佐藤カフジのVR GAMING TODAY!
実践・1,000ドルPCでVRゲーミング
ゲーマーのためのVRレディPC自作チャレンジ
(2016/4/5 12:00)
3月末から4月頭に相次いで出荷が予定されるPC用VRシステム「Oculus Rift」と「HTC Vive」。税・送料込みで10万円前後かかるこれらのVRシステム。活用するためにはさらに高価なゲーミングPCが必要……となれば、多くの人が尻込みしてしまうのも無理はない。
では、どれくらいの高価なPCが必要だろう? お金をかけるほど高い性能を得られるのがPCというものだが、逆に、「最低限これだけ必要」という構成に切り詰められるのもPCの良いところだ。
Oculus Riftの推奨スペックについては、はっきりと定められている。CPUはCore i5-4590以上、GPUはGeForce GTX 970以上もしくはRadeon R9 290以上で、メインメモリは8GB 以上。HTC Viveの推奨スペックもほぼ同じ。
この推奨スペックを満たすPCは一体おいくらに?……これについて、やりよう次第では10万円を切ることも可能だということがわかってきた。ご報告しよう。
将来の拡張性を残しつつ、最安で10万円を切るVR-ReadyのPCパーツ構成
ある特定のパーツ構成のPC価格を確かめる方法のひとつは、市場の最安価格でパーツを集め、PCを実際に組んでみることだ。秋葉原界隈に本拠を置くBTOパソコンショップ等でも狙ったスペックのPCを見繕うことができるが、その相場観を確かめる上でも、パーツ単位での分析は役に立つ。
また、自作することの大きなメリットは、マザーボードや電源といった“地味な部分”の選択を自在に調整できること。例えばマザーボードは、似たような価格なら世代が新しい方を選んで将来の拡張性に備えたいし、電源やケースについては、ミニマムな要求さえ満たせばできるだけ安く済ませる、といった形で、コストパフォーマンスを最大化できるのだ。
そういった基準にもとづいて、今回、最高のコストパフォーマンスをもつVR-Ready PCを実現するために調達することに決めたパーツ仕様と、ネット上で調べた店頭および通販の最安価格の一覧は次の通り。
品目 | 仕様 | 最安価格(4月4日時点、税込) |
---|---|---|
CPU | Core i5-6500 | 24,885円 |
GPU | GeForce GTX 970 | 35,470円 |
マザーボード | H170搭載、DDR4対応 | 11,390円 |
メモリー | DDR4 4GBx2 | 4,469円 |
SSD | 240~250GB | 6,980円 |
電源 | 500W 80+ | 4,180円 |
ケース | ATX | 3,490円 |
合計 | 90,864円 |
なんと、パーツ一式で9万円そこそこまで絞ることができた。
こだわりポイントは、Oculus/HTC推奨スペックよりもCPUの世代を1世代新しく、Skylake搭載モデルとしたことと、それに合わせた最新のマザーボードを選択したことだ。これにより、メインメモリに新世代のDDR4メモリを選択することができ、追加のコストをほぼかけずにシステム全体のパフォーマンスアップと、将来の拡張性が確保できる。
上記の表における個々のパーツの価格は、必要な仕様を満たす製品モデルのうち、価格情報サイトで最安だったもの(送料別ならそれも込みで)をピックアップしている。
ただし、各パーツを最安価格でピックすると、品目ごとにブランドや取り扱いショップが異なってくるので、実際の調達はかなり面倒だ。購入時の利便性を重視し、同一のショップで一通りのパーツを揃えるなら、+1割ちょっとくらいの価格を見ておこう。それでも、1,000ドル(約112,000円)を下回る価格で全パーツを調達することが可能だ。
ショップブランド系のBTO(Build-To-Order)PCを調べてみると、これと似通った構成のPCがおよそ13万円~15万円から(税込で)というのが相場のようだ。OS代を含めても、自作プランのほうがぐっと安い。パーツの調達と組み立てという、割と重労働な手間をコストに含めなければ。
筆者の場合は、組み立てにかかる手間はコストに含めない派だ。なにしろ、それ自体が趣味として面白いし、やっているうちに最新のPCパーツ事情にも詳しくなれて、一石二鳥。しかも将来の愛機がお安く手に入るとなれば、一石三鳥だ。自分で使うPCは、自分で組み立てるぜ! PCゲーマー、VRゲーマーの皆様にもぜひおすすめしたい姿勢である。
実際に作ってみる!(協力:パソコンSHOPアーク)
論より証拠で実際にVR-Ready PCを一台組んでみることにした。とはいえ、個人的にはすでに推奨スペック以上のPCを所有しているため、実利なしの純粋な実験。これに10万円の自腹を切るのは辛い……。というわけで、秋葉原界隈のPCパーツショップにお願いをしたところ、パソコンSHOPアークから快く協力をいただけることになった。ありがとうございます!
