インタビュー
11年前の「リネージュ2」を基本無料で再現した「クラシックサービス」が好調!
攻城戦も解禁間近? 運営チームにインタビュー
(2015/6/12 00:00)
エヌシージャパンが運営するMMORPG「リネージュ2」が、サービス開始から間もなく11周年を迎える。
同社は今年3月、月額課金スタイルだったMMORPGを基本無料にスイッチする施策「NCZERO」を打ち出した。「リネージュ2」では既存サービスを「ライブサービス」と呼んで月額課金を継続しつつ、11年前のサービス開始当初の状態を再現した「クラシックサービス」を4月1日より基本無料で開始した。
同じゲームを新旧異なる内容で提供するという形は実にユニークだが、サービス開始から2カ月が経過した現状はどうなっているのか。また今後「クラシックサービス」と「ライブサービス」はそれぞれどうなっていくのか。統括プロデューサーの【FS】MCアライこと新井友和氏と、【FS】ニウス氏、【FS】クルメア氏に話を聞いた。
昔の「リネージュ2」を知っている人へ向けたクラシックサービス
――4月から開始されたクラシックサービスの状況はいかがですか?
新井氏: おかげさまで順調に推移しています。平均レベルも20から39のDグレード装備近辺まで上がってきています。
――改めてクラシックサービスの魅力を教えてください。
新井氏: 狩りに特化し、9人パーティで遊べるところです。また基本料金無料だというところもメリットです。ライブサービスとクラシックサービスでは目指す方向性が違い、クラシックサービスはゆっくりと硬派に育てていくのがメインのコンテンツです。まだワールドボスの実装はありませんが、今後のアップデートで予定しているものはあります。
――初期の「リネージュ2」は、レベル上げが大変でかなりハードなゲームでしたよね。クラシックサービスはその時のバランスを踏襲しているのですか?
新井氏: 「クロニクル」(本作の初期の世界)の時代の経験値やデスペナルティを模倣しつつ、若干調整はしています。レベルが上がるのが厳しすぎると、今の時代にそぐわない内容になるので、独自のバランスを組み込んではいます。
――ライブサービスと同じクライアントを使用しますが、システムは共通で設定が違うサーバーという理解でいいのでしょうか?
新井氏: 基本的なシステムは同じものです。ライブサービスのいいところをクラシックサービスに移行しながら、クラシックサービスに必要なものだけが残っているというイメージです。
――そもそもクラシックサービスを作ることになった発端は何でしょうか?
新井氏: やはりお客様からのご要望です。韓国でもお客様の要望で「昔の『リネージュ2』がやりたい」という声が高まってきたため実装されました。その後、日本での実装は料金形態やサービス時期などで悩んでいました。今の時代、韓国の情報はお客様もご存じですし、なるべく早くスタートしたいとは言っていたのですが、結果として4月1日からのサービスとなりました。その1カ月前にライブサービスでの大型アップデートをしていましたから、その辺りで流れを組みました。実際のところ、もっと早くお披露目したかったというのが本音なのですが、悩みに悩んだ結果、こうなりました。
――クラシックサービスをプレイしているのはどういう方々ですか?
新井氏: やはり昔の「リネージュ2」をプレイしていた方が多いですね。ライブサービスと並行して遊んでいるお客様もいらっしゃいますが、そういう方は少ないかなと思います。昔の「クロニクル」をご存じの方がメインですね。
――運営としても、昔の「リネージュ2」を遊んだことがある方をターゲットにしているのでしょうか?
新井氏: そうですね。プロモーションでも「思い出にログイン」といった形のキャッチコピーを出しています。もちろん新たに「リネージュ2」という名前を知ったという方でも楽しく遊べるようになっています。今の最新のゲームと比べると、グラフィックスが劣るところはありますが、中身は熟成されているゲームですので、プレイしていただければ面白さは必ず発見していただけると思っています。
――11年の歴史があるゲームを無料で始められるというのは大きなメリットですよね。今から「リネージュ2」を始めようという方には、クラシックサービスとライブサービスの2つがある中でどうアピールしていきますか?
