「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ
ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第30幕】
BORN TO BE GAMER~日本のゲームをこよなく愛するイタリア人ゲーマーを紹介!~
東京から10,000キロ離れたイタリアには、思ってもみなかった和ゲー好きなイタリア人が存在していた!毎回、彼らの自宅に訪問し、宝物を見せてもらいます!そして、インタビューでゲーマーとしての人物像を掘り下げます。ゲームの持つ本来の魅力を再発見しましょう!
これまで1つのジャンルにこだわるゲーマーに会ってきたが、今回はあらゆるゲームやゲーム機の情報を知り尽くしている賢者のようなコレクターに出会った。ローマにオープンしたゲーム博物館でマネージャーの仕事をやっているファビオさんだ。
実は、彼の家も博物館という言葉に相応しい。あらゆる棚や箪笥には1970年から現在に至るまでのゲーム機がぎっしり詰まっているのだ。彼と比べれば、自分は素人だと思うほどのレベルだった。多種多様なゲームを持っているファビオさんだが、もちろん彼もお気に入りのゲームシリーズがある。
彼のあだ名「Super Fabio Bros.」が示している通り、ファビオさんは任天堂の看板シリーズ「スーパーマリオブラザーズ」の大ファンだ。ファミコンで任天堂ゲームの独特な面白さを知ったファビオさんはあの頃から任天堂ゲーム機の忠実なユーザーになった。早速、彼のコレクションを覗いてみよう!
ゲーム愛を計るためのインタビュー開始!
テレビゲームとのファーストコンタクトはいつでしたか?
1970年代に生まれた多くのイタリア人ゲーマーのように僕は、Zanussi制作のPongの別バージョン「Ping-O-Tronic」でゲームという世界を知りました。その次は、「Atari VCS」が欲しくなりました! カナダ旅行に行っていた伯父さんに買って来るように頼んだのですが、間違えて「Fairchild Channel F」というゲーム機を持ってきました。
もちろん、そのゲーム機用のゲームソフトはイタリアでは販売されていませんでした(涙)。日本のゲーム機への僕のファーストコンタクトはファミコンでした。優れたゲームラインナップを持っていたので、すぐ好きになりました。「悪魔城」と「ロックマン」が僕のお気に入りのゲームです。
あなたのゲーマー人生の中で最も独特なエピソードを語ってくれますか?
ローマの近くの海に面した町、フレジェーネでバカンスを過ごしていました。ある夜、友達と「サイレントヒル2」で朝まで遊ぶことにしました。
真夜中でした。雰囲気を増すために暗闇の中、ロウソク1本でプレイしていました。そのおかげで、ゲームの中のあらゆる効果音がより一層怖かったです。午前4時でした。2階から、白い寝間着姿で恋人が降りてきました。まるで、お化けのようでした!(笑)。
「まだ遊んでいるの」と怒って叫んだ時、僕達と飼っていたワンちゃんが驚きのあまりに跳ね上がりました! その瞬間、ゲームの中のゾンビ看護婦が、主人公を襲ってきて1発で殺しました。僕達はセーブするのを忘れていました……(笑)。
あなたにとって最も大切なゲームはどれですか?
「ファイナルファンタジー」シリーズを愛しています。特に、ファミコンとスーパーファミコン用の作品ですね。残念ながら、当時、「FFIII」と「FFV」が英語にローカライズされなくて、リアルタイムでプレイできませんでした。リメイクや移植版を含めて、すべてのエピソードを持っています。
しかし、ファミコン用の最初の「ファイナルファンタジー」がずっと忘れられなくて、何回も最初からプレイしたくなる時がくるのです。ほかのRPGは1回だけですよ。ゲームシステムも大好きですし、画面内のあらゆるドットを知り尽くしています。そして、毎日、バスの中で植松信夫氏の作曲した素晴らしい名曲達を聴いています!
日本のゲームは欧米のゲームに対して、どういう付加価値を持っていると思いますか?
スタイル、カリスマ、ストーリー、そしてディテールへのこだわり。もちろん、「Ultima」や「The Elder Scrolls」などの西洋のRPGシリーズもプレイしていますが、日本のRPGはユニークな魅力を持っていると思います。RPGという分野だけでなく、ほかのジャンルにおいても日本のメーカーはゲームの文法を進化させていきました。その文法は欧米のメーカーにとってモデルとなりました。
現在のゲームは過去のゲームに比べて何を失ったと思いますか?
多くの人々が、現在のゲームは過去のゲームほど“パッション”を持っていないと言っていますが、僕はそれが半分だけ正しいと思います。熱烈なレトロゲーマーとして、8ビット、16ビットゲーム機の時代に、開発者達はもっと大胆な実験を繰り返していたと思いますね。
しかし現在も、特にインディーズゲームの場合、ほかとは違う斬新なゲームを作ることへのパッションが再燃焼しているのではないかと思います。つまり今のマーケットでは、そう言った意味で、とても面白いソフトも見つけられると思いますよ。
問題は、大手ゲームメーカーのほうですかね。なるべく失敗率を下げるために、人気ゲームと同じ構造やスタイルのゲームを提供しているだけです。開発費が高まる中で、それが必然的な選択であることはよくわかっていますけどね。
日本のメーカーが、どんなゲームの続編・リメイクを作って欲しいですか?
