ネクソン、「アラド戦記」大規模アップデート「2nd Impact 未知への出発」開発者インタビュー
レベルキャップが70に! 7つのダンジョン、多彩な成長システムも
株式会社ネクソンは、Windows用オンラインアクションRPG「アラド戦記」において、11月24日に大規模アップデート「2nd Impact 未知への出発」(以下、「2nd Impact」)を実装する予定だ。
「アラド戦記」はアクション性の強いオンラインアクションRPGで、開発は韓国Neople。2D横スクロールタイプの少し懐かしさを感じるグラフィックスと、バラエティー豊かなダンジョン、多彩な成長要素で日本を含め、アメリカや中国などさまざまな国でサービスされている。日本の運営は、2009年3月にNHN Japanからネクソンに運営が移管された。
今回実装される「2nd Impact」は韓国では、昨年の12月に実装されたが、2010年3月にバランス等が修正されている。日本に実装されるのは2010年3月のバージョンだという。レベルキャップがレベル60からレベル70に引き上げられ、新しい街「ルーフトハーフェン」と7つのダンジョン、そしてさまざまな成長要素が追加されるという過去最大のボリュームを持つアップデートとなる。
■ 列車に乗りながら戦うなど、これまで以上の演出、仕掛の入った7つのダンジョン
Neopleのアラド戦記開発室室長イ・ホジュン氏 |
Neopleグローバル室日本チーム長のジョン・スンヨル氏 |
ネクソン運用部ゲーム運用2チームの山野寛氏 |
新しい街「ルーフトハーフェン」。海上列車など世界観がさらに広がる |
最初に開発元の韓国Neopleのアラド戦記開発室室長イ・ホジュン氏はこれまでを振り返り、「『アラド戦記』は当初、韓国のユーザーをターゲットにして開発をしていたので、現在のように世界中の人達に遊んでもらえているのは、正直予想していなかったです。現在は、世界中のユーザーさんからフィードバックをいただき、努力しています。これからも忌憚ないご意見をいただきたいと思っています」と語った。
Neopleで日本市場を担当しているグローバル室日本チーム長のジョン・スンヨル氏は「『アラド戦記』は日本が最初の外国でのサービスとなりました。海外進出を考えて開発はしてなかったので非常に苦労した記憶があります。日本のユーザーはとても敏感で、ドット1つに対しても要望が来る感じで、日本のユーザーの意見を活かすことで他国のサービスにも役立っていますし、我々としても日本のユーザーの意見を重視しています」とコメントした。
日本運営を担当するネクソン運用部ゲーム運用2チームの山野寛氏は「ネクソンに運営が移管して1年半以上になりますが、ハンゲームのユーザーさんもNHN Japanさんとのチャネリング契約によりプレイを続けていただいており、大変好評をいただいております」と語った。
今回実装される「2nd Impact」では2年半振りにレベルキャップが60から、70となる。新エリアの多くもレベル60以上のキャラクターを対象としており、上級者向けコンテンツが多い。「『アラド戦記』はレベルがカンストしても、良い武器やアイテム、そしてPvPとやり込む要素も多く用意していましたが、それでも限界がきたので上位レベルの解放と、それに合わせた新マップの追加を行ないました」と、イ氏は語った。
レベルキャップ解放、そして新コンテンツ追加というのはこれまでのアップデートでも行なわれていたが、“規模”としては過去最大となる。いままでのレベルキャップ解放は5ずつだったのだが、今回は一気にレベル10それに合わせ、新フィールドも大きなものになった。また、「アラド戦記」は細かいアップデートがセールスポイントだったが、今回は意図的に大規模にしたところ、韓国では、最高同時接続者数を更新するほどの人気となった。
さて、追加される新フィールドだが、既に実装されている「ノースマイア」と、「天界」の「アントベル峡谷」に新ダンジョンが追加される。そして新しい街「ルーフトハーフェン」が登場する。このルーフトハーフェンにも「海上列車」というダンジョンがある。ここでは「カルテル」という組織との対決が待っている。天界に行くにはレベル55から受けられるクエストをこなさなくてはならない。高レベルプレーヤーでなくては行くことができないフィールドだ。
