「マフィア III」大暴れ連載 奏でろ! 復讐のブルース

「マフィア III」連載第7回:ネタバレ上等! クリアしたからこそリンカーンを語るぜ!

 これまで色々な魅力を語ってきた「マフィア III」。今回が連載の最終回となる。今まで何本ものクライムアクションのオープンワールドをプレイしてきた俺にとって「マフィア III」は衝撃的だった。俺の脳みそをガツンと揺さぶったのは、やはり最初のオープニングシーンだ。ドキュメンタリータッチで描かれる過去の“事件”そのリアリティあふれる描写に一気に引きこまれた。「俺はこんなゲームプレイしたことないぞ」とその時強く思ったんだ。

 そして仲間だと思ったイタリアンマフィアに裏切られ、親や兄弟とも言うべき“家族”を殺され、そして地獄からの使者のように凄惨で残忍な方法で復讐を行なうリンカーンの運命は、ひたすらシリアスで、心をやすりで削られたような痛みを感じた。そのあまりに救いのない展開に、俺は何とか彼が安息を得られないかと、祈るような気持ちになってしまった。

 連載では、ストーリーを味わうだけでなく、色々なことをやってゲームを隅々まで遊んだ。特に「俺のチャレンジ」はかなり大変だったが、ノリノリで取り組んだ。警察との戦い方や街中を速い車でぶっ飛ばすドライブ、逆聖地巡礼としての観光地巡りやコレクタブル要素など、より道要素についても多く語ってきた。

 しかし、やっぱり本作の1番の魅力はメインのストーリーだ。最終回の今回は、あえて、“限界の先”まで踏み込み、ラスト直前を含む全体を通して見た時のメインストーリーの演出について語ってみることにする。今回はあえて“クリアした後の感想まで”語っていきたい。

 大いにネタバレを含み、これから本作をプレイする人にはオススメできない。しかし、プレイを終えた人、「マフィア III」がどんなゲームだったかを知りたい人に向け、俺の「マフィア III」への想いを書いていこう。

友情の厚さと復讐に燃える残虐さ。複雑な人間性を見せるリンカーン

 「マフィア III」の連載当初、実は俺のメインミッションの進捗はあまり進んでいなかった。理由は単純で、制圧完了後のエリア内のコレクタブル要素を楽しんだり、仲間とのサブミッションを楽しんだりしていたからだ。以前に語った通り、俺はこうしたコレクタブル要素が大好きだし、仲間との関係性がより深まるサブミッションも続けてプレイすることで、完全なるエリア制圧を目指したかったんだ。

メインのストーリーをクリアした後でもサブミッションは楽しめる。サルを倒しても俺たちの戦いはまだ終わらないんだぜ!
コレクタブル要素も残ったままなので、全部かき集めるという楽しみも残っているぜ。街の至る所にアイテムが転がっているから全部残さず拾うのはかなり時間がかかる
バイユー・ファントムはかなり広大で、人の手が入っていないエリアも多い。アイテム探し以外にもバイユー・ファントムの湿地巡りはクリア後も楽しめる要素の1つだ。ちなみにここはアンクルルーとの戦いの舞台となった燃えた蒸気船の跡だ

 本作のコレクション要素で1番胸が熱くなるのは何といっても「プレイボーイ」だ! 表紙は割とおとなしめの物が多いが、どのプレイボーイを拾っても1冊に必ず1枚はプレイメイトのグラビアが付いてくるんだぜ!

 もちろんこの辺をガッツリ遊んでいると、エリア制圧後もなかなか先に進めない。特にサブミッションは車での移動が多いため、1つクリアするのにも結構な時間がかかる。そのため、途中からはとにかくメインストーリーだけを前に進めることに集中した。そのおかげで連載中に無事エンディングまでたどり着くことができた。

 本作はとにかくメインのストーリーだけを進めるような遊び方もできるが、ちょっとした宝探しの気分で気楽に楽しめるコレクタブル要素、仲間との絆をより深められるサブミッションなど、寄り道要素も多いので、かなり長いこと楽しめるタイトルだと思う。クリアしてみて確かめたんだが、コレクタブル要素や、サブミッションはゲームをクリアしても楽しむことができる。

 メインストーリーだけ進めて先にエンディングまでたどり着いてもこの世界に居続けられるのはうれしいところだな。俺はクリアした現在でもサブミッションを中心にのんびりバイユー・ファントムで敵と戦ったりして楽しんでいる。まだまだ俺の「マフィア III」はまだまだ終わらないぜ!

