インタビュー

大刷新した「ストリートファイターV」はよりe-Sportsを意識!

目指すはプレイしても、見ても楽しい対戦格闘。杉山氏と綾野氏にインタビュー

会期:6月16日~6月18日(現地時間)

会場:LA Convention Centre

 E3 2015でプレイアブル版が公開され、2016年春の発売も予告されたカプコンの格闘対戦「ストリートファイターV」。対象プラットホームはプレイステーション 4とWindowsとなっており、E3 2015ではカプコンブースやPlayStationブースで体験することができた。

 2016年春の発売となると2008年発売の「ストリートファイターIV」以来約8年ぶりの登場となるのだが、本作では格闘システムに「Vリバーサル」、「Vトリガー」、「Vスキル」が登場し、刷新されている。

 この刷新されたシステムの意図や狙いとは一体何なのか? 「ストリートファイターV」アシスタントプロデューサーの綾野智章氏とプロデューサーの杉山晃一氏に話を伺うことができたので、こちらをお送りする。

【「ストリートファイターV」SPECIAL TRAILER 5】

3つの「V」システムで、キャラクターの個性がより顕著に!

「ストリートファイターV」アシスタントプロデューサーの綾野智章氏
「ストリートファイターV」プロデューサーの杉山晃一氏
E3 2015で公開されたキャミィとバーディー。個人的にはキャミィのアヒル口が気になる

――「ストリートファイターV」ではシステムがガラリと変わっていますが、その理由は何でしょうか?

綾野智章氏: 「ストリートファイター」シリーズは、過去のナンバリングタイトルを見てもすべてバトルシステムは変えてきています。それをなぞる意味もありますし、新しいプレーヤー層を獲得するため、1度プレーヤーレベルをリセットしてゼロから再スタートする意味もあります。

――その特徴とウリを、改めて教えて下さい。

綾野氏: 「V」と名前の付くもの、「Vリバーサル」、「Vトリガー」、「Vスキル」が新システムなのですが、キャラクターによって挙動が変わります。「ストIV」シリーズではセービングシステム、「ストIII」シリーズではブロッキングがありましたが、どのキャラクターでも効果と動きは同一でした。

 同一にしていると、例えば「タメ技のキャラクターとは相性が悪い」などと言われることもあります。なので、今回は個性を伸ばす方向にしようと。システム名こそ同じですが、飛び道具を吸収するものだったり、技のヒット数を上げるものだったり、それぞれの特徴を出すようにして、キャラクターひとりひとりに対してコストをかけてバランスを見ながら調整しています。

――開発と調整は今まで以上に大変ではないですか?

綾野氏: 大変ではありますが、反面やりやすい部分もあります。新しいキャラクターを入れるとなったら、まず「セービングアタックがある」という制約から発想しないといけませんでしたが、今回は内容を自由に決められるので、作りやすくもありますね。

杉山晃一氏: リュウのデザインは当たり前になっているから違和感がないのですが、よく考えたら道着にハチマキという変な組み合わせです。これは空手と、日本の国旗の赤と白をデザインとして組み合わせているという理由がありますが、特徴的ですよね。

 他のキャラクターについても同じことが言えて、「ストリートファイター」のキャラクターは元々が個性の塊なんですね。そこに原点があるので、「ストV」ではさらに深めて、技の中にも特徴を出すことで、より個性を伸ばしていこうとしています。

――操作感もまったく変わりましたが、会場の反応はいかがですか?

杉山氏: 触った人は、良い反応を示してくれますね。操作感も変わって、「ストIV」シリーズから同じキャラクターでも全然違う様子になっていますが、似ている部分もあります。「ストリートファイター」という2D格闘ゲームの完成形は踏襲しているので、触っていただければ理解できると思います。

綾野氏: 変えるというのは怖い部分もありますが、今は「ウルトラストリートファイターIV」も稼働していますよね。その中で「ストV」に求められるのは刷新感や新しさです。

 例えば春麗の百裂脚はコマンド技になっていて、通常技も連続技も違っています。反応はポジティブなものばかりなので、変えてよかったなと思います。

――今回はプレイステーション 4のエクスクルーシブになりましたが、これはなぜでしょうか?

綾野氏: 我々としては、アーケードやコンシューマーといったプラットホームの違いによって、コミュニティが分断されてしまうことが嫌でした。

 SCEさんはコミュニティの分断が嫌だということに理解を示してくれましたし、PCとPS4のクロスマッチングもOKを出してくれて、ビジョンが一緒ということがわかったんですね。これはSCEさんと組むしかないなということで、今回こういう形なりました。ですので、「どのプラットフォームを排除する」というような発想ではありません。

 また現在アーケード版は予定がないのですが、コミュニティの断絶を避けるような解決策があれば、ぜひやりたいと考えています。けど、今はPS4に全力投球ですね(笑)。

若い層へは「e-Sportsのナンバーワン競技」としてアピール

コンボの方法はより簡単に。もちろん、キャラクターもこれから増えていく予定

――「ストV」での目標はありますか?

