レビュー
「モンスターハンターワイルズ」レビュー
高い完成度! 新しくて快適、でもしっかり「モンハン」な新たな形
2025年2月27日 00:00
- 【モンスターハンターワイルズ】
- 2月28日 発売予定
- 価格
- 通常版:9,900円
- デラックスエディション:11,900円
- プレミアムデラックスエディション:13,900円
2月28日に発売を間近に控えた「モンハン」シリーズ最新作「モンスターハンターワイルズ」。続々とゲームの全貌が明らかになっていく中で、メインストーリー部分以外にも「狂竜化」の存在や「歴戦の個体」といったファン待望のやりこみ要素等も数多く用意されていることが判明し、多くのプレーヤーが新たな狩猟体験に期待を寄せている。
今回はそんな本作の製品版を一足早くプレイできた。改めて本作の特徴や注目ポイントを振り返りながら、実際に体験した所感を交えて新情報をお届けしたいと思う。
未開の地「禁足地」を旅するストーリー!
本作の物語は「モンハン」シリーズで度々単語としては登場していた「禁足地」が舞台。そこからやって来たという謎の少年「ナタ」を故郷へ送り届けることを第一の目的に、「禁足地」に住む人々や「白の孤影」といったモンスターの調査を行う形で物語が描かれる。
本作は、「禁足地」を旅するストーリーテリングに合わせて、オープンワールドで表現された牧歌的で自然味の強い世界観が特徴だ。さらにハンターやギルドの概念が存在しない「禁足地」だからこそ描けるドラマなど、既存シリーズにはない新たな表現が目指されている。
ストーリー部分に関しては事前レビューで紹介してきた通り、「禁足地」の行く先々で出会う人々や生物たちの問題を解決しながら調査を進めていくことがメインのひとつ。しかし、製品版の本編では特定のタイミングから「白の孤影」を軸に別のアプローチが入る。
具体的な内容は実際にプレイして確かめてほしいが、同じストーリー軸ながら「実際の物語のテーマはこっちなのか?」と感じられるエピソードが後半に用意されているイメージだ。プレーヤーに訴えかけるようなテーマであり、このアプローチによって物語に深みを持たせているのが印象的だった。
オープンワールド×セクレトがとにかく画期的
本作のゲーム面での特徴となるのは、この独特の世界観を活かす形で再構成された新たなシステムの数々だ。
プレーヤーの本拠地となる「ベースキャンプ」は、1つの場所ではない。プレーヤーは、ゲームが進行するに連れ、景色も環境もガラリと変わる様々な場所を旅していく。オープンワールドのフィールドをシームレスに往復することで、「禁足地」の自然的で広大な世界観をより強く感じられるだろう。そのことで、既存シリーズにはないような体験を数多く生み出せている印象だ。
新要素であり、乗用できる動物「セクレト」もその点に大きく貢献しており、オープンワールドとなってより広大になったフィールドであっても、迷子になることはほとんどない。とにかくセクレトに乗れば、目標に向かって自動で走ってくれる。
そのため、目標となるモンスターの発見やアイテム回収がスムーズに行える。ゲームの規模感は大きくなったが、そのことで発生するプレーヤーの手間は事前に全て解決されているように感じた。
今作ならではのこれらのシステムは、プレーヤー目線だと非常に快適。ゲーム中は目的地や目標を見失う事が全くなく、とりあえずフィールドでは「セクレト」に案内を任せていれば狩猟を楽しめる。移動における煩わしさは皆無だった。
また既存シリーズではクエストを受ける→その中で物語が進むという形がベースだったが、本作の場合は特定のイベントでストーリーが進む→その中でクエストが始まるといった手法になっている事で没入感も強くなっている。物語を表現する上でもシームレスである点が活かされているようにも感じる。
細かいシステム含め、シリーズ屈指の快適さに
実際のプレイ感を紹介すると「ハチミツ」や「鉱石系素材」といったアイテムを集める場合は「ファストトラベル」を用いてフラッとフィールドに向かって採集し、特定のモンスターの素材が欲しい場合はこれまでのシリーズ通り、討伐クエストを受注することが殆どだった。
細かいアイテム収集のためにわざわざクエストを受けなくて良いのは「ワイルズ」ならではで、本作の良さが発揮されていたように感じる。
「モンハン」シリーズと切っても切れない関係である「食事」回りのシステムも、今作ではクエスト中だろうがフィールドに居る時だろうが、どこでも「食事」を行えるようになった。クエストの度に行う必要がないため、世界観にマッチさせた形でプレーヤーの手間が1つ解消されている印象だ。
加えて「武器・防具のウィッシュリスト機能」「アイテムの一括補充」「移動中のアイテム使用」といった既存シリーズの中で培われて来た便利システムも殆ど導入されているため、プレイ感の差異で煩わしさを感じる事もほぼない。総じてシリーズ内でトップレベルの快適さになっていた。
「傷口」「集中モード」「武器の2つ持ち」が今までに無い狩猟アクションを可能とする!
