レビュー
映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」鑑賞レポート
マリオ映画の2作目は「満足」する納得の出来栄え。ただし“ネタ探し”はほどほどに
2026年4月13日 13:42
- 【ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー】
- 4月24日 公開予定
4月24日、映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」が日本でも公開される。同作は、任天堂の代表作「スーパーマリオブラザーズ」の生みの親・宮本茂氏が率いる任天堂チームと、人気キャラクター「ミニオン」でお馴染みの映画「怪盗グルー」シリーズを手掛けたアニメーション制作会社・ILLUMINATIONが共同制作する、「スーパーマリオブラザーズ」を原作とした3Dアニメーション映画の続編タイトルだ。
前作「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、2023年に全世界で公開され、13億ドル以上の興行収入を記録したことでも知られている。今回は映画の一般公開前に、東宝東和からメディアおよび関係者向けの試写会に招待されたので、実際に映画を鑑賞した上での感想をお届けしていく。
「ギャラクシー(銀河)」に広がったマリオたちの大冒険!
今作の物語が幕を開けるまでに、マリオとルイージは一体どれだけの冒険を裏で重ねてきたのだろうか。マリオブラザーズの成長過程をゲームという土台の上で巧みに築いた前作。そこに作品を言い表すキーワードを挙げるとしたら、やはり「成長」というほかなかった。今作を見ればその理由は自ずと知れるだろう。そして、冒険の舞台がひとつの国から“宇宙”にスケールアップされた今作を指し示す言葉は、おそらく「絆」になる。あまりに広大過ぎる銀河の中で、キャラクターたちが互いを想い合う描写は、対比の構図が込められているのではないかとすら思う。──絆とは、距離に囚われるものではないのだ、と。
前作「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」で、マリオとルイージの物語は完成を迎えている。ヒゲの兄弟は内面的な成長においてひとつの到達点に至ったのだ。それは兄弟の信頼関係であり、自立を勝ち取る汚名返上であり、困難に立ち向かい続ける根気強さであり……。彼らの成長はピーチ姫に強引な求婚を決行したクッパとの戦いに内在する形でそれとなく描かれている。
しかし、ほかでもない任天堂を代表する「マリオの映画」である。前作は確かに兄弟の成長を描いていたけれども、ほとんど対話なしに物語を紡ぐシリーズにおいて、マリオたちの知られざる一面や、共感を誘ったり納得できたりする人物像がスクリーン越しに投影されるのだ。マリオがジョークを飛ばし、ルイージが案の定ビビり倒す。ピーチ姫はおてんば気味に強くて、クッパはやたらにピアノが上手い。そんな彼らのやり取りを「もっと見ていたい」という気持ちがひたすら強まる映画であった。
今作「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」は、そういう“マリオ映画のマリオたち”を渇望するファンのアンコールに応えた続編映画だ。前作で描けなかった主要キャラクターたちに焦点を当てつつ、その相関関係に映像作品なりのアンサーを出している。それも「任天堂と言えば」と言わんばかりの無数のイースターエッグを散りばめて。
だが、何を描くにしても、新しい物語には当然「新しい舞台」と「新しいキャラクター」が登場して然るべきだろう。そうでなければきっと2作目ではなく、1.5作目になるかも怪しいスピンオフ作品止まりになってしまう。ゆえに今作では、ロゼッタ、ヨッシー、クッパJr.に加えて「スターフォックス」からフォックス・マクラウドが登場することになった。
中でもフォックスは、任天堂の公式発表から大いにファンを賑わせた一大トピックだ。しかも彼は単なるカメオ出演ではなく、任天堂ユニバースの可能性をあらためて示唆する強い存在感を放つ。そんなフォックスの存在もまた、ある意味では「絆」を体現する生き証人のようなものである。フォックスはファンサービスだけで終わらず、彼自身が舞台装置の役割と宇宙のスケールを感じさせる重責を担っている。幼少期に、「スーパーマリオブラザーズ」シリーズと並び、「スターフォックス」シリーズでも育ってきた筆者にとっては、これほど胸熱な展開もそうない。
銀河級の情報量は魅力か、それとも“詰め込み過ぎ”か。繰り出されるネタの数々に任天堂ファンはどう向き合う?
