レビュー

「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」レビュー

真島吾郎の魅力が詰まった“らしさ”全開なシリーズファン必見作

【龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii】

2月21日 発売

価格:
パッケージ版・デジタル版 6,930円
パッケージ限定版 真島吾朗 コンプリートボックス 19,800円
デラックス・エディション 8,690円
CEROレーティング:D(17才以上対象)

プレイ人数:1人

 祝! 嶋野の狂犬、真島吾郎、還暦!

 と祝ったところだが、開始早々に真島が記憶喪失のところから始まる波瀾万丈な物語、それが「龍が如く」シリーズ最新作、「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii(以下、龍が如く8外伝)」だ。

 毎作驚きを見せてくれる「龍が如く」シリーズだが、「龍が如く8」の興奮冷めやらぬ中、「『龍が如く』最新作 ミナト区系女子オーディション」の開催から新作が開発中であることがわかり、安心したシリーズファンは多かったことだろう。

 そこから、間を空けた2024年9月20日に開催されたRGG SUMMIT。そこで、最新作が「龍が如く8外伝」であること、そして、主人公が嶋野の狂犬こと真島吾郎であることが発表された。

 まさかの真島が主人公、しかも記憶喪失で海賊船の船長として暴れ回る。それは「龍が如く」シリーズのファンとしても、1人のゲーム記者としても驚かされた。

 そんな驚きから数カ月、2月21日についに発売を迎えた「龍が如く8外伝」。シリーズファンの、そして真島のファンの期待に応える作品として登場した本作、今回はそのレビューをお届けしていきたい。

【『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』ローンチトレーラー【2025年2月21日発売】】

嶋野の狂犬・真島吾郎という男

 繰り返しになるが、本作の最大の特徴はあの真島吾郎が主人公であることだ。嶋野の狂犬と呼ばれる元極道。真島組の元組長や、極道組織東城会の幹部という顔もあった。

 彼はシリーズ最初の作品「龍が如く」で登場。プレーヤーはなんの先入観もなくこの真島と出会うのだが、隻眼、上裸にヘビ柄のジャケット、黒の革パンとぶっ飛んだルックスの上に、声優の宇垣秀成さんの「キ(↑)リュウチャーン!」というセリフはあまりにも強烈で、多くのプレーヤーの記憶に刻まれたことだろう。もちろん筆者もその1人だ。

 そこから桐生との戦いを求め、何度もプレーヤーの前に立ち塞がる真島。この時はある種の戦闘凶のような描かれ方だった。

今作では上裸に海賊のコートを羽織った姿で活躍する。こちらもなかなかのインパクトだ

 その後、シリーズを重ねるにつれ、作品のレギュラーとして登場することとなる真島。狂気を感じさせるキャラクターだし、独特な思考を持っていたが、時として1人の極道、そして組織を率いる長として筋の通った姿も見せた。

 彼にクレイジーな部分があるのは間違いない。だが、彼はただの狂人ではない、日本の裏社会で生きる男としてのカリスマ性を持っているのだ。そういった面もあり、プレーヤーから高い人気を得ているのだろう。

 そんな、唯一無二のキャラクターである真島の魅力が異なる角度から描かれるのが、本作「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」なのだ。

嶋野の狂犬としてではなく、ゴロー海賊団の船長として活躍する真島。その異なる視点だからこそ浮かび上がる魅力を本作では楽しめる

記憶を失っても真島節全開! 真島が人々の心を動かして紡ぐ壮大なストーリーが魅力

 ゲームは真島が記憶喪失でハワイ近郊のリッチ島という島に打ち上げられているところから始まる。

 喉はカラカラの状況。そんな瀕死の状態の真島を助けるのが、好奇心旺盛な少年「ノア」だ。リッチ島で元トレジャーハンターの父「ジェイソン」と姉の「モアナ」と暮らしている。

