コーラス大柳の「ためにならないインディゲームレポート」

iPhone Xをバイク用ナビにするのは適切か?

11月3日 発売

価格:112,800円より(税別、64GBモデル)

 こんにちは。今回もiPhone Xネタで引っ張ります。一応フォローしておくと使いはじめてそろそろ1カ月が経過していますがハードウェアとしての完成度はとても高いと思います。新しい系譜のiPhoneにふさわしい出来映えです。新しいSuper Retinaディスプレイに対応したAppも揃ってきました。現状とても満足して使用しています。いやホント。

 しかしながらiPhone Xが進化を遂げる過程で手放した要素は大きく、いまだにiPhone 6s Plusあるいは7 Plusを使い続けています。もちろん仕事道具として手放せないという理由もありますが、普段使いとしても結局両方持ち歩いています。その理由を1つを挙げると「iPhone Xはバイク用ナビゲーションツールに適してない(と思う)」というのがあります。

 最近ではクルマのカーナビもスマートフォンで済ませてしまうケースも多いそうですが、バイク乗りの大半は専用ナビではなくハンドルなど適当な場所にホルダーをつけてスマートフォンでGoogle MapsやYahoo!カーナビを使って対応していると思います(音声はヘルメットに仕込んだスピーカーとBluetoothインカムやレシーバーで対応します)。

 遠出した先の知らない道を走ることは楽しさよりも不安の方が勝る場合が多いので、ナビゲーションツールは必須です。そもそも移動しながら道を把握するという点において、いわゆるカーナビという存在は気軽に路肩にとめて地図を参照したり、あるいは助手席の人がナビをしてもらえるクルマに比べるとバイクの方が重要なアイテムと言えます。

 前置きが長くなりましたが、バイク乗りにとって重要なツールとiPhone Xの組み合わせが適さない理由がいくつかあるので、もしバイク乗りがiPhone Xに機種変更を考えている際の参考までに書いておくことにします。

定番ナビAppその1:Yahoo!カーナビ
たまに曲がれと言われた場所を通過してから音声案内がくるのが玉に瑕。またGoogle Mapsほど地図のアップデートがされていないのか、登録されていない施設もあるが、変な道を通らず的確なルートを導き出してくれるので目的地がハッキリしているときに使用している
定番ナビAppその2:Google Maps
定番中の定番。飲食店などを目的地にすると、その店が閉店や定休の場合ちゃんと教えてくれる優れもの。欠点は目的地までの地図上の最短距離を追求しまくるので、地方を走ると細い農道や山道に導かれること(しかもたいしてショートカットになっていない)

 まずFace IDがiPhone Xを横向きにした際に機能しません。Face IDはご承知の通りTouch IDのようにホームボタンに触れなくてもロックを解除できる新しい要素の1つ。ただ残念なことにこれが有効なのはiPhone Xを縦向きに使った時だけのようです。これがうまく機能すればグローブごしの使用が容易になることが期待できたのですが、本体を横にした状態での使用は想定されていないようです。

 じゃあ縦向きに使えばいいじゃないかと当然なるわけで、実際ホルダーを縦向きにして使っている方も多いと思いますが、その場合は2つ以上先の右左折のナビゲーション表示は縦向きでは表示されません。不案内な土地では先々どこで曲がるかくらいは把握しておきたいですし、荒天時やバッテリー切れなどでレシーバーからの音声案内をアテにできない状況も想定すると、先読みできる情報は欲しいところです。

 なおiPhone Xは前々回でもお伝えしたとおり新しいディスプレイは既存の5.5インチ機に比べると縦に長く横の解像度が削られているのですが、ナビAppを使うにあたり、この点で情報量の違いについては使用上ほとんど問題はありません。

横向き表示は2~3つ先の右左折ナビゲーションが出るので不慣れな道を走るときにはありがたい機能

 Face IDでアンロックする場合、フルフェイスヘルメットは肝心の顔が隠れるため当然ダメだと思いますが、顔の部分が開放されているジェットヘルメットであればシールドを下げていても、ちゃんと機能します。なので縦向き使用でもいいやという人にとってFace IDはかなりの恩恵をもたらしてくれるかもしれません。

