レビュー
MMORPG「スローン・アンド・リバティ」レビュー
長期開発の圧倒的ボリューム。UE4の超美麗な世界、2つの武器を組み合わせる多彩なキャラメイクが魅力
2024年10月2日 10:25
- 【スローン・アンド・リバティ】
- 10月2日サービス開始
- 基本無料(アイテム課金)
「スローン・アンド・リバティ」は、「リネージュ」や「タワーオブアイオン」、「ブレイドアンドソウル」などを手がけるNCSOFTが開発を手掛け、Amazon Gamesがパブリッシュする期待の大型MMORPG。プラットフォームはPC(Steam)、プレイステーション 5、Xbox SeriesX|Sで、クロスプラットフォームでのプレイが可能だ。
現在は有料のパッケージを購入した人限定のアーリーアクセスが始まっており、10月2日の正式サービス後は、基本無料のアイテム課金となる。今回は、メディア用のアカウントで先行プレイすることができたので、その感触をお伝えしたい。
長い開発期間を経て生まれた期待の大作
実は本作には長い紆余曲折の歴史がある。本作は2017年に「プロジェクトTL」として発表された。NCSOFTが2011年に発表して開発を続けていた「Lineage Eternal(リネージュ エターナル)」が、2017年に開発中止になったことを受けて、「プロジェクトTL」は当初、その資産を引き継ぐ新たな「リネージュ」シリーズの作品として発表された。
ゲームエンジンがUnreal Engine 3からUnreal Engine 4に変わり、カメラ視点も「Diablo」タイプのクォータービューから、自由に動かせる視点に変更されるなど、まったく別のゲームへと生まれ変わった。
2019年頃のサービスインが予定されていたが、その後も開発が続き、気が付くとNCSOFTで最も開発期間の長いゲームになっていた。
延期を繰り返した真の理由は明らかになっていないが、「リネージュ」という同社の看板タイトルの名前を冠するゲームだけに、ローンチで失敗することが許されないという重圧があったであろうことは想像に難くない。
2022年には「Throne and Liberty(スローン・アンド・リバティ)」という正式な名称が発表され、「リネージュ」とは世界観を共有しない全く新しいIPのゲームとして新生した。
「スローン・アンド・リバティ」というタイトルを耳にしたことがない人でも、かつて日本のマンガ喫茶では定番中の定番だった「リネージュ」シリーズは知っているという人も多いだろう。本作は「リネージュ」のエッセンスを様々な形で進化させた超大型MMRPGなのだ。
星の欠片の力を制御するために主人公は旅立つv
ここからは、そんな「スローン・アンド・リバティ」がどんなゲームなのかを紹介していきたい。
舞台となるのは、Unreal Engine 4で描写されたソリシウムという美しくも広大な世界。そこでは、純然たる悪の化身である征服の亡者カザールが率いるアーキウム軍団と、対抗する人間の組織レジスタンスが日々攻防を繰り返している。
主人公は生まれつき、「星の欠片の力」という特殊な能力を持っている。かつて破壊の女神シラベスを封印していた「シラベスの神星」という石があった。破壊の魔力が宿ったその石は砕け散り、その欠片を体の中に持って生まれた子どもは「星の子」と呼ばれた。アーキウム軍団は「シベラスの神星」を復活させて、その力で世界の支配をするため「星の子」を狙っている。
主人公が住んでいたウィスプ島には、「星の子」たちが暮らす孤児院があった。だがある日強大な魔女カランシアの襲撃を受ける。幼い主人公は、自分を育ててくれた魔術師ヤン・ジュナスの犠牲によって命を救われる。このことは主人公のトラウマとなり、定期的に悪夢を見るようになっている。大人になった主人公は、星の欠片の力を制御するすべを探して、住んでいた島を離れる。
重厚な物語が、本作のソロプレイパートを支えている。物語は、エリアごとの章立てになっており、1つのエリアで1つのストーリーが完結する作りになっている。まだ物語の本質が見えてこない序盤には、どうしてもお使いめいた印象を受けてしまうが、レベル20を超えた辺りで次第に登場人物も出揃っていき、先が気になる物語になってくる。
多彩なパラメータで自由なキャラクターメイクが可能
自らの分身となるキャラクターは、ゲームスタート段階でまずは性別と外見を決める。顔の各部分は非常に多彩なパラメータで細かく調整することができる。ただし、極端な顔を作ることはできない。また、男女ともすらりとした長身モデル顔の超絶美形が基本で、日本でも人気の高いロリ顔は作るのがかなり難しかった。