 ジェイソンはよそ者で見るからに厄介者な真島を冷たくあしらうが、ひょんなことから運命は転がり始め、命の恩人であるノアの「広い世界を見たい」という願いを叶えるため、真島は「ゴロー海賊団」の船長となり、ジェイソン、そしてかつてジェイソンと共に冒険をしていた「マサル・フジタ」らと共に海へ、そして波瀾万丈な旅へと出発するのだ。

 昼間から飲んだくれていたジェイソンと、別の海賊団の船員として航海していたマサルは以前追いかけていた伝説の「エスペランサ号の財宝」を追いかけることになる。それぞれに目的があるのは、ネレ島で放射性廃棄物の処理をしている元極道の志垣輝彦や、教団パレカナの信者ロドリゲスも変わらない。そんな人物達が真島と出会うことで運命が動き出し、それぞれ交差していくストーリーが本作の面白さだ。

ジェイソンやマサルとの出会い。真島と出会うことで彼らの人生が大きく動き始める

 ストーリーの概要だけみるとかなり強引な展開だと想像してしまうが、シリーズファンであれば真島なら、と納得してしまうから不思議だ。真島らしさが詰まった物語はゲーム序盤からたっぷり堪能することができる。

 例えば、病弱で発作を持っているノアをどうしても島の外に連れ出したくないジェイソン。そんなジェイソンに対し、真島は「ノアを島に縛り続けるとノアが腐ってしまう」と説得する。もちろん、その説得を素直に受け入れるジェイソンではないが、真島の力尽くの説得と、ノアの強い願望、昔の仲間であるマサルからも頼み込まれたことがあり、ゴロー海賊団に合流することになる。

 また、「エスペランサ号の財宝」に関する駆け引きでも、真島のカリスマ性、そして日本の裏社会で生き抜いてきた真島だからこその手腕。こういった部分のカリスマ性は記憶を失っても真島節は全開と言ったところだろうか。

 こうして、ノアをきっかけにした旅立ち、そして真島のリーダーシップによりにより、ゴロー海賊団自体、そして船員たちが成長していく姿が描かれる。そして圧倒的なカリスマ性を発揮した真島は名実ともに海賊団の船長として名を馳せていくのだ。

 ただ、ストーリー面で残念な点を挙げるとするならば、もう少し丁寧に物語を描いて欲しかった登場人物がいたことだ。特に、いかにも物語のキーになりそうな描写があった人物があっけなく物語から退場してしまったり、無理矢理にも感じる展開で戦うことになる登場人物がいるなど、いささか急展開に感じられる部分があった。とはいえ、全体から見ると些細な点であり、本作の全体のストーリーが非常に魅力的だったことは改めて強調しておきたい。

ノアはもちろんだが、他の登場人物達もまた、真島の影響で成長していくのだ

狂犬ぶりはもちろん健在! 2つのスタイルを使いわける爽快バトルが楽しめる

 続いて、「龍が如く」シリーズでは欠かせない戦闘についても見ていこう。真島は「狂犬」と「パイレーツ」という2種類のバトルスタイルを持っており、これを状況に応じて使い分けていくというのが本作での基本的な戦い方となる。

 狂犬は真島を象徴する、素早い動きとドスを使った立ち回りが特徴。ドスを使った攻撃に加え、素手、蹴りなどを織り交ぜ、舞うような爽快な立ち回りを楽しめる。今作ではシリーズ初となるジャンプも取り入れられ、地上で敵をボコボコにした後空中に打ち上げて追撃をたたき込む、といったコンボアクションもある。

 さらに「狂気ゲージ」を溜めると「分身」を発動できる。分身は自律的に動き敵を攻撃。常人離れしたアクションだが、真島ならできそうだなと思わせてくれる。

 分身はどのタイミングで使っても強力だが、筆者は特にボス戦などで敵が少数、もしくは1体になったときに使うことが多かった。そうすることで分身の攻撃が集中し、より効率良くダメージを与えられたからだ。

