インタビュー

「FFXIV: 蒼天のイシュガルド」アーリーアクセス直前インタビュー

蛮神ラーヴァナはかなり手ごわい!? “アレキサンダー”のスタートは「起動編」から

6月収録



スクウェア・エニックス本社

 「ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)」が、いよいよ明日6月19日から、初の拡張パッケージ「蒼天のイシュガルド」のアーリーアクセスを開始する。すでにアーリーアクセス参加のための準備を終えてわくわくしながら指折り時間を数えている人もいるだろう。そんな待ちきれない人たちに向けて、「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏の直前インタビューをお届けしたい。

 前回、フランスで行なったインタビューでは、新ジョブや既存ジョブの新アクションにフォーカスを当てたが、今回は「蒼天のイシュガルド」全体にわたって、色々と気になることを聞いてきた。ストーリーから今後のスケジュールまで、きっとプレーヤーが知りたい情報があると思う。

「蒼天のイシュガルド」で最も重視したのはボリューム感

「FFXIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏

――いよいよアーリーアクセスが始まりますね。開発の進捗はいかがですか?

吉田氏: ギリギリではありますけど順調です。緊急性の高いバグが出た時に、オープンと同時に修正を行なうのか、直後のHotFixesに回すのかの精査も終わりました。

――アーリーアクセスが始まってすぐにとても大きなパッチが落ちてくる可能性もあるのですか?

吉田氏: パッチ2.57までのパッチを当てていれば、通常の大型アップデート規模のパッチがアーリーアクセス直前のメンテナンス開始直後に配信されますので、そこまで大きなものではありません。プレイステーション 3/プレイステーション 4のダウンロード版を購入している場合、事前にクライアントダウンロードしていると、さらにパッチが約半分ぐらいになります。

――「蒼天のイシュガルド」は、「新生エオルゼア」よりも吉田さんの色が濃い拡張になっているかと思いますが、今回のパッチでここを重視したという部分はどこですか?

吉田氏: 僕個人の色が濃いかといわれると、そんなことはないと思っています。「新生FFXIV」という揺るがない土台は“新生編”のアップデートで1年半かけて作られました。その土台そのものが、何か全然別のゲームになったり全然別のコンセプトになったりするわけではありません。

 今回の拡張パッケージは、「FFXIVの拡張パッケージはこういうものです」という新しいチャレンジ。まだまだ日本では、特に若い世代の方はMMORPGというジャンルを「FFXIV」で初めて知ったという方も多いと思います。今回の拡張パッケージが初めての体験になる方もいらっしゃるでしょうし、「ファイナルファンタジーXI」をプレイしていて、「FFXI」の拡張パッケージをイメージされている方もいると思いますので、その差を感じて頂くこともあると思います。1番重要視したのは、新作のRPGが1本遊べますという部分です。改めてパッケージ代金をいただくこともあり、値段分は十分楽しめたな、と思っていただくのが最初の目標です。

――それはつまりボリューム感ということですか?

吉田氏: そうですね。ストーリーとキャラクターの成長がRPGをプレイしていて1番面白いポイントなので。それに伴うたくさんのマップだったり、ダンジョンだったり敵だったりが、RPGの総合的な面白さにつながっているので、その部分でたっぷり遊べるよねというところがないと、あまり意味がないかなと思っています。

――「新生エオルゼア」では冒険者が“光の戦士”という英雄になっていく成長物語でしたが、「蒼天のイシュガルド」にはまた別の新しい成長物語があるということですか?

吉田氏: “光の戦士”自身にもまだ謎が多い存在です。例えばなぜ自分がハイデリンに選ばれた光の戦士なのかなどは、この先も少しずつ明らかになる要素です。また、今回はプレーヤーにかかわる人たちが、プレーヤーの行動によって成長していく物語でもあります。プレーヤーの行動が周りのキャラクターに与える影響や、感情表現をもう少し大きくしてみました。

――傍観者ではなくなっているということですか? アルフィノが活躍している時など、冒険者は話を横で聞いているだけということもありましたが、もっと積極的にストーリーにかかわっていくことになるのですか?

吉田氏: プレーヤーが主人公である以上、僕らが「プレーヤーの意志を勝手に決定しない」というのが「FFXIV」のシナリオポリシー。アルフィノが隣で話しているというシチュエーションの中で、それを聞いてどう思うのかはプレーヤーの皆さんごとに違うはずです。だからあえて、アルフィノの話を遮るような、勝手な行動をとらせないようにしています。例えば横で聞いているのがクラウドだったら、クラウドはこう動くと思えるやり方で動かせばいいのですが、「FFXIV」ではプレーヤーの皆さんが自分自身でメイキングしたキャラクターなので、できるだけ勝手な意思表示をしない、というのがベースです。

