レビュー

「クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション」レビュー

”死”を中心に描く重厚な物語は、涙なしに遊べない。プレイを補助する様々な新要素も!

【クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション】

ジャンル:RPG

発売・開発元:スクウェア・エニックス

プラットフォーム:PS4/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam)

CEROレーティング:B(12歳以上対象)

配信日:4月7日(Steam版は4月8日)

価格:3,520円(税込)

 4月7日に配信予定の「クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション」(以下、「クロノ・クロスRD」)。本作は、1999年に発売されたプレイステーション用タイトル「クロノ・クロス」初のリマスター版となる。

 「クロノ・クロス」は、スーパーファミコン用として1995年に発売された人気RPG「クロノ・トリガー」の続編にあたる。「クロノ・トリガー」は、主人公クロノたちが「ラヴォス」と呼ばれる謎の生命体が世界を滅ぼすことを知り、その未来を変えるために過去、現在、未来といった様々な時代を行き来して戦うタイムトラベルストーリーだった。

 そして「クロノ・クロス」は、主人公セルジュが元々住んでいる「ホーム」と呼ばれるワールドと、ほぼホームと変わらないけれどどこか少しだけ違っている「アナザー」というワールドを行き来して進めていくパラレルワールドストーリーとなる。「続編」というよりも、“「クロノ・トリガー」から分岐したかもしれないひとつの世界が「クロノ・クロス」”だと捉えたほうがいいかもしれない。

 本作のキャッチコピーは「殺された未来が、復讐に来る」というものだが、ここから連想される内容と、本作のゲーム画面から感じる印象は少し噛み合わないだろう。

 本作はどちらかというとカラフルな絵柄で、全体的に南国のようなイメージを浮かべるデザインが多い。登場人物はもちろんのこと、舞台となるエルニド諸島も自然豊かな南国を彷彿とさせることからも、キャッチコピーから漂う不穏な雰囲気は感じ取りにくい。しかし、本作は非常に重厚な物語となっており、常に“死”の一文字がつきまとう。

 この世界にはどのような謎が隠されているのか……「殺された未来」というフレーズからも「クロノ・トリガー」をプレイした人には想像がつくかもしれないが、恐らく想像よりも遥かに複雑に絡み合った糸を、少しずつ、少しずつほどいていくような、そんな物語だと思ってもらえれば幸いだ。

 20年以上「クロノはクロス派」を貫いてきた筆者が、本作の20年以上経っても色あせない魅力などを連ねつつ、事前にプレイさせてもらうことができた「クロノ・クロスRD」のオリジナル版との変更点(基本的にリマスター版なので、大きな変更点はないが、倍速モードなどが搭載されている)や、それによるオススメプレイなども紹介していきたい。

【『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』トレーラー】

「クロノ・クロス」の良さを活かしつつ、遊びやすくなったリマスター版

 冒頭でも述べたが、本作の物語は“死”が中心にあると言っても過言ではない。主人公のセルジュは物語の冒頭で、自身が住んでいる「ホーム」ワールドから「アナザー」ワールドへと飛ばされてしまうのだが、そのアナザーでは「セルジュは10年前に死んだ」と言われ、誰も今のセルジュのことを知らないのだ。

 セルジュが生きている世界と、死んでいる世界。このふたつの世界を跨いで描かれる本作の物語は、非常に複雑だ。ボイスがない時代のゲームとあって、ついセリフ送りボタンをポチっと押してしまうと、重要なセリフが一瞬で消えてしまうこともある。また、時期限定イベントも多く、見逃してしまったら最後、2周目をプレイするまでもう救済手段がないのだが、そもそも本作は絶対に1周では全ての仲間をそろえることができないため、全ての仲間をそろえて全ての仲間のイベントを見ようとすると、どんなに頑張っても2周はプレイしないとならない。それもあり、複雑に絡み合った物語もじっくりと何度もプレイしながら、自身の中でかみ砕いていくことができる。

いくつもあるルートの中からひとつのルートを選択した時点で残りのルートのフラグが消滅し、そのルートで仲間にできるキャラクターも自動的にその周回では仲間にできなくなる。選択は常に慎重に行なう必要がある

 「クロノ・トリガー」にあった「強くてニューゲーム」は、ほぼ同じシステムが本作にもあり、「2周目以降はラスボスを好きな時に倒せて、そのタイミングでエンディングが変わる」という特徴も引き継いでいる。そのため、仲間を全員そろえていくにも1周目と同じ手順を何周も繰り返していく必要はないのだが、時期限定イベントや各キャラクターの最強エレメントなどを全部回収するにはやりこみが必要、というタイプのゲームとなっている。もちろん全てのエンディングを見るためにはその度にラスボスを倒さなければならないため、それなりに骨が折れるのは確かだ。だが、「クロノ・クロスRD」には「早送り機能」、「エンカウントOFF」、「オートバトル」、「バトル強化」といった様々な便利機能が最初から使用できるようになっており、これらの機能を駆使すれば周回プレイも楽になっている。

