レビュー
ホロライブ・猫又おかゆさん主演&監修「おかゆにゅ~~む!」レビュー
“素直”になった時、あなたは「おかゆにゅ~~む!」を摂取して、おかゆとひとつになる
2025年2月27日 00:00
- 【おかゆにゅ~~む !】
- 2月27日 発売予定
- 価格:2,970円(ダウンロード版)
- 9,900円(完全生産限定版、Switch/PC版のみ)
ホロライブプロダクション所属のバーチャルタレント・猫又おかゆさん主演&監修のプレイステーション 4/Nintendo Switch/PC用純愛ノベルゲーム「おかゆにゅ~~む!」が2月27日に発売となる。なお、本作はチャプター2までが遊べる体験版が各プラットフォーム向けに無料で配信されている。
本作は前述の通り、ホロライブゲーマーズ(2期生)の一員であり、おにぎり屋さんを経営するおばあさんに飼われている猫・猫又おかゆをフィーチャーしたADV(アドベンチャーゲーム)。ある日、紫色の綺麗な毛並みをした不思議な猫と出会った主人公(プレーヤー)は、お腹を空かせた様子のその猫に、持っていたおにぎりを分け与えたことをきっかけとして物語が動き出す。
そんな「おかゆにゅ~~む!」発売に先駆け全編をプレイすることができる機会を得たので、本記事ではそのプレイレポートをお届けしたい。なお全編プレイレポと謳ってはいるが、言及するのは体験版と同じくチャプター2の内容までなので、その点については安心していただきたい。
「おかゆにゅ~~む!」とは猫又おかゆを構成する元素、そして泣きゲー文化の再構築
全編を一気にプレイした、いや“摂取”した直後にこの記事を執筆しているのだが、まずは率直な感想から言わせてほしい。「掛け値なしに素晴らしい」と。こんな記事を書いてる時点で、筆者も紛れもない「おにぎりゃー(おかゆさんのファン)」な訳だが、本作を総括するなら「猫又おかゆを主役とした泣きゲー文化の再構築」といったところだろう。
まず始めに、ゲーム自体の作りとしては画面上に登場するキャラクターやBGM・SEとともに文章を読み進めていく典型的なADVだ。その途中で物語の展開が変化する選択肢も登場し、その直前には自動でデータが保存されるオートセーブ機能もついている。おかゆのセリフはフルボイスで、要所要所にはイラストのカットインやアニメーションも差し込まれるなど、近年のADVにはつきものとなった工夫も盛り込まれている。
そもそも作品タイトルである「おかゆにゅ~~む!」、その中にある「にゅ~~む」とはラテン語で金属を表す際に用いられる「-um」「-ium」から取られているのは想像に難くないが、そこから転じて元素を意味するワードである(ホロライブ的にいえば、博衣こよりの「コヨリニウム」と同系の概念だろう)。つまり「おかゆにゅ~~む!」とは猫又おかゆという存在を構成する元素であり、本作に触れることでプレイヤーはそれを“摂取”する……全編プレイ後の今となっては、そんな意図を感じるネーミングだ。
物語に通底する“素直さ”というテーマ
では、そんな「猫又おかゆを構成する元素」とは具体的に何なのか? 少年っぽさと艷やかさが同居する声、自身の魅力に自覚的で、それを武器としたいたずらな態度、難易度の高い壁にもめげず、試行錯誤するひたむきさ……感じ取るものはおにぎりゃーそれぞれにあり、それを否定するつもりも毛頭ないが、こと本作に至っては「ボクと一緒に、素直になっちゃおうよ」という宣伝コピーにも表れている“素直さ”だろう。
本作のシナリオには、この“素直さ”が一貫したテーマとして走っている。裸で寝床に潜り込んでくるおかゆ、ショッピングデートで身を寄せてくるおかゆ、背中を流しにお風呂場へ突入してくるおかゆ、二人乗りの自転車で密着してくるおかゆ、間接キスをするおかゆ、夜のプールに忍び込むおかゆ……本編では様々な“お約束”的シチュエーションを、おかゆとともに駆け抜けていくことになる。
迫りくる豊満なボディを前に、邪(エッチ)な衝動に駆られながらも四方八方から自分に対する言い訳をして、なんとか理性を保つ主人公。わかりやすくキャッチーなところでは、そんな風に自分を抑え込む主人公に対して「素直になっちゃえよ」と揶揄的なニュアンスもあるが、その一方でおばあちゃんのおにぎり屋さんを継ぐという、「諦めきれなかった夢のために再起する」大真面目な展開も用意されている。
自由奔放(に見える)なおかゆと出会ったことで、素直になることの大切さに気づいていくものの、それが物語を大きく揺さぶる“ある出来事”の引き金となる……。その真相については、ぜひ自身の目で確かめてほしい。
おにぎりゃーなら思わずニヤついてしまう小ネタも盛りだくさん!
前段では「“おかゆにゅ~~む”とは」と大まかな部分について語ったが、ここからは少々具体的に触れていきたい。まずは本編をスタートさせたド頭、シーンは蝉時雨が鳴り響く夏の神社から始まる。個人的に恋愛ノベルゲームといえば「舞台はやっぱり田舎の夏でしょ!」みたいなところがあり、蝉の鳴き声のSEを聞きながらテキストを読み進めているだけで、ゲーム内での恋愛に精を出した(ノット下ネタ)学生時代を思い出す。そんな舞台装置として使われがちな蝉が、おかゆとの出会いの導入として自然に機能していたのには膝を打つ思いだった。もうこれだけでツカミはバッチリだ。
チャプター1では「おかゆにゅ~~む!」の基礎となる物語が展開していくが、チャプター2では少し時間が開き、主人公とおかゆが同棲を始めて1周間経ったことになっている。おかゆがサルをモチーフにしたキャラクターを操るアクションゲーム(直近で「ドンキーコング リターンズ」の耐久配信をしたばかりじゃないか)をしていたり、学校についてきたおかゆがイケボで女子生徒を手玉にとって(おか斗やん)いたり、全肯定おかゆというワードが飛び出し(SMOKの全否定おかゆ好き)たり、何気ない会話の中で卵味噌が登場(おかゆの配信で初めて存在を知ってハマりました)したりと、おにぎりゃーなら思わずニヤついてしまう小ネタが上手いこと散りばめられている点にも注目だ。
あなたも「おかゆにゅ~~む!」を摂取して、おかゆとひとつになろう
ここまでプレイレポートをお届けしてきたが、ぶっちゃけ「甘々な配信に定評のあるおかゆの魅力を、恋愛ゲームというフォーマット上で整えて改めて楽しもうぜ!」というコンセプト先行型のゲームだと思っていた(その認識も間違いではないのだろうが)ので、こういってはなんだが、思っていたよりもシナリオが良い話で面を食らったというのが正直なところだ。猫又おかゆというタレントの魅力を味わうのに過不足のないボリュームで、物語のまとまりと読後感が良い。日常の上手くいかないことや不条理に遭った時、自分を無理やり納得させるために言い訳するのはやめて、もっと“素直”になろう……そう思わせてくれる作品だった。おかゆを構成する元素=おかゆにゅ~~むを“摂取”し素直になった時、おかゆと混じり合い、ひとつになったという見方もできるのではないか。あなたもおかゆにゅ~~むを吸って、おかゆとひとつになろう。
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