日や価格、タイトルラインナップ、中国オリジナルタイトルといった情報は一切発表されず、世界でも特異のセンサーシップを持つ中国の洗礼を受けた格好となった。

 7月25日にTencentがChinaJoyへのNintendo Switchの出展計画と記者会見の実施を明らかにした後、発表会に参加するために任天堂に問い合わせたところ、「今回は中国のメディアを対象としており、日本のメディアの案内をしていない」という回答だった。

 改めて現地でTencentの担当者に理由を尋ねたところ、今回の発表会は両社のパートナーシップに関する発表がメインで、発売日や価格といったユーザー向けの情報を発表する予定はないためという回答だった。

 実際本日行なわれた発表会では、中国のゲームファンが歓喜するような情報は一切提示されず、オンラインサービスや課金決済、ローカライズなどをTencentが行なう、という至極当たり前の事実が確認されただけだった。

【Tencent Nintendo Switch記者会見】
浦東の高級ホテルシャングリラホテルで行なわれた
「とても楽しいことを、ゲームで知りました」。任式(任天堂)と認識をかけており、中国らしいキャッチフレーズとなっている

 一方、ChinaJoy会場では、Tencent Gamesのブランドで、Nintendo Switchブースが展開され、事前に告知されていた「スーパーマリオオデッセイ」、「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ」、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」、「マリオカート8 デラックス」の4タイトルの簡体中文版がプレイアブル出展されていた。ステージもなく、試遊のみで、数時間待ちの人気ではあったものの、やや違和感のある内容だったといえる。

【Tencentブース】
真っ赤な任天堂ブース
入場制限が行なわれ、列の先頭から順番に入れていた
「ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・Let's Go! イーブイ」の試遊エリア
ボードには60分とあるが、待ち行列は明らかに数時間分はあろうかというほど長かった

 この出展スタイルで思い出すのが、2012年のSCE Asiaだ。当時、SCE Asiaは、プレイステーション 3の中国展開を実現するために、広東省をパートナーシップを結び、SCE Asiaは、広東省に中国初となる現地法人SCE Guandong(広東)を設立し、同時に教育支援プログラムや体験センターなども設けるなど、ギリギリまで努力を重ねたが、最終的に中央政府の認可が下りず、ご破算となった。

 その翌月に行なわれたChinaJoyでは、SCE Asiaプレジデントだった安田哲彦氏以下、幹部がすべて欠席し、試遊台だけが出展されるという異様な展開となった。その後、SCE Asiaは安田体制から織田体制へと変わり、上海の経済特区を活用し、東方明珠と組み形で現地法人を設立、無事中国展開が実現したのはご存じの通りだ。

 TencentのNintendo Switchブースは、それにそっくりだという印象を受けた。もともと4月の発表時点で、許諾を得ているのが広東省だけで、その実効性が危ぶまれていたが、中央政府のセンサーシップが期日までに通過せず、発売日やタイトルラインナップの目処が立たなかったため、今回のような出展スタイルになったのではないかと思われる。

 昨年から今年にかけて中国ではかなり長い期間、政府のセンサーシップそのものがストップし、中国でインタラクティブコンテンツの配信が止まっていた時期が存在するが、現在は正常化したとされる。中国のセンサーシップが独特なのは、別に中国のコンテンツを優遇するため、あるいは中国以外のコンテンツを排除するために行なっているのではなく、開発がどこかに関わらず、一律同一の内容が求められることだ。たとえば、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの中国法人SIESHが推進している中国産コンテンツ開発プロジェクト「China Hero Project」のリリースが昨年延期されたのも、センサーシップが理由だ。

 また、センサーシップの内容は依然として明文化されていないのもやっかいだ。中国で鉄板とされるのは中国政府が推奨する“体育”そのものであるスポーツコンテンツだが、それ以外は何が良く、何が悪いかは、センサーシップを通して見なければわからない。

 たとえば「マリオ」や「ポケモン」がCERO:AやBだから、中国でもオッケーかというと、そういう問題でもなく、世界のレーティングとはまったく異なる独自のベクトルによるセンサーシップが任天堂を苦しめている可能性は高い。中国のセンサーシップは、コンテンツパブリッシャーにとって難しい問題であり続けているのだ。

 ただ、基本的には中国政府は、以前と比較すると海外のコンテンツを受け入れるようになっており、過去のアーケードゲームのように何が何でも許諾しなかったり、プレイステーションのように5年も10年も待たせるということもなくなっている。Nintendo Switchのケースも、時間は掛かるかもしれないが、許諾されるのは時間の問題で、問題なのはそれがいつなのかわからないところだ。

 Nintendo Switchの中国展開がスタートすれば、単に中国でNintendo Switchが発売されるというだけでなく、次々に中国のデベロッパーが参画して、中国発のSwitchコンテンツが続々と生まれるはずだ。そういう日が来ることを心待ちにしたいところだ。