今作の狩猟アクションの大きな特徴となっているのが「傷口」「集中モード」「武器の2つ持ち」といった数多の新要素である。
「傷口」「集中攻撃」が楽しい!
モンスターに攻撃を当て続ける事で「傷口」を発生させ、「集中モード」でその「傷口」を狙うように「集中弱点攻撃」を行える。
モンスターへ大ダメージ&ダウンを狙う事ができ、さらに武器によっては「集中弱点攻撃」を行った際に固有の恩恵を受けられるため、この2つの要素は本作のアクションの基軸になると言っても過言ではない。
またマルチプレイにおいては「集中弱点攻撃」で恩恵を受けられる武器がある以上、誰が「傷口」を狙うかでチームプレイに味が出るのも面白い要素と言えるだろう
実際の狩猟中でも「集中モード」で随時モンスターに「傷口」が発生したかを確認する事が多く、「集中弱点攻撃」を行うタイミングを見極めて大ダメージを与える立ち回りは中でも重要な要素となっていた。他にも部位破壊が簡単に行える、モンスターを注視できる事で操作精度が上がるといった恩恵もあるので、今作においてこれら2つの新要素はやり得だと感じるほどの活躍っぷりだった。
ハンターの行動の選択肢が増えたと捉える事もできるが、一方で狩猟中はこれらの要素が戦略の大部分を占める事になるため、攻略上はこれらのシステムに少なからず慣れる必要が出てくる。本作を面白いと感じられるかは、この「集中モード」のアクションを楽しめるかどうかにかかっていると個人的には感じている。
とはいえ、同じ作業がずっと繰り返されるわけでもない。ゲーム後半になるとモンスターの動きは苛烈さを増して狙いが付けづらくなったり、中には「傷口」を回復する存在も現われたり、一筋縄ではいかなくなる。総合的には、「傷口」回りのシステムで様々な独自の面白さを本作では体験できるようになっていた。
出せたらカッコよすぎる「鍔迫り合い」と「相殺」
アクション面での追加要素としては、モンスターの攻撃に合わせてアクションを出す「鍔迫り合い」と「相殺」の2つがある。
どちらも成功するとモンスターの隙を作る事ができ、見た目にも派手な演出が発生するので、決まった時の爽快感は抜群。派手かつ効果的ということで、チャンスがあるなら是非とも狙っていくことで、狩りの爽快感はさらに増していくいい要素だ。
ただ、タイミング的にはシビアなところがあって、ビギナーが狙って行うには少し難易度が高い要素と言える。筆者自身も狙って出せたのは数える程で、「何か出せた……!」と偶然できたタイミングの方が正直多かった。
なので難しいと感じた場合は、最初は無理に狙わず、慣れて来たモンスターに試してみる、といったやり方が安全かなと個人的には感じている。いずれにしても、ガードをメイン戦法とする「ランス」や、どちらも狙える「大剣」をメイン武器とする場合は積極的に狙いやすい要素なので、ぜひそれぞれの武器の担い手は狙ってみて欲しい。
武器2つ持ちは組み合わせの妙が面白い
本作から可能になったフィールドでの武器2種持ちは、様々な戦略が生み出せるようになっており、非常に面白い要素だと個人的には感じた。
「アクション中に即変えられないなら結局1種類だけしか使わないのでは?」という声も一部のプレーヤーからは上がっていたが、ゲームを進めて武器の選択肢が増えていく、としっかり意味を見出せることも多い。
例えば、筆者がよく使用していた組み合わせが「メイン近接武器+ヘビィボウガン」の組み合わせだ。状況によってガンナーに立ち回りを変更するといった使い方は基本だが、ヘビィボウガンはそこからの使い道が幅広い。
メイン武器を中心にする場合でも、合間に「鬼人弾」や「硬化弾」を自身に打ち込む事でバフをかけたり、「睡眠弾」でモンスターの睡眠を狙う、「竜熱モード」での特殊弾や「拡散弾」など使用に制限のある攻撃を撃てるだけ撃って即武器チェンジする事ができるなど、「ヘビィボウガン」はメイン武器を支える形で、優秀なサブ武器として利便性が高い。
他にも隙が大きい代わりに大ダメージを狙うアクションが売りの「大剣」や「ガンランス」に、睡眠属性で手数の多い「双剣」や「片手剣」を合わせたり、同じ武器種でも属性や「ビン」「強化パーツ」などを分ける事で使用感を分けたり、様々な立ち回りが可能になっている。
