レビュー
「METAL DOGS」レビュー
王道ハクスラを「メタルマックス」で。ツボを押さえた遊びやすさと爽快感のあるスピンオフタイトル
2021年8月25日 18:00
- 【METAL DOGS】
- ジャンル:ローグライトアクション
- 開発・発売元:24Frame
- プラットフォーム:PC
- アーリーアクセス開始:8月25日
- 価格:2,380円(税別)
「メタルマックス」(MM)シリーズを、かつて「2:ReLOADED」と「3」を遊び、「RETURNS」を知り合いが遊ぶのを見たことのある筆者。「ゼノ」(X)、「ゼノ リボーン」(XR)と「サーガ」シリーズは残念ながらプレイしていないが、好きな賞金首は「ダイコンデロガ」と「サルモネラス」、「軍艦サウルス」に「土星クラゲ」だ。「X」で「ダイコンデロガ」が通常出現のモンスターだと知ったときは驚いた。
そんな「MM」シリーズは、2021年に30周年を迎えた。その最新作「XR」のスピンオフタイトルが、今回紹介する「METAL DOGS」だ。2022年には「メタルマックス ワイルドウエスト」の発売も予定されており、本作は「ワイルドウエスト」のテーマもわずかながら継承している。
本作は「ローグライトアクション」というジャンルで、シリーズのマスコットでもある「ポチ」などの戦闘犬を操り、ランダム生成されたマップを駆け回りモンスターを駆逐していくゲームだ。「MM」シリーズならではの大量の爆発や弾丸が飛び交い、弾幕系シューティングゲームのような側面もある。
キャラクターやオブジェクトは3Dで描かれ、視点は見下ろし型だ。敵や宝箱からドロップする武器や防具は、スキルのレベルと数に応じてレアリティが分かれる。こう紹介すると、王道のハック&スラッシュ(ハクスラ)ゲームのようにも見える。しかし本作はハクスラのツボを的確に押さえつつ、「MM」シリーズらしいワイルドさをふんだんに盛り込んだタイトルとなっている。
そこで今回は、アーリーアクセスの開始に先駆けて本作をプレイしたうえでの全体的な楽しさ、課題などを紹介する。なお、記事執筆のため先行して提供されたバージョンからもアーリーアクセス版に向けて改善や調整が進められており、本日配信が開始されたバージョンとは一部異なる点がある。
キュートなマスコットが1番強い世界
本作は、「メタルマックスゼノ リボーン」(MMXR)の舞台だった東京を大きく離れた「富士山麓」の「アオキガハラ」が舞台だ。そこには「MM」シリーズでいわゆる教会の役目も担っていた「Dr.ミンチ」がひとり寂しく住んでおり、力尽きた戦闘犬「ポチ」を偶然見つけて蘇生したところから物語が始まる。
「ポチ」は「西」を目指していたところで「ミンチ」に拾われ、街のハンターオフィスからなぜかミッションを請け、冒険に繰り出していく。ミッションを達成すればお金(G)が支払われ、「チャレンジ条件」をクリアすれば追加でアイテムやGを獲得できる。
「ミンチ」は全身が機械化する奇病に侵され、サイボーグのようなたたずまいに変貌している。本作ではミンチを助けながら、戦闘犬たちが抱えていた使命を解き明かすというストーリーが描かれるのだ。
戦闘犬はストーリーの進行とともに3匹に増え、ドーベルマンとブルドッグが仲間になる。操作する犬は1匹のみだが、気分や好みで変えてみると楽しい。なお装備は共有できるが、レベルは個別となる。
ストーリーはミッションとともに進んでいく。ミンチと戦闘犬の間に生まれる奇妙な絆がかわいらしく、続々と集まる戦闘犬がアオキガハラ周囲の敵を倒すと、ミンチがそれをもとに研究してショップが充実したり、街が発展する。背景やミンチのグラフィックス変化は見ものだ。