ルーフトハーフェンに行く前にあるのが、アントベル峡谷だ。カルテルとの戦いが描かれる3つのダンジョンが用意されている。そしてルーフトハーフェンには「列車上の海賊」、「西部線奪還」という2つのダンジョンがあり、共に“海上列車”が戦場となる。背景が高速で流れる中、列車の上での戦いはこれまでのダンジョンとはひと味違った感触をもたらす。ノースマイアのダンジョンでは、今後実装される「ティレジエ」という使徒へと繋がっていくストーリーが盛りこまれる予定だという。
イ氏は新ダンジョンの中では、ノースマイアの「疑惑の街」というダンジョンが特にお気に入りだという。ここでは“炭坑のエレベーター”や“炭坑列車”というギミックがあり、フィールドをクリアする時間によってダンジョン内でのルートが変化する。また、今回追加されたダンジョンでは特にボスを見て欲しいとイ氏は語る。これまでとはひと味違う演出や、攻撃方法などさまざまな要素を盛りこんでいると言うことだ。
「血蝶の舞」というダンジョンは砂漠化した街が舞台となり、流砂がプレーヤーを飲み込もうとする。モスクイーンというボスが出てくるのだが、モスクイーンはフィールドのあちこちに卵を産み付けており、一定時間で破壊しないと敵が出てきてしまう。また、ここのフィールドではNPCが囚われており、彼等を解放すると戦いに参加してくれるという。また、「追撃殲滅線」では味方と共に、敵を追撃していくのだが、ここでは味方が沢山出てくるとのこと。
「アラド戦記」のダンジョンは挑戦する際に難易度の設定ができ、難易度が高いほど報酬や経験値が上がる。「ヒーローズロード」は今回追加されたダンジョンに存在し、特定のクエストをクリアすると解放される。これまでの最高値だった「キングスロード」よりさらに上の難易度となる。ここでは特殊能力を持った「チャンピオンモンスター」が出現する。他の難易度とはひと味違った戦いが体験できるという。「ヒーローズロード」では、「真レアアイテム」という既存のレアアイテムより性能が高いアイテムが入手できるようになる。このアイテムを求め、プレーヤーはヒーローズロードに挑戦していくのだ。
また、「練習モード」が追加された。これは初心者に対する救済措置というだけではなく、入るために特別なアイテムが必要だったりと、挑戦が限定されている場所でもぶっつけ本番ではなく、事前に練習ができるというもの。練習することでより、経験不足による失敗を避けられるというわけだ。
海上列車のダンジョン、高速で動く列車の上での戦い「列車上の海賊」 | ||
海上列車のダンジョン、列車を占拠する海賊達と戦う「西部線奪還」 | ||
ノースマイアの「血蝶の舞」。流砂がプレーヤーキャラクターを飲み込もうとする | ||
ノースマイアの「疑惑の街」。石になった人を解放すると味方に。ボスは魔女アガルム |
■ より多彩な成長システムとやり込み要素を! 様々なキャラクター育成を目指す方向に
「ステータス」、「既存スキルの強化」、「既存のスキルをモチーフとした新スキルの獲得」が可能になる特性スキルシステム |
レベル65でクエストを完了することで解放される魔法石を入れるためのスロット |
レベル70に到達したキャラクターの周りにはオーラが現われる |
「2nd Impact」ではキャラクターの成長システムも様々な点で強化される。その中でも最も特徴的なのが「特性スキル」だ。50レベルからレベルアップする度に得られるTP(テクニックポイント)を使うシステムで、「ステータス」、「既存スキルの強化」、「既存のスキルをモチーフとした新スキルの獲得」が可能になっている。この選択はプレーヤーが行なうことができ、より個性的なキャラクターを作り出すことができる。
また、レベル60とレベル65で受けられるエピッククエストを受けることで特殊なアイテムを装備できるスロットが解放される。これらのスロットにアイテムを装着することでキャラクターはより強くなることができる。これらのアイテムにはステータス増加の効果があり、さらに特別なアクティブスキル、パッシブスキルがついているものがあり、レア度によってキャラクターはより強力になる。スロットにつけるアイテムは、ダンジョンやクエストで入手できるという。
レベル50から得られるTP、レベル60とレベル65で得られる特殊アイテムのスロット、さらにレベル70に到達すると周りのキャラクターに支援効果のある魔法(バフ)をかけることができるようになる。このバフは仲間の力、知能、最大HPと最大MPを増すことができ、1時間持続する。なお、このバフは自分自身とレベル70のキャラクターにかけることはできない。イ氏は「2nd Impact」実装後は高レベルキャラクターを持つプレーヤーに「レベルアップの楽しさ」を一層感じて欲しいと語った。
