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ロジクール「G915 X LIGHTSPEED TKL」レビュー

ロープロファイルの傑作機が5年ぶりの全面リニューアル!

【G915 X LIGHTSPEED TKL】

10月29日 発売予定

価格:34,870円

 今回のLOGI PLAY 2024で、個人的にもっとも驚きだったのは「G915 X」の発表だ。ラピッドトリガー対応キーボードの開発を進めていることは、公式非公式で耳にしていたので、今回はわかりやすくラピトリ対応をアピールすると思っていた。ところが、「PRO X TKL RAPID」に続いて「G915 X」まで発表されたのは驚きだった。

【ハイエンド2モデルが同時発表】

 この発表には多くのメッセージを含んでいると思う。1つは、ロジクールもラピトリには対応するが、他のメーカーのように全面採用するわけではないということ、そしてもう1つは、G91xとPRO Xというロジクールが擁する2つのハイエンドモデルについて、今後は明確に差別化していくということだ。本稿では、言わば正統派のハイエンドモデル「G915 X LIGHTSPEED TKL」の魅力を紹介していきたい。

【ロジクールGキーボードの新ツートップ】

傑作ロープロファイルキーボード 「G913」が5年振りのモデルチェンジ

 レビューに入る前に、日本限定の“「G915」はどこ行った問題”を解決しておきたい。現在ロジクールが日本で発売しているのは「G913」で、今回リリースされるのは「G915X」だ。このためベースとなる「G915」は一体どこに行ったのかという疑問がわくゲームファンもいるだろう。

 答えは単純で「G913」=「G915」なのだ。「G913」は、米国からダイレクトに入ってくる並行輸入品と差別化するための措置として生まれた存在で、中身は「G915」そのままだ(厳密には日本市場向けにキーの一部が異なる)。それなら、今回も「G913X」にしても良さそうだが、今回は世界同時リリースをなっており、製品名もグローバルと合わせる結果となったようだ。ちなみに有線モデルも「G813」と命名されていたが、今回はこちらも「G915 X WIRED」となっている。

 さて、ベースとなるG913が登場したのは、もう5年前だ。発売当初はフルサイズのみだったが、後にテンキーレスモデルもリリースされ、ゲーミングキーボードにロープロファイルを普及させた存在といっても過言ではない。筆者もABSキーキャップが剥がれるぐらいまで使い込んでおり、フルサイズ、テンキーレス共に、いまだに愛用している。

 高級感のあるアルミボディもシビれたが、それ以上に、当時としては画期的だったフローティングデザインにロープロファイルキーを組み合わせるという、どこからどう見てもスマートなデザインは、筆者を含む多くのゲーマーを魅了した。とりわけ、フルストローク全盛の時代に、ハイエンドモデルにあえてロープロファイルを導入する、その大胆さも良かった。ロジクールGの新時代を象徴する存在が、G913だった。

【あまりの進化に衝撃を受けた】
上が初代ハイエンドG910、下が今回紹介するG915 XのベースとなるG913
初代G910は、武闘派のデザインをしていただけに、5年前、G910からG913(G915のベース)への進化には誰もが驚いた

 ただ、2019年当時、ロープロファイルは、まだまだマイナーな存在だっただけに、使うのに抵抗感があったことを良く覚えている。「フルストロークこそゲーミングキーボードであり、こんなノートPCのようなキーストロークの浅いキーで果たして快適にゲームができるのか」と。ゲーマーあるあるで、そういう保守的な考え方に凝り固まっていた。実際に使ってみると、想像以上にしっかりとした打鍵感があり、ロープロファイルならではの入力の速さは、ゲーマーに支持された。その結果大ヒットとなり、多くのメーカーがロープロファイルに本格参入したことはよく知られている。

 現在は、今回取り上げるロープロファイル(G913、G915X)に限らず、ラピッドトリガー(PRO X TKL RAPID)、ガスケットマウント(中国開発のG517、日本発売未定)、60%(PRO X 60)、そしてスタンダードなフルサイズとロジクールGだけでも多くのバリエーションが存在する。ゲーミングキーボードで、これだけの選択肢が用意されたことはなく、ゲーマーにとってとても良い時代が到来している。いずれのスタイルも万能ではなく、メリットもあればデメリットもある。色々試しながら自身のプレイスタイルに合った一台を選びたいところだ。

【ロジクールGのロープロファイルファミリー】
左からG913、G915 X、G515

RAPIDより地味だが、満足度の高いアップグレード

 それではさっそくG915Xの魅力に迫っていきたい。まずはG915Xの機能面を見ていく。今回は評価用に、テンキーレスモデル「G915 X LIGHTSPEED TKL」を使用した。スイッチはリニアで、カラーはブラック。このテンキーレスモデル以外にも、無線フルサイズ「G915 X LIGHTSPEED」や、有線フルサイズ「G915 X」も同時発売される。今回のG915 Xは、SKU(在庫の最小単位)を広げすぎないようにするためか、モデルによって選択できるカラーやスイッチが異なることに注意したい。

