「SDガンダム カプセルファイター オンライン」開発・運営インタビュー
11月にオーバーカスタムが実装、Sランク機体は2011年の早い時期に!


10月収録


 CJインターネットジャパン株式会社が現在運営しているWindows用オンラインアクション「SDガンダム カプセルファイター オンライン(SDGO)」。今回は、CJインターネットジャパン社内において、プロデュースを行なうバンダイコリア、開発元である韓国SOFTMAX、日本運営のCJインターネットジャパン各担当者にインタビューを行ない、今後の予定、将来の展望を聞いた。

 「SDGO」は現在、韓国、中国、台湾香港、日本でサービスされているが、バンダイコリアが世界全体のハンドリングを行なっている。バンダイコリアは版権元から許諾を受けた形で、ゲームの総合プロデュース、監修を行なっており、韓国SOFTMAXは開発総括としてゲーム全般を開発、モビルスーツ(MS)のモデリング、アニメーションはトムクリエイトが担当している。

 話を聞いたのは、バンダイコリアデジタルビジネスセクションアシスタントマネージャーの村上省吾氏、SOFTMAX「SDGO」開発プロデューサーのキム・ドヒョン氏、日本運営のCJインターネットジャパンパブリッシング事業部ゲーム事業部部長シニアプロデューサーの秋山隆利氏、パブリッシング事業部ゲーム事業部「SDGO」運営プロデューサーの河辺健氏。キム・ドヒョン氏は韓国から、テレビ会議システムを使っての参加となった。



■ 「SDGO」はいかにして開発されたか? 「快適な対戦、いままでにない大量のプレイアブルキャラクターを!」

バンダイコリアデジタルビジネスセクションアシスタントマネージャーの村上省吾氏
テレビ会議システムでインタビューに参加したSOFTMAX「SDGO」開発プロデューサーのキム・ドヒョン氏(右)。左は同席したバンダイコリアのキム・ヒョンギル氏

 最初に、バンダイコリアの村上氏から本作の開発の経緯が語られた。「SDGO」は韓国のオンラインゲームのブーム、市場規模といった背景から韓国で開発がスタートし、韓国発のコンテンツということでバンダイコリアがプロデュースを担当することになった。

 村上氏は「『SDGO』は韓国では2006年からサービススタートしているが、受け入れられるまで多少時間がかかった」と語った。現在は人気コンテンツに成長し、会員数400万人を越え、定期的なアップデートを行なっている。韓国での全国大会など対戦イベントはサービス開始時に2回ほど開催し現在定期的には行なっていないとのこと。

 7月に韓国で行なわれた「ガンプラ EXPO」に「SDGO」も出展し、アピールを行なった。韓国では「機動戦士ガンダム00」が放映されており、「ガンダム」の人気は現在も上昇中でその人気を受け、「SDGO」の人気も上がっている。一方、日本での「SDGO」はCJインターネットジャパンにとってこれまでのサービスタイトルで1番人気になった。現在の会員数は33万人を越え、最大接続者数はサービス開始時に12,000人を超えた。ユーザーの継続率も高いという。

 SOFTMAXの開発プロデューサーのキム・ドヒョン氏は「開発でも『ガンダム』を日本でサービスするのだから、ある程度の人気は得られるだろうと予想していました。日本でサービスを始めると色々なところから、熱い声援が届き実際に受け入れてもらってうれしく感じています。一方で、“欲ばり”な気持ちもあります。オンラインゲームとして『SDGO』はまだ1歩踏み出せる、踏み出していく姿を見てもらいたいと思っています」と語った。

 「SDGO」を開発するにあたり、キム氏を始めとした開発スタッフは「“原作モノ”にふさわしい開発姿勢」を心がけたという。このため、スタッフは積極的に「ガンダム」作品を学び原作の理解を深めた。それと共に「オンラインでサクサク遊べるゲームが作りたい」という想いで、「SDGO」を開発していった。パケットの通信量など様々な問題にチャレンジしながら、コンシューマーゲームに負けない快適な対戦環境を作っていった。

 もう1つのチャレンジは、「これまでにないプレイアブルなユニットをもつゲームを作る」という課題だ。「SDGO」では現在300以上の機体をプレーヤーが使うことができる。キム氏が目指した方向性は実現していると言えるだろう。SOFTMAXでは現在、50人ほどのスタッフで開発を進めている。

 原作のシチュエーションを追体験できる「原作ミッション」もこだわりの1つだ。バンダイコリアの提示する原作の楽しさ、名場面のエッセンス、演出を取り入れながら、オンラインゲームとしての楽しさ、クリアのために努力していくバランス、繰り返しプレイを前提とした飽きないためのゲーム作り、そして挑戦に見合う報酬といった要素を開発側では重視している。

