レビュー

「Microsoft Flight Simulator 2024」レビュー

フォトモードで世界観光がより楽しく! “空に限界はない”フライトシム最新作

【Microsoft Flight Simulator 2024】

11月20日 発売

価格  Standard Edition:9,700円

Deluxe Edition:13,000円
Premium Deluxe Edition:16,300円
Aviator Edition:26,000円

 11月20日に発売を迎えた「Microsoft Flight Simulator」シリーズ最新作「Microsoft Flight Simulator 2024」。4年ぶりの続編ということもあり、発売された瞬間から世界中のパイロットがサーバーへアクセスしたため、ゲームをプレイできないという波乱の幕開けとなってしまったが、現在では解消され、快適な空の旅を送れるようになった。

 「Microsoft Flight Simulator 2024」は、2020年に発売された前作「Microsoft Flight Simulator」の“地球全体が舞台”というテーマを引き継ぎつつ、新しい「MSFS」のカタチとして新モード「キャリア」やフォトモードを実装。またプレイ体験の向上も図られ、初心者から本物のパイロットまで全員が楽しめるフライトシミュレーションゲームに仕上がっている。

 本稿では「Microsoft Flight Simulator 2024」のレビューをお届け。フライトシム経験ゼロでも楽しめる「キャリア」やフォトモードを活かした「世界の写真家」、そしてThrustmasterのフライトスティック「T.Flight Hotas One」でのプレイ体験など、“空に限界はない”と教えてくれる本作の魅力をお届けしていきたい。

 なお「Microsoft Flight Simulator 2024」は11月20日よりXbox Series X|S/PCにて発売。サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」のUltimateプランや「PC Game Pass」加入者の方は追加料金なしでスタンダードエディションをプレイすることができる。

【Play Microsoft Flight Simulator 2024 Day One with Game Pass】

インストールサイズはなんと1/5! 一方でサーバーアクセスにはまだ課題も

 2020年8月に発売された前作「Microsoft Flight Simlulator(以下、MSFS2020)」は、航空機で自由に地球全体を飛び回ることができるフライトシミュレーションゲームで、14年ぶりの「MSFS」シリーズ続編ということもあって大きな話題となり、世界中のパイロットが新しくなった「MSFS」で美しい空の旅を楽しんだ。

 一方で「MSFS2020」はデータサイズが非常に大きく、実際に筆者がダウンロードしていたXbox Series X版「MSFS2020」は169GBも占有していた。そのため、ストレージが512GBと少ないXbox Series SやPCへダウンロードする場合、他のゲームと上手くやりくりする必要があるなど、少し扱いにくいゲームであったことは確かだ。

2020年に発売された前作「Microsoft Flight Simulator」
筆者が確認したところXbox Series X版「MSFS2020」は169GBとなっていた

 だが「Microsoft Flight Simulator 2024(以下、MSFS2024)」では大幅なサイズ削減を実現しており、Xbox Series X版「MSFS2024」は32GBと実に1/5まで削減。ストレージ容量の少ないXbox Series SやPCでも他のゲームを削除するとった対応をとることなく、気軽にダウンロードすることができる。

 このサイズ削減は、航空機や空港といった主要データもサーバー側へ移し、プレイする際は飛行に必要なデータをサーバーから読みだすことで実現している。「MSFS2020」でもフォトグラメトリーのデータ取得のためにサーバーへアクセスしていたが、「MSFS2024」ではこれを主要データにまで拡張した形となる。

「MSFS2024」では航空機や空港もサーバーから読みだすことで、ローカル側のデータサイズを大幅に削減
Xbox Series X版「MSFS2024」は32.4GBと気軽にダウンロードしやすいサイズとなっている

 だが発売日当日の11月20日、全世界のパイロットが一斉にアクセスしたことでサーバーが過負荷となり、ゲームをプレイできないという事態が発生。この反響は大きく、Steamでは発売当初の評価が「圧倒的に不評」となるなど、乱気流のようなスタートとなってしまった。筆者も発売当日にプレイしようとしたところ、サーバーへのアクセスに数十分要したこともあり、ひとまず安定するまでは「MSFS2020」に戻って空の旅を楽しんでいた。

