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【特別企画】空前絶後の超重戦車「マウス」に会いにロシアのクビンカ戦車博物館に行ってきた
2017年6月5日 07:00
“世界最大”の座はクビンカか、それともボービントンか!?
さて、気になる展示内容だが、これはもう掛け値無しに素晴らしかった。2カ所の施設を合わせた展示規模は、世界最大とされるボービントンとほぼ同等だが、クビンカのほうが保有戦車の質が高く、コレクションされている戦車も、英国戦車以外は全面的にクビンカの方が網羅性が高い。まさに“おそロシア”である。
ドイツ戦車を例にとると、I号、II号、III号、IV号、パンター、ティーガー、ティーガーIIといったメジャーどころは当然の事として、ボービントンでは見ることが出来なかったナスホルンやシュタール・エミル、ヴァッフェントレーガーといった駆逐戦車シリーズ、そして「ガルパン劇場版」でもお馴染みの世界に2輌しか現存していないシュトルムティーガー、それから世界唯一のカール自走臼砲、そもそもこれが何なのか説明できる人がいないという謎のドイツ製“玉戦車”クーゲルパンツァー、そして今回のお目当てであるマウスと、レア度の高い戦闘車両が多すぎる。対するボービントンも戦車の元祖であるMarkシリーズや、現代戦車の元祖であるセンチュリオン Mk.I、現役の主力戦車チャレンジャーIIなどなど貴重な戦車があるわけだが、クビンカのソ連戦車はそれ以上に多く、レア戦車の多さという点においてはクビンカは世界で群を抜いている。
そして何より驚かされるのは質の高さだ。質というのはレストアの技術に加え、そもそもの鹵獲時の状態の良さだ。たとえばティーガーには側面の装甲スカートや砲塔のツインメリットコーティングが残り、稼働こそしないものの状態の良さはボービントンのTiger 131に勝るとも劣らない。ヘンシェル砲塔のティーガーIIは、前面の傾斜装甲、側面の装甲スカート、そして後部のヘンシェル製戦車の特徴である2本の排気管まで含めてその姿を完全に残しており、あまりの格好良さに周囲を10周ぐらいしてしまった。
とりわけパトリオットパークが素晴らしいのは、1輌ずつしっかりスペースを取り、綺麗にレストアした上で、適切なライティングを当てて、ベストな状態で鑑賞できるところだ。特に入場を制限する柵なども設けられていないため、前のみならず、両側面や後ろからもじっくり鑑賞できる。「World of Tanks」プレーヤーなら、後ろから見たいと思うものだ。それは、ゲームではいつも自車輌を後方から見下ろす形でプレイしており、実車がどうなっているか見てみたいと思うからだ。しかし、それは叶えられないケースが多い。
理由は車輌によってまちまちだが、後部までレストアの予算が回らなかったり、そもそも破損が酷すぎてレストアできなかったりするからだと思われるが、物理的に隠しているケースが多いのだ。たとえば、ボービントンの至宝である2輌のティーガーII(ポルシェ砲塔、ヘンシェル砲塔)は、いずれも後部を壁に付けている。2輌とも後部は破損が酷く、見せられる状態ではないからだと思う。その点、パトリオットパークに展示されている車輌は、すべて全周から眺めることができる。これは素晴らしいことだ。
この点、その後に訪れたクビンカ戦車博物館は、倉庫そのままで、戦車が肩を寄せ合いながらギュウギュウ詰めに押し込まれており、保存状態もよいとは言えず、単なる倉庫であるため温度や湿度管理等もされておらず、ライティングも無しと、悪い見本のような展示状態だ。それがパトリオットパークでは全面的に改善されているのは驚くべき事で、今は2カ所に分散展示されているため、面倒な状態になっているが、パトリオットパークに全面移管された暁には、世界中から戦車ファンが訪れる新たな聖地になるかもしれない。そのとき、再び訪れてみたいと思う。
それでは、以下、パトリオットパークに展示されている戦闘車両の一部をご覧頂きたい。