レビュー
「NeverAwake」レビュー
飽きない&挫けないための工夫が満載。初心者から上級者まで楽しめる少女の悪夢シューター
2022年10月3日 00:00
- 【NeverAwake】
- 発売元:Phoenixx
- 開発元:Neotro
- ジャンル:悪夢系アクションシューター
- プラットフォーム:Steam/Nintendo Switch/PS4/PS5
- 発売日:9月28日(Nintendo Switch、PS4、PS5版は2023年1月19日)
- 価格:Steam版 1,980円(税込)
ネオトロは9月28日、独自の世界観とオリジナリティの強いゲームシステムが特徴のSteam「NeverAwake」を発売した。価格は1,980円(税込)。Nintendo Switch、プレイステーション 4/5版の発売も2023年1月9日に予定されている。
本作は「悪夢系アクションシューター」という名の通り、少女の悪夢の中を舞台にモンスターと戦う2Dシューティングアクションゲーム。2022年に開催されたインディーゲームの祭典「BitSummit X-Roads」で大賞を受賞しており、ゲーマーからの期待値も高い作品だ。
悪夢をテーマにした独特のビジュアルが印象的な本作だが、その中身は初心者から上級者まで、飽きない&挫けないための工夫が満載の2Dシューターとなっていた。2Dシューティングの面白さを楽しめつつ、独自のシステムで何度でも挑戦したくなるタイトルだ。今回は本作のSteam版をプレイしたので、早速レビューしていこうと思う。
ファンタジックで恐ろしい“悪夢”の強烈な世界観
本作では、眠り続けるとある少女を目覚めさせるために、その少女が見る悪夢の中を舞台に主人公の「レム」を操作して襲い来る様々なモンスターを撃退していく物語が展開される。
出てくるモンスターや進むマップは少女が生きる中で感じていた苦手な物や体験がベースとなっているため、野菜・犬・学校の友人と言った存在が変異した存在と戦う事になる。ゲームを進めていく中で入手できる「DIARY」では日常の中で溜め込んでいたストレスや少女の本心が綴られていたり、プレイ内容によって結末が変化するマルチエンディング形式が取られていたりなど、シューティングゲームでありながら物語部分にもしっかりフォーカスを当てた作品となっている。
全体的なデザインは手書きのような温かみがありながらも独自のホラー感を演出するグラフィックスとなっており、絵本のようなメルヘンチックの可愛らしいタッチもあれば、不気味すぎるモンスター達が登場したりと落差のあるアンバランス感が堪らないのも特徴だ。
そんなモンスター達は、美しいBGMや幻想的なフィールドに次々と登場する。そのため、ストレートなホラー表現、ビックリ系とは異なり”なんか不気味だな”と思わせるような、ジワジワと不穏な感じが迫るような恐怖を本作は纏っている。正に”悪夢”を舞台としたゲームの世界観を上手く表現できていて、このようなファンタジーと恐怖が組み合わさったような作風が好きなプレーヤーには確実に刺さる世界観と言えるだろう。
ステージクリアの条件は「ソウル」の収集
本作は基本的には2Dのシューティングゲームであり、360度全方向に移動と射撃が可能だ。スクロールするステージの中で「レム」を上下左右に移動しながらマウスポインタ―やスティックでショットする方向を定めてモンスターと戦うのが基本となる。
基本操作自体はシンプルで、シューティング初心者でもプレイしやすい。その上で、ステージ内やモンスターを倒す事で入手できる「ソウル」を使えば装備品をどんどん購入してキャラクターを育成できる。
「レム」に装備できる武器やアクセサリーは、基本性能を上げたり「ソウル」獲得時に追加効果を得たり、ショットを特別なものにしたりと様々な効果を持つ。ステージの内容に合わせた装備をエディットする事でより効果的な攻略を考えられるシステムとなっている。シンプルにプレイできる楽しさに加えて、そうした育成ビルド的な面白さも味わう事ができるだろう。
そして本作の一番の特徴となるのが独自のシューティングアクションとそのゲームシステムだ。通常シューティングゲームではステージ毎にゴールを目指したり最後に待ち受けているボスを倒す事を目的とする事が多いのだが、本作では「ソウル」を規定値まで集める事でステージクリアとなる。
この「ソウル」を集める要素はギミックとしてしっかり活かされており、例えばあるステージではモンスターを倒しても「ソウル」が出現せず、代わりに浮遊している宝石のようなオブジェクトを撃ち続ける事で「ソウル」を入手できたり(つまりモンスターを避けながら宝石を撃たないとクリアできない)、「ソウル」をクリアの○○%集めた際に何か利益をもたらすアクセサリーが存在していたりなど、この独自のルールが本作の強い個性となっているのだ。