画面左の黒枠の部分に並んでいるアイコンが、「今、どの機能が有効になっているか」を示している。上から順に、早送り機能、エンカウントOFF、バトル強化、オートバトルを表すアイコンとなっており、機能をオフにすればアイコンが消える。これらはフィールド上はもちろんのこと、イベント中、バトル中、基本ほぼいつでもオンオフ可能だ

 「早送り機能」はオリジナル版の2周目から使用できたものと同じで、全てのゲームスピードが高速化する。逆にゲームスピードをスローにする「スロー再生」機能もあるので、場面に応じて切り替えながら進めていくのがいい。

 筆者の場合、移動時には位置の調整が逆に難しくなるのであまり早送り機能を使用せず、イベントシーンやバトルでは早送り機能は常にオンにしていた。バトルに割く時間が多いため、これだけでも非常にさくさくとゲームを進められていると感じられる。ゲームスピードはR2ボタンを押すだけで随時切り替えられるため(L2を押すとスロー)、エンカウントした瞬間に倍速モードオン、といったようなことも簡単にできる。

 L3ボタンでオンにできる「エンカウントOFF」機能も非常にありがたい。本作は特定のボスを倒すことで得られる「レベルスター」で仲間キャラクター全員のレベルが上がるというシステムとなっており、経験値は存在しない。雑魚戦で得られるのは装備品作成用の素材などと、稀に戦闘後に各種ステータスのいずれかがわずかに上がることもある程度であり、あまり雑魚戦を繰り返す必要がない。そのため常に「エンカウントOFF」にしておいてボスに突っ込んでも、問題がないのだ。ただし、その分ボスバトルはいずれも難易度は高めに設定されているため、本作のバトルの特徴を全く理解せずにボス戦に挑むのは無謀とも言える。(本作のバトルについては後述)

ボス戦で得られるレベルスター。戦闘に参加していない仲間キャラクターたちも、全員レベルが上がる

 エンカウントOFFを有効にしておいて困るのは、稀に「この敵のシンボルは倒さないと物語が先に進まないのに、シンボルに接触してもスルーしてしまう」という点くらいだ。これに関しては攻略を知っていればともかく、知らない場合、自身で気がつくには少々難しい。そのため「何をしても進まない」と感じたら、エンカウントOFF機能を切ってから、怪しい敵シンボルに接触してみてほしい。大抵そういった敵は全く動かずに一定の場所にいることが多いが、中には動いている敵シンボルもストーリー進行でのバトルが必須ということもある。「便利機能は確かに便利だけれど、これだけに頼りきりでは進めないゲーム」ということは、予備知識的に覚えておいてほしい。

本作の魅力ある奥深いバトルシステム。新機能の「オートバトル」+「バトル強化」でサクサクプレイも

 本作は非常に戦略性のあるバトルが魅力となっている。上記の通り、雑魚戦についてはほぼ素材集めのような存在のため、エンカウントOFFでスルーしてしまっても問題はないというのが個人的な見解だが、一方でやり応えのあるボスバトルは非常に奥深いものとなっている。

 本作の楽しさのひとつに、魔法やアイテムなどにあたる「エレメント」を使った属性システムがある。属性には「赤・青」、「緑・黄」、「白・黒」の6色があり、それぞれ対になった色同士が弱点になっている。また、各キャラクター全員には自身の属性色(先天属性)が設定されており、先天属性によってダメージ量が変動するという特徴がある。

各キャラクターの先天属性は、ステータス画面はもちろん、パーティ変更画面などでもわかる

 さらに「フィールドエフェクト」という属性システムもある。本作の戦闘開始時には、そのフィールドの属性色が配置されており、味方、敵ともに互いがエレメントを使用することで、最新3回分の色に塗り替えられていく。フィールドを同色に染めていくほどその属性の魔法やキャラクターのステータスが強化され、反属性が弱体化されていくため、どのキャラクターにどのエレメントを装備させて、どのタイミングで使用するかというのが、本作のバトルのキーになっている。

画面左上に表示されているのがフィールドエフェクト。この場合、「青、緑、黄」で染められている。例えばここで赤のエレメントを使用すると、青が押し出され、「緑、黄、赤」になる

 例えば、敵の先天属性が赤の場合、青が弱点となる。そのため、フィールドはできるだけ青で塗りつぶしたうえで青のエレメントを使用すれば、敵に大ダメージを与えることができる、のだが……大抵の場合、敵は自身の先天属性のエレメントで攻撃をしてくるため、塗りつぶそうとしている途中で敵の攻撃で別の色を挟まれてしまうことが多い(敵は先天属性以外の色のエレメントも使用してくる)。

 本作は各キャラクターに設定されたエレメントを装備するための枠(エレメントグリッド)にエレメントをセットして使用するのだが、1つのグリッドに配置されたエレメントは基本的に1回の戦闘中に1回しか使用できない。

 簡単に言えば「アクアボール」という青のエレメントをひとつ持っていても、それはアクアボールをグリッドにセットしたキャラクターが、1回のバトルで1回だけアクアボールを使用できるだけだ。