僕の最も熱い願望は「アクトレイザー」シリーズの新作で遊ぶことです。1990年にQuintetがスーパーファミコン用に開発した「アクトレイザー」は、アクションとシミュレーションの絶妙なハイブリッドでした。2004年にスクウェア・エニックスが携帯電話用のリメイクを作ったそうですが、僕が欲しいのは、現代機用の正真正銘の続編です。
「アクトレイザー」のユニークな魅力は、プラットフォームゲームとシミュレーションゲームの要素を見事に融合させたことにあったと思います。それは現在のゲームと比較できないほど、とても新鮮で楽しかったです。勝手なことを言ってしまってすみませんが、Wii U GamePadはシミュレーションパートの補助的な端末としてパーフェクトだと思います。宜しくお願いします!(笑)。
「マリオ」の話題に入りましょう。「マリオ」シリーズのどんな特徴を特に愛しているのですか?
その無限大の面白さ。これこそが、「マリオ」シリーズの秘密だと思います。どの作品も同時に伝統的、かつ新しい何かを提供していると思います。
欧米で「Super Mario Bros. USA」として発売された「夢工房ドキドキパニック」も、マリオ的な要素を受け継ぎつつ、意外性の高い新しいルールも取り入れました。
そして「マリオ64」が、今でも通用する3Dアクションゲームの基礎を定めました。伝統を守りつつ、毎回「新しい」を提供するゲームシリーズが、まさに「マリオ」だと思います。
お気に入りのエピソードはどれですか?
スーパーファミコン用の「スーパーマリオワールド」が、今でも完璧という言葉に最も近いタイトルだと思います。ゲーム性、グラフィックス、サウンド、イノベーションなどあらゆる要素がこのゲームで見事に追究されていると思います。以前の作品へのオマージを大切にしつつ、スターロードの出現や、ヨッシーに乗るなど、意外性と新規性にあふれる要素が多く追加されました。忘れられることのない本当の傑作です!
あなたにとって「マリオ」シリーズは年を重ねるごとにどのように変わって行ったと思いますか?
「マリオ」はいつも、同じゲームで、違うゲームです。一見矛盾にも聞こえるかもしれませんが、「マリオ」のエッセンスはまさにそれだと思います。
シリーズは新しいエピソードが発売される度に、進化への確実な1歩を踏み出しています。あらゆる作品は前の作品と似つつ、基本を覆すような新規要素も必ず持っています。3Dが導入されてから、シリーズはアイデアの面で急に止まったのですが、原点回帰を果たした「New Super Mario Bros.」は世界中のあらゆるゲーマー(特にレトロゲーマー)に高く評価されました。
シリーズの中で、アイデアや場面がマンネリ化する場合もありますが、それでも「マリオ」はみんなを驚かせる魔法の力を持っていると思います。何故なら、本当に面白いアイデアやシチュエーションはずっと魅力を失うことなく、普遍的な価値に繋がるからです。
Wii U用の「マリオ」はどのように想像していますか?
世界中のファン達は「マリオ U」の公開をすごく期待していると思います。何故なら、「New」シリーズは根本的に過去の作品へのオマージュですから。Wii Uのシリーズ最新作はWii U GamePadによる操作方法をバランスよく取り入れることを願っています。やりすぎると、逆に面倒くさくなるので。
ゲーム性に関しては、これまで観たことのないような大胆なソリューションを試して欲しいですね。実験というプロセスがなければ、シリーズは本当の進化を果たせないからです。例えば、Virtual Boyがなければ、今、3DSという人気ゲーム機は存在できなかったのです。
最後に、あなたの最もリスペクトする日本のゲームクリエーターへのメッセージをお願いします!
宮本茂さん、あなたはテレビゲーム界の最も偉大なアーティストです。あなたのアイデアは世界中のテレビゲームに多大な影響を与えました。今でも、あなたがゲームの世界をリードしています。「マリオ」と「ゼルダ」シリーズで実現できたアイデアは何百も、いや何千ものゲームのモデルになりました。
ゲーム作りを目指すあらゆる人が、ゲームデザインのマニュアルであるあなたのゲームと対立しなければなりません。これまで携わってきた作品には、どれほどの温もりと優しさを注ぎ入れて下さったのでしょう。時代が進んでも、世界中のゲーマーがあなたに対してずっと感謝の気持ちを贈るでしょう。誠にありがとうございました!
ファビオさん、今日は本当にありがとうございました!これからも日本の大好きな「マリオ」シリーズで遊び続けてね!!