 「SDGO」をプレイしていると、そのMSのこだわりに圧倒されるところがある。ダッシュの時のバーニアの動き、武器のチョイスやモーション、スキルの設定……機体のモデリングだけでなく、1つ1つの要素にこだわりが感じられる。これらはトムクリエイトでモデリングの動きの設定を行ない、SOFTMAXがゲームに落とし込み、バンダイコリアと、版権元で監修を行なって完成する。様々なスタッフの手で「SDGO」の機体は作られている。バンダイコリアの「SDGO」スタッフは5名とのことだ。

 日本人として1つ気になっていた点として、機体の追加やプロモーションに関して、「バンダイの韓国展開の戦略」が「SDガンダム」のMSラインナップに影響することはあるのかということがあるが、これについてはバンダイとしては商品の展開に関して基本的に国ごとの制限などは設けていない、ということだ。




■ 11月のオーバーカスタム実装を受けて課金アイテムの価格調整も。今後は“うまいプレーヤー”が登場!?

CJインターネットジャパンパブリッシング事業部ゲーム事業部部長シニアプロデューサーの秋山隆利氏
CJインターネットジャパンパブリッシング事業部ゲーム事業部「SDGO」運営プロデューサーの河辺健氏

 今後のアップデート予定についてはプロデューサーの河辺氏が回答してくれた。まず、11月中旬に「オーバーカスタム」というエンチャント機能を実装するという。

 「SDGO」のMSは対戦を繰り返し、経験値を得ることで成長する。成長していくと3つのスキルが順次解放され、さらに「カスタム」として4段階が用意されている。カスタムではステータスを増やすことができ、防御力の低いMSを強くしたりと弱点の補強や、長所をさらに伸ばすといったプレーヤーごとに目指す方向性で育てることが可能だ。

 そしてオーバーカスタムは新たに1段階目~7段階目までMSを育てることが可能になる。育てきることができればこれまで使っているMSと段違いの性能を獲得することができるのだ。オーバーカスタムはカスタムと同じように、MSの経験値を溜めることで“挑戦”することができる。7段階目に成功すれば「EX能力」という特別な追加能力を獲得することができる。ただし、オーバーカスタムはリスクのある改造となっており、1段階目は無条件で成功するが、2段階目からは失敗する可能性が出てくる。

 失敗するとオーバーカスタムで底上げした性能そのものがなくなってしまう。6段階目まで成功していたとしても、失敗するとカスタムまでに戻り、そこまで獲得した経験値は失われてしまうのだ。これを防ぐためには「レベルプロテクター」というアイテムが必要になる。これによりオーバーカスタムに失敗しても、現在のレベルにとどまることができる。ただし、レベルアップまで溜めた経験値は失われる。レベルプロテクターは課金アイテムの他、無課金でも手に入れる事ができる。

 12月下旬にはクライアントがアップデートされ、ついに現在韓国が使用しているクライアントに近いバージョンとなる。現在韓国と日本では約半年ほどの差がある。韓国で実装されたコンテンツが6カ月後に実装される形だが、このアップデートで下地が同じになる。日本の「SDGO」で実装されていない1部の機体はこのクライアントの差が原因だったこともあるという。12月のアップデートで、よりスムーズな機体の実装が可能になるということだ。

 「SDGO」は現在、韓国、日本に加え、台湾、香港、中国といった国でサービスされている。各国によって実装する機体は差があるという。日本は最初の発表では「毎月5機新機体を導入」と発表していたが、現在は10機を越える機体が毎月投入されている。シニアプロデューサーの秋山氏は「日本のプレーヤーは対戦志向よりもずっとコレクションに対する需要が大きかったんです。このため、機体の投入を急いできました」と語った。

 さらに、村上氏は「6カ月実装に時間がかかっていたのは、品質の安定化に注力していたからです。今後のことを考え、話し合って、3カ月の差、12月のアップデートまでで、オーバーカスタムと韓国で実装されている8月くらいまでの機体を視野に入れていきます。今後、『クロスボーンガンダム』、『機動戦士ガンダム00』の作品に登場する機体もラインナップに加えられる土台はできたというところです」と語った。

 12月には「3Dゲームルーム」も実装される予定だ。現在の対戦を始める前のロビーではMSを操作することができない。3Dゲームルームはゲーム内と同じようにMSを動かすことができ、その状態でテキストチャットを楽しむことができる。コレクションを自慢したり、対戦だけでなくコミュニケーションを楽しむ事も可能だ。現在、韓国では6対6の対戦が可能になっているため、最大12人でロビーに入ることができるようになっている。韓国では宇宙マップが1つ、地上マップが2つあり、タッグマッチでは宇宙マップとなり、MSではなく、戦艦に乗ってチャットができるようになっている。