 とはいえ、「マフィア III」の1番の魅力は何といってもメインストーリーだ。連載の最初期に書いたように、俺はこれまでリンカーンをとにかく“救いたい”という思いでずっとプレイしてきた。その視点でこれまで一通り見てきたストーリーを振り返ってみると、リンカーンの心情は相手によって大きく揺れ動いていたのがわかるんだ。

 例えばバークレーミルズの最後に出てくる「エンツォ・コンティ」との対決では、エンツォがリンカーンの“父”とも言うべきサミーロビンソンと交友があったことを聞いた途端、リンカーンはエンツォを殺すのをやめてしまうんだ。確かにエンツォはサルのファミリーの一員というよりは協力者の立場だ。だが、口だけならその場限りのごまかしはいくらでもできるという疑いを一切持たずにエンツォからの情報を信用し、エンツォに差し向けられたサルの刺客からエンツォを庇い、最終的に逃がしてやるのだ。

 昔の仲間の名前が出るだけでこんなにも甘さが出てしまうリンカーンを見ていると、安心できるような気もするし、そこを利用されて最後に殺されてしまわないか、という心配をしてしまったほどだ。

 このシーン以外でもゲームプレイ時に部下たちを生かしておく選択肢が出るのもファミリー以外の手下の連中だし、サルのファミリー以外の協力者たちに対しては驚くほど温情的な措置をしてやるシーンが各所に見られるのは非常に興味深いところだった。実際に各エリアでのリンカーンと協力者たちとのやり取りを見ていると、リンカーンは情報を与えてくれる協力者たちに対して非常に友好的だし、各エリアで行なわれていたほとんどの非合法ビジネスに対しても怒りや憎しみを向けることはない。ドノヴァンがベトナム戦争の時のエピソードを語ることで、リンカーンが「女性に対しては決して手を上げない」という性格を代弁してくれるのも面白い見せ方だったな。

 こうした点からもリンカーンの根は温厚な人物であることが読み取れるし、そんなリンカーンが怒りで変わってしまうのを見ていて1番つらい立場の人間が、幼い頃からのリンカーンを見てきたジェームズ神父というのも納得のいく話だ。

【幾多の戦いを経て……】
バークレーミルズを牛耳る憎きボス「エンツォ・コンティ」。だが実際に会ってみると、彼はリンカーンのことを知っているだけでなく、サミーの昔馴染みの付き合いだったと語りだす
その後、エンツォを庇ってサルの追手との戦いが始まる。採石場での戦闘は次から次と敵が出てくるかなり激しい銃撃戦だった
最後は街のはずれのホテルまで車で送ってやる。他の場面でもリンカーンが協力者を庇って、最終的に車で送ってやるシーンはよく見かける

 だが、サルのファミリーのメンバーに対してはリンカーンの復讐の炎は燃え上がり、悪鬼と化す。俺の記憶に強烈に残っているのは、サル・マルカーノの叔父、「アンクルルー」ことルー・マルカーノとの対決だ。蒸気船上での戦いを経て、逃げ回るルー・マルカーノに復讐の刃を突き立てたリンカーンは、その遺体をフランス街の「アンドリュージャクソン像」に括り付け、サル・マルカーノへの宣戦布告に利用するという凄まじい演出がなされていた。現在でこんな事件があったら世界を揺るがす大ニュースだ。

サルファミリーとの戦いで最も印象的だったのはルー・マルカーノとの戦いだ。まずは蒸気船を足止めするために、鉄骨で組まれた石炭積み降ろし機を破壊するという大胆な作戦に出る

 ちなみにこの時、ルーの首にかけられたプラカードには「RE・ELECT JACOBS」と書かれているが、これは同イベント内で登場して、サルに手を貸そうとして、ルーと共に殺された政治家、ウォルター・ジェイコブズ上院議員のことで、意味は「ジェイコブズを再選させよ」だ。