当然武器1本だけでも攻略する事は可能なので好きなスタイルで挑戦できるが、武器のコンボによる独自の面白さがしっかりあるという点では、色々と深堀りしたり挑戦できる要素だと筆者は感じた。
武器にもスキルが付与。今まで以上のビルドが可能に
武器の話が出たので、合わせて今作の武器と防具、それに伴うスキルのプレイ感についても触れて行こう。
今作ではハンターを有利にする様々なスキルが防具だけでなく各種武器にも付随している。これにより同じ属性や似た系統の武器であっても、スキルの違いで使用感が異なるなど、ビルドの幅広さはさらに増している印象だ。
またこれまで通り、防具のシリーズ系統を一定数統一する事で発生するスキルもあり、必要なスキルを集中的に集めたビルドをするか、ある程度統一させてシリーズスキルを発動させるかなどの選択肢も数多く用意されている。
シリーズ恒例の、スロットに「装飾品」を装着してスキルを付与する事も可能なので、本作でも十分武器防具のビルドを楽しむ事ができそうだ。
全体的なゲーム難易度・ボリューム感について
新要素や独自のゲーム感をある程度紹介したところで、本題と言っても良い本作の難易度・ボリューム感についても触れて行こう。
結論から言うと、筆者の個人的な感想にはなるが、随所に新しさを感じられながら”ストレス無く初心者でもしっかり楽しめる難易度”になっていたと感じている。
オープンワールドのフィールドやシームレスなクエストなどの新要素は、人によっては既存シリーズとの乖離を強く感じてしまう可能性がある。が、それら全てがしっかりと、他の新要素によって快適性を底上げする形でカバーされている。プレイする上で、迷子になったりストレスに感じる要素は殆どなく、しっかりゲームに没入できたのは、開発者の見事な手腕を感じさせてくれた。
モンスターとのアクションも本作の独自性がしっかり光っていて、「傷口」を中心とした新たな立ち回りは今までの「モンハン」には無いゲーム性を生み出している。初心者目線でも「とりあえず傷口を狙えば有利になる」という事が明確に提示されているし、その上でアクションの爽快感はしっかり”モンハン”なので狩猟の面白さはバッチリだった。
武器・防具を揃える際も、今作の場合はそこまでモンスターの周回を必要としない感覚があるし、様々なビルドをより手軽に楽しむ事ができるように思う。移動の手間は「セクレト」と「ファストトラベル」が全て解決してくれるので、特にアクションや装備ビルドに集中して楽しみたい人には非常に適したゲームバランスだ。
プレーヤーの快適度が上がり過ぎてゲーム難易度が下がっているように感じなる部分もなくはないが、そこに関しては今後追加されるDLCや高難易度クエストにも期待したい。そう考えると、本作はどの層のプレーヤーでも楽しめる形に落とし込めているように筆者は感じた。
ソロプレイでも十分クリア可能な難易度になっていると個人的には思うし、「傷口」回りのシステムはモンスターと一対一の勝負をしている時こそ面白さをダイレクトに楽しめると思う。オススメとしては、最初からマルチ前提で遊ぶのではなく、ソロでストーリーを堪能したあとに、高難易度クエストをマルチで楽しむと、より本作の良さを味わいやすいだろう。
また全体のボリューム感に関しては、あくまで個人的にだが既存シリーズと比較すると気持ち少し控えめな印象も感じた。
加えて武器・防具の製作難易度の緩和、全体的なモンスター攻略の歯ごたえを鑑みると、シリーズに慣れているプレーヤーなら、ストーリー部分に関しては詰まることなく爆速で進められる事が可能だろう。
とは言え、ゲーム作品単体で見れば十分なボリューム量となっており、今後の追加コンテンツや高難易度クエストといったエンドコンテンツまで含めればしっかり満足感のある内容だったと思う。
思えば前作「ワールド」や「ライズ」も発売当初は似たような評価をされていた記憶があるので、今作も最初の甘い評価から、一転してエンドコンテンツや追加要素でしっかりハンターを“沼”に落とせるポテンシャルが十分あるだろうと予見している。
「ヌ・エグドラ」との狩猟を紹介!まるで歩く火山のような攻撃に注目…!