また面白いのは、ステージを一周して「ソウル」をクリア数まで集めきれなかった場合にそのまま同じステージの2ループ目に入る点。各ステージは比較的短めに作られているものが多く、そのためリトライ性を高めつつもいわゆる”戻し作業”的なストレスを感じにくい。ダレる事なくゲームを継続しやすくなり、1つ1つが短いながらステージ数は豊富なため次々に新鮮なゲーム体験を味わう事ができる。
さらに「ソウル」の収集が目的となるため、ボスを倒したりゴールするまで生き残るという考えではなく「効率よくソウルを集めるにはどうすれば良いのか?」というアプローチで戦略を考える必要があるのもポイントだ。モンスターを残さず一気に倒すルート構築やソウルを取り逃さないためのムーブなど、本作独自の手応えを存分に堪能できるだろう。
高いリトライ性で何度でも挑戦しやすい
そして全体を見通すと、これらの独自のシステムを含めて、シューティングアクションの初心者でもしっかりハマれるような作りでありながら、上級者もやり応えを感じられるような多くの工夫が本作には見られる。
まず前述したように、1つのステージが短い事で初心者でもステージ攻略を楽しめるように調整できている。さらに登場するギミックやモンスターの位置などを覚えて戦略を立てるというシューティングゲームらしい面白さを味わえながらも、装備品の組み合わせというプレイスキル以外の攻略要素も加わっている。
またクリア条件を“ボス撃破”ではなく“「ソウル」の一定数獲得”としてクリアまでの心理的ハードルを下げつつ、そもそもステージはループする仕組みになっている。そうしたいくつもの要素でリトライ性を高めることで、何度ゲームオーバーを繰り返したとしても挑み続けやすい。
実際、筆者はそこまでシューティングが得意なわけではなかったが、1つのステージが短いことで、ギミックに合わせた装備を考えたり各ステージの立ち回りを覚えたりがしやすかった。ここを足がかりとして、本作をしっかり楽しむことができた。
それでいて本作を極めようとすれば、各ステージに合わせた最適解を試行錯誤する必要がある。そのためやり込み度も高く、シューティングゲームに慣れたプレーヤーでもしっかりと楽しみ尽くせる内容にもなっている。
ただ難易度を下げない、初心者への手厚い救済措置
他にも初心者向けのサポートとして「オートエイム」機能があり、これをオンにする事で「レム」のショットが全て自動で近くのモンスターやオブジェクトに照準を合わせてくれるようになる。これによってゲームに慣れないうちは回避アクションに専念してショットは自動にするというプレイが可能だ。
さらに「レム」の装備品は、敗北をするたびに強力なアイテムが入手できるような仕組みになっている。これも、負け続けてクリアできずに詰んでしまうという事態には陥らないような工夫だ。
ただし言っておきたいのは、これらの要素がただゲーム難易度を下げているだけの要素になっていないところだ。「オートエイム」は確かに便利だが、全部任せっきりにすれば優先したいモンスターや攻撃したいギミックよりも他を優先して攻撃してしまう事も多々あり、そこは手動の照準の方が有利だったりする(オートエイムと手動照準は併用可能)。
また、負ける度に強力な装備品が入手できる“救済措置”も人によっては「簡単すぎるのでは?」と思うかもしれないが、それだけ敗北を重ねてしまうとタイムやスコア、さらにはエンディングの結果等にも響く可能性がある。つまり、自分が目指しているゴールによってはそもそもこの“救済措置”を出させないようなプレイが必要にもなる、というわけだ。
自分がどのような目的を持ってプレイするかで、プレーヤー自身の遊び方を自由に決められることができるのも本作の魅力の1つだと言って良いだろう。
総じて、プレイした感想としてはシューティングゲームをそこまで遊ばない筆者でもビックリするほどハマって遊ぶことができた。やはり大きいと感じたのが1ステージが短いところで、サックリと遊びながらも壁にぶち当たった時に装備品や攻略法を試行錯誤して何度も繰り返せたため、自力でルート構成や戦術を構築するシューティングゲームならではの面白さをストレスなく味わえた。
1ステージが短い代わりに用意されているギミックやボスの数は多く、プレイ中は連続的に新しい体験ができるので飽きが来ず、独特の不気味なホラーテイストで描写されるストーリー展開や眠り続ける少女と「レム」の謎も大いに引き込まれた。そんなこんなで、一周を一気に遊びきれたほどだった。
この独自の世界観が刺さるプレーヤーや、初心者から上級者まで、シューティングゲームに興味を持つプレーヤーには強くオススメできる作品となっているので、ぜひ一度遊んでみてはいかがだろうか。
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