 11月、12月では新しいミッションや原作のシチュエーションを再現する「原作ミッション」の新しい投入予定はなく、高難易度が解放される予定だ。また、注目点としては12月に「課金アイテムの値段の改定」が行なわれる。これはオーバーカスタム実装を受けて、「MSをもっと育てたい」という需要に応えるものだという。MS入手のためのハードルも下げる予定だ。具体的な金額はまだ非公開だが、「より機体を入手しやすくする方向で改訂を考えている」ということだ。

 また、「うまいプレーヤー達による『SDGO』のデモプレイ」といった施策も考えているという。ネットカフェ、動画サイトなどさまざまな出し方があり、検討中ではあるが、ゲームのコツや、攻略法など、『SDGO』をやり込んだプレーヤー達によるゲームのアピールを行なっていく方向性を検討している。名前を出して活躍するプレーヤーの登場で彼等を参考にする初心者、ライバル心を燃やすプレーヤーなどプレーヤー間の動きが活発になりそうで期待したいところだ。


オーバーカスタムを先行体験してみた。「レベルプロテクター」を使うことで失敗してもレベルは維持される。攻撃力を上げた場合は、バズーカで明確な違いが感じられた
スピードをアップ。ダッシュで楽々と無改造を追い越せる。7段階目に成功すると表示がEXとなり、特別な効果が付加される



■ Sランク機体は2011年早い段階で実装。今後も新機体の追加を重視した展開を

正式サービス開始時に実装された「機動戦士ガンダムUC」のユニコーンガンダム。これ以降「機動戦士ガンダムUC」の劇中のMSはまだ実装されていない
「機動戦士ガンダム00」の原作ミッションも韓国では実装しているという。ちなみに、日本でも「00」の主役級の機体は実装済である。ぜひこれらの機体でミッションに挑戦してみたい

 ここからは「SDGO」の今後にフォーカスを当てて、ゲームの将来像や、チャレンジしてみたい要素、といった部分について質問してみた。日本で未実装の要素としてユーザーからの要望が大きいのは、“Sランク”の機体だ。韓国や台湾ではすでに実装されており、日本だけ入っていない。河辺氏は「2010年はオーバーカスタムで持っている機体をさらに強くする、という方向を提示していきたいと思っています。Sランクは2011年に実装していく予定です。お客様からの要望も多いため、なるべく早い時期に入れられるように3社で話し合っています」と語った。

 現在実装されている「原作ミッション」は1回撃破されると復活できなくなってしまい、難易度が高い。これは原作ミッション自体が「Sランク機体を対象にバランスを取っているのか」とも思えるところだ。この疑問をキム氏にぶつけたところ「確かに、『原作ミッション』はSランクを視野に入れ、バランスを取っている部分もあります。Sランクが投入されていない日本で、初心者の方には難しいという側面があります。ただ、一方で『挑戦』という側面があり、攻略していって欲しいと思います。Sランクが投入される時期には、『原作ミッション』の“エキスパートモード”も解放されます。これは非常に難しいですよ」と応えた。

 河辺氏の補足によれば、ユーザーはこの難易度に攻略意欲を燃やし、SNSなどで情報交換を行ない、その知識で攻略を進めている。難易度の高いミッションはクリアすることでレア機体なども手に入れている。プレーヤーに工夫をして欲しい、色々な機体を試すことでミッションクリアを目指すような、試行錯誤をしてもらいたい狙いもあるという。

 ちなみに、Sランクの機体は、「νガンダム」、「ガンダムF91」、「ストライクフリーダムガンダム」など原作で強力な存在感を発揮したエース級の機体や、ライバル機体だ。獲得方法は検討中だが、課金だけではなく、無課金でも入手できる方法も用意していくとのことだ。

 「ユニコーンガンダム」はサービス開始時の目玉となった機体で、アニメ放映とほぼ同時に登場して話題になったのだが、ユニコーンガンダムの能力を全開にした「ユニコーンガンダムデストロイモード」や、「リゼル」、「シナンジュ」といった機体は登場していない。バンダイコリアの村上氏は「こちらの日本での実装はまだ検討中ですが、ただ今後は『ユニコーンガンダム』のラインナップも充実していく予定です」と語った。

 ちなみに韓国の実装されたばかりの機体では「SDガンダムBB戦士三国伝」から「孫尚香ガーベラ」、「機動戦士ガンダム00」から「マスラオ」、「ミスターブシドー専用アヘッド」といった機体が登場しているという。

 今後取り上げる作品としては各国からの要望を集め検討している。香港、台湾からは「SDガンダムBB戦士三国伝」に登場するMSの要望が高い。また、「∀ガンダム」などまだラインナップに加えられていないガンダム作品もあるが、計画的に作品導入を進めていくとのことだ。どういった作品からMSを出していくかは、今後バンダイコリアが版権元と話し合っていくという。