前作に続き、今回もおよそ90分という尺の中に、これだけたくさんのロケーションを詰め込めたと感心する。どれもが結果的に物語の進行と有機的に結びついているし、それらが決して無意味な場所になっているわけでもない。限られた尺でマリオたちの冒険と原作ゲーム「スーパーマリオギャラクシー」の壮大な世界を、映像作品として表現するうえで、結局それらは欠かせなかったのだろうと思う。
その一方で、逆に“あらゆるもの”を詰め込み過ぎてしまってはいないか、とも思えてならないのだ。仕込みの数々は一部のファンにとって集中を削ぐ大きな要因になり得る。筆者もいっとき物語を忘れてしまい、画面端に遊び心が隠されていないか探してしまう瞬間が度々起きた。恐ろしいことに、これがほとんど無意識なのである。ひとつ見つければ、そこから次のネタを探してしまう……。これは映画本来の楽しみ方というより、どちらかといえば副次的なもの。要するに2周目の楽しみ方なのではないだろうか。
イースターエッグを忍ばせるのに、数多の星々と生命体が交錯する「銀河」が、これほど舞台設定としてピッタリハマる場所もほかに考えられないからこそ、実に悩ましい。さらなる続編が決まるかどうかもわからない状況で、可能な限りネタを忍ばせたかったかどうかは筆者の知る由もないところだが、仮にそのようなメタな邪推をしても「制作上の都合」と納得できてしまう部分がある。
前作には登場しなかった、ゲームシリーズ由来のキャラクターがいたり、特定ハードウェア世代のユーザーには見覚えのあるロボットが登場したり、とにかくファンへのサービス精神に溢れている。だが前述した通り、こうした試みが任天堂ファンほど“罠”になり得る。ネタを忍ばせるほど、物語そっちのけで探すことに夢中になるファンが必ずや出てくる。SNSが浸透した現代映画の楽しみ方として、発見の情報共有自体は肯定されるべきものだが、果たして作り手が本当に見せたいものを、どれだけ純度高く届けられるのだろうか、と考えてしまう。
前作はわかりやすくマリオブラザーズの成長を描いた。そして、今作もわかりやすくキャラクター同士の関係性にフォーカスしている。そこに哲学的な問いを込めているとまでは到底思わないが、やはり物語を綺麗に着地させる意味でも、最終的にはユーザーが受け取る作品なりのメッセージが芽生えてくる。その上で人によって感想と解釈が異なるのが映画の醍醐味だろうし、語り継がれる名作の証左だと思う。
だが、「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」は、どちらかと言えば、無数のネタを忍ばせたことにより、マリオを知らない人の方が自然と物語に溶け込みやすく、作品の旨味をより素直に受け取れるのではないか。そこまでマリオのゲームに触れていないからこそ、イースターエッグを気に掛ける必要性はないし、それだけ映画に没入できそうだ。そういう点では本来、マリオの映画を楽しみに劇場へ足を運んだファンほど、意図せず集中力が損なわれてしまうような詰め込み方になっている。これをどう受容できるか、試されているのは、むしろ任天堂ファンの側なのかもしれない。
宇宙へ広がる冒険と任天堂らしい“楽しい”が詰まった最新作!
今作は、続編映画特有のハードルを手堅く飛び越えてきた2作目だ。前作が楽しめたファンならば、今作を鑑賞しても間違いなく「面白い!」と感じられる作品だと思う。前作で印象的だった、クラシックマリオの横スクロールネタも相変わらずだ。今作はそうした見せ方にはさらに磨きがかかっている。同じくゲームのネタで言えば、パワーアップアイテムを使ったアクションシーンの数々も世界観にごく自然な形で溶け込んでいる。能力の応用のさせ方には、思わず「なるほど」とうなずかされる心持ちだった。
今回は日本語吹き替え版を視聴したが、日本人キャストの演技と声質も前作に続いて驚くほどハマっていた。アニメ、ゲーム、映画、ドラマ……と、これまで日本が培ってきた声優文化の厚みが、如実に反映されている吹き替えクオリティである。マリオブラザーズの安定感はそのままに、ピーチはよりおてんばでクッパはより憎めない大魔王となった。クッパJr.も驚くほどイメージ通りだ。ロゼッタに関しては、配役に個人的な思い入れが強すぎるため、ここでは深く触れないでおきたいが、とても満足している。
総評として、前作から地続きとなるマリオ映画の2作目にふさわしい出来だった。ただし、ここまでに書いた通り、やや「詰め込み過ぎた感」は否めない。今作から登場したロゼッタの出番は、物語展開や尺の都合から考えても少なめで、そこは残念に感じる。冒険の舞台が宇宙にまでスケールアップしたのだから、映画の尺ももう少しだけあれば、新キャラクターの活躍をより増やせたろう。その代わり、マリオブラザーズには“ヨッシー”という愛らしくノリが良い新たな相棒が誕生した。ルイージとイメージカラーの点でキャラ被りしているが、マリオとルイージに負けないほどコミカルでユニークな活躍ぶりを見せつけてくれる。生き生きとしたヨッシーを前に、思わず頬が緩むはずだ。任天堂の「楽しい」が詰まった映像作品の醍醐味を、ぜひ劇場にて堪能していただきたい。
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