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日本インディーゲームを巡る映像作品「Branching Paths」メディア発表会開催

木村祥朗氏、楢村匠氏、もっぴん氏登壇のトークショウも実施

7月25日 開催

7月29日 配信予定

価格:980円(税込)

 アクティブゲーミングメディアは7月29日、ドキュメンタリー映画「Branching Paths」を配信する。価格は980円(税込)。配信プラットフォームはPLAYISMおよびSteam。

 「Branching Paths」は、2013年の東京ゲームショウを始点とし、アクションゲーム「Downwell」が2015年10月に配信されるまでの日本インディーゲームシーンを切り取ったドキュメンタリー映像作品。

 Bitsummitや東京インディーフェスなど、日本で開催されたインディーゲームイベントをポイントに起き、Onion Games代表の木村祥朗氏、「LA-MULANA」シリーズディレクターの楢村匠氏、また「Downwell」開発者のもっぴん氏をはじめとしたインディーゲーム開発者、プラットフォーム運営者、イベント主催者、メディアなど約80人へのインタビューをもとに、2年間の出来事とその様子を映し出している。

 映像内では「インディーゲーム」と日本に根付く「同人ゲーム」の違いなどにも触れながら、急激に知名度を挙げたインディーゲーム開発に関わる主要人物の思いをまるごと知ることができる、日本インディーゲーム界の記録的作品になっている。

 監督のアン・フェレロ氏はフランス人であり、「海外から見た日本」という視点でもインディーゲームが語られているので、インディーゲームファンは要チェックの作品だ。

【Branching Paths : release trailer / ブランチングパス:リリーストレーラー】
日本で活動する、インディーゲーム開発者の2013年~2015年を追った作品。取材対象は日本人とは限らないのがポイントで、むしろ海外の人物が「日本のインディーゲームを盛り上げなくては」という思いに駆られ、イベントなどを主催している現状が映像を通して良くわかる構成となっている

Onion Games代表の木村祥朗氏、
「LA-MULANA」シリーズディレクターの楢村匠氏
「Downwell」開発者のもっぴん氏。映画内では最も多く取り上げられている

 発表会では映画の上映後、本作監督のアン・フェレロ氏のほか、木村氏、楢村氏、もっぴん氏らも登壇し、トークショウが開催された。

 木村氏は本作の感想として、「一生懸命通り過ぎた世界を映像に残してくれている。それは今も続いている道なので、じんわりと来てしまった」と話した。もっぴん氏は「映画の中でPicotachi(吉祥寺「ピコカフェ」で開催されている発表イベント。映画には「Downwell」のプレゼンシーンが登場する)が出てくるが、初めて自分の友人以外にゲームを出したのがその時だった。そこからリリースまでを追っててくれて、感慨深い」と語った。

 本作の制作のきっかけには木村氏が関わっているそうで、当初は木村氏がアン氏に、Onion Gamesのドキュメンタリー映像を撮ってもらうつもりで声をかけたのだという。その企画は頓挫してしまったのだが、代わりに木村氏とアン氏の雑談の中で、「日本のインディーゲーム業界全体を撮ったらいいのでは」という話になったという。

 アン氏としては同時期にフランス人6,300人以上に行なった日本のゲームに関するアンケートで、「フリーなスピリットを持った、『塊魂』のようなクレイジーなゲームが見たい」という意見がフランスにあることを知っていたという。その一方で木村氏が「Million Onion Hotel」のプロトタイプを作っていたので、「これは」と感じるものがあり、そのタイミングが重なったことで実現に向けて動き出したのだと述べた。

 ちなみに2年間の収録はデータ容量にして20TBほどに膨れ上がっており、とにかく編集に大変な思いをしたという。取材を通して印象的だったのは開発者がそれぞれが「すごい苦労をしている」姿で、完成に向けてなにをするか、資金はどう調達するか、クラウドファンディングの成功によってのしかかる責任にどう応えるかなど、抱える問題の大きさを感じたそうだ。

 海外と日本のインディーゲーム文化の違い、という話題では、もっぴん氏が「最大の違いは情報量」であると分析した。もっぴん氏が話したのは、英語圏と日本語圏のゲーマーがいたときに、英語圏は圧倒的な母数があるため、それだけ頻繁かつ綿密な情報交換が行なわれるということ。

 こうした情報のうねりを経て良質なインディー作品が出てくるし、それらの作品がさらに情報交換を加速させる流れが海外ではできているが、日本では良質なタイトルも翻訳されづらいし、情報交換量もまだまだ少ない現状がある、という認識でいるとした。

 また映像で切り取られる2年間での最大の変化として、開発者3名が共通して感じているのは、「インディーゲームの規模が確実に大きくなってきていること」という。当初はメディアで取り上げられることすらなかったが、年が経つにつれてメディアへの掲載機会も増えてきていることが実感としてある。

 楢村氏は「2013年から2015年の2年間で状況は激変して、良い物を作って配信すれば経済的に回る体制ができてきた。今度はその次の活動をそれぞれが考えるべきではないか」と語った。

 最後に、開発者3名から次回作の発売時期について言及があった。木村氏は「Million Onion Hotel」が11月末、「BLACK BIRD」が2017年春とし、楢村氏は「LA-MULANA 2」について、「東京ゲームショウ 2016には時期が発表できそう」だとした。次回作未定のもっぴん氏は、「来年末か再来年、としか言えない」と述べた。「Branching Paths」では3者それぞれのゲーム開発観も知ることができるので、次回作を楽しみにしているファンは、ぜひ映像もあわせてご覧いただきたい。

右が「Branching Paths」監督のアン・フェレロ氏。左は司会を務めたアクティブゲーミングメディアの水谷俊次氏
3氏からは、それぞれが感じているインディーゲームの現状や、それぞれの思いなどが話されていった