パソコンSHOPアーク
当店舗は秋葉原界隈のPCパーツ店の中でも、特にPCゲーミングに強いお店だ。マウス、キーボード、ヘッドセットその他のゲーミングデバイスの品揃えはただごとではないレベルで、たくさんの製品が実際に触れるようディスプレイされている。筆者もよくお世話になっている次第だ。
PCパーツの取り揃えも豊富で、「グラフィックスカードやマザーボード、メモリ、ストレージ等の品揃えには他店に負けないくらいの自身が有ります。ゲーミングPCを自作したいときはしっかりとしたパーツ選びを!」と語る店長氏、今回のVR-Ready PC組み立てにあたって、期待したよりもひとまわりハイグレードなパーツ類を貸し出していただけた。
品目 | 型番 | アーク価格 |
---|---|---|
CPU | Intel Core i5-6500 BOX | 25,380円 |
GPU | MSI GTX970 GAMING 4G | 45,800円 |
マザーボード | ASRock Fatal1ty H170 Performance | 12,960円 |
メモリー | SanMax SMD4-U8G28H-21P-D | 8,480円 |
SSD | SanDisk SDSSDHII-240G-J26C | 8,980円 |
電源 | SilverStone SST-ST50F-ESB | 6,280円 |
ケース | SilverStone SST-RL01B-WJ | 5,533円 |
合計 | 113,413円 |
上記が今回、お借りすることのできたパーツ一式だ。
GPUがただのGTX 970ではなく、より高性能なオーバークロックモデルを使っていることや、高品位なメモリー、電源やケースに信頼性の高いブランドを選ぶなど、ゲームに強いPCショップならではの気を利かせた構成。その結果想定よりも一回り高い値段がついたが、それでも1,000ドル(112,000円)程度には収めることができた。この構成であれば、Oculus/HTC推奨スペックよりも一回り良いパフォーマンスが得られることが期待できるし、多少のオーバークロックを噛ませた運用も可能だろう。
なお、これらを実際にパソコンSHOPアーク店頭で購入する場合、マザーボードとCPUのセット割引等のキャンペーン価格を利用できるので、さらに数千円安くできる場合もある。こういったキャンペーン情報についてはショップのホームページを確認してみるといいだろう。
組み立てる!
せっかくなので組み立ての手順をご紹介しておこう。PC自作を行なう際には、正常に動作するWindows PCが1台あるとよい。様々なトラブルに遭遇した際に解決策をネットで検索したり、OSのインストールメディア(USBメモリやDVD-R/Wメディア)を作成する際に必要となってくるためだ。
さて、組み立て。はじめにPCケースのサイドパネルをオープン。マザーボードを仮置きしてネジ穴の位置を確認したうえで、スペーサーネジをはめ込んでいく。その上にマザーボードをネジ止めする際は、ネジをあまり強く絞めなくても大丈夫。手で触ってみて、マザーボードがぐらつかないようであれば十分だ。
マザーボードの設置が終わったら、その上にCPUを取り付け、次いでCPUファンを装着する。それから2枚のDDR4メモリをスロットに装着。電源ランプ等のシステムケーブル、ケースファンやCPUファン等のパワーケーブルなど細かい配線を行なっていく。このあたりは使用するマザーボードによって配置が異なる場合が多いので、しっかりマニュアルを確認しよう。
ケースに電源を取り付け。こういった大きなパーツを装着すると細かい作業がしづらくなのるので、マザーボード上の基本的な配線など、細かい部分は先に済ませておこう。。ATX電源ケーブル・補助電源ケーブルをマザーボード上の対応する場所に挿して、電源まわりは完了。
次いでSSD/HDDを装着。最後にデカブツのビデオカードを装着。特にビデオカードは、他のすべての配線を終了してから取り付けたほうがいい。後になって未配線部分に気がついたりすると、大きなビデオカードが邪魔になって、一度取り外して……という作業を何度もするはめになることがあるためだ。
ここまでですべてのパーツの取り付けが完了。電源を投入して、「ピッ」とシステム起動音がすれば大成功だ。