 このメッセージの奥が深いなと思うのは、このメッセージを読んだ一般市民はウォルター・ジェイコブズも殺したから別の議員を再選挙しろ、といういわばテロリストのメッセージのように受け取るだろう。ところがサルに対してのみ、お前が利用しようとした政治家、ジェイコブズは死んだから、他の政治家を選べという意味にもとれるため、正に宣戦布告のメッセージになっていることだ。

 このメッセージは映像ではわずかの間しか見ることができない。普通にプレイしていたら見逃してもおかしくないようなわずかなメッセージにここまで深みのあるワードを載せるというあたり、「マフィア III」の演出面はすばらしい。意味を理解した時は思わず鳥肌が立っちまったぜ。

 このように両極端の性格を見せるリンカーンの目的はサルのファミリーにのみ敵意が向けられている、と途中までは思っていた。ところが黒人を迫害し、黒人奴隷の売買を裏でやっていた「フリスコフィールズ」では、奴隷売買の元締めである「チェスターモロー」との対決において、生かすか殺すかの選択肢が出ず、容赦なく殺してしまったのだ。これを見て、俺はリンカーンがどこに向かっているのかが見えなくなってきた。

 その後も、せめてプレイでは仲間を裏切るような真似はしないようにと3人の仲間に均等に地域を割り当てたし、生かせる選択肢が出る元締めたちは生かすようにしてきた。あちこちに気を使っていただけに、全ての地域を制圧した後に全員から賞賛の声をもらえた時はちょっとうれしかったなぁ。これで少しはリンカーンの気持ちも変わるかとこの時は思っていたんだ。

【背筋も凍る復讐】
燃え盛る蒸気船内での銃撃戦は足場も悪くかなりハードな戦いだったな。進むたびに船の状態がどんどん悪くなっていき、最終的に船は爆発してしまう
そしてルー・マルカーノにとどめをさしたあとのカットシーンがこれだ。胸にはリンカーンからサルへのメッセージ「RE-ELECT JACOBS」と書かれている
フリスコフィールズの黒人奴隷の人身売買の様子は何度見ても胸糞が悪くなるな。本作を象徴するようなワンシーンだと思うぜ
通常、ビジネスを取り仕切ってる手下を捕まえた場合、生かすか殺すかの選択肢が発生する。ところが人身売買を取り仕切るチェスターモローの時だけはこの選択肢が発生しなかったんだ。なんかいつものリンカーンと違う
オリヴィアとの対決シーンでは銃で腹を撃ち情報を聞き出すが、最後にとどめを刺さずに立ち去る。例えサルのファミリーであっても女は殺さないというポリシーをしっかり持っているんだな

復讐を進め、変わっていくリンカーンを見て俺が選んだ“結末”

 こうして全ての地域を制圧すると、いよいよ残されているのは序盤に共に行動し、リンカーンを撃ち殺そうとしたサルの息子「ジョルジ」とサル本人だ。この最終ミッションを経て物語はフィナーレへと向かっていく。

最終決戦はまだ建設中のサルのカジノでのジョルジとの対決となる。カジノへの道は高速道路を使う。全てのエリアを制圧し、サルとの対決の準備が整うと、今まで工事中で行き止まりになっていたポワントペルダンの高速道路の封鎖が解除され、先に進めるようになる。エリアに入ると雨が降り出す演出になっており、緊張感が高まるぜ

 と、これ以上は伏せておく。できればプレイして確かめて欲しい。しかし、このあとに俺の予想をはるかに越える展開が待っていたことは伝えておきたい。正直なところ、これまでの連載で俺がプレイしながら見てきた「マフィア III」のリンカーンではあり得ない行動をする。俺は我が目を疑ったほどだ。

 彼が何をしようとし、俺が何を選んだか。そして、俺が連載当初から熱望していた「リンカーンを救う」という目標がかなったかどうかについても詳しく語らないが、1つ言えることは、少なくとも俺が下した選択により、俺の中のリンカーンは“救われた”と断言する。俺にとって大きな衝撃の急展開が最後に待っていた。それだけは伝えておこう。

 これまで「マフィア III」をプレイしていて「まるで映画のようなストーリー展開だな」という印象を受けるようなシーンは数多くあった。そして最後のシーンを見てからスタッフロールを眺めている間、俺はもう1度今回のストーリーについて、深く噛みしめ考えさせられることになった。そしてリンカーンの意思決定を俺が行なうことでたどり着いた結末は、一言では言い表せない映画以上の感動を与えてくれた。