新井氏: バフ(強化魔法)が命のゲームなので、FS(ファンサポート)によるサポートはオープン当初は力を入れていました。今は初心者向けパッケージも用意して、プレイ環境の改善、向上を図って、初心者の方でも楽しくすぐに狩りができるよう配慮しています。
――クラシックサービスでもFSの方が出てきてサポートされるのですか。
新井氏: できる限りサポートしていきたいと思います。1時間程度のバフであれば時間があるときにおかけしています。本作はFSと遊ぶというのも魅力の1つですから。
ニウス氏: これは裏話ですが、FSが出てきて強いバフを配り過ぎると、「リネージュ2」の初期にプレイしていたお客様からクレームが来るんです。
――もしかして「こんな楽なゲームじゃなかった」ですか?
ニウス氏: そうです。支援するなと言われてしまって(笑)。我々としても、出ていいのかなと思いつつ、時々出るようにしています。
――昔を知っている身として気持ちはわかるのですが、難しい判断ですね(笑)。昔と違う部分と言えば、課金額に応じてランクが上がるVIPサービスもありますよね。こちらはいかがですか?
新井氏: 予想していたよりは活用していただいています。入手できるアイテムは日常的に使える消耗品がメインになっていますが、好みに合わせたVIPレベルでプレイしていただいているようで、PvPやPvEでのボーナスが付く最高のLv7を目指す方もいらっしゃいます。VIPレベルは4、5辺りの方も多くなっています。
――意外と使われる方が多いのですね。Lv7だとPvPにも影響するわけですが、これに関しての反応はいかがですか?
新井氏: やはり厳しいお声もいただいています。難しいところですが、我々としてもバランスを考えて、PvP、PvEのボーナス能力値は調整させていただいております。決めるまでにもすったもんだがあって、2~3週間は揉めました。本来はそういうものを付けたくないという気持ちもあったのですが、そうは言っても何かしらの価値は付けなければならず、今の形になりました。
攻城戦を前倒しで実装。ライブサービスとは別の方向へ進化
――この先のお話しですが、何かアップデートを予定されているとか。
新井氏: 全体の平均レベルが上がってきましたので、狩場の開放を予定しています。具体的には「フェアリーの谷」と「クロコダイルアイランド」です。その後、「リネージュ2」の魅力の1つである大規模GvG、攻城戦を早めにアップデートさせていただきます。
――早めにというと、本来はもう少し後にする予定だったのでしょうか?
新井氏: 韓国のアップデート順で行くと、攻城戦は最後だったんです。しかし日本ではライブサービスを見る限り、攻城戦の需要が高いので、こちらを先に導入させていただき、皆様に楽しんでいただければと思っています。
――韓国よりも攻城戦の需要が高いというのは意外ですね。日本人は共闘するパーティプレイが好きな印象がありますが。
新井氏: パーティプレイの延長線ですね。「リネージュ2」ではクランと呼ばれる血盟(ギルド)が強力な役割を持っていて、城を取った時に強い恩恵が得られますから、その後の狩りやコンテンツ消化にも大きなメリットがあります。
――PvPそのものより、城を持つメリットに強い魅力を感じるのが日本のプレーヤーだと言うわけですね。面白いデータです。
新井氏: もちろん、PvPの要素も攻城戦の魅力の1つではあります。
――攻城戦の実装のスケジュールはどうなっていますか?
新井氏: 今のところ、7月15日に実装を予定しております。サービス開始当初の攻城戦を思い出していただけるとわかるかもしれませんが、最初はかなり強力なNPCが城を持っていて、落とすのが結構大変かもしれません。一部褒賞の調整も行ないます。楽しみにお待ちいただければと思います。
――さらにその先のお話しになりますが、クラシックサービスはこの先どう進化するのでしょうか。11年分のアップデートを追いかけていくのか、それとも全く違う方向性になるのでしょうか?