 その後11月22日にホットフィックス(1.1.9.0)がリリースされ、11月27日にはサーバーアクセスに関する問題が解決したと発表。今回プレイしたPC版(パッチ1.1.10.0)では起動時に2~3分ほど要し、フライトに関するデータを取得するのには20~40秒ほどかかる。発売時からは大幅に短縮されているが、昨今のゲームのような高速なデータアクセスには程遠いため、今後の更なる高速化に期待したい。

 なお、今後も12月第2週にはパッチ第3弾が配信予定となっており、より安定した「MSFS2024」をプレイできるはずだ。

発売日の騒動もあり、2024年12月上旬のSteamでの評価は“賛否両論”。このまま盛り返していって、“圧倒的に好評”なタイトルになってもらいたい

世界中の観光地で空撮しよう! フォトモードを活かした「世界の写真家」

 「MSFS2020」の人気モードだったのが、世界各地の観光スポットを空から堪能できる「ディスカバリーフライト」だ。特に「MSFS2020」リリース時はコロナ禍だったこともあり、このディスカバリーフライトで世界各地を観光するパイロットが多かったのだが、「MSFS2020」はフォトモードが搭載されておらず、スクリーンショット以外で写真を撮る方法がなかったため、パイロットの悩みの種となっていたのだ。

 そこで「MSFS2024」はフォトモードの実装のみならず、ディスカバリーフライトを進化させた新モード「世界の写真家」が登場。「世界の写真家」はこれまで通り世界各地の観光スポットで遊覧飛行ができるだけでなく、フォトモードを活かして指定された条件で写真を撮るというミッションが追加されているのだ。

メニューには世界各地の観光スポットがズラリと並んでいる
行ったみたい場所を選ぶだけで一っ飛び

 「世界の写真家」はディスカバリーフライトのように遊覧飛行するだけでもよいのだが、右上に表示されている「目標」に沿って写真を撮るのがミッションとなる。フォトモードはキーボード操作の場合は「Shift+Vキー」、コントローラー操作の場合は「LB+RBボタン」で起動可能だ。

 例えば広島県にある「厳島神社」の場合、メイン目標はもちろん「厳島神社の写真を撮る」なのだが、追加で「自分の飛行機をフレームに収める」、「自分の飛行機と鳥居を一緒に撮影する」、「時刻&気象パネルにアクセスして、鳥居の間に太陽が位置する状態で撮影」をクリアすると、ボーナスとして「★」評価を獲得できる。

今回は広島県「厳島神社」をチョイス
大鳥居に近付いてフォトモードを起動
とっておきの一枚を撮りつつ、条件をクリアして★を獲得していく

 また本作では航空機を降りられるようになったため、航空機を着陸させて、歩いて観光スポットに近付くことができるようになった。実際に「スフィンクス」のミッションは航空機を降りて撮影することが条件で、空からだけでなく、地上から観光スポットを撮影&楽しむことができるようになっている。「世界の写真家」は新機能を存分に活かしたゲームモードなので、フォトモードの練習がてら「世界の写真家」をプレイして世界中を旅するのもオススメだ。

「MSFS2024」では航空機を降りて、外の世界を歩けるようになった
スフィンクスのところまで歩いて……
条件を満たした場所でパシャリ
見事三ツ星の写真を撮ることができた

新モード「キャリア」でパイロットとして経験を積み重ねよう!