今回、プレーヤーに「より多彩な成長の方向性」を提示した「アラド戦記」だが、韓国のプレーヤーは格闘家が強いと、ほとんどのプレーヤーが格闘家を使う、といった傾向があった。「2nd Impact」でも同様で、ある程度の方向が決まっており、特定のスキルを強化するユーザーが多いという。ただし、ユーザーは攻略も進めている。開発側としては、フィードバックをもらいながら、より個性的なキャラクターを作ることができるバランスを目指して努力していくという。
「今後もこれまでのようにキャラクターやダンジョンの追加は行なっていきます。しかし、ただ追加していくというだけでなく“新しい感覚”を提供できるようなコンテンツを目指していきます。また、長く続いているゲームなだけに、コアユーザーや帰ってきたユーザーと、初心者との距離にも心を配っています。コミュニケーションや、繋がる要素にも力を入れていきたい。競争やPvPなど、ユーザーがやり込むことで楽しさを見つけられるコンテンツも準備していく予定です」とイ氏は語った。
“競争”に関しては競技場で対戦を繰り広げるだけでなく、ダンジョンで敵を倒したりしてスコアを競う要素も考えているという。今回の「2nd Impact」ではレベル70という縦の方向への大きな進化を遂げたが、これから遊びの幅を広げる横の方向を考えている。「何度プレイしても飽きない」という要素を考えている。また、既存のコンテンツを見なおすなど、今後はコンテンツそのものの完成度を高める方向での開発を進めている。
新コンテンツの方向の次に、日本でも問題となっているBOT問題は韓国ではどうなのだろうか。イ氏は韓国でも深刻で、専用の対策チームを組織し、問題に当たっている。これからも努力をしていくが、どうしてもいたちごっこになってしまう。人気がある限り、常に狙われてしまう部分があり、今後もセキュリティーを強化し続けるしかないというのが現状だ。
日本の運営としては、「2nd Impact」実装に合わせて、記念キャンペーンを予定している。韓国ではアクセスが集中し、サーバーが止まってしまうほどの盛況になったということだが、チャンネル追加の検討など、対策を検討していくという。運用部の山野氏の体感的にも現時点でレベル60に到達しているプレーヤーは多く、早いプレーヤーは移管時の1年半前に既に育てきっていたという。今年の5月に実装した「シーフ」でもレベル60に到達した人もいるということで、「2nd Impact」への期待は高い。
「2nd Impact」は韓国では2009年の12月に実装されている。ただし、日本で実装されるものはその後バランス調整などを行なった3月のバージョンのものだ。それでも実装に時間がかかっている、という印象は受ける。日本チーム長のジョン氏は「コンテンツの多さはもちろん、安定性を重視して時間がかかってしまいました。韓国版からはいらないと感じた要素を削ったりもしています。コンテンツの取捨選択にも時間がかかってしまいました」と語った。
最後にプレーヤーへのメッセージとして、イ氏は「ゲームをよりよくしていくためには、開発のアプローチ以上に、プレーヤーさんのフィードバックが重要だと考えています。これからも率直な意見をどんどんお寄せ下さい。始めはきつめの意見をいただくと傷ついたのですが、いまは大丈夫です(笑)。今後もよろしくお願いします」。
ジョン氏は「サービス開始から4年ですが、本当に沢山の人にプレイしていただいていまして、感謝しています。社内的にも日本での『アラド戦記』のサービスを重要視しています。アップデートも今後スピードアップし、韓国にできるだけ近づけていきたいと思っています。開発の目標としては、いずれ韓国とほぼ同時のアップデートを目指していくつもりです。今後も温かく見守ってください」。
山野氏は「現状、不具合の発生、バグ、臨時メンテナンスなどでプレーヤーの皆さんにはご迷惑をかけています。韓国とのアップデート差が開いている、というところも問題視しています。テスト期間の確保や、人員の増強などを行ない運営体制も強化していこうと思っています。『2nd Impact』は高レベル向けコンテンツが多いですが、その他の細かい部分で遊びやすくなっていますので、ぜひこの機会に初心者の方も遊んでいただければと思います」と語った。
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(2010年 11月 17日)