レビュー

「ソング オブ ホラー」レビュー

あなたは、“それ”の恐怖と戦いながら、隠された謎を解くことができるだろうか……?

【ソング オブ ホラー】

ジャンル:サバイバルホラーアドベンチャー

開発元:Protocol Games/Raiser Games

発売元:DMM GAMES

プラットフォーム:PS4/Xbox One/PC

発売日:8月26日

※Xbox One版は発売日未定

価格:4,378円(税込)

 DMM GAMESは、プレイステーション 4/Xbox One/PC用サバイバルホラーアドベンチャー「ソング オブ ホラー」を8月26日(※Xbox One版は発売未定)に発売する。

 本作は作家のセバスチャン・P・ハッシャーとその家族の行方不明事件を解決するため、”それ”と呼ばれる超自然的な存在を掻い潜り、事件の調査を進めていくカメラ固定・3人称視点のアドベンチャータイトルだ。オリジナル版は2019年にリリースされていたが、ゲーム全編に渡って日本語への翻訳が行なわれたことで、改めて国内向けとに販売されることとなった。今回、ローカライズされたPS4版を一足先にプレイすることができたので、その内容をお届けする。なお、本稿では特に序盤の内容について一部ネタバレとなる内容を含んでいる。

【「ソング オブ ホラー』日本語版公式トレーラー】

さながら和製ホラーのような迫りくる恐怖に精神力を削られる「ソング オブ ホラー」

 今では数多くのホラー(アドベンチャー)ゲームがリリースされているが、それらを大まかに分類すると、主人公が攻撃手段を持つか、それとも逃げることに徹するか、で分けることができるだろう。前者としては、現われたゾンビなどを攻撃して倒す「バイオハザード」シリーズや、映写機と呼ばれるカメラで撮影して排除する「零」シリーズなどがある。「ソング オブ ホラー」は後者に分類され、“それ”と呼ばれる存在から逃げ、または隠れてやり過ごさなければならないという、「捕まれば死が待つ、倒すことができない正体不明の相手」という恐怖と戦いながら謎を解いていくサバイバルホラーだ。プレーヤーは操作キャラクターを選択し、エピソードごとに異なる場所で恐怖と隣り合わせの中、謎を解いていくことになる。

 最初の舞台となるのは、歴史小説家セバスチャン・P・ハッシャー邸。週末の金曜日、ようやく自宅に帰ってきたウェイク出版の従業員ダニエル・ノイヤーだが、そこへ編集部からの連絡が入る。火曜日には上がっているはずのハッシャーからの原稿が未だに届いていないだけでなく、音信不通になっているとのこと。そこで、ダニエルが様子を見に行くことになるのだが……。

文句を言いながらも、原稿回収に向かうダニエル。筆者としては、この時点で違う意味で胃が痛くなった

 プレーヤーが最初に操作するキャラクターは、このダニエルだ。車でハッシャー邸に到着すると、そこからいよいよゲームが始まる。プレイ中のアングルは3人称視点となっているのだが、カメラ操作は不可能だ。こういう場合、視界の不自由さを問題として挙げる人もいるかもしれない。しかし本作はホラーゲームという性質上、むしろ視界が不自由である方が次の場面展開がわからないため、より恐怖感を増加させるのに一役買っていると感じた。

次の角を曲がった先には何があるのか? 棚の陰に潜んでいるものはいないのか? カメラが固定で先がわからないからこそ、より恐怖が掻き立てられる
手に持つ光源をRスティックで操作でき、それが当たった場所に調べるべき場所があると虫眼鏡アイコンに変わり、詳細を確認することができる

 屋敷に入ると、どこからともなくオルゴールの音が聞こえてくる。その出所を探すべく邸内を探索すると、とある部屋に行き着く。そこにあった雰囲気の違う扉を開けて中に入ると、突如としてドアが閉まってしまい、ダニエルはどこともわからない場所に閉じ込められてしまうことに。こうして序章は終わりを告げ、いよいよ本編がスタートする。