 Face IDはあきらめて、横向きにホールドさせて使う場合に軽微ですが、もう1つ問題が発生します。iPhone Xの場合5.5インチ機に比べると本体がコンパクトになっているため、ホルダーが音声ボタンに干渉してしまう場合があります。私の場合ホルダーは米国RAM Mountsの製品を愛用しているのですが、本体を固定する際に中心からやや横にずらさないとX型のグリップが音声ボタンもしくは電源ボタンに干渉します。

 横にずらして使用しても、実際のところバランスがやや悪い程度で差し支えはありません。RAM Mountsのグリップはかなり強力なので、ちょっとやそっとの衝撃では落下の心配はないのですが、ハンドルまわりにくる振動は想像以上に強烈です。他社製ホルダー使用時にiPhoneを落下させ山梨の某県道を必死で捜索した過去の経験をふまえ、不安のない状態にしておきたいところです(高速走行中に落としたら回収はあきらめるしかありません)。

 ちなみに手元にあった国内メーカーの某スマートフォンホルダーも試してみたのですが、ホールド自体はできるものの、iPhone X本体をおさえておく部分の長さ調節ができないため、RAM Mountsほどしっかりホールドできず、走行中すっぽ抜けることが容易に想像できます。ただ使用した製品はiPhone Xが出る前に発売された物なので仕方のないところです。ホルダーを買う際は対応品を選ぶのをお忘れなく。

ホルダーにiPhone X(左)とiPhone 7 Plus(右)をつけてみた例
iPhone 7 Plusの方が明らかに余裕があり、iPhone Xの方は心許ない。私の場合RAM Mountsのラージサイズホルダーを使っているので、スタンダートサイズに交換すれば改善されるかも?

 最後にこれがもっとも大きな理由なのですが、有機ELを採用したiPhone Xのスクリーンでは長時間おなじ画面を表示させておくことで焼き付きの発生が懸念されるという点です。AppleもiPhone Xサポートページを見る限りiOS 11に対策を施したり、明るさの自動調節をオンにする、自動ロックを短時間でおこなうといった設定の推奨をおこなっています。

 実際の使用環境としてロングツーリングになると3~4時間は乗りっぱなし(=スクリーンは常時表示しっぱなし)ということもよくあるため、長時間利用による劣化は避けられません。液晶を使用した従来のデバイスでも過酷な環境であることには違いないのですが「焼き付くおそれあり」と言われてしまうと、積極的に使用するのはどうしても腰が引けてしまうものです。

 これに関して根本的な解決にはなっていませんが対応策は存在します。黒はそもそも発光しないという有機ELの特性を逆手に取った(?)焼き付き防止策として通称「ダークモード」と呼ばれる活用方法があります。

 一般→設定→アクセシビリティ→ディスプレイ調整→色を反転をオン、カラーフィルタをグレイスケールでオンにすることでモノクロ画面にしてしまうことで焼き付き回避とバッテリー消費を抑えることができるという戦法です。

 幸いなことにナビAppの画面はモノクロ状態にしても使用上差し支えありません。バックライト自体は当然あるので夜間使用も問題ありません。が、やっぱり味気ないんですよね……。使う度にいちいち設定をいじる(といってもトグルを2つオンにするだけですが)のも面倒なので私は使っていません。

 あれこれ指摘してみましたが、iPhone Xをバイク用ナビに使うことは対策を施せば使えます。ただ何も考えなくても普通に使える前世代機の方がありがたい。

 という訳で私は今後もiPhone 6s/7 Plusを併用していくことでしょう。私と似たような使い方をしている方でiPhone Xへの機種変を検討されている場合、いま使っているデバイスを下取りに出さず手元に置いておくこともあわせて考えてみると良いのではないでしょうか。

通称「ダークモード」にするとこんな感じ。
昼間モードだとご覧の通り白バックになってしまい焼き付きの原因になってしまうので設定→昼夜モード切替を常時「夜」にしておくことをおすすめします。