メニューの中にある「写真から作成」は、写真をアップロードして、そこからキャラクターを作成するという気になる機能。今回はアップロードすることはできなかった。
職業という考え方はなく、キャラクターの立ちまわりは装備する武器によって変化する。正式サービス時には7種類の武器が実装されている。「剣と盾」は挑発や敵を近くに引き寄せるスキルがあり、パーティプレイでは盾役になる。巨大な剣を振り回す「両手剣」は、近接攻撃のアタッカー。「短剣」は毒を使った素早い攻撃で相手をかく乱する、忍者やシーフ的な立ち位置。
「長弓」、「クロスボウ」はどちらも遠隔からの弓攻撃だが、「長弓」のほうが支援寄りで、「クロスボウ」は純粋なアタッカーという印象だ。「ロッド」は攻撃魔法、「ワンド」は回復魔法を得意とする。
これらの武器のうち、2種類をセットして、切り替えながら戦うのが本作の特徴だ。12個セットできるスキルも、装備した2種類の武器に紐づいているものを混在させて使うことができる。これによって、複雑で個性的なスキルセットを作ることができる。
成長要素の多さは、好きか嫌いかで評価が分かれそう
キャラクターは単にレベルアップしただけでは強くならない。ここでは本作の多様なキャラクター強化方法をまとめて解説したい。
まず基本ステータスは、レベルアップに伴って獲得できる「ステータスポイント」を、闘志、技量、知恵、洞察の4つのステータスに振り分けることで、個性的なキャラメイクが可能だ。ステータスはいつでもリセットしてふり直すことができるので、武器に応じた能力に変更することができる。
そして2種類の武器、6カ所の防具、5カ所のアクセサリーはすべて強化で強くすることができる。強化できるのはアンコモン以上で、アンコモンは6段階で上限になる。
また、装備は基本ステータスのほかに、装備ごとに違った「特性」というステータスを持っている。特性はたとえば命中力上昇だったり、HPの自動回復だったりと複数の種類がある。「継承」を使うことで、より上位の装備に、強化したステータスや特性を引き継ぐこともできる。
強化に必要な素材は、クエストやダンジョンの報酬として手に入る。モンスターからの装備ドロップはかなり控えめだ。これは本作がクラフトに力を入れているため、生産材料でパンパンになりがちだからかもしれない。現在確認できるレアまでの武器はすべて、敵から材料を手に入れて製作する形になっている。
武器は使い続けていると「熟練度」が貯まっていく。これを使って、3つのスキルツリーを育てることができる。例えばクロスボウなら、再生、移動、連射という3つ、ロッドならマナ、破壊、特性といった形だ。だが10時間以上プレイしても最初の段階にすら到達できなかった。かなり長い時間をかけて成長させていく要素なのだろう。
スキルも成長させることで多彩に変化
スキルは武器ごとに防御スキルが1種類、アクティブスキルが12種類、パッシブスキルが7種類ある。さらに12時間に1度しか使えない「超越スキル」、後述する「守護者スキル」がある。
スキルも専用の強化素材を使って強化できる。5段階育てるとレアリティが1段階あがる。さらに「スキル特化」という要素がある。スキル特化ポイントを使って、スキルの特性を個別に強化できる。同じスキルでも、ダメージを増加させるか、クールダウンを減少させるかで使い勝手が変わってくる。そこを自分の好みに合わせて調整できる。
一定時間、過去の英雄に変身する「守護者の誓約」
一定時間過去の英雄に変身する「守護者の誓約」という要素もある。これは過去に守護者の契約を行なって死んだ英雄たちの魂を引継ぎ、その力を使うというもので、獲得の経緯は非常にドラマチック。変身した後は特殊な効果やBGMが流れたりと、凝った演出が楽しめる。
最初の守護者が手に入るのは「第5幕 誓聖なる血の誓約」で、この章はクエストの物語が、守護者と密接にかかわっており、非常にドラマチックな展開が楽しめた。
食事やステラブームなどアイテムでの強化も忘れずに
そして、アイテムによっても強化ができる。ステータス画面で武器に「ステラブーム」というアイテムをセットすることで、攻撃に追加ダメージが加わる。ただ、このステラブームは1回の攻撃で1つ消費するので、猛烈な勢いで消費される。NPCの雑貨屋でも100個セットで販売しているが、1000個持っていても気が付くとなくなっている。
最後に、約30分効果が持続する食事と、数十秒間だけ能力をブーストできる薬というよくあるセットももちろん存在している。最初にたどり着く街にいるNPCがやたらと強化しろとうるさく言ってくるが、確かにちゃんと強化し続けておかなければ、適正レベルのモンスターでも苦戦することになる。