最後に、発売直前で情報解禁となった「ヌ・エグドラ」との狩猟について触れて行こうと思う。
発売前から「モンハン」らしからぬ異形の姿で多くのハンターの度肝を抜いた「ヌ・エグドラ」だが、「油涌き谷」に相応しい強さを秘めたモンスターとなっていた。
タコがモチーフとなっている「ヌ・エグドラ」は今までのモンスター達と違い、骨格がそもそも軟体動物なので移動モーションもヌルっとしている。地中に潜ってハンターの背後を取って来るなど、プレーヤーの意表を突く動きを多数行ってくる。
攻撃方法も無数のタコ足での物理攻撃、溶岩を投げつけたり炎を撒き散らす炎攻撃といったイメージ通りのモノから、異名にもなっている「黒い炎」を彷彿とさせるブレス系の大技を持っていたりなど、ヌシらしい強力な攻撃パターンを数多く持っている。
攻略の際に注意する必要があるのが、エリアや「ヌ・エグドラ」の攻撃によって炎のスリップダメージを受ける事が多いということ。そのため、不意に力尽きてしまう事がある。
また大技の炎ブレスは横範囲への拡散力が凄まじいため、全力で逃げないと被弾する可能性が高い点にも注意が必要だ。武器を構えたまま避けようとすると十中八九被弾するので、回避に専念するべき攻撃だろう。
加えて一定時間が経過すると「ヌ・エグドラ」は炎纏い状態になり攻撃がさらに苛烈になる。この状態だと炎を使った広範囲攻撃を多用して来るので、回避に専念するのがベターだ。
討伐する上で鍵となるのが部位破壊で触腕を破壊する事や、「ヌ・エグドラ」を誘導して油泥が無いエリアにおびき出す事だろう。
部位破壊に成功すると一部の攻撃範囲が縮小するため被弾しにくくなり、油泥が無いエリアであればプレーヤーが足元を気にする必要が無くなるので立ち回りが格段に楽になる。
他にもブレス攻撃中は隙だらけなので横に回り込めば攻撃チャンスができたり、炎纏いの解除でダウンが狙えたりなど攻撃のチャンスもしっかり用意されているので、対峙していて楽しいモンスターになっている。特に切断系の武器で触腕をぶった切った時の爽快感は竜系のモンスターでは味わえない体験なので、ぜひ部位破壊は積極的に狙ってみて欲しい。
「モンハンワイルズ」は、感想を素直に伝えると、非常に完成度の高い作品だ。
数多の新要素に挑戦しつつ、ここまでノイズ無く”モンハン”を楽しめる形に落とし込んだのが何より素晴らしい。新しいシリーズの形として、しっかり楽しめる作品だったと強くオススメできる。
全体的に快適になった事で難易度は多少ビギナー寄りには感じたが、追加コンテンツ等で歴戦ハンターでも音を上げてしまうようなクエストを配信してくれるはず(ぜひとも)なので、今後にも期待できるだろう。
狩猟解禁まであと僅かとなった本作。気になるプレーヤーは、ぜひ本作の新たな狩猟体験を味わってほしい。
(C)CAPCOM