杉山氏: 「ストIV」シリーズでオールドユーザーの呼び戻しはある程度達成できたので、もっと若い層を取り込むため、e-Sports競技としてであったり、アート、ミュージック、ファッションと並ぶようなカルチャーとしての「ストV」を打ち出していくことですね。プレイする人だけでなく、見る人も楽しめるものを目指しています。

――若い層を取り込むということですが、具体的にはどのようにしていくのでしょうか?

杉山氏: 先日弊社に入社した22、23歳くらいの新卒生にタイトルのプレゼンをする機会があったのですが、「ストリートファイター」って知ってる? と聞いたら、「おじさんとやりました」と言うのです。少し前までは「お兄さんと」だったのですが、そういう世代なんですね。

 中には「ストリートファイター」を知らないという社員もいたのですが、「ではe-Sportsは知っている?」と聞くとこれは全員が知っていて、しかも興味があるという答えでした。

 YouTubeや配信動画、e-Sportsというのは、若い世代と相性が良いのです。なので「ストリートファイター」がどうというよりは、「e-Sportsのナンバーワン競技のひとつ」という言い方がいいのかなと。そういう風にして動画を見て、面白いなと思ってくれると良いと思います。

 また「ストV」にはその先の構想もあって、構想なので詳しくはお話できないのですが、ソーシャルネットワークを使ってプレーヤーとプレーヤーを繋ぐ仕組みを作ろうと考えています。

――そうした取り組みの中で「ストV」を新しく始めようかなと思うプレーヤーもたくさんいると思いますが、初心者に対して上達のアドバイスなどはありますか?

杉山氏: ひとつは、プロ級の腕前の人とその弟子がいて、弟子が師匠に教わっていくような動画があればいいなと思っています。ドキュメンタリーとして見るのですが、その中で役立つアドバイスもあって、なるほどと思えるようなものです。

綾野氏: 初心者の方には、まずは触ってもらいたいですね。「ストIV」シリーズでいきなりコンボをするとなると難しかったのですが、「ストV」ではボタンの先行入力が可能なので、コンボが簡単に繋がります。もちろん繋がるルート、繋がらないルートはあるのですが、友達に聞いたり攻略サイトを見ることで、とりあえずコンボはできるよというものになっています。

 目押しコンボができるようになるとそれはそれで嬉しかったり、誇りに思えたりするのですが、今回はプレイ部分でのフィーリングを大切にしました。

 ただし、格闘ゲームは知識です。相手のキャラクターへの対策など、膨大な資料を元にした知識から導かれるものこそが勝利に繋がり、方程式として確立されていくものだと思うので、そこで初心者とプロの差が出てきます。

 初心者はリュウを使いたい、コンボを決めたいという自分主体の思いを出しがちになりますが、勝利を目指すほど相手の動きを読んだり、時には我慢したりといったことが必要になって、視点が自分から相手へと移っていきます。そうなると、スポーツに似たものが出てきますね。

――今回はナッシュやベガなど、見た目が大きく変わったキャラクターもいますね。これにも理由があるのでしょうか?

綾野氏: もちろんあります。ストーリー上のバックグラウンドがあるのですが、これは話せる時が来たらお話します。ところどころにヒントはありますよ。

――では最後に、読者にメッセージをお願いします。

杉山氏: E3で初めてプレイアブルを出展しました。期間中はプロゲーマーを呼んでエキシビションマッチを開催したり、それをTwitchで配信をしたりしましたが、非常に良い出来だと好評です。

 今回「ストV」をe-Sportsとして広めるには良いスタートが切れたのかなと。グラフィックスエンジンはUnreal Engine 4にして、PS4の性能に恥じないものになっています。

 怖いくらい順調なのですが、甘んじることなく調整していきますし、サプライズも用意する予定なので、楽しみに来春を迎えてください。

綾野氏: E3でプレイアブル出展されて、日本のユーザーも触りたいと思っているのではないでしょうか。

 日本のCBT期間は7月24日から7月29日と決まったので、ぜひ参加してください。PS Plus会員限定で、7月4日からPSストアから「抽選券」がダウンロードできるので、この機会にPS Plusの加入もどうぞ!

 CBTのフィードバックを受けて、柔軟に調整していこうと考えていますので、意見をもらえればと思います。

――ありがとうございました。

【スクリーンショット】

(安田俊亮)