素晴らしきかな魂アイテム

【魂レビュー】滑空、ミサイル、爪アクション……6分の濃密なアクションシーンを完全再現! 「ROBOT魂 ハイゴッグ ver. A.N.I.M.E.」

題字:浅野雅世
【第23回魂アイテム】
「ROBOT魂 <SIDE MS> MSM-03C ハイゴッグ ver. A.N.I.M.E.」、11月23日発売、価格は7,992円(税込)。「機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争」第1巻プロローグに登場した水陸両用の量産型MS。劇中では連邦軍のジム寒冷地仕様機を相手に戦うシーンがハイゴッグの見せ場であり全てだ。商品にはハイゴッグ本体のほか、場面再現に使える噴射エフェクトや水中形態用の交換用太腿、ミサイルカバーユニットなどが付属する

【ライター:池紀彦】

アクションフィギュアと洋ゲーとスマホゲー大好きライター。現在は「レッド・デッド・オンライン」で日々ランクを上げたり「ロマンシング サガ リ・ユニバース」のレベリングをする日々。今回はハイゴッグとの比較ということで、初代ガンダムの「ROBOT魂 MSM-03 ゴッグ ver. A.N.I.M.E」を買ってみた。この重厚感がたまらない。(絵:橘 梓乃)

 アニメ「機動戦士ガンダム」は1979年の放送開始以来、様々な続編、番外編、新解釈のシリーズなど様々なガンダムが登場してきたが、筆者が1番好きなのは今なお、この最初に放送された初代ガンダム、通称「ファーストガンダム」だ。筆者のガンダムに対する熱い想いは、僚紙AV WatchにてDVD-BOX発売時にレビュー記事を掲載しているのでこちらをご覧頂くとして、ガンダムの魅力は登場するモビルスーツのカッコよさであると同時にそのドラマ性であると思っている。

 そんな人間ドラマ重視で作成されたのが、1989年リリースの「機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争」だ。本作はガンダムシリーズ初のOVA(オリジナルビデオアニメ)として全6巻で発売された。本作の特筆すべき点はこれまで兵士として戦う少年が主人公だった同シリーズにおいて、初めてアルフレッド・イズルハ(アル)という民間人の子供の視点で描かれた作品だということ。そのため、MS同士の戦闘以上に人間同士のドラマが色濃く描かれた、ガンダムシリーズの中でも異色の作品として今でも根強いファンは多い。

 一方でガンダムである以上、本作にも多くのMSが登場する。サイクロプス隊のターゲットでもある連邦軍の新型試作機「ガンダムNT1」、サイクロプス隊の所有する試作機「ケンプファー」のほか、ザクIIをベースに作られた、ある意味で本作の主役機とも言える「ザクII改」、そして今回紹介する「ハイゴッグ」や同じく水陸両用のMS「ズゴックE」も登場する。いずれも戦闘シーンその物は長くないが、ここぞという要所で使われるため、印象に残るシーンが多い。

 これらMSは続々と商品化されているが、今回は11月に発売された「ROBOT魂 <SIDE MS> MSM-03C ハイゴッグ ver. A.N.I.M.E.」を取り上げたい。

「機動戦士ガンダム」に登場したジオンの水陸両用MSゴッグのコンセプトを元に再設計されたMS。巨大な爪と長い腕が特徴的だ


出演時間はわずか6分程度だが、凝縮した戦闘シーンが魅力的

 「機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争」は、モビルスーツや戦争に憧れる民間人の少年、アルの物語だ。市街地で発生した初めて見るMS同士の戦闘に興奮したアルが、森林地帯に落下したザクII改を追っていくと、そこにはジオンの新米パイロット、バーナード・ワイズマン(バーニィ)との出会いがあった……。

 民間人の少年アルとジオン兵であるバーニィとの友情、バーニィが所属するジオンのサイクロプス隊の個性的な兵士たちのコロニーでの潜入調査など、見た目は地味ながらもリアリティのあるストーリー展開は、子供が主人公ながら子供向けのガンダムではなく、間違いなく大人をターゲットにしたストーリー重視のガンダムと言えるのが面白いところだ。

 例えばサイクロプス隊の潜伏位置を自力で嗅ぎつけてやってきて、仲間にしてほしいと懇願するアルに対して、サイクロプス隊の隊長は快く仲間に引き入れる。ところがその際にアルに渡したサイクロプス隊の隊章には盗聴器が仕掛けてあり、バーニィに監視を命令してアルを利用するために仲間に引き入れたことがわかる。この辺の見せ方は隊長の手練れの兵士らしさが出ていてニヤリとさせられた。

潜水艦より出撃した隊長機のズゴックEの後をついてくるハイゴッグのシーンを再現した。水中移動時は腕を畳んだ上にミサイルカバーを装備し、背中にはジェットパックを背負い、推進力を高めている