このたくさんの強化要素をやりこみだと楽しめるか、それとも煩雑に感じるかで、本作に対する評価は違ってくるのではないかと思われる。
戦闘はコントローラーでの操作がおすすめ
次にバトルについて紹介したい。本作のバトルは、PC版の場合、一人称視点のカメラを回して中央のクロスヘアで照準を合わせる「アクションモード」と、ノンターゲット方式でマウスカーソルで敵をクリックして選択する「クラシックモード」という2つの操作方法が選択できる。
コントローラー操作ではアクションモードが基本で、フォントなどがやや大きいコントローラー用の専用UIに切り替わる。もちろん専用UIのほうが使い勝手がいいので便利ではあるのだが、少しでもキーボードやマウスを触るとすぐさま表示がキーボード&マウス用に戻ってしまうのが厄介だ。筆者が探した範囲では、表示をどちらかに固定するような設定はなく、コントローラーで操作しつつテキストチャットしようと思ったら、そのたびにUIサイズがちらちらと変わるのは今後の改善を待ちたいところだ。
バトルはアクション寄りで、移動しながら防御スキル(キーボードでは「Q」キーがデフォルト)を押すことで、前後左右に転がりながら攻撃を避けることができる。また、ボスに重なる紫色のサークルが表示されると大攻撃やスタン効果のある攻撃を使ってくる合図で、タイミングよく防御スキルを使うことで100%レジストしたうえに追加で攻撃スキルを発動することができる。
だが、キーボード&マウスでは「WASD」を押しながら「Q」キーをタイミングよく発動させるのは、クラシックモードではかなり難しかった。回避にはスタミナが必要だが、連続で使用できるのは3回で、しばらくはチャージを待つ費用がある。だが複数の敵に囲まれると、個別の敵が自分の勝手なタイミングで強攻撃を使ってくるものだから、チャージが間に合わず結局全部食らうといったこともよくあった。
また、「ダイダルの塔」というソロ用のチャレンジコンテンツで戦う最初のボス「ボスオーク」は、スタン効果のある突進技を使ってくる。この技は発動が早く、紫のサークルが表示されてから防御を使っても間に合わず、だいたい全部くらってしまった。
筆者のプレイスキルに問題があるといえばそれまでだが、せっかくのアクション性が用意された操作性や敵のアルゴリズムと十分にマッチしてないところがあるのではないかという気もした。
近年のアクション性が高いMMOではスキル数を抑える傾向にあるため、本作でセットできる12個という数はわりと多いと感じる。アクションに振り切るわけではなく、従来のスキルアイコンでの戦闘とアクションの中庸を狙っているのだろうが、ややどっちつかずな印象も受けた。
ちなみに上記はマウス&キーボードでのプレイフィールであり、アクションモードのみのコントローラープレイでは、上記の問題点がかなり改善される。やはりアクション性という要素があるゲームはコントローラーの方が動かしやすく、親和性が高い。PCで遊んでいて、操作性に難を感じるなら、ぜひコントローラーをつなげて遊んでみて欲しい。かなり印象が変わるはずだ。
そんなふうに、気になる点がないわけではないのだが、攻撃をするときのグラフィックスの派手さや打撃感は非常に気持ちがいい。今回使ったクロスボウは自分を強化しつつ追加ダメージを増やしていく純粋なアタッカー。2本のクロスボウを両手に持って、連続で矢を叩きこんでいくのが快感だ。
ロッドは属性のある魔法で衰弱効果を付けながら相手の行動を阻害する。詠唱があり、攻撃の頻度は低いが、派手な爆発技「ブラストウェーブ」や、氷柱を出しながら高速で背後に飛びすさる「フロストサークル」など爽快感があるスキルがそろっている。
ギルド戦やレイド攻略などパーティプレイが本作の神髄
本作は、パーティを組んでのダンジョン攻略やレイド、ギルドでの対人戦や攻城戦など基本的には大人数でのプレイを念頭においた作りになっている。ソロでのレベル上げは、そのための準備期間のようなもので、ソロプレイだけでは、本作の楽しさをすべて味わったとは言えない。
今回のテストプレイでは一般の人たちが参加しているアーリーアクセスではなく、特別に用意されたメディア用のサーバーで行なわれた。そのため、非常に残念ながら、今回はパーティを組んでのプレイを試すことができなかった。
約3時間おきに発生するエリアイベントも、他のプレイヤーと競い合う形式や協力するもの、対人戦が発生するものなど、基本的には他のプレイヤーと一緒に遊ぶためのものになっている。