ミンチが「電撃蘇生術」に傾倒しているのは本作でもやはり同じで、「蘇るのじゃ、この電撃でぇっ!」と戦闘犬たちを蘇生していく様子は「MM」を遊んでいるファンならばたまらないところ。ミッション中に力尽きるたびに電撃で蘇生してくれるので、恒例のセリフを見たくなったら適当なミッションで倒れてみるのもよいかもしれない。本作はゲームオーバー時のペナルティはまったくなく、経験値やG、拾ったアイテムもそのままで拠点に戻ることができる。
ミッション中のマップはローグライクで、部屋と通路の構成。部屋にはほぼすべての部屋で敵が配置されていて、敵はピンク色の丸、宝箱は星で示される。ミニマップは拡大できるので「行かなくていい道」があっても回避しやすく、タイムロスを減らせる。全体で見てもおおむね走りやすいサイズ感と道の長さだった。
存分に遊ぶならぜひコントローラーで
本作はプレイステーションシリーズやXboxシリーズと同様のボタンとジョイスティックを備えたコントローラーでプレイすることを強く意識しており、ボタン配置も最適化されている。標準でA(PSでは×)が決定ボタンで、設定でB(○)にも設定でき、残る3ボタンで射撃する。
L/RBとトリガー、方向キーは回避行動やアイテムに使い、右スティックは敵をロックオンした際のターゲット切り替えを担う。敵はロックオンしなくても自動的に照準を合わせて攻撃してくれるが、この照準には多少クセがあり、多少意図しない挙動をとられることもあった。
ロックオン機能については現状挙動がやや不安定で、攻撃すると敵味方関係なく大ダメージを与える「不発弾」が近くにあった場合などは間違えて爆破して大ダメージ、ゲームオーバーになることもある。破壊可能オブジェクトにはかなりの種類があり、破壊して発生する効果はダメージやステータス強化、状態異常などと多岐にわたるので、これらのオブジェクトを上手く使って立ち回るのはかなり面白い部分ではある。そのため、ロックオン周りのの操作感についてはアーリーアクセスでの改善に期待したい。
キーボードはWASDで移動、Rで武器のリロードが可能だが、JKLで射撃、Uで必殺技にあたる「首輪アクション」など、現時点でのデフォルト設定では手の配置が近く難儀する点も多い。ロックオン時のターゲット切り替えもできないため、ぜひコントローラーでプレイしてほしい。プレイステーション 4/5、Xbox One X|Sのいずれのコントローラーにも対応しているため、手になじんだ製品を使うとよいだろう。筆者は設定で決定ボタンを「○」にしたうえでPS4のDUALSHOCK 4を使用した。
「ポチ」を最強の戦車にする物語
本作最大の魅力は、本作向けにリモデリングされた「MM」シリーズに登場した武器を犬に装備させられることだ。名前も「○○mm機銃」や「○○mmキャノン」だけでなく、爆風を発生させるS-E(Special Equipment)にも「ピッチングマシン」や「レーンサイクロン」、「トマトタイフーン」といった従来作品に登場する名前を使用している。各種武器には「通常」、「散弾」といった「弾タイプ」が設定されており、中でも「トマトタイフーン」をはじめとしたナパーム弾や凍結弾を使用する武器は、「炎上」、「凍結」、「麻痺」といった専用の状態異常も用意されている。
それらを3種選んで敵に挑むのだが、最も汎用性が高い組み合わせは「機銃+大砲+S-E」だと感じた。機銃と大砲を交互に撃って敵を1匹ずつ撃破したり、まとまった敵には爆風が発生するS-Eで攻撃するのだ。後述する強力な賞金首相手には「機銃+大砲+大砲」や「S-E+大砲+大砲」といった組み合わせで、各武器のリロード時間をカバーしつつ攻撃する戦法も有効となる。