 そして、今回紹介するハイゴッグについてだが、実はOVA第1巻冒頭のプロローグのみの登場だ。北極基地で極秘に開発中の連邦軍の新型MSの奪還を命じられたサイクロプス隊が基地に潜入する様子が開始早々いきなり展開する。時間にすると6分程度だが、北極海の水中を潜航して基地に向かうハイゴッグの出撃シーンから基地に奇襲をかけて、暴れまわるハイゴッグの勇姿が存分に楽しめる。

 水中を移動する際のハイゴッグは腕や足が畳まれ、水の抵抗が少なくなるような形状に変形しており、さらに背中には推進力を高めるためのジェットパックを背負っていて、より高速な移動ができるようになっている。地上に上がったあとも目的地の連邦軍の基地まではジェットパックの推進力で氷上を高速で移動し、基地につく手前で腕をカバーしていたミサイルカバーユニットをパージして、ハンドミサイルと内蔵のミサイルで奇襲を仕掛ける。

 その後はジェットパックも切り離し、折り曲げた腕を利用してブレーキをかけて、基地を次々と破壊していく。基地を守る「ジム寒冷地仕様」との戦闘では、巧みにジムの銃撃をかわして反撃したり、撃墜したジムの頭を掴んで盾がわりにしたりと暴れ放題だ。

北極の氷の大地を高速で移動し、基地の手前でミサイルによる奇襲を仕掛けるシーン。実際には腕のミサイル以外にも本体からもいくつかミサイルを同時に発射している

 こうして見ていると、MSの性能が圧倒的に優れているというよりは、MSの性能をフルに活かすパイロットの腕の差を見せているような印象が残る。

 というのもその後、新型MSがシャトルに積まれているのを発見したハイゴッグがそれを撃ち落そうと突撃を試みるのだが、シャトルを守っていたジム寒冷地仕様のマシンガンを被弾して最終的にパイロットのアンディが戦死してしまうからだ。マシンガンの弾をかなり大量に被弾してなお稼働しており、最終的に爆発せずに機体が残っていた事から、それなりに厚い装甲であることがわかるとともに、耐久性能にも限度があるのが伺える。

 MSの戦闘シーンや移動シーンでは、随所でコックピット内部のパイロットたちの様子を見せる事で、サイクロプス隊の面々が歴戦のベテランパイロットである事がわかるような演出をしており、あまり予備知識がなくても入り込みやすい。わかりやすいのはケンプファーにも搭乗するベテランのミーシャで、MSで移動中にも関わらずスキットルに入れた酒を飲んでいるところを、隊長からいじられるなど、わかりやすく個性が演出されている。またいずれのメンバーもコックピット内で悲壮感が感じられず、戦闘を楽しんでいるように見えるほどだ。

 結局、北極基地での作戦は失敗し、シャトルは宇宙に打ち上げられてしまう。そのシャトルを追うサイクロプス隊が向かった先が物語の舞台となるサイド6コロニーというわけだ。

長い腕を折り曲げてブレーキをかけるシーンだが、初見では腕の曲がり方が不自然に感じた。腕の装甲の向きと逆に曲がるように感じたからだ。だがこの曲がり方もハイゴッグの特徴の1つなのだ

 本作はこのプロローグを経て、物語が本格的に始まっていく。今回改めて全話を軽く流し見してみたが、全体を通してみると、多少強引な要素や気になる点も多く見受けられるが、今まで報道や友達との雑談の中でしか存在しなかった戦争に、実際に関わる事になってしまった少年の心情、戦時中の作戦における兵士たちの物語、そして要所で発生するMS同士の戦いなど、ラストを知っていても十分に楽しめる物語としてまとめられているので、気になった人は是非全話視聴してみてほしい。


豊富なエフェクトパーツと可動で完璧な場面再現

 ハイゴッグを含む本作のMSデザインは、「機動警察パトレイバー」のメカデザインを担当した出渕裕氏だ。さすがにガンダムやザクはファーストガンダムの色が強く残っている印象だが、その一方で本作オリジナルのケンプファーやハイゴッグ、ズゴックEについてはかなり同氏のメカらしい特徴が色濃く出ている。

 特にハイゴッグはファーストガンダムのゴッグが重厚感を感じられる丸みを帯びた形状で、伸縮する腕も力強さの方が伝わるデザインだったのに対して、生物感のあるエイリアンのような細長い腕の不気味さが対称的でおもしろい。それでいて太くて短い足と頭部の形状、かなり幅の広い肩部などの特徴からゴッグらしさも残っているのも印象的だ。

