インタビュー
フランス企業が日本モバイル市場にフォーカス! 「マグナメモリア」インタビュー
東京スタジオ大抜擢! 「マグナメモリア」に秘められた苦労と狙いとは?
(2015/6/5 00:00)
日々性能が向上していくモバイル端末において、そのトレンドにあわせ、リッチなコンテンツを提供しているゲームメーカーが、ゲームロフトだ。
フランスのパリに本社を置くゲームロフトは、リッチ系コンテンツとしてレースゲーム「アスファルト」シリーズ、FPS「モダンコンバット」シリーズなどを提供している。モバイル性能の向上にあわせてシリーズが重ねられており、コンソールゲームに匹敵するゲーム体験を提供することに、ひときわこだわりのあるメーカーだ。
数年前は売り切り型のビジネスモデルが主流だったが、時代に合わせて基本無料化へとシフトし、最近では「怪盗グルー」のミニオンや「スパイダーマン」、「カーズ」など、既存の人気キャラクターを活かしたカジュアル寄りのタイトルも展開している。ゲームロフトという名前自体は表立っていないが、モバイルゲームを良くプレイする人にとっては、これらのタイトルのいずれかを知っているのではないだろうか。
そんなゲームロフトの最新作が、5月28日より配信されているAndroid/iOS「マグナメモリア」だ。本作は裏返しになったパネルから「神経衰弱」の要領でペアを見つけていくというパズルRPGで、東京スタジオが日本向けに開発したという、ゲームロフトの中でも異色のタイトルとなっている。
古くからのゲームロフトファンにとっては「突然毛色が変わったけど、どうしたの?」という感じなのだが、今回ゲームロフトのスタッフにインタビューする機会を得た。開発の経緯からその狙い、展望まで含めてまるごと伺ってきた。
“一瞬の記憶で戦う”「マグナメモリア」とは?
インタビューに入る前に、本作の特徴をご紹介しておきたい。「マグナメモリア」は、様々にいるユニットでチームを編成し、敵とバトルをすることでストーリーを進めていくコンボバトルRPG。バトルでは画面に敷き詰められた30枚のパネルをタッチして、ペアを見つけていく。
パネルは最初の一瞬だけマークが表示されたあと裏返しとなり、プレーヤーはこの中から同じ種類のペアを見つけていく。プレイには制限時間があるが、ペアを見つける度に残り時間が増え、揃えた分だけ攻撃力が増す。すべて揃えれば、最大で15コンボを重ねられる。
プレイとしてはこのペアを見つけるバトルが特徴で、通常のパズルと異なり、自分の記憶力との勝負という感じがして面白い。特に序盤では同じマークが固まっており、パネルの位置を忘れても勘で大体なんとかなる。記憶力系のパズルに自信がなくても問題ないし、すべて揃えきったときは爽快だ。
また本作には案内役に「ティケ」というキーキャラクターがおり、ストーリーは彼女との会話で進行する。単に喋りかけられるだけでなく、会話の選択肢も登場するので、より感情移入しやすい作りだ。ちなみに選択肢によってティケの反応は変わるが、何を選んでも大筋は変わらない。ただしストーリーログは自分が選択したものがそのまま残るので、プレーヤーごとの会話が残っている感じが味わえる。
他にも細かい部分で特徴はあるが、この「ペアを見つけるバトル」と「ティケ」の存在の2つが、本作の大きな特徴と言えるだろう。
モバイルゲーム界の巨人が日本市場にフォーカスした理由
今回お話を伺ったのは、本作プロダクトマネージャーの松下健太郎氏とシニアゲームデザイナーの小山玲央氏。本作「マグナメモリア」は、1年半から2年をかけて制作していったという。
本作制作の経緯として面白いのは、ゲームロフトが「日本向け」ゲームを作ったという点だ。ゲームロフトでは上記のようなフルスペック系からカジュアルゲームまで幅広いタイトルを配信しているが、どれも世界同一展開を念頭に置いて制作されている。
今一度ゲームロフトという会社を振り返っておくと、フランスのパリに本社を構えているのは前述のとおりで、社員数は5,200人ほど。世界に27の開発スタジオを持ち、タイトル全体の月間アクティブユーザー数は8,000万人を超えている。また2014年のゲームダウンロード数ではiOSで1位、Androidは2位を獲得しているという、モバイルゲーム界の巨人である。突出したタイトルがない代わりに、どのタイトルも堅調に推移しているという安定感もウリの1つだ。
