インタビュー

「3D サンダーブレード」インタビュー(Part1)

「サンダーブレード」の歴史を振り返る

「サンダーブレード」の歴史を振り返る

アーケード版の筐体画面
アーケード版の操作説明
「3D サンダーブレード」のムービング筐体画面

奥成氏: 「サンダーブレード」の歴史をここで改めておさらいしておきましょう。セガ体感ゲームシリーズという、当時のアーケードの花形のシリーズとして、第1弾の「ハングオン」の真っ赤なバイク筐体でまず話題を呼び、第2弾の筐体の動く「スペースハリアー」でさらに凄い話題になったんですよね。「ハングオン」の延長線上として自分で筐体を操作した第3弾の「エンデューロレーサー」を経て、もう、第4弾が「アウトラン」、第5弾が「スーパーハングオン」。そこにきて第6弾「アフターバーナー」が出ると。もう、ここで、ある意味頂点ですよね。

堀井氏: 「アウトラン」と「アフターバーナー」で栄華を極めたと。

奥成氏: その次が「サンダーブレード」なんですよね。筐体のアクションでいくと、「ハングオン」が自分で動かすもので、「スペースハリアー」が、初めてムービングするものだった。その次の「エンデューロレーサー」は自分で動かす、「アウトラン」は筐体が動く、そして「スーパーハングオン」また自分で動かす、と交互にリリースされてきて。
 そして「アフターバーナー」ではついに「スペースハリアー」と「アウトラン」をさらに進化させた「ダブルクレイドル」筐体……今、まさに長崎でハウステンボスで行なわれている「ゲームの王国」のメインコンテンツ「ハウステンボス ゲームミュージアム」に展示されていて、特別な日にはプレイできるようですが……の登場となったわけです。現在は他にプレイできる場所もありませんが、リリース当時はどこにでも導入されていて、盛り上がっていたんですよね。

 その次にヘリの体感ゲームが出るということで、「『アフターバーナー』からさらに凄いゲームになるに違いない」とリリースされたのが「サンダーブレード」です。「サンダーブレード」はこれまでの歴史を踏襲して、自操式っていうか、自分で動かす式のゲームだったんですよね。

 僕は当時、いちユーザーでしたし、当時のスタッフや関係者の方から話を聞いていないので、なんとも言えないんですけど、可動筐体と自分で動かす筐体が交互にリリースされていたのは、恐らく、たぶんロケーションのスペース的にどこでも置けるコンパクトなタイプと、大型の店舗にしか置けないもの、みたいな棲み分けを考えていたのではないかという気がしますね。当時は小規模のゲームセンターが相当数ありましたし。

堀井氏:そこにはもう、テーブル筐体以外はコンパクトなものしか置けないっていう。

―― そうでしたねー。

奥成氏: あの当時も、「アウトラン」、「アフターバーナー」が置けないゲームセンターにも置けるゲームという形で、たぶん「エンデューロレーサー」や「スーパーハングオン」があったと思うんですよ。で、「バイク以外の乗り物ゲームも、なんとか小さいロケーションでも安価な価格で提供できるように」っていう意図で「サンダーブレード」が投入されたんではないかと想像してました。

―― なるほど。

奥成氏: 「サンダーブレード」は、「アフターバーナー」よりはずっと少ないんですけど、台数はかなり出てるんですよね。体感ゲーム第8弾の「ギャラクシーフォース」の3倍ぐらいは出てます。「パワードリフト」よりも多いんです。

―― 当時いろんなお店においてあったイメージはたしかにありますね。

奥成氏: ただ、自分で動かすっていう部分と、ヘリ独特の操作感という部分と、やっぱりスピード感みたいなところ……特に、「アフターバーナー」のスピード感はやっぱりインパクトとして大きかったのに対して、「サンダーブレード」は、スピード感を出そうと動かすと、敵や建物に激突するというゲーム性で……。だから、どうしても低速にしてゆっくり動かさないと……となってくるんですが、そうすると今度は迫力は減るし、弾に狙われるという。結構、システム的に難易度の高いところがあった。筐体の機構も含め、思ったとおりに動かし難いっていう部分もありましたし。

 そういう意味で、なかなか苦戦していたのではないだろうかと。そうすると、近所には現役で動いてる「アフターバーナー」があるわけで、お客さんとしては「『アフターバーナー』やろうかな」って思ってしまうところもあったと思います。だから、あまり長い間ゲームセンターでは稼動していなかったのではないかという感じはしますね。印象として。

―― 「サンダーブレード」は、わりと置いてあるんだけど、熱くなっている人があまりいなかったタイトルに見えてました。実際自分も座って初めて「うおぉ!」ってなって、その後、続かない……それほどお金を突っ込んだ記憶がなくて、たまに人がプレイしているのを見ていたほうが長かったと思います。

奥成氏: 「サンダーブレード」は遊ぶときのハードルも高かったなと。まず最初、「TAKE OFF」って出るんですけど、「どうしたら飛ぶの?」というところからスタートですよね。当時はレースゲームのギアですら、オートマなんて無くて、ハードルになっていた時代ですし。どのタイミングで「HI」にしたらいいかわからないような。「アウトラン」は、それでも走るので、ハンドルとアクセル操作に集中できたし、「アフターバーナー」もとりあえずスピード関係なく遊べるようにはなってましたから。

 「サンダーブレード」はヘリの操作感をシンプルに再現しつつも雰囲気を出そうとしていて、そうなっているんですが、一般のお客さんにはそこからハードルになっていたのかなと。