 「ROBOT魂 Ver.A.N.I.M.E」シリーズの特徴として、アニメ内の場面を再現できる柔軟な可動が特徴だが、ハイゴッグでもその特徴は健在だ。特徴となる腕のギミックは複数の関節が仕込まれており、先端の爪先までかなり柔軟にな可動を再現している。脚部も開脚しやすいように股間軸がスライドするようになっていて、安定した自立が可能だ。

ハイゴッグの1番の特徴がこの長い腕だ。腕は多関節で構成されているが、装甲の形状から想定する向きとは真逆に腕が曲がる事に違和感を覚える。だが、エイリアンのような異様な雰囲気を演出したデザインと考えれば納得がいくし、慣れてくると、逆にこの違和感こそがハイゴッグらしさといえる
太腿部を外してみると股間軸が前後にスライドするように作られているのがわかる。腕の付け根の部分も本体に収まっている付け根を本体から出すことで更に可動域が広がる

 また、商品にはエフェクトパーツやオプションパーツが多数付属する。水中形態への移行は足の変形と腕パーツの組み替え時にミサイルカバーをセットし、背中にジェットパックをつければ再現できるほか、ジェットパックや足元からの噴射エフェクトも付属するので、水中を移動中のシーンも完全に再現できる。また、ミサイルカバーパージ時の煙エフェクトまでも付属するので、基地めがけてミサイルを乱射する瞬間も再現可能だ。

水中移動時の形状に変形するには組み換えで、太腿部の可動パーツを不可動パーツに交換する。これにより足の長さが更に短くなるほか、太腿部分がよりコンパクトに収まるため、実際のシーンそのものの姿にできる

 本商品のオプションで面白いのは、発売済みの「ROBOT魂 RGM-79D ジム寒冷地仕様 Ver.A.N.I.M.E.」を持っている場合、ジムの頭部を掴んで盾がわりにジムを振り回すシーンが再現できることだ。

 このシーンを再現するためだけに、それ専用のちょっと曲がった爪一式と頭部固定用のジョイントも付属することだ。これらを使うことで頭部が外れることなく本作のシーンそのままにジムを振り回して楽しむこともできる。

 他にも爪の奥にあるメガ粒子砲に取り付けられる発射エフェクトや、ハンドミサイルはエフェクト付きで装着できるなど前述のプロローグのシーンは全て再現できるように配慮されている。

 登場シーンが少ない機体にもかかわらず大掛かりなエフェクトパーツを豊富に付属して、ほぼ全ての劇中のシーンを再現できるようにした点は評価したいところだ。しかし一方で価格が若干高めになってしまっているところは賛否あるだろうと思う。

付属パーツは豊富。特にジム寒冷地仕様の頭部を爪で掴むシーンを再現するための固定ジョイントと爪には、ここまでやるのかと驚かされた。一方でこの固定ジョイントがかなり軽くて小さいため、油断するとなくしてしまうので取り扱いには注意が必要だ

 本商品のターゲットはハイゴッグのデザインが好きな人と本作のプロローグが好きな人になると思うが、それ以外の人であっても、実際に戦う事なく終わってしまった、ガンダムNT1との仮想バトルを想定してみたり、ファーストガンダムに登場した想定でガンダムやガンキャノン、ガンタンクとのバトルを想像して楽しむのも面白い。こうした仮想バトルを想像しながら気軽に遊べるところこそ、バリエーションが豊富でコストパフォーマンスの高い「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」の真骨頂だと思うからだ。

 また、ファーストガンダム登場のゴッグと並べてデザインの違いを楽しんだりするのも面白いだろう。筆者はこのタイミングで「ROBOT魂 MSM-03 ゴッグ ver. A.N.I.M.E」を購入して並べているが、同じゴッグでここまでデザインが違うのかと、立体で見直すと改めて気がつく点も多く、あれこれ比較して楽しんでいる。

 「機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争」が好きな人はもちろん、未見の人であってもガンダムのMSが好きな人なら是非手にとって、わずか6分のプロローグのために生み出された出渕氏による独特のデザインのハイゴッグを楽しんでみてほしい。

新旧ゴッグ比較をしてみた。並べてみると改めてベースのコンセプトが同じなのが理解できるが、それと同時に特徴の付け方次第でこうも変わるものかと驚かされる。「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E」シリーズとしてみた場合、実は旧ゴッグの爪は交換式の非可動パーツだが、ハイゴッグの爪はバッチリそれぞれが独立して可動するので、可動ギミック好きには嬉しいポイントだ
「ゴッグに似てるが……新型なのか!? 」とアムロが言ったんじゃないか、とか想像しながらファーストガンダムとのバトルを楽しんでみた。手元にある他のシリーズと組み合わせて遊ぶのも面白そうだ。こうした仮想バトルをあれこれ楽しんだり、仮想編隊を組んだり、気軽に遊べるのも「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E」シリーズの魅力の1つだ