謎の扉を開けて入ると、そのドアが突然消え去り、ダニエルは暗闇の中に閉じ込められてしまう

 ハッシャー邸が舞台のエピソードIではダニエルの元妻ソフィー、ウェイク出版でダニエルの直属の上司を務めるエティエンヌ、ハッシャー邸にて住み込みで働くアレクサンダー、電気技師のアリーナの4人から1人を選び、屋敷へと乗り込んでいく。各キャラクターにはそれぞれスピード・ステルス・体力・精神力のパラメータが用意されており、キャラによっては特定シーンで有利、または不利になることもある。まずは、すべての項目が高いソフィーを選択してゲームを進めてみた。

用意された難易度は4段階あり、それぞれ作家の名前を冠しているのがユニーク。標準難易度として設定されているのは「エドガー・アラン・ポー」で、「M.R.ジェームス」は「エドガー・アラン・ポー」よりも危険な目に遭う頻度は少なく、襲いかかる脅威にもより簡単に対処できる。「E.T.Aホフマン」は、難易度自体は「M.R.ジェームス」と同じだが、キャラクターを失った場合に最終チェックポイントからやり直すかどうかが選択可能だ。「M.R.ジェームス」または「エドガー・アラン・ポー」でクリアすると、最高難易度の「H.P.ラヴクラフト」がアンロックされる仕組みとなっている
最初に選択できるのはソフィー、エティエンヌ、アレクサンダー、アリーナの4名。それぞれパラメータなどが異なる

 屋敷に到着すると、あたりはすっかり暮れて夜になっている。この手のゲームをプレイするときに決まって思うのは「なぜ太陽の出ている明るい昼間ではなく、わざわざ相手が有利な夜に真っ暗な屋敷をウロウロするのか!」ということ。それはそれとして、ゾワゾワする気持ちを落ち着かせつつ暗い家の中へと入ることにした。

家に入った直後は屋敷内が停電しているため、明かりは手元の光源のみ。この暗さが、自然と恐怖感を煽ってくる

 ソフィーの光源はロウソクだが、これは選択したキャラクターによって変わる。光源は燃料や電池が切れて明かりが切れてしまう、などということはないので一安心。とはいえ、正体不明の“それ”が出てくるかもしれない真っ暗な中を探索していくのだから、ゲームとわかっていても変な汗がじっとりと出てくるし、精神をゴリゴリと削られていくのがわかる。

キャラクターごとに光源は変わるが、見える範囲に違いはない

 ビクビクしながら1階を歩き回っていると、さまざまな場所で道具を見つけることができる。それらは、いつでも調べることができるだけでなく、Rスティックで自由に回転させることも可能だ。ドキュメントをひっくり返してみると文字が書かれていたり、ただのリングに見えたアイテムが実は鍵の一部だったりと、ジックリ見回すことで新たな事実が見つかることも多い。横着せずに、見つけた資料は隅から隅まで調べておこう。特に、ヒントが散りばめられているドキュメントやボードが日本語で表示されるのはありがたく、これが英語のままだったらクリアするのは諦めていたと思われるだけに、ローカライズ作業をした方々には頭が下がる思いだ。

見つけたアイテムはRスティックで回転が可能。調べると裏側に持ち主の名前が書かれていたり、得た鍵がどこのものかがわかるなど、大事な情報を得られる
ドキュメントやボードは上手に翻訳されている。これならヒントを見落とすこともない

 また、場所によっては○ボタンで調べた後に歯車のマークがつく場所もある。そこでは、何らかの道具を使用することでアクションを起こすことができ、新しいアイテムを手に入れたり、新展開が起きたりすることもあるのだ。ただし、見つけた直後に何とかなるということはほぼなく、想像力を働かせて必要となるアイテムを考え、それを見つけるという感じで行動することとなるだろう。

屋敷内の各所では、さまざまなアイテムやドキュメントが見つかる。行き詰まった時はドキュメントを読んだり、アイテムが組み合わせられないかどうかを考えるのが良い
鍵が入っているのが見える引き出しが少しだけ開いているものの、滑りが悪いためかこれ以上手前に引くことができない。調べると、滑りをよくするための潤滑油のようなものが必要になりそうだと表示されるので、邸内を探索してそのようなアイテムを探すことに
キッチンの奥にある部屋を調べると、保存食などが置かれている棚の奥に錆び付いたエンジンオイルの缶を見つける。これを潤滑油として引き出しに使えば、中の鍵を取り出せそうだ
とある場所で見つけるマイナスドライバー。これと、序盤で拾った古い金属製の箱を組み合わせれば、その中に入っているものを入手できる。このように、ゲットしたアイテムと以前に入手したアイテムを組み合わせることで、新たな道具を手に入れることも