ゲームロフトが日本市場を意識したのは、2年ほど前に日本のゲームアプリ市場がアメリカを抜いて1位になった、というニュースが出たことによる。これをきっかけとして、日本市場をターゲットにしたゲームを作ることが、本社のミッションとなった。
そしてそのミッションが下ったのが、世界の開発スタジオの1つである東京スタジオだ。それまでは各タイトルのローカライズやマーケティングが仕事の中心だったが、タイトル制作のほとんどの裁量権を与えられる形で「日本向けタイトル」の制作がスタートしたのだという。
松下氏はこのプロジェクトの立ち上げと同時期にゲームロフトに参加しているが、当初は開発メンバーが少人数で、デザイナーやアーティストなど、プロジェクトを進行させる過程で少しずつメンバーを増やしていったという。
松下氏が制作段階で苦労したのは、とにかく本社を含む海外スタッフの説得だった。本社サイドは「日本向けゲームを作りなさい」という指示は与えたものの、日本のゲーム事情や文化などにはあまり造詣が深いわけではない。そこで求められたのは、調査に調査を重ねた上での資料制作と報告だったという。
欧米での主流ジャンルとなるとアクションやストラテジーになるが、日本では突出してRPGが強い。日本に広く受けるゲームを作るという命題を達成するために、ジャンルをRPGと決め、さらに先行する成功例である競合タイトルの機能や運営方法を参考にしている。
さらにその上で、他タイトルとの差別化をはかるために開発メンバーが様々なアイディアを出していった。バトル部分については散々デモを作っては遊び、議論を重ねていったのだが、その中で「ペアのパネルを見つけていくバトル」はシステムとして新しく、「ゲームとしても楽しいね」となり、最も「しっくりきた」という。会話によるストーリー展開も、「他にないものを」というこだわりから生まれてきたシステムになっている。
他に世界観やストーリーなど大体のコンセプトが決まったあとも、ことあるごとに「なぜその機能が必要なのか」と問われ、作り込む過程も大変苦労したという。東京スタジオ内の海外スタッフとの会議の際にも時間を惜しまず議論を重ね、日本人開発者なら普通の感覚でも「なぜ?」と問われるため、細かい仕様にもロジカルな理由付けが必要だったという。裏を返せばロジカルにロジカルを重ねた結果が「マグナメモリア」として完成しているわけで、本記事では言及しきれていない細かい部分も含めて開発スタッフの思いを考えてみるのも面白いだろう。
こまめな運営と月一アップデートで東京スタジオの快挙を目指す
配信から約1周間が経過し、気になるその初動だが、「手応えはある」状態だという。松下氏によれば「毎日本社からの問い合わせがすごい」とプレッシャーも感じているようだが、今後は改善やイベントをこまめに実施する一方で、月1回程度で大きめのアップデートを実施していき、充実した運営を行なっていく予定だ。
ちなみにプレイしていて気になったこととして、「15コンボ余裕なんだけどどうしたらいいの?」というものがある。序盤をプレイしているとヤマカンでもポチポチ押していくだけで結構あっさりすべてのパネルを開けてしまう。こればかりだとプレーヤーは飽きてしまうのでは? と思ったのだが、小山氏はちゃんと「その先」も考えているという。
その1つが、ステージが進むとパネルのマークがバラバラになるということ。序盤は同じマークのブロックが大きかったが、これが次第にバラけるようになり、適当に押しているだけでは詰まるような、一筋縄ではいかないゲームになる。
そしてもう1つが、これは今後のアップデートで入るのだという。まだ具体的には言えないとのことだが、「その先」を見せる機能として楽しみにしてほしいそうだ。
世界同時展開をポリシーとするメーカーがあえて日本に特化したタイトルを制作するという変わった出自のある「マグナメモリア」。ゲームロフトとしては本作が試金石であり、このタイトルが成功するかどうかで今後の東京スタジオの扱いが大きく変わる可能性があるという。そうした内部事情も含めて面白いタイトルとなっているし、松下氏も「触る価値がある」という自信作となっているので、ぜひ注目していただきたい。
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