次にOSのインストールをどうするかだが、今回組み立てた構成では光学ドライブが存在しないため、USBメモリからのインストールとなる。このため、USBメモリにインストールメディアを作成するため、既存のWindows PCが別途必要。筆者の場合は、今回、経年で使用しなくなったノートPCからWindows 10(アップグレード版)のライセンスを流用し、このPCにインストールした。
ここまでの作業で、パーツの開封・展開と組み立てに要したのが約1時間、OSのインストールに要したのが約1時間。全てスムーズに行けば2時間程度でOSの起動までいけるはずだが、自作にトラブルはつきもの。週末の1日を充てるなどして、充分に時間をかけ、慌てずじっくり作業することをオススメしたい。
組立後に電源が入らない、画面が映らないなどのトラブルはつきものだ。そういった際は、いちど電源コードを抜いて、各パーツの装着や、必要なケーブルの配線に問題がないかをよくチェックしよう。初期不良で動かない可能性はかなり低い(無いとは言わないが)ので、じっくり調べればどこかにトラブルの種が見つかるはずだ。
そして、余裕でVR-Readyだったベンチマーク結果
さて、PCが組みあがり、OSがインストールできたら、ベンチマークのお時間だ。既に使用パーツは紹介したが、新たためてマシン構成は以下のとおり。
3Dベンチマークソフトの鉄板「3DMark」における、「FireStrike」テストでは9618と、Oculus Rift/HTC Vive推奨スペック(9271)をひとまわり超えるスコアを出すことができた。CPUに1世代新しいものを選んだことと、メモリがDDR4で高速なこと、それからGPUがやや高価なOCモデルであることが功を奏したものだろう。これなら推奨スペック前提のVRゲームも、安定したフレームレートで遊べそうである。
そして次は、HTC Vive対応のVRゲームが快適にプレイできるかをチェックできる「SteamVR Performance Test」だ。このSteamからダウンロードできるテストアプリでは絶対的な性能スコアを出すかわりに、プログラムが自動的に品質調整をしながら最低限のフレームレートである90fps以上を安定的にマークできるかどうかをチェックできる。
結果としては、今回組み立てた環境で安定して120fps近辺をマークし、余裕の“VRレディ”。フレームレートを確保するために多少の品質制御は入った模様だが、HTC Vive向けのVRゲームをこのマシンで問題なく快適にプレイできることが明確になった。
というわけで、10万円そこそこの予算でVR-ReadyなPCをこしらえることに成功。通販や秋葉原界隈のショップを駆けずり回って最安狙いで各パーツを揃えれば10万円以下、OS代(Windows 10 Home DSP版15,000円ほど)でを入れても11万円ちょっと。今回は将来の拡張性を重視して最新のマザーボードを選んだので、パーツ(特にGPU)を入れ替えながら2~3年は余裕で戦える!
PC自作の手間暇も含めて楽しめる、筆者タイプの方には絶対的にゲーミングPCは自作がオススメ。でも、パーツを選んだりPCを組み立てる時間がないとか、うまくいくか自信がない的な方は、各ショップブランドのBTO(Buit-To-Order)製品を中心にチェックしてみよう。出来合いのPCでも、だいたい13~15万円くらいから同様の構成のPCを見つけることができる。
最後に、本企画にご協力していただいたパソコンSHOPアークの店舗責任者、渋谷義寛氏からのメッセージをお届けして、今回の締めとさせていただきたい。
「どんどん進化する3Dグラフィックス技術により、ゲームは昔とは比べ物にならないほど高詳細に、迫力あるものに進化してきました。そして今叫ばれているVRでは、見渡すかぎりの3D空間が広がります。それが今ようやく一般の方に届こうとしています。それを楽しむための土台となるパソコンを自作すれば、多岐にわたる使い方に合わせてカスタマイズすることが可能になります。長く楽しむことになるPCゲームやVR、皆様の好みのパソコン環境の充実に向けて、パソコンSHOPアークでは少しでもお手伝いができればと考えております。」