 しばらく探索を続けると、突然ドアの向こうから物音が聞こえてきて、一気に全身からイヤな汗が……。洋物ホラーと言えば、突然ドアを突き破ってゾンビのような怪物が侵入してくるのが定番だが、本作ではそういう方向性ではなく、むしろ和製ホラーのように“何者かの気配を感じさせる”という、精神力を削ってくるような感じの演出が盛り込まれているのが特徴だ。おかげで、廊下の角を曲がろうとするだけでゾクゾクするし、ドアを開ける時は冷や汗が吹き出し、ましてや物音がしようものなら全身に鳥肌がブワッと立つほど。恐がりな人は、あっという間に投げ出してしまうかもしれない。

例えばこのシーンでは、ドアを開けて部屋に入ると別の扉の奥から物音が聞こえてくるという演出がある。プレイに集中していると、物音だけでも恐怖感が体を這い回る
この先の部屋などは、ドアを開ければ引き込まれること間違いなし!といった雰囲気が漂っている。部屋の電気を付けて明るくすれば入れそうだが、そのためには邸内の停電を復旧させなければならない

 ある程度の部屋を探索すると、ドアに聞き耳を立てることとマップの閲覧が可能となる。この後は音を調べずにドアを開けてしまうと、ダークネスに襲われてジ・エンドということがあり得るので、耳アイコンが表示されたら必ず確かめておきたい。

ドアに耳アイコンが表示された場合は、聞き耳必須。怠ったまま開ければ、ダークネスに取り込まれてしまうことも。
以降は、L3を押すことで邸内マップを見られるようになる。豪邸だけあってかなり広いので、こまめにチェックしながら進もう

 ここからは、ついに謎の存在“それ”であるダークネスが、探索者に対して牙を剥いてくる。別の場所へ移動しようとすると突然ドアから黒いシミが現われ、それが部屋の中へと入ってこようとする事態が起きるのだ。ここでは、“○ボタンを連打してゲージをアップさせ、力が溜まったところでR2ボタンを押してドアを閉める”という操作を何度か行ない、相手が諦めるまでドアを開けさせないようにしなければならない。QTEがメインのアクションゲームとしてプレイしてきたのであれば造作も無いのだが、ここまでのプレイで恐怖感が増し増しとなっているため、どうしても焦ってしまいなかなかうまくいかないのが恐ろしいところ。しかも、いつこのシーンに遭遇するのかもわからないため、余計に怖さが募るのだ。

黒いシミが広がり、ドアを開けて入ってこようとするダークネス。○ボタンを連打しつつタイミング良くR2ボタンを押して、相手を入れさせないようにしよう。焦らなければ、必ず成功するはず
屋敷内を探索している最中は、いつ襲ってくるかわからないダークネスの恐怖と常に隣り合わせとなる。演出も秀逸で、階段を上っている最中に奥の扉からこちらを覗く謎の人物が描写されたり、聞き耳を立てた扉が突然動くなど、即座にコントローラを投げ出してしまいたくなる瞬間も多数

 それ以外にも、探索中に突然ダークネスに追いかけ回されることもある。当然ながら捕まれば操作キャラクターは死亡となってしまうので、地図上に書かれたφ印の部分にある隠れ場所に身を潜める必要があるのだ。ところが、そこに入ったからといって、恐怖が過ぎ去るわけではない。次にダークネスはプレーヤーキャラの心を支配しようとするので、今度はタイミングに合わせてL2+R2ボタンを押し、その恐怖に打ち勝つ必要がある。

探索中、黒いシミが広がりプレーヤーキャラを襲ってくることも。こうなると、全力で逃げ隠れるしかない。遅れれば捕まってしまい“死”あるのみ
隠れたプレーヤーキャラの周りにうごめく、無数の気配。ここでは心臓の鼓動に合わせてタイミング良くL2とR2を同時に押し、動悸を静めなければならない