パーティで挑むインスタンスダンジョン「次元陣」や、複数人で挑むことが推奨されているフィールドダンジョン「シレウスの深淵」などレベル20を超えた辺りからどんどんパーティ用のコンテンツが登場してくる。パーティ掲示板で相手を探すこともできるし、オートマッチング機能もある。エリアに関係なく、オートマッチングをセットしたまま他の作業ができるのも嬉しいポイントだ。
マップはいくつかのエリアに分かれているが、このエリアはギルド戦によって一定期間占領することができる。領地からは資源を獲得できるほか、税金を集めることができる。この集めた税金を巡って他のギルドと戦う「税金輸送」という対人戦コンテンツもある。
パーティプレイや他プレイヤーとの共闘、大規模な対人戦はいずれも好きな人にとっては、心躍らせるコンテンツだ。新作のMMORPGは、エンドコンテンツにまで手が回っていないことが多いが、本作はスタート時点から非常に多彩なエンドコンテンツが用意されている。そこに到達してからが本当の遊びだといってもいいだろう。
開発期間が長いからこそ可能な圧倒的物量
ここまでバトル方面の話ばかりしてきたが、実はそれ以外にも大量の遊びが用意されている。まずは材料の収集や生産、料理、釣りなど生活系のコンテンツもかなりのボリュームで用意されている。
鉱物や卵、薬草などの素材はマップ上にアイコンの形で表示されている。料理に使う肉はモンスターからのドロップ。料理はメインの材料に何を使うかで完成した料理の効果を上昇させる確率が変化する。例えば「目玉焼き」では、卵、テラーバードの卵、トカゲの卵、サンドワームの卵という4種類からメインの卵を選ぶことができる。
また、「アミトイ」という常に行動を共にするマスコットがいる。その名の通り、編み物で作ったぬいぐるみのような姿だが、戦闘後にアイテムを自動で拾ってくれたり、世界樹の葉というアイテムを使ってプレイヤーをオート回復してくれたりと非常に有能だ。複数集めると、使っていないアミトイを遠征させて資源を集めることもできる。
動物やモンスターに化けて移動する「モーフ」
移動に関しては「モーフ」という要素がある。「ワイルドモーフ」は、乗り物の代わりに自分が動物に変身して移動するシステムだ。陸上を速く走るダッシュ時には四足獣や鳥に、空を滑空するグライドでは鳥や翼のある獣に、水中を泳ぐスイムではカワウソやカメ、サメなど水場に棲む動物に変身する。動物は複数の種類があり、同じ種類のモーフを集めることでその要素を成長させることができる。
ほかにも可愛いキャラに変身する「遊戯」と、モンスターに変身して攻撃されずに敵に紛れ込むことができる「擬態」がある。擬態はクエストでモンスターを討伐することで獲得できる。遊戯のためのモーフはバトルパスの報酬として手に入る。
世界中に隠れたちょっとしたお遊び
世界中の壁や断崖などに打ち込まれた鉄の輪に鎖を投げて、一気に登ったり、空中へ大きくジャンプする、スピーディな移動方法はかなり爽快感がある。
連続でジャンプすることで塔を登ったり、モーフを組み合わせてアクションパズル的に使ったりと、クエストで使われることもあるが、単に高い場所に登るいわゆる山登りにも使える。一見行くことができなさそうな場所でも、工夫次第で登ることができる。
加えて、世界中に散らばった手紙や紙片という収集要素もある。これらの手紙や紙片を集めることで、世界をより深く理解することができる。村で一番高い場所に登ったら、そこに登頂を祝福するメッセージが落ちていたこともあった。
ほかにもインタラクトすると音が鳴るクリスタルや、コインを投げ込むと水が噴き出す噴水などフィールド上にはちょっとしたお遊び的な要素があちこちに点在している。街中をうろついているイヌや猫、鳥などは可愛がったり、エサを与えることもできる。
ハイクオリティな世界で自由に遊ぼう
こうして紹介していると、これがほんとうに新作MMORPGなのかと疑いたくなるほど多彩な要素があふれていることに驚く。本作が長い時間をかけて開発されてきたタイトルだからこそ、なのだろう。発売までの時間が長いゲームは、どうしても古さを感じる部分があったり、幾多の仕様変更によって複雑になりすぎている部分があったりする。本作でもそういった要素をまったく感じないといえば嘘になる。
しかし、ハイクオリティな画面表現や丁寧に作り上げられた世界、よくしゃべる個性的なキャラクターたちが織りなす世界を体験しないままでいるのはもったいない。
ぜひ自分の好きなプラットフォームから参戦して、できればコントローラーで遊んでみて欲しい。そして、大空を舞う巨大なクジラ、ギガントリテと記念撮影したり、仲間とダンジョンに挑んだり、ギルド専用コンテンツで遊んだりと自分なりの自由な遊び方を見つけて欲しい。
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