【G915 X LIGHTSPEED TKL開封】
重量感のある化粧箱仕様
包装紙に包まれている
同梱物一覧
USBはついにTypeCに進化した
USBレシーバーはミニサイズ

 G915 Xは、先述したようにG913のリニューアルモデルだ。アルミボディにフローティングキー、ロープロファイル、メディアキー、ボリュームダイヤルといった特徴はそのままに、2024年7月に発売された普及モデル「G515 LIGHTSPEED TKL」に搭載されたPBTキーキャップやGLメカニカルスイッチを新たに採用し、さらにアルミフレームのトッププレートを25%(1.3mm→1.5mm)厚くしている。ソフトウェア面では、PRO X 60やG515と同等の「キーコントロール」に対応し、圧倒的なキーカスタマイズ機能を手に入れている。

【G915 X LIGHTSPEED TKL】
デザインは、現行のG913とまったく同じだ
背面は個々のソールのサイズが少し小さくなり、中央上下のソールがなくなっている
脚は従来通り2段階
背面中央にはUSBレシーバー収納口が用意されている
お馴染みボリュームダイヤルとメディアキー
【G915 X、G913比較】
左がG915 X、右がG913。見た目は同じだ
右サイド。製品名の刻印で違いがわかる
左サイド。キーキャップの質感の違いぐらいしか判別が付かない
上がG915 X、下がG913。アルミトッププレートの厚みが0.2mm違う

 GLメカニカルスイッチは、G515と同様に第2世代となっている。G913と比較して、入力を認識するアクチュエーションポイントは1.5mmから1.3mmに短くなっている一方で、キーストロークは2.7mmから3.2mmと深くなっている。押下圧も50gから43g(リニア)と軽くなるなど、第1世代で得られたユーザーフィードバックをひとつずつ反映させており、より使い勝手が向上している。

【次世代GLメカニカルスイッチ】
ロープロファイル向けに設計されたGLメカニカルスイッチも第2世代に
上がG913、下がG915 X

 内容的には、既存機能や微調整が多いため、同時発売の「PRO X TKL RAPID」が新たに搭載したラピトリ対応アナログキースイッチや、どのキー入力を優先させるか選べるキープライオリティといったピカピカの新技術と比較すると若干地味に感じるゲームファンもいるかもしれない。

 しかし5年に渡ってG913を使い続けてきた筆者からすると、G915 Xはここからさらに5年、10年使い続けるために欲しい要素を整えてきたという印象で、その内容にはとても満足している。PBTキーキャップやGLメカニカルスイッチの採用は、まずまず順当な進化と言えるが、PBTキーキャップの軸ブレの無さとサラッとした触り心地は満足感が高いし、GLメカニカルスイッチは、パラメータの微調整で使い勝手グッとが向上している。

【PBTキーキャップ】
G91xシリーズにもPBTキーキャップが導入された
使い手側の視点に立つと、ABSとPBTの最大の違いは、タッチ感が大幅に異なること。PBTはペタ付かずさらっとしていてゲーマー向きだ
ABSの弱点は剥げてしまうこと。これは2020年から筆者が使用しているG913だが、多くのキーが剥がれてしまっている

 さらに嬉しい誤算だったのは、アルミトッププレートの増圧だ。指摘されなければ気付かないほどわずかな変化だが、実際に打鍵してみると、ここまで変わるのかというほど、キーボード全体の剛性がアップし、安定性がムキムキに向上している。

 G915 Xは、この3つの要素が噛み合わさることで、かつてない安定的かつ揺るぎのない打鍵感を実現している。それはG913はもちろんのこと、G515をも大きく上回っており、G913以上の所有する喜びを与えてくれる。重量も約40gアップし、こちらも安定感に寄与している。強いて難癖を付ければ、デザインが変わらなかったところだが、5年越しのリニューアル内容には満足している。安心して今後も使い続けられそうだ。

【アルミトッププレートの増圧】
G91xシリーズのアイデンティティであるアルミトッププレートが増圧されている
上がG915X、下がG913。アルミフレームの部分がより密着感が高まり、わずかに厚くなっているのがわかるだろうか
【重量もアップ】
G913は813g
G915 Xは850g。約40gほど重くなっている

ラピトリ対応のG91xは登場するのか!? ゲーミングキーボードは多様性の時代に

 ゲーマーによっては、「G915 Xは、なぜハイエンドモデルなのにラピッドトリガーを搭載してないの?」という意見もあるだろう。これは冒頭でも触れたように意図的なチョイスだと思う。つまり、それがロジクールの意思だ。

 将来的にG91xシリーズにもロープロファイルのラピッドトリガー搭載モデルが登場する可能性は当然あると思うが、現時点では、ロープロファイルキー/メカニカルスイッチのG915 Xと、フルストロークキー/磁気アナログスイッチのPRO X TKL RAPIDと、明確な差別化の道を選んだということだ。やや余談だが、ちょうど本稿を書いている時に、中国Logitechからガスケットマウント搭載の「G517」も発表された。「G515」にガスケットマウントを取り入れたユニークな1台で、ロジクールG謹製のガスケットキーボードは是非使って見たいところだが、ともあれゲーミングキーボードはまさに多様化の時代に突入していると思う。