 そんな本作の特徴の一つと言えるのが、死亡したプレーヤーキャラは生き返らないというもの。屋敷内を探索していれば、好奇心から扉を開けてしまったり、少々危なそうな場所に首を突っ込んでしまうこともあるだろう。しかし、そこでダークネスに捕まってしまうと、そのプレーヤーキャラは死亡となり、残ったキャラクターを選択しての継続プレイとなる。言ってしまえば、特徴の違う残機が3つあるゲームのようなものだ。

エティエンヌでプレイ中、不用意にドアを開けてしまい死亡に……キャラクター選択画面に戻ると、エティエンヌはいなくなっている。以降は残ったキャラクターで探索を進めなければならない

 4人目が死亡してしまうと、なんとそれまでのセーブデータが跡形もなく消去され、最初からやり直しとなってしまう。例えるなら、コンティニューがないアクションゲームでゲームオーバーになったようなもの。もっとも、それであれば文句を言いつつも即座に再ゲームするのだが、本作はここまでで精神をゴリゴリと削られていたところへ追い打ちをかけての全滅→やり直しとなったため、すぐにはプレイ再開ができないほどのダメージとなった。もっとも、今の時代は死んで覚えるというゲームも数多いため、慣れている人ならばそれほど気にならないかもしれない。

行き詰まったので、好奇心から放置していた風呂の中を調べてみたところ、そのままダークネスに引き込まれてしまい死亡。プレーヤーキャラクター全員が死んでしまうと、タイトル画面に戻されてイチからやり直しとなる。なかなか手厳しいが、プレーヤーがこれまでに蓄積してきた経験は消されることはないので、次のプレイではそれを有効活用して攻略していきたい

 仮にやり直しとなったとしても、それまでの経験を活かすことで2度目以降のプレイでは効率的に動けるようになるのだが、ダークネスはAIによってプレーヤーの動きに対応し予期せぬ方法で追い詰めてくるため、遊ぶたびに演出が異なってくる。つまり、各種仕掛に対しての攻略方法は同じもののダークネスの攻撃が変わってくるので、2度目以降といえども気を抜いてプレイすることはできないのだ。こうして筆者は恐怖に震えつつ、再びイチから屋敷を探索することになるのだった……。

恐怖と隣り合わせの探索。先の展開が知りたくなりついついハマる内容に

 今回プレイして感じたのは、“恐怖”という空気感が非常にうまく表現されていること。一歩でも屋敷の中に入ると、ダークネスに襲われるかも!? という恐怖感に支配されるため、プレイ中はドキドキというよりもゾワゾワしっぱなしだった。真っ暗で右も左もわからないお化け屋敷に放り出され、寒気を感じつついつ妖怪が襲ってくるのかとビクビクしながら出口を探して彷徨う……そういった怖さが全編を通して漂っているのだ。

 実際、40年弱ほど雑誌「ムー」を愛読するオカルトホラー好きの筆者でも、プレイ中は何か物音がするたびに鳥肌を立てたり、画面のどこかが反応すれば周囲に誰もいないのに大きな独り言で気を紛らわすなど、非常に怖い思いをしながらコントローラーを操作していたほど。ただし、仕掛けられている謎やパズルに不条理なものはなく、どれもこれも事前の調査さえ行なえば必ず解けるようになっている。そのため、怖い思いをしながらもついつい屋敷内を何度も行き来してしまい、余計に恐怖感が募るというハメになった。

 厳しいのは、全滅時のセーブデータ消去だろう。2度目以降は攻略手順がわかっているとは言え、またあのゾワゾワした恐怖感を感じながら屋敷の中を探索しなければならないのか……と思うと、なかなかに気が滅入ってしまう。それでも、気づけば脳内に地図を表示して「あれ? 気づけばあそこを調べていないな」や「そういえば、あのアイテムはあの場面で使えるのでは?」などと考えてしまうほど熱中した。ある意味、怖さよりも謎解きの面白さにハマったと言えるかもしれない。

 QTEライクな操作があるため若干のアクション要素は含まれているが、ホラーは好きでもそういったゲームが不得手という人は難易度を下げれば問題なく楽しめるし、ミステリ好きの人も謎解きを堪能できるだろう。この暑い夏に是非一度プレイして欲しいタイトルだ。