 そんな中で赤の先天属性の敵に対して、どう青でフィールドを塗りつぶしていくかとなると、(あくまで例えだが)アクアボールを6個ほど買い、バトルに出す3キャラに2つずつアクアボールをどこかのグリッドにセットしておけば、1回のバトルで6回アクアボールが使用できる。

 このグリッドは最初はセットできる数が非常に少ないが、レベルスターを得ることで徐々にグリッドの枠が増えていく。グリッドには1から8までレベルがあり、大抵1つのレベルには複数のグリッドが存在する。各エレメントは配置できるレベルが決まっていて、レベル幅が設定されているエレメントは、本来のレベルのグリッドより低い位置や高い位置にも配置できるが、その分威力にも影響する。そのため、各キャラクターは先天属性だけでなく、どのレベルにいくつグリッドを持っているかも、重要な個性のひとつとなっているのだ。

グリッドにずらりとセットされたエレメント。「グリッドの数×3名(バトルに出せる人数)」分のエレメントが必要になる。基本的に補助魔法を下位グリッドに、攻撃魔法を上位グリッドにセットしていくことが多いが、配置は個人の好み。また、「いちいち手動でセットするのが面倒」という場合、オススメで配置してくれる機能もある

 少々話がそれたが、このように「セットできるエレメントには限りがあること」や、「セットしたエレメントはバトル中に一度しか使用できない」、「完全なターン制ではなく、敵の攻撃はこちらの行動に割り込んでくる」といった様々な要素により、なお一層「どのタイミングでエレメントを使うか」は、戦局を左右することになるのだ。

 苦労してようやくフィールドを一色に塗りつぶした途端、敵に別の色のエレメントを差し込まれるのもあるあるなので、そんなことでめげていてはいけないのだが、こういった駆け引きを存分に楽しめるバトルシステムは、今プレイしても20年以上前のものとは思えないほど良くできている。

 バトル面で効果を発揮する新要素は、R3ボタンでオンにできる「バトル強化」と、R3+L3ボタンでオンにできる「オートバトル」。バトル強化は、オンにしておけば、敵からのほぼ全ての攻撃を回避して、エレメントパワーもマックスになる。オートバトルは通常攻撃を自動で行なってくれるが、エレメントは使用してくれないため、エレメントを使用したい場合、その都度オートバトルをオフにする必要がある。

 便利な機能ではあるが、このバトル強化とオートバトルは、本作のバトルの奥深い部分を全て消してしまう。初回プレイ時にはオフにしておいてほしい、というのが筆者の素直な感想である。

物理攻撃は弱・中・強で命中率があり、強になるほどスタミナ消費量があがる。基本どのキャラクターも7.0のスタミナだが、エレメントはスタミナを7.0消費する。エレメントはスタミナがプラスでさえあれば使用できるが、その場合スタミナがマイナスとなり、しばらく行動できなくなる

 まず、オートバトルは通常攻撃しか出さないため、エレメントを使用したバトルを楽しめない。そしてバトル強化はほぼ全ての攻撃を回避してしまうため、オートバトル+バトル強化によって、ただひたすら通常攻撃を繰り出し、どんなに強敵でも殴り倒すことができてしまうのである(ただし通常攻撃だけでは与えられるダメージが少ないので、非常に時間がかかる)。

 確かに便利な機能で、言ってしまえばボス戦でオートバトル+バトル強化で放置したまま家事などをしていても、手が空くころにはボスも倒し終わってリザルト画面になっている。便利すぎて、筆者も実際に何度かボスをオート放置して家事などをしていたが、非常に楽だった。大事なことなのでもう一度言うが、初回プレイ時の使用は推奨しないが、果てしなく便利な機能である。

 しかし前述の通り、本作のエレメントシステムは非常に良く考えられたシステムだけに、それをまったく楽しまないままボスを殴り倒せてしまうのはもったいない。特に、最終的にはエレメントが「クロノ・クロス」という作品の鍵を握るだけに、初めてプレイする人がオートバトルとバトル強化だけに頼っていると、恐らくは途中で困ることになるだろう。

 もちろん、オートバトルもバトル強化もリアルタイムでオンオフができるので、使いたいタイミングでオートバトルをオフにしてエレメントを使うといったようなこともできる。例えばバトル強化だけオンにしておけばこちらは全滅の心配なく、それでいてエレメントシステムを使いつつ有利にバトルを運ぶことも可能だ。しかし、それでもバトル強化をオンにしているだけで、回復やサポート系のエレメントが一切必要なくなってしまい、さらに各キャラクターの先天属性やエレメントグリッドという個性も、潰してしまうこととなる。

 バトルシステムは本作の推したい要素のひとつである。故に、バトル強化とオートバトルについては少々否定的な物言いになってしまったが、考えることが多い本作の中で、バトルに割く思考を減らせるため、これらの機能はプレイそのものへのハードルがとても下がることは間違いない。特に「ゲームシステムが面倒だ」と感じてしまう人には、それが理由で本作をプレイしないというのはあまりにもったいない。それならば、やはり活用してでも「クロノ・クロス」という名作をプレイしてほしい。