 「MSFS2024」より登場する新モード「キャリア」。「MSFS2020」は先述の「ディスカバリーフライト」や自分でフライトプランを組み立てて運航する「フリーフライト」がメインだったが、「MSFS2024」の「キャリア」は“働く航空機のパイロット”をリアルに体験することができる。

 「キャリア」では、お客さんを乗せて運航する遊覧飛行、航空機で荷物を運ぶ運搬作業、山火事や遭難に対処するレスキュー隊など、様々な場面で航空機を操縦する。遊覧飛行はお客さんを怖がらせないよう心がけたり、運搬では荷崩れを起こさないよう慎重に運航する必要があるため、一括りに“航空機のパイロット”といっても、それぞれに合った操縦を心がければならないのだ。

「MSFS2024」もう一つの新モード「キャリア」
荷物の運搬や……
レスキュー活動といった働く航空機のパイロットの仕事を体験できる

 実際、これまでの「MSFS」は特にゲーム内でライセンスを取ることはなく、そのまま航空機を操縦できていたが、「キャリア」ではまず航空機のライセンスを取ることから始まる。といっても座学はなく、ぶっつけ本番であることに変わりはないのだが、一通り終わった後に“評価”がつき、一定以上の評価をとらなければライセンスを取得できない。

 手順を間違えたり、荒い操縦をしていると悪い評価がつくため要注意だ。フリーフライトなどとは異なり、あくまで“仕事”としてプレイしているため、指定されていない空路を走る行為はもちろん、着陸灯のオンオフ忘れでも減点を食らってしまう。実際に航空機を運航するパイロットと同じく、ゲームでありながら真面目に運航することが「キャリア」では求められるのだ。

まずは操縦士ライセンスの取得からスタート
座学は無くぶっつけ本番で航空機を操縦する
まずは各種カバー類を外して……
滑走路までのタキシング
指定された空路を守って運航する
着陸時に速度が早すぎると警告してくれる
最初の操縦ライセンスは「MSFS2020」で慣れていたこともあってA評価を獲得

 ライセンスを取得した後は、お客さんを乗せて遊覧飛行するミッションが可能になる。そして遊覧飛行で稼いだ「クレジット」で次の「商用ライセンス」を取得すると、荷物の運搬といったビジネス系のミッションが解放され、さらに「クレジット」を稼ぐと、回転翼機やエンジンの等級に関するライセンスの取得に繋がっていくのだ。

 筆者が個人的にいいなと思ったのは、減点された部分を一覧で表示してくれるところ。前作「MSFS2020」で航空機の操縦に慣れていたとしても、凡ミスなどで減点を受けることがあるのだが、評価がつくことでどこで減点されたのかが瞬時にわかるため、次回に活かすことができる。

 遊覧飛行では乗っているお客さんが直接話しかけてきて、「もう少しゆっくりお願いします」というオーダーや「今のような着地は二度としないでください」といったお𠮟りを受けることもある。実際のパイロットのような緊張感を味わって運航できるのが「キャリア」モードの特徴だ。だが現実とは違い、もし何か失敗しても大惨事には繋がらず、やり直すこともできるため、本場の空気感を味わいながらも、ラフにパイロットの仕事を体験できる。

ライセンスを獲得したらミッションに挑戦できる。白い点全てが実装されているミッションだ
操縦ライセンスを獲得した直後は、遊覧飛行系のミッションにのみ挑戦できる
お客さんを乗せてミッション開始
茅ヶ崎上空を飛行するミッションだったのだが……
散々な結果となってしまった。着陸時には「今のような着地は二度としないでください」と怒られる始末
獲得したクレジットを使って、次のライセンスを取得可能。追加ライセンスを獲得すれば、挑めるミッションの数も増える

 キャリアはこれまで「MSFS」をプレイしたことが無い初心者にオススメのゲームモードだ。一から丁寧に航空機の操縦を学ぶことができるほか、フリーフライトのように自分で空路を設定する必要はないため、あまり難しいことを考えずに「MSFS」をプレイできる。

 また「MSFS」シリーズの責任者であるJorg Neumann氏は、「MSFS」をプレイしてから実際のパイロットになる方も多いと語っており、これから航空機の操縦免許を取ろうと考えている方も、まず「MSFS2024」のキャリアでデモンストレーションをしてみるといいだろう。

「キャリア」は航空機の運航に必要な知識を学べるため、初心者にもオススメのモードだ

“HOTAS”でより快適な空の旅を! フライトコントローラーで「MSFS2024」をプレイ

 今回「MSFS2024」のレビューに合わせて、Thrustmasterの「T.Flight Hotas One Microsoft Flight Simulator Edition」を日本代理店のアニモ・ホールディングスよりお借りできた。「T.Flight Hotas One」はスロットルとスティックが一緒になったフライトスティックなのだが、「MSFS2024」の発売に合わせてカラーリングを一新した特別エディションが登場したのだ。