 「マフィア」シリーズでありながら、マフィアに敵対する主人公を描いてきた本作のラストは、やはり「マフィア」というものの存在について改めて考えさせられる展開だった。

【キャラクター達をもう1度振り返る】
「マフィア III」の表の主人公が、マフィアを憎むリンカーンなら、裏の主人公は、本作におけるマフィアの“象徴”とも言えるサル・マルカーノだろう。サルは最後の最後までマフィアとして相応しい言動を取り続ける。それを見たリンカーンが何を思い、何を感じたのか。本作を通じてそれが直接語られることはないが、ラストに向けての行動や言動からリンカーンの想いが垣間見える
リンカーンとドノヴァンのコンビは、いつも真剣な面持ちのリンカーンと、いつもおどけた顔で動きもどこかコミカルなドノヴァンとの対比が際立つ名コンビと言える。ただ復讐という明確な目的があったリンカーンに対して、ドノヴァンがリンカーンの手助けをするのには何か理由があるのだろうか? 単にベトナム戦争時の旧友だったというだけでは、いささか人が良すぎる気がするのだが……
ジェームズ神父は本編にも直接登場するし、カットシーンなど未来のドキュメンタリー番組にも生きて登場している、いわば本作の一連の事件全てを見てきた生き証人だ。そんな彼の表情からは、皮肉を込めたニヒルな笑いはあっても、安堵と喜びの笑顔がこぼれることはなかった
フリスコフィールズのエリアボス、レミーデュヴァルは黒人迫害主義者の首謀者だったという事実が明らかになる。こいつを倒した後のカットシーンでは、当時のテレビでは未放映だったという現場のニュース映像が流される。この時の警察署長の「1人残らず捕まえて撃ち殺すべきだ! 」と大胆な発言をするなど、通常ではあり得ない、正に映画のような過激なシーンの1つといえる

「マフィア III」は最高だ! しかし、俺の「マフィア III」はまだまだ終わらない

 最後に繰り返しになるが、一通り「マフィア III」をプレイしてみて感じたのは、やはりメインストーリーの奥の深さだ。エンディングはいくつか種類があるが、ゲーム開始時に入る冒頭のインタビューシーンと矛盾しないようにどのエンディングであってもうまく繋がるようになっているのはうまいと感じさせられる。

 ちなみにもう1度最初からプレイするにしても、俺は同じ選択肢を選んでしまうと思う。今回、仲間全員と円満に物語を進めた俺にとって、カサンドラ、ヴィト、パークの3人はいずれもお気に入りの仲間たちだ。彼らの誰かが自分を裏切ってしまうシナリオなんて見たいとは思わないからだ。

 戦闘についても、銃撃戦のリアルさや、ハードな展開がシリアスなストーリーと相まって楽しめるようになっていたと思う反面、手持ちできる武器の種類が2種類だけだったり、手榴弾が強力すぎたりとバランス面ではもう少し工夫があってもよかったように感じた。乗り物の種類もせめてバイクくらいは使えるようになっていてもよかったと思う。

 各エリアのボス戦については、エリアごとに目的の行動が異なるように色々工夫がしてあり、単調な戦闘ばかりにならないようになっている点は素直に感心した。それでも全体的に戦闘の割合が非常に高いので、結果として単調に見えてしまうのは本当にもったいない印象だ。この辺はスナイパーライフルを駆使して挑んだり、銃を使わずにステルスアクションのみで戦うなど、遊び方次第でバリエーション豊かに楽しめるので、クリア前にストップしてしまっている人は是非、武器を変えるなど色々試しながら最後までプレイしてエンディングを見てほしい。

 「マフィア III」も今後DLCなど多くの追加コンテンツが予定されている。リリース時期などは不明だが、今あるサブミッションを全部クリアして万全の態勢で新たなストーリーに挑みたいと考えている。やっぱりまだ「マフィア III」は終わらないってことだ!

【俺の戦いを思い出す】
ボスとの対決は単なる銃撃戦ばかりではない。カーチェイスで敵を追い詰めたり、敵地に潜入して薬を盛るなど、単調にならないように工夫されている。最終的に銃撃戦がメインになることも多いが、そこは「マフィア III」ならではの魅力とも言える