武器を搭載する砲塔部分が方向転換にあわせてゆっくりと追従したり、武器ごとに弾のアイコンやSEが違うので、とにかく撃ちまくることが楽しいし、細かなこだわりを感じられる。機銃は後述するがスキルによって30~40発ほど装填できるものがあり、26発以上あると弾が2段に分かれて表示される。戦闘時のステータス表示はかなりきれいに仕上げられており、ひと目でわかりやすいのが魅力だ。
序盤こそ機銃は口径の違いで射程やリロードの速度が変わるが、中盤からは特徴そのままに強化されていく。弾タイプはプレイ時点で「乱射」のみで、ほとんどの敵に対して射程の半分程度まで接近しないと弾が逸れてまともに当たらないことがままある。ただ発射速度とリロード速度が早く小回りが利くため、大砲やS-Eのリロード時間にちまちまと敵のHPを削るのには最適だ。
大砲は1発の強力な砲弾を発射する「キャノン」、複数発発射できてリロードが長い「バースト」、射程が機銃並みで大きく拡散する弾を発射する「スパルク」に大きく分かれ、スキルのない状態では「キャノン」が最も火力が高く、射程も長いうえにリロードも早く扱いやすい。秒間当たりのダメージ(DPS)を「ダメージ×発射数÷リロード時間(秒)」で計算すると、プレイ時点でどの口径でも「キャノン」が強かった。詳しく計算しようとするとさらに「発射間隔(秒)」が加わるが、同じモンスターを攻撃した場合に倒れるまでの速度も「キャノン」が最も早い。ただし、この点はドロップ時などに付与されるスキルで変わる可能性もある。
S-Eは、序盤ではミサイルがメインだ。「ATミサイル」をはじめとした「通常」の弾タイプは山なりに飛翔し、着弾すると爆風で周囲の敵に大ダメージを与えられるほか、室内を模したマップでも壁を飛び越えて着弾させることができる。ただ、弾は「狙った敵が発射時にいた場所」に着弾するため素早い敵には当たりづらいということもあり、使い所を考える必要がある。
そこで使えるのが、「トマトタイフーン」などの属性弾だ。爆風でダメージを与えるだけでなく、状態異常が敵だけに発生するフィールドをばら撒いて妨害する。特に「炎上」はフィールドごとにダメージが発生するため、重ねがけすると大量のダメージカウントとともに敵が燃え上がる様子を見られて楽しい。
ゲームの進行で解放される「首輪」には、「ラッシュ」のスキルが付いている。現時点で確認できている限りでは、機銃(マシンガン)、大砲(キャノン)、S-Eそれぞれに対応する「ラッシュ」が存在し、敵を攻撃してゲージを溜めたのちにLB(L1)で発動すると、広範囲にダメージを与えることができる、シューティングゲームでいう「ボム」を放ちながら対応する装備を何発も連射する。
「ラッシュ」では武器の装填数にかかわらず大量に発射するため、対応する装備の3種同時発射はかなりロマンを感じる演出となる。ただし同時発射のために「首輪」はもちろん装備を付け替えるとゲージが0に戻るため、「ラッシュ」を狙う時は同じカテゴリの武器だけでうまく立ち回りたい。なお、ゲージはダメージや倒した敵の数ではなく「攻撃を当てた回数」に応じて溜まっているようだ。同じ機銃カテゴリでも、同じ敵に3発当てて倒した場合より威力の低い機銃で30発攻撃した方がゲージが大きく溜まっていた。
賞金首がドロップする武器も楽しめるポイントだろう。「ロンメルゴースト」なら「ゴーストキャノン」、「ムカデロン」なら「ムカデロンナパーム」などがあり、これらは複数個ドロップすることもあるうえ、同レベルの武器を大きく超える性能を持っている。特に「ゴーストキャノン」は「バースト」と同じ3発装填の大砲でありながらキャノン並みのダメージとリロード時間で、長く使える相棒だった。また、装備が強力になるにつれて発射エフェクトが強化されるのも細かな魅力。大砲では発砲炎(マズルフラッシュ)が派手になったり、S-Eだと爆風が広がっていく。