新井氏: ライブサービスとクラシックサービスは、最終的な方向性が全く違う「リネージュ2」になる予定です。ストーリーも違う方向性になります。
――ライブサービスでは、大規模アップデート「Goddess of Destruction(GoD)」を境にゲームの世界が1度破壊されましたよね。もしそうならなかったら、という展開が見られる可能性もあるのでしょうか。
新井氏: まだそこまではお話しできる段階ではないのですが、ともかく違う方向性には向かいます。ライブサービスでは「GoD」で世界観が大きく変わって物議も醸しましたが、そちらの方向性で進んでいくライブサービスと、そうではないクラシックサービスという形になります。そもそもクラシックサービスがライブサービスを追いかけていくだけでは、先が見えていて面白くないですからね。
ニウス氏: 「GoD」によって職業が8つに集約され、キャラクターの個性が失われてしまったという不満や、世界観が壊れてしまったという声が多かったことから、クラシックサービスが生まれています。ライブサービスには存在する、カマエルやアルテイアという種族も、現状では実装予定はありません。また「初心者ハーブ」と呼ばれる便利アイテムによってソロプレイが進み過ぎてしまったので、それも実装していません。お客様にとっては不便になるのかもしれませんが、パーティを作って狩りをしていただいて、絆を深めていただくというのがコンセプトになっています。
新井氏: 狩りをしてHPやMPが減ったら座るという、今のゲームではあり得ないほど座っている時間が長いゲームです。そういう部分が古き良き「リネージュ2」で、プレイの楽しみの1つだと思います。盾役が敵を引っ張りながらヒーラーがずっと休んでいるという、昔の「リネージュ2」がそのまま再現されています(笑)。
――今はそういうゲームはないですよね。ソロでも気持ちよく遊べるのが当たり前ですし。
新井氏: 昔懐かしいゲームをうまく紹介するというのは難しいですね……。
――「リネージュ2」を含めて昔のゲームを遊んでいると理解できるのですが、当時を知らない若い方に遊んでもらって、反応を聞くのは怖いですよね。
新井氏: 厳しい答えが返ってくるとは思います。しかし今はW/A/S/Dキーで操作するなど複雑で、オンラインゲームは難しいものだと思われている方も多いと思います。しかし本作はマウス1つで遊べるゲームなので、比較的入りやすいとも言えます。
――グラフィックスが今ほどリッチでないというのも、その分だけ軽いPCでも動くという良さもありますからね。
新井氏: Unreal Engine 2をベースに作成したゲームなので、それほどハイスペックなPCを必要としないゲームだということもアピールできると思います。
ライブサービスのアップデートは8月以降。サーバー統合も検討中
――次はライブサービスについても伺います。今後のスケジュールを教えていただけますか?
新井氏: アップデートが韓国版に追いついてきていて、ほぼ同じ内容でサービスできています。今のところは8月から9月辺りに何かしらできればと思っていますが、現段階では未定です。
――プレーヤーからはサーバーの統合に関する話題も挙がっていると思いますが、この点についてはいかがですか?
新井氏: ゴールデンタイムのパーティマッチの募集が少ないとか、野良でパーティが組めないといったご意見をいただいています。そのためサーバー統合して欲しいというご意見はお客様から多くいただいています。不便なサーバーがあることも把握していますので、お客様にご迷惑をおかけしないよう、何かしらよい形にできればとは常に考えています。今ここでサーバーを統合するとは言えませんが、検討はしています。
――統合して欲しいという声もあれば、逆にして欲しくないという声もあるでしょうから、難しい判断ですよね。
新井氏: 現在は12サーバーあるのですが、サーバーごとの特性があります。パーティプレイの役割分担や、露店販売の場所、ワールドボスの募集の仕方、攻城戦やオリンピアードの仕方などで、それぞれサーバーの特色があります。そういった違いも考慮すると、統合はなかなか難しい判断になります。ただ現状が厳しい状況に置かれているということは認識しています。サーバー統合以外の方法も含めて検討していきます。
――ライブサービスについてはどういったところをアピールしていきたいですか?