――わざと感情表現を抑えていたということですか。

吉田氏: 例えば怒りの感情を勝手に表すなとか、勝手に手を差し伸べるのは無しにしよう、などは意図的です。その点では結構「ドラクエ」っぽいつくり方をしています。ただ、「新生エオルゼア」編を運営する中で、「もう少し動いて欲しい」、「もう少し感情は出して欲しい」というようなご意見も頂きました。特にクリスタルタワーの完結編で、悪役のはずのネロがみんなをかばって「お前らは先に行け」と言った時に、プレーヤーキャラが振り向きもせずにものすごいスピードで走っていったことに対しては、プレーヤーの皆さんから不満だという声がありました。「振り返るくらいしろよ」と。ああいったフィードバックは結構重く受け止めています。カットシーンをチェックしているときは気にならなくても、実際にキャラを育て、24人でクリスタルタワーをクリアしたときにあのシーンを見て「自分が英雄でこの世界を救うといわれているのに、これはマズかった」と自分でも思いました。そのあたりのフィードバックは、様子を見つつではありますが、今回細かく反映してみました。今までよりはそういったシチュエーションでキャラクターが微笑んだり、手をさしのべたりし始めます。この傾向は「3.X」以降のシリーズでも、もう少し強めていこうかと思っています。

――より感情移入しやすくなっているのですね。

吉田氏: できるだけそういう方向に最終調整しています。

「Dragonsong」PVの中には、物語のカギを握る主要なNPCたちが描かれている

――「Dragonsong」のPVの中にはオルシュファンやアイメリクらイシュガルドのNPCが出ていますが、今後ストーリーのカギを握るような新しいNPCも出てくるのですか?

吉田氏: 新キャラも出ます。ただアイメリクやその補佐役のルキア、イシュガルド教皇トールダン7世、イゼルらのイシュガルド勢は、「新生編」ではまだ顔見せ挨拶程度でした。彼らは「蒼天のイシュガルド」のシナリオで非常に重要な役割を果たしていきます。そのために、あえて事前に出しておいたという面があるので、彼らが物語の中心になります。プレーヤー、アルフィノ、タタル、オルシュファン、エスティニアン、イゼルあたりはかなり重要キャラです。彼らの思想と、その思想の行き着く先みたいところは「3.X」までは引っ張らずに、今回の「3.0」のシナリオの中で大部分の決着がつきます。

――レベル60になるころには物語の結末が待っているわけですか?

吉田氏: そうですね。「新生エオルゼア」のアルテマウェポンを倒した後エンドロールが流れるような形になっています。ボイス量もカットシーンも「新生FFXIV」よりもかなり多いです。本当に数十時間かけて遊んでいただけるものになったと思います。

――ダークファンタジーということで、ストーリーも大人びたものになると思いますが、見どころを教えてもらえますか?

吉田氏: ストーリーは大きく何軸か存在しています。今までPRの中でもお話してきたイシュガルド地方で1000年にわたって繰り広げられている竜詩戦争。この戦争がなぜ発生することになり、それぞれの陣営がどういう解釈で、いままで血みどろの戦いが続いてきたのか。そこに光の戦士というプレーヤーが入った時にどうなるのかということ。もし光の戦士がイシュガルドにいかなかったら、まだまだ膠着して続いていたであろう物語に対して、光の戦士が入ったことにより、双方が信じている竜詩戦争の姿が果たして正しいのか、イシュガルドの建国神話に語られる内容が、実際にはどういうものだったのかなど、竜詩戦争にまつわる話が中心軸としてあります。

 さらに、光の戦士たちがイシュガルドに落ち延びる理由となった、ウルダハを中心にした三国エオルゼア側の政変に対するもの。そして最後が、今までなりを潜めてきた帝国の再侵攻が始まりそうだというものです。そこに蛮族問題が絡み、その三軸がどうストーリーとして1本になっているかというところが見どころです。大きな節目が一段落すると、事態が急変して三国に戻ったり、またイシュガルド側に戻ったりと、中断しどころ、やめどころが難しいのではないかと思います。

――イシュガルドにずっといるわけではなくて、三国側に行くクエストもあるのですか?

吉田氏: はい、ありますね。ずっと竜詩戦争のPRをしてきたので、ウルダハを中心とした政変はしばらく解決しないのかなと思われているかもしれませんが、そちらもちゃんと決着がつくようになっています。そこもひとつ楽しみに見ていただければと思います。

――私の友人が、ラウバーンは暗黒騎士になっているんじゃないかと心配していました(笑)。

吉田氏: そう予想されている方もいらっしゃいましたね(笑)。そこまで闇落ちするかどうかはご自身の目でご覧下さい。

――ストーリーの中に恋愛要素はあるのですか? 皆さん結構好きですよね、そういったもの。

吉田氏: とあるキャラから、とあるキャラに対して明確に口にするNPCが1人います。しかし、MMORPGなので、恋愛要素を出してしまうとキャラクターが動かしにくくなってしまうのです。完結するお話であれば、その先は皆さんでご想像してくださいになるのですが、MMORPGの場合アップデートしていく必要がありますし、ストーリードリブンなゲームでもあるので、くっついたり離れたりとかなかなか描きにくい。

 あと……僕を含めたスタッフは男女というよりは、その人間の成長を描こうとする傾向の方が強いかもしれません。僕らみんな恥ずかしがりやなんです、オッサンが多いので……。若い人の恋愛は描きにくい(笑)。開発チームの若手も伸びていますし、そうした要素は若手ライターたちにお願いしようかなと(笑)。

(石井聡)