 外観は既存の「T.Flight Hotas One」のブラックとは全く異なり、空を連想させる爽やかなホワイトとブルーで構成されている。また各所に「Microsoft Flight Simulator」ロゴがあしらわれており、「MSFS」お墨付きのフライトスティックであることが一目でわかるデザインだ。コントローラー本体にはスティックとスロットルのみならず、14個のボタンやトリガーが搭載されている。

今回お借りした「T.Flight Hotas One MSFS Edition」
ホワイトとブルーを組み合わせた爽やかなカラーリング
スティック部分には大きなハンドレストがあり、手が疲れにくい
スロットル部分にはABXYボタンを搭載。握ると親指がボタンに位置するようになっており、非常に押しやすい

 「T.Flight Hotas One MSFS Edition」はXbox Series X|S/Xbox One/PCにて使用可能で、今回はPCに接続して使用した。基本的にはUSBで接続したあと、公式サイトよりドライバーをダウンロード&インストールするだけの簡単な作業だ。そうすれば「MSFS2024」のゲーム内で自動的に認識してくれる。

 これまで筆者はXboxコントローラーでの操作がメインだったのだが、やはりフライトコントローラーの操作感は格別。特にスロットルを直感的に操作でき、細かく速度を調整できるほか、人間工学に基づいた形状となっているため、スロットルとスティック共に持ち心地が非常によく、長時間のフライトでも疲れにくい。

 筆者が仕事やゲームで使用している机は面積が狭いのだが、「T.Flight Hotas One MSFS Edition」は比較的コンパクトなサイズ感で、スティックとスロットルも合体・分離できるため、セッティング場所にもあまり困らない点も評価できる。

Xbox SXやXbox One、PCに対応。背面の切り替えスイッチで切り替えられる
握り心地は非常に良好。長時間のフライトでも疲れにくい
スティックとスロットルは分離可能なため、それぞれ好きな位置に配置することもできる

 また14個のボタンに各種操作を割り当てられるため、駐機ブレーキや着陸灯といったよく使うボタンを好きな位置に設定できる。最初の内はどこにどのボタンを設定したのか忘れがちだが、慣れてくると位置を確認しなくてもボタンを押せるようになるだろう。さらにオプションの「T.Flight Rudder Pedals」を接続して、足元でラダーを操作することもできるので、より快適な空の旅を楽しみたい方はこちらも検討しておきたい。

 なお「T.Flight Hotas One Microsoft Flight Simulator Edition」には、サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」Ultimateプラン(1カ月)のプロモーションコードが同封されている。このコードを使って「MSFS2024」や「MSFS2020」もプレイできるためぜひ活用したいところだ。

別売りの「T.Flight Rudder Pedals」も接続可能だ

“THE SKY IS NOT THE LIMIT”と教えてくれるフライトシム最新作に

 ここまで「Microsoft Flight Simulator 2024」のレビューをお届けしてきた。本稿では念願のフォトモードを活かした「世界の写真家」やパイロットの仕事を体験できる「キャリア」といった新要素をメインにお届けしてきたが、フリーフライトやアクティビティも引き続き搭載されているため、パイロットそれぞれが好きな空の旅を送ることができる。

 「MSFS2024」は、前作「MSFS2020」をベースにしつつ、より遊びの幅を持たせたシリーズ最新作に相応しい内容となっている。フライトシムといえば、ライトゲーマーからすると“玄人がプレイするゲーム”という印象もあるが、本作はこれまでフライトシムをやったことがない人でも楽しめるはずだ。

 本作のオープニング画面では「THE SKY IS NOT THE LIMIT(空に限界はない)」という横断幕を掲げた飛行機が登場する。ぜひ「MSFS2024」をプレイして限界のない空を旅する楽しさを多くの人に知ってほしい。