 いずれのキーボードもメリットデメリットが存在し、万能なキーボードは存在しない。ゲーマーにとっては選択肢が増える楽しさがある一方で、どれを選んで良いか悩む人も増えそうだ。筆者は明確にプレイスタイルやゲームに応じてキーボードを使い分けるのがベストという考え方だ。たとえば、今回紹介したG915 Xは、日常業務も含めた普段使い+FPS以外のゲームプレイ。FPSだけラピッドトリガーキーボードを使うといった具合だ。

【ゲームによってキーボードを使い分ける】
筆者お気に入りのリアルタイムストラテジー「Age of Mythology: Retold」。ショートカット操作などG915 Xとの相性の良いゲームだ
10月25日にリリースされた「Call of Duty Black Ops 6」。ラピトリの強みが活かせるタイトルだ

 確かにストッピングをはじめとした一部のFPS操作は原理的にラピトリが最速なのは間違いない。それゆえにFPSコミュニティを中心に、ゲーミングキーボードはラピトリで決まりとする風潮があるが、筆者はその考えに与しない。

 ラピトリキーボードは、最速入力を実現するために、0.1mm単位の入力オンオフ設定に加えて、押下圧も軽めに設定されていることが多いため、わずかな操作で誤入力が発生しやすく、全体的にピーキーな操作感になるのが弱点だ。慣れてないとホームポジションに指を添えただけでも誤入力が発生するし、プレイスタイルに応じて設定を切り替えようにも、ゲーム中にテキストチャットを行なうMMORPGなどは明らかに向いていない。ラピトリ1台だけですべてをこなそうとすると困る局面も出てくるわけだ。筆者は特に1台目のゲーミングキーボードはラピトリではなく、G915 Xのようなスタンダードなロープロファイルキーボードをオススメしている。

【ラピトリに向かないゲームも】
「FFXIV」のようにテキストチャットが含まれるゲームはG915 Xのようなスタンダードタイプのほうが使いやすい

ハイグレードなゲーミングキーボードを求めるゲーマーにオススメの1台

 キーボードで重要なのがデバイスへの対応だが、これについては、改めてひととおり手持ちの機材で確認してみたが、従来のモデルから変更はない。詳細は下記表を参照いただきたいが、PC/Xbox/Nintendo Switch/iOSについては挿せば使えるというレベルで、さくっと認識してくれるが、PS5だけは、ライセンスの関係からか、既存モデル同様、有線、LIGHTSPEED、Bluetoothいずれでも使用できなかった。ハードウェア的には認識されるが、マウスと誤認識されたり、動作しなかったり、正常に作動しない。PS5でも使うつもりなら注意したいところだ。

【接続は3種類】
G915 X LIGHTSPEED TKL動作確認リスト(編集部調べ)
デバイス\接続方法有線LIGHTSPEEDBluetooth
PC
PS5×××
Xbox Series X×
Nintendo Switch×
iPhone 15――――
iPad Pro(M4)――――

 今回、評価機を借りて約2週間ほどだが、使い勝手は非常に良好で、5年使い続けてきた「G913」を完全にリプレイスできる存在だと感じた。冒頭でも紹介したように、今回使用したテンキーレスモデルだけでなく、無線/有線のフルサイズもあり、日本はホワイトのみだがカラバリも用意されているため、用途に応じて好みの1台をチョイスしたいところだ。

【キーコントロール】
PRO X 60以降搭載されているキーコントロール。これで物理キーの数の制限を受けることなく、マクロを含めた多彩な登録が可能になっている。G915 Xの場合、上部のメディアキーも使用できるため、「alt+ctrl+F12(スクリーンキャプチャ)」を1キーに登録なんて事も簡単にできる

 強いて難をあげれば約35,000円という価格設定(フルサイズ35,970円、テンキーレス34,870円、有線フルサイズ29,700円)だが、価格が予算オーバーの場合は、7月に発売された普及モデル「G515」(21,890円)も選択肢に入れて良いし、もっとコスパを重視したいという場合は、10月29日に発売となる「G515」の有線モデル「G515 WIRED」(18,810円)という選択肢もある。これなら2万円を切るため、お財布にも優しい。

【G515 TKL WIRED】
今回、大型商品が多いため目立たないが、G515 TKLの有線モデルも発売される
10月29日以降のテンキーレスのラインナップ

 G915 Xは、従来のPROシリーズとは一線を画したXを冠したモデルに相応しいハイグレードな使い心地を提供してくれるゲーミングキーボードだ。本稿もすべてG915 Xで書いているが、すでにしっかり手に馴染んでいる。打鍵時の安定感と軸ブレのなさは、過去最高水準で、いくらでも打ち続けてられるような心地よさがある。皆さんもぜひこのG915 Xも選択肢に加えて、お気に入りの1台を見つけて欲しい。

【ついに世代交代】
メインのキーボードをG913からG915 Xにバトンタッチ。G913はクリッキー軸で、個人的にクリッキーの味わいが好きなので、G913はまだ活用するつもり