新井氏: ライブサービスはLv84まで無料で遊べます。クラシックサービスと同様に無料で体験していただいて、エンドコンテンツを目指していただきたいと思います。レベル上げはクラシックサービスよりもずっと楽ですし、エンドユーザーさんに追いつけるような環境になっています。
――覚醒できるLv85まで、今だとどのくらいで到達できるのですか?
新井氏: レベルの上げ方を心得ていれば、頑張れば3日くらいで上がりますね。また今は「話せる島」に初心者が行くと、血盟の方が勧誘に来て、レベル上げを手伝ってくれるということもあります。ただそれだと本作の世界観を飛ばしてレベルだけが上がってしまうので、楽しみが半減してしまいます。まずは1人で2次転職できるLv40くらいまでやっていただきたいですね。さほど時間はかかりませんし、それで本作の序盤のストーリーや世界観が楽しんでいただけると思います。
――ライブサービスについては他に何かありますか?
クルメア氏: EP2.0と呼ばれる3月のアップデートからしばらく経ちました。レベルも無制限に解放されてだんだん上がってきていますが、次に何をやればいいのかという声も出てきていますので、新しいアップデートの準備を進めております。またアップデート前までのレベルキャップだったLv99に達していない方も多くいらっしゃいますので、そちらの方々へのフォローを重点的にやっていきたいと思っています。
BOTを駆逐する新たな施策も導入間近。より快適な「リネージュ2」を!
――次に不正対策について伺います。「リネージュ2」はずっとBOTとRMTに悩まされてきたタイトルだと思いますが、現状はどのような対策をされていますか?
新井氏: 現在も不正をするプレーヤーは見受けられます。クラシックサービスに関してはオープンしたてということもあり、BOTがかなり多くなりました。我々も毎日対策はしていますが、いたちごっこの状態です。今後は取り締まりを継続しつつ、より一層厳しく不正プレーヤーを排除する取り組みをしていきます。ライブサービス、クラシックサービスとも不正対策を強力に行ない、お客様の満足度を上げていきたいと思っています。
――やはりサービス開始直後のクラシックサービスは狙われやすいのでしょうね。
新井氏: 最近の新作タイトル以上に多いです。「リネージュ2」はほとんどのアイテムがトレードできますので、その辺りで狙われやすいという作用があります。BOTツールはゲーム内の経済活動を破綻させますから、ゲーム内外で対策していきます。お客様にもご迷惑をかけましたので、今後そういうことがないようにしていきたいと思います。ただRMTは買う人がいるから売る人もいるのですし、結果としてBOTも出てきます。そういった意識をしっかり持ち、BOTやRMTには絶対に手を出さないでください。
――これまでもSP(セーフティ・プロテクション。不正対策を専門に扱うチーム)が対策をされていましたよね。
新井氏: 現在もSPが中心になってやっていますが、現在は私の方で抜本的な改革を行なうべく進めています。近いうちに何かお知らせできると思います。
――では最後に、プレーヤーや読者様へのメッセージをいただけますか。
ニウス氏: 掲示板などで時々、BOTツールの使用を推奨される方がいらっしゃいます。そういった書き込みがされた直後にBOTツールを使用する方が増えるという現象も確認していますし、そういった方が相当数BAN(アカウント停止)されています。そういう甘い言葉に騙されず、普通にプレイしていただければ楽しめるゲームだと思います。快適に遊べる環境を整えるのが我々の仕事ですので、今後より一層対策を強化していきたいと思います。
クルメア氏: ライブサービスは現状、弊社のゲームタイトルの中で唯一の月額課金タイトルになりました。月額の料金を払っているのに不具合があると、不満の声が大きくなってしまいます。できる限り不具合修正をやりながら、お客様の要望があれば、そちらも反映させていけるような仕組み作りをしていきます。イベントなども含め、色々できたらと思います。
新井氏: 今後オフラインイベントなどが開催される時は、直接お客様とたくさんお話しさせていただきたいなと思っています。ご要望はなるべく叶える形で運営をしていきたいと思いますので、これからも「リネージュ2」を楽しんでプレイして下さい。
――ありがとうございました。