 韓国では「機動戦士ガンダム第08MS小隊」、「機動戦士ガンダム00」の原作ミッションが3つずつ入っている。今後は「機動戦士ガンダムSEED」の原作ミッションも開発中だ。これからも様々なガンダム作品から、3~5の原作ミッションを入れていく予定だ。原作ミッションでは名場面を再現しており、おなじみのセリフも登場するが、残念ながら現在はアニメ声優の起用、といったことは考えていないという。

 原作ミッションではタイム制限があったり、最初の出現位置や、順番がランダムで変わるなどゲーム展開が変わってきたりと、様々な仕掛が盛りこまれている。「機動戦士ガンダム第08MS小隊」の原作ミッション「震える山」では、名場面の1つ、ノリス・パッカードがグフカスタムでガンタンク部隊を強襲する場面を再現している。プレーヤー達は連邦側としてノリスからガンタンクを守らなくてはならない。

 キム氏は「『3Dゲームルーム』で戦艦が動かせるのですが、バンダイコリアさんと調整の上いつか“戦艦戦”という要素も入れてみたいですね。もちろんユーザーさんからの要望があればですが」と語る。現在の仕様ではMSと戦艦が同一の戦場にいることは難しいということだ。戦艦とMSが同じ場所でプレイできれば、ゲームの可能性がまた大きくなりそうだが、期待したいところだ。

 他にもキム氏は3Dゲームルームの可能性をもっと広げられるのではないか、新しい遊びを盛り込めるのではないか、ということも考えている。開発でチャレンジしてみたい要素としては、モバイルなど「SDGO」と連動した他のデバイスや、SNSとの連動企画だ。韓国でもSOFTMAXがオリジナルのSNSを展開しているが、Facebook等の人気が高いので、Facebookアプリなどの可能性を模索しているという。

 一方、日本の「SDGO公式SNS」はCJインターネットジャパンのオリジナルである。アプリの開発や、より使いやすいデザイン・改良などは現在検討中とのことだ。ゲーム部分でも新しいアイデアを積極的に出しながら検討しているが、まずはMSの追加を優先していきたいという。秋山氏は「他の作品に比べ、『ガンダム』を扱っているだけに、作品の権利やイメージ、ファンの思い入れなどいくつも考えなくてはいけないものがあります。こういった点では本当にバンダイコリアさんに尽力していただいてます。その上で、ユーザーの要望として『新MSの追加』というものが高いので、まずここに注力していきたいと考えています」と語った。

 また、キム氏は個人的に「『SDGO』の世界選手権」も期待したいと語る。現在は東アジアで展開している『SDGO』だが、これらの国での一番を決める大会をしたい。村上氏は「バンダイコリアとしても調整を進めていきたいと思います」と語った。

 最後にユーザーへのメッセージとして村上氏は「『SDGO』はバンダイグループ全体が取り組んでいるプロジェクトです。各社熱い気持ちを持って取り組んでいますので、ぜひ『SDGO』という場を活用して楽しんでもらいたいと思っています」。村上氏はさらに「我々は日本での運営を行なっていますが『SDGO』は世界で愛されるためのガンダムを日々考えて作っています。日本のユーザーさんだけでなく、世界各国の人に喜んでもらうために作っている部分もあるので、日本のユーザーさんにはご理解いただき、応援していただければと思います」と語った。

 キム氏は「『ガンダム』は日本で生まれたコンテンツであるためか、さまざまな意見をとても多くいただいています。『ガンダムのオンラインゲームって面白い!!』と認めてもらえることを目指しています。もっともっと意見・要望をいただきたいです。応援よろしくお願いします」と語った。河辺氏は「『このMSで遊びたい』という要望がとても多く、出来る限り応えるために準備を進めさせてもらいます。実現できるために今後もがんばっていきますので、ご期待下さい」と語った。


9月にCJインターネットジャパンがユーザーに実施したアンケート。3万人近くの回答があったという。興味深いのが右の「人気のガンダムシリーズ」。非常に多岐にわたり、一口に「ガンダム」といっても、ユーザーの嗜好は人によって大きく異なっているのがわかる
要望として、「新機体の実装」が大きいのがわかる。Sランクユニット、オーバーカスタムの要望も大きい。「海外で実装しているのに日本で実装していない要素」に対して、ユーザーの興味は強いようだ

(C)創通・サンライズ (C)創通・サンライズ・毎日放送
Produced by BANDAI KOREA
Developed by SOFTMAX / Published by CJ Internet Japan.

(2010年 11月 8日)

[Reported by 勝田哲也]