 狂犬スタイルは1体1体への攻撃力は高めなので、少数の敵を相手する時に向いていると感じた。

「狂犬」スタイルは小規模な敵集団を相手にするときに真価を発揮する

 もう一方のパイレーツは、今作の目玉とも言える“海賊”らしさを象徴するバトルスタイルである。

 カトラスという湾曲した刀を両手に持ち、その刀身の長さを活かして複数体の敵をまとめて切りつけられる。さらにゲームを進めて行くことで銃やワイヤーフックといった海賊道具も入手でき、カトラスで切りつけた後にダメ押しで銃弾を撃ち込んだり、離れた敵にはワイヤーフックで飛びかかり一気に距離を詰めることもできる。そういったトリッキーなバトルが楽しめる。

 こちらのスタイルの時に狂気ゲージを溜めると、「呪神楽器」を演奏し「呪神」を召喚する。呪神は非常に強力で、真島の周囲にいる敵をまとめてド派手に蹴散らしてくれる。

 トリッキーだからといって操作が難しいわけでなく、適当に攻撃ボタンを連打していればコンボが繋がって爽快なアクションを楽しめるのが「龍が如く」シリーズの伝統。もちろんパイレーツスタイルでもそれは健在だ。

 パイレーツスタイルは複数体の敵と対峙するときにまとめて戦える点が気に入った。特に今作では海戦のあとの決闘などで十数体の敵と一気に対峙することもあり、そういった時に活躍した印象だ。

 この2つのスタイルは戦闘中いつでも切り替えられるので、その時の状況に合わせて使えるのが嬉しい。例えば普段はパイレーツスタイルで戦うが、分身を使いたいときだけ狂犬スタイルに切り替えるような戦い方もできる。

 こういったバトルの幅は「龍が如く」らしいバトルアクションを受け継いでおり、シリーズファンは安心してプレイして欲しい部分だ。

二刀流のカトラスを振り回して戦う。複数の敵を巻き込めるので、大規模な集団を敵にした時に有効だ

「海戦バトル」は直感操作ながら船のカスタマイズなどやり込み要素も充実

 通常の戦闘においてパイレーツスタイルで海賊らしさを発揮できるが、本作では海賊そのものになりきっての壮大な戦いを楽しめるオリジナルコンテンツ「海戦バトル」も大きな魅力の1つだ。

 海戦バトルでは海賊船「ゴロー丸」を操り、船同士のバトルが繰り広げられる。「龍が如く」シリーズでは初となるシステムを採用したコンテンツなため、筆者もプレイするまではどんな感覚になるかの想像が全くついていなかったが、実際に体験してみると驚くほどにスムーズにプレイできた。

 移動は左スティック、視点を動かすのは右スティックと操作は至ってシンプル。海賊船そのものを動かしていくのだが、帆を動かしたりと船独特の複雑な操作は殆どなく、直感的に操作できた。

 メインの攻撃手段は両サイドの大砲と、進行方向に向けて攻撃できるガトリングガン。真島を操作して甲板からロケットランチャーを打ち込むこともできるが、火力的には大砲、そして攻撃の当てやすさではガトリングガンが肌に合っていたため、筆者は攻撃手段としてはあまり使うことがなかった。

 基本的な戦い方としては両サイドの大砲が上手く敵船の方に向くように舵を切り、リロードが終わっていれば発射。素早く離脱してガトリングガンによる追撃を狙ったり、リロードが終わるまで距離をとったり、もしくは逆サイドの大砲を近づけるなどの立ち回りがある。

 もちろん、敵船も攻撃してくるので毎回理想的な立ち回りができるわけではないが、基本はこういった流れとなる。

上手く立ち回りながら大砲とガトリングガンによる攻撃で敵船を沈めるのだ

 プレイに大きな差が出るのがゴロー丸のカスタマイズで、特に両サイドにどんな砲台を置くかで戦い方が変わる。

 実弾を撃ち込む「大砲」が最もスタンダードなところだが、射程は短いものの炎で攻撃する「火炎放射砲」や、レーザーで攻撃する「レーザー砲」などが存在する。遠距離からも攻撃が当てられるようにするなら大砲を使うのが良いだろうが、接近して火力で圧倒する場合は火炎放射砲などが選択肢に挙がるだろう。こうやってプレイスタイルにあわせてゴロー丸をカスタマイズし、戦っていくのが面白い。