―― とはいえ、他の体感タイトルにはない、2つの視点をループして進行するという、やり方自体は面白いとは思ったんですよね。しかも2D面(トップビュー)では高さが変えられる。「究極タイガー」など当時ヘリコプターが主役のゲームはいくつかあったけれども、高度調節できるゲームはたくさんあったわけじゃなかったし、それがあの筐体で重さを伴って動くという部分は「面白いな」と思っていました。飛び立つところからしても、なんか、「いかにも自分が動かしている感」があった。でも、「プレイしやすかったか?」っていうとまた別の話なんですよね(笑)。

奥成氏: まじめに作ってありますよね。

【「サンダーブレード」のステージ構成】
STAGE1都市(TOP)→都市(BACK)→海洋要塞(TOP)
STAGE2渓谷(TOP)→洞窟(BACK)→移動要塞(TOP)
STAGE3海上(TOP)→湿地(BACK)→空中要塞(TOP)
STAGE4都市(夕刻)(TOP)→工場地帯(BACK)→指令要塞(BACK)
ステージ1のボスキャラ戦(トップビュー)
ステージ2(バックビュー)

―― で、遊んでいる人の様子を見てたら、エンディングが超あっさりしてたりとか、ステージが4つしかなかったりとか、不思議だったんですよね。とはいっても、1ステージでトップビューとバックビューが途中で切り替わるし、遊んでみると結構長かったんですが。

奥成氏: 推測ですが、エンディングは、スケジュールが間に合わなかったんだと思います。

堀井氏: すべてのゲームは時間が足りない。

―― 「アウトラン」にしろ「アフターバーナー」にしろ、エンディングはちゃんと(?)ありましたよね。だからこそ「サンダーブレード」の最後を見たときに「あれ?」って思ったんです。

奥成氏: 当時のゲームの開発ペースは恐ろしく早いんですよね。3カ月とかで1本作っちゃうんですよ。今では考えられないです。

―― ただ、周回プレイもないし、あっさり終わる。そういう意味でも印象の強いゲームでしたね。

奥成氏: その後、アーケード版(1987年)の翌年、セガマークIII版に移植されて、メガドライブのローンチタイトルとして「スーパーサンダーブレード」がリリースされました。「スーパーサンダーブレード」は、まずメガドライブのローンチタイトルというところで、結構話題を呼んで。後々見てみると、結構移植度も高いんですけど……。まあ、プログラマとして「ソニック」や「ファンタシースターII」を開発する以前の中(裕司)さんが手がけてましたしね。しかもやはり3カ月ぐらいで作ってたという話ですし。

―― この頃はもう、マークIIIやメガドライブだけでなく、家庭用ゲーム機と業務用ゲーム機の差というか……アーケードゲームの移植版が家庭用で花形だった時代だと思いますが、それこそ体感ゲームでいえば、「ハングオン」から「スペースハリアー」の時期から、移植版ってとんち大会というか、「どうやって移植するんだろう?」っていう状況だったと思うんですよ。

堀井氏: とんちを効かせて再構築するっていうところが、面白かったころですよね。

―― 当時のユーザーさんってそういう意味、雑誌なりなんなりいろいろ見ながら、そういう工夫を感じ取れるように、言ってみれば教育されてきた部分も多分にあるんじゃないかと。私自身そうじゃないかと思っていますし。

奥成氏: やっぱり当時の「Beep」などで、小学生中学生ぐらいにもわかる技術的な視点で語ってくれていたので。「なぜマークIIIに『スペースハリアー』が移植できたのか?」、「なぜ額縁があるのか?」っていうところとか、技術的なアプローチみたいなところを「BGで書いてるからデカいキャラが出せるんだよ」って。「BGって何?」ってよくわかんないけど、言ってるみたいな……。そういうことを覚えていた人達が、今、セガ3D復刻プロジェクトを支えて下さっているんだなって、思うんですけれどね。

―― 体感筐体タイトルは特にそうですけど、ハード的にもソフト的にもあったギャップをどうやって、どう再現するか? というところに工夫が見られた部分が、セガファンを育てた部分でもあると思うんですよね。いろいろなものが見られたっていう意味での面白味はあったんですが、セガさんの移植タイトルって、その中では、オリジナルに立ち向かって、返り討ちにあっている感じのほうが多くて(笑)。それが哀愁を誘う部分もあったと思うんですよ。多分に。

堀井氏: 「無茶しやがって……」みたいな感じ。

―― そうです。だから逆に体感ゲームじゃないですが、「ファンタジーゾーン」で「背景ないじゃん」と思いつつ、「スゲエ」って思ったりしながら、セガファンって鍛えられてきたというか、醸成されていったのかなと思って。そういった流れの中で、セガさんの体感ゲームは、奥行き進行型で拡大縮小処理を可能にしたスプライトが大量に流れてくるものが多くて、わからないながらも「あれ、移植すんの無理だよなあ……」って思っていたし、実際に出てきたものを見ても「ゲーセンのやつとは違うなあ」ってことが多くなってきた時期ではありますね。

 だからかもしれませんが、「サンダーブレード」はその後、PCエンジンやX68000で移植版がリリースされましたが、発売までけっこう間が開きましたよね……。それまでのものよりクオリティはかなり上がったけれども、再現するのに時間と労力がかかってて。

 そういうタイミングのずれとか、いろんな要素が絡んでなのか、それから移植版がなくなってしまって……そういう流れのなかで、知名度も下がっていったのかな、と勝手に想像しています。

堀井氏: ほんとにね、そういうふうに言われちゃうんですけど、オブジェクトを重ね合わせたものを使って、空間に厚みを出したり、奥行きを出したりするっていう表現は、ヘリを飛ばすことすら凄い、よくできていた……説得力を与えられていた。それだけに、惜しい。できる子なんですよ、本当は。そうとしか言えないです。

(佐伯憲司)