Crytek/NEXON、次世代オンラインFPS「Warface」プレビュー

圧倒的なクオリティで展開されるロシア生まれのオンラインFPS


11月8日~11日開催

会場:韓国釜山BEXCO



 今年のG-STARは、時代の流れがPCゲームからモバイルゲームに移行しつつあるということを認めざるを得ないほど、それらのタイトルに勢いを感じた年となった。今年はまだPCオンラインとモバイルは半々といった感じだったが、近い将来、モバイルが韓国ゲーム市場のトップシェアを占めることは間違いないと思われる。というのも、韓国はコンソールゲームがそれほど大きな市場ではなく、また世界のスマホ市場をリードするサムスンの本拠地ということもあって、日本と違ってモバイルに移行することに障壁もためらいもまったくないためだ。

 そうした中、あえてPCゲーム一本槍で勝負したのがNEXONだ。子会社のNEXON Mobileのタイトルは一切出さず、自社やパートナーの新作オンラインゲームを出展し、まだまだ多いPCオンラインゲームファンの期待に応えていた。

 オンラインFPSの分野では、NEXONはValveと共同で「Counter-Strike Online」を展開しており、今年のG-STARでも最新作「Counter-Strike Online 2」を出展したばかりだが、また新たなラインナップが加わることになる。ドイツのPCゲームメーカーCrytekが手がける初のフリートゥプレイスタイルのオンラインFPS「Warface」だ。

 今回Crytekは、パブリッシャーを担当するNEXONブースで、韓国語版のプレイアブル出展を行なったほか、プレスカンファレンスを実施したのでその模様をまとめておきたい。なお、アジアでのサービス予定地域は、韓国と中国が予定されており、日本展開は未定となっている。

【「Warface」トレーラー】


【「Warface」スクリーンショット】
現在、Crytekが開発中のFPS「Crysis 3」に勝るとも劣らないグラフィックスを実現している「Warface」。これが無料でプレイでき、しかも実は軽いというところが驚きだ


■ 開発拠点のロシアで同時接続6万人の大ヒットを記録、いよいよ本命のアジア展開へ

Crytek CEOのCevat Yerli氏
Crytek Kievで「Warface」開発チーム長Wim Coveliers氏
Crytekのグローバルパートナー。欧米では、Crytekの自社プラットフォームであるGRACEを採用する
「Warface」はCrytekとしてもかなり力を入れたプロジェクトとなるようだ
「Warface」PvPエキシビションマッチの様子。下記に動画も掲載しているのでそちらもご覧頂きたい

 「Warface」は、ドイツCrytekの開発子会社Crytek Kievが開発しているオンラインFPS。CrytekはPC用FPS「FarCry」を手がけた頃から一貫してPC向けのFPSの開発を得意としているメーカーだが、基本プレイ無料のアイテム課金制のオンラインFPSをリリースするのは今回が初めてだ。

 プレスカンファレンスには、Crytek CEOのCevat Yerli氏が登壇。「Warface」の企画経緯について、韓国の企業と情報交換を行ない、韓国でトップ10に入るタイトルをプレイしたことで、韓国のゲーマーとコミュニティに、ゲームの未来が見え、同時に韓国のゲームマーケットを見て、Crytekのノウハウが通用することを確信し、韓国で「部分有料化」と呼ばれる基本プレイ無料(フリートゥプレイ)のタイトル開発へと大きく舵を切ったという。

 「Warface」は、グローバルマーケットを意識したオンラインFPSであり、ただ単純に、CrytekのAAAタイトルをフリートゥプレイで提供するだけでなく、欧米やアジア、そしてこれから勃興するエマージングマーケットを分析し、どのようにすれば世界に通用するゲームを開発できるかを研究したという。

 ビジネスモデルの面でもうひとつ工夫したのは、現地のパブリッシャーと提携し、各地域毎に最適なパートナーを探していったこと。ロシアはmail.ru、中国はTencent、そして韓国はNEXON。韓国NEXONが他国のオンラインゲームのパブリッシングを韓国内で行なうのは珍しいケースだが、それだけ「Warface」が別格であることを示しているとも言えそうだ。

 続いて登壇したのは、Crytek Kievで「Warface」の開発チーム長を務めたWim Coveliers氏。Coveliers氏はかつて米国のクリエイターAmerican McGee's率いるSpicy Horse Gamesで「American McGee's Grimm」や「Alice: Madness Returns」のリードプロデューサーを務め、Crytekで「Warface」のプロジェクトに加わったのは2011年からで、同作のプロジェクトが本格的に動き出したのはこの年から、つまり1年ほどのプロジェクトということになるようだ。ちなみにロシアではすでに正式サービスを開始しており、同時接続6万人を記録したという。

 初報でもお伝えしたようにゲームエンジンは同社が誇るCryEngine3を採用し、PCゲームならではのハイクオリティのグラフィックスを実現。それと同時にネットカフェでもプレイできるようにスケーラビリティの高い設計に仕上げており、ロースペックのPCでもプレイできるようになっているという。

 Coveliers氏は、韓国におけるNEXONとのコラボレーションを、「韓国マーケットにおいてトップクラスのゲーム経験を提供する上で完璧なコラボレーション」と持ち上げ、「Warface」もまた、「フリートゥプレイを行なう上で最良のコンテンツだ」と自信を込めて語った。

 「Warface」は、Crytekがこれまで培ってきた、AAA(トリプルエー)タイトルの開発経験、素晴らしいシングルプレイ体験、チャレンジングなマルチプレイといった要素をすべて取り込み、それらをどうやって「Warface」に適用するか、さらに拡張していくかを考えながら開発を進めていったという。

 「Warface」は、複数人で1つのミッションをクリアしていくCO-OPモード「PvE」と、オンラインFPSでは定番の多人数の対戦が行なえる「PvP」の2種類のモードで構成されている。NEXONブースでは、この両方のモードを5人1組で試遊することが可能だった。

 とりわけPvEは、「FarCry」や「Crysis」シリーズで高い定評のあるCryEngineのAI技術が投入されており、高度なAIによる手応えのあるAAAクオリティのCO-OPが楽しめる。なお、シングルプレイモードはあえて実装されていない。「Warface」はあくまでオンラインモードのみのゲームとなる。

 PvPについてはNEXONのイベントステージで、繰り返し対戦イベントが行なわれていたが、無料で手軽に遊べるオンラインFPSがここまで進化したのかというのが率直な感想で、キャラクターの成長要素や武器のカスタマイズ、コミュニティ機能など、オンラインFPSならではの要素にも力を注いでいるということで、このタイトルがオンラインFPSの新定番になる可能性はあると感じた。

 韓国では9月に第1次CBTを終え、11月22日より2次CBTがスタートする。順調にいけば年末から年明けにかけてOBTや正式サービスがスタートする見込みだ。日本のゲームファンとしては、これだけの大作でありながら日本展開はまったくの未定というところが残念だが、今後のアジア展開に日本も含まれることを期待したいところだ。

【「Warface」PvPエキシビションマッチ】


【「Warface」試遊コーナー】

【「Warface」PvEモード】

(C) NEXON

(2012年 11月 12日)

[Reported by 中村聖司]