 なお、海賊バトルはオマケというわけでなく、ストーリーを進めていく上でも必須のコンテンツとなっているので、ゴロー丸はきっちり成長させ、海賊バトルにも慣れておきたいところだ。

ゴロー丸のカスタマイズや強化も非常に重要だ。ストーリーでも複数回の海戦があるのでしっかり成長させておきたい

オリジナルのサブコンテンツでハワイを満喫! シリーズお馴染みのミニゲームを遊び尽くそう

 そして「龍が如く」シリーズと言えば街遊びの要素は外せない。もちろん本作でもしっかり楽しめる。特に今回はハワイ・ホノルルシティに加え、リッチ島やマッドランティス、そしてハワイ周辺の海域までと舞台は広い。これらの要素は広いからと言って味が薄いわけではなく、きっちりと密度濃く作ってあるのはさすがという印象だ。

 プレイスポットやサブストーリーはバラエティ豊かで感動モノから少し笑ってしまうものまでその豊富さはシリーズ譲り。外伝作品だからボリュームが少ないのでは?といった心配は一切要らない。

過去作にもあったプレイスポットも登場する。こういった寄り道も楽しい
こんなキャラも登場するのか! と思わず口に出してしまうようなサブストーリーも

 特に注目のサブストーリーと言えば、発売前から話題になっていた「ミナト区系女子」に関するものだ。オーディションで選ばれた5人のミナト区系女子にはそれぞれのサブストーリーが用意されており、全員分のサブストーリーを進めると、マサルとミナト区系女子のコンパが開催できる。

 コンパの様子は実写ムービーで、ロバートの秋山竜次さんが演じるテンションが上がったマサルの様子が見られるのでぜひチェックして欲しい。

「ミナト区系女子」のサブストーリーで見られるロバートの秋山竜次さんのムービーは必見だ

 また、サブストーリーとも関連するが、個人的に楽しかったのは街を巡りながら船員をスカウトしていくという遊びだ。街の様々なところに船員候補がおり、それぞれの船員毎の条件を満たすとスカウトができる。この条件がそれぞれで面白く、単純にゴロー海賊団のランクが上がったり、戦闘して倒せば合流してくれる船員もいるが、プレイスポットで好成績を残すと合流してくれる人や、特定のアイテムを渡すことで合流してくれる船員もいる。

 街遊びを楽しみながら、船員候補を探し、スカウトし、船員を育てていく。そういった海賊団の船長として指揮していくのは楽しい。

船員をスカウトしていくのも楽しい
街にいる賞金首を探していくのも海賊らしく面白い要素の1つだ

 「龍が如く8外伝」は発表から驚きをかっさらってくれたが、その驚きから高まった期待にきっちりと応えてくれる作品に仕上がっていると感じた。特に、真島吾郎という人物の魅力を、海賊団の船長として活躍する姿から浮かび上がらせたところは秀逸で、「龍が如く」シリーズを遊んできたファンにとっては堪らない内容となっている。

 さらに、記憶喪失から始まる真島の物語の締めくくりは開発陣からファンへのメッセージとなっており、シリーズファンほどこのエンディングにはグッとくるモノがあるだろう。ぜひ、真島の活躍を見つつ、そのメッセージを受け取って欲しいと思う。

 次回作があるとしたら、主人公が誰になるのか。やはり春日一番を中心とした物語が展開されるのか、低い確率だが真島が連続2作品の主人公を務める可能性もある。一方で、2024年12月13日に開催された「The Game Awards 2024」で発表されたプロジェクト「CENTURY」こそが次回作なのかもしれない。

 新作が発表される度に驚かされてばかりだが、次はどんなサプライズを用意してくれているのか、今から楽しみでしょうがない。龍が如くスタジオの今後の動向に引き続き注目していきたい。