レビュー
「ソング オブ ホラー」レビュー
あなたは、“それ”の恐怖と戦いながら、隠された謎を解くことができるだろうか……?
2021年8月25日 18:00
- 【ソング オブ ホラー】
- ジャンル:サバイバルホラーアドベンチャー
- 開発元:Protocol Games/Raiser Games
- 発売元:DMM GAMES
- プラットフォーム:PS4/Xbox One/PC
- 発売日:8月26日
- ※Xbox One版は発売日未定
- 価格:4,378円(税込)
DMM GAMESは、プレイステーション 4/Xbox One/PC用サバイバルホラーアドベンチャー「ソング オブ ホラー」を8月26日(※Xbox One版は発売未定)に発売する。
本作は作家のセバスチャン・P・ハッシャーとその家族の行方不明事件を解決するため、”それ”と呼ばれる超自然的な存在を掻い潜り、事件の調査を進めていくカメラ固定・3人称視点のアドベンチャータイトルだ。オリジナル版は2019年にリリースされていたが、ゲーム全編に渡って日本語への翻訳が行なわれたことで、改めて国内向けとに販売されることとなった。今回、ローカライズされたPS4版を一足先にプレイすることができたので、その内容をお届けする。なお、本稿では特に序盤の内容について一部ネタバレとなる内容を含んでいる。
さながら和製ホラーのような迫りくる恐怖に精神力を削られる「ソング オブ ホラー」
今では数多くのホラー(アドベンチャー)ゲームがリリースされているが、それらを大まかに分類すると、主人公が攻撃手段を持つか、それとも逃げることに徹するか、で分けることができるだろう。前者としては、現われたゾンビなどを攻撃して倒す「バイオハザード」シリーズや、映写機と呼ばれるカメラで撮影して排除する「零」シリーズなどがある。「ソング オブ ホラー」は後者に分類され、“それ”と呼ばれる存在から逃げ、または隠れてやり過ごさなければならないという、「捕まれば死が待つ、倒すことができない正体不明の相手」という恐怖と戦いながら謎を解いていくサバイバルホラーだ。プレーヤーは操作キャラクターを選択し、エピソードごとに異なる場所で恐怖と隣り合わせの中、謎を解いていくことになる。
最初の舞台となるのは、歴史小説家セバスチャン・P・ハッシャー邸。週末の金曜日、ようやく自宅に帰ってきたウェイク出版の従業員ダニエル・ノイヤーだが、そこへ編集部からの連絡が入る。火曜日には上がっているはずのハッシャーからの原稿が未だに届いていないだけでなく、音信不通になっているとのこと。そこで、ダニエルが様子を見に行くことになるのだが……。
プレーヤーが最初に操作するキャラクターは、このダニエルだ。車でハッシャー邸に到着すると、そこからいよいよゲームが始まる。プレイ中のアングルは3人称視点となっているのだが、カメラ操作は不可能だ。こういう場合、視界の不自由さを問題として挙げる人もいるかもしれない。しかし本作はホラーゲームという性質上、むしろ視界が不自由である方が次の場面展開がわからないため、より恐怖感を増加させるのに一役買っていると感じた。
屋敷に入ると、どこからともなくオルゴールの音が聞こえてくる。その出所を探すべく邸内を探索すると、とある部屋に行き着く。そこにあった雰囲気の違う扉を開けて中に入ると、突如としてドアが閉まってしまい、ダニエルはどこともわからない場所に閉じ込められてしまうことに。こうして序章は終わりを告げ、いよいよ本編がスタートする。
ハッシャー邸が舞台のエピソードIではダニエルの元妻ソフィー、ウェイク出版でダニエルの直属の上司を務めるエティエンヌ、ハッシャー邸にて住み込みで働くアレクサンダー、電気技師のアリーナの4人から1人を選び、屋敷へと乗り込んでいく。各キャラクターにはそれぞれスピード・ステルス・体力・精神力のパラメータが用意されており、キャラによっては特定シーンで有利、または不利になることもある。まずは、すべての項目が高いソフィーを選択してゲームを進めてみた。
屋敷に到着すると、あたりはすっかり暮れて夜になっている。この手のゲームをプレイするときに決まって思うのは「なぜ太陽の出ている明るい昼間ではなく、わざわざ相手が有利な夜に真っ暗な屋敷をウロウロするのか!」ということ。それはそれとして、ゾワゾワする気持ちを落ち着かせつつ暗い家の中へと入ることにした。
ソフィーの光源はロウソクだが、これは選択したキャラクターによって変わる。光源は燃料や電池が切れて明かりが切れてしまう、などということはないので一安心。とはいえ、正体不明の“それ”が出てくるかもしれない真っ暗な中を探索していくのだから、ゲームとわかっていても変な汗がじっとりと出てくるし、精神をゴリゴリと削られていくのがわかる。
ビクビクしながら1階を歩き回っていると、さまざまな場所で道具を見つけることができる。それらは、いつでも調べることができるだけでなく、Rスティックで自由に回転させることも可能だ。ドキュメントをひっくり返してみると文字が書かれていたり、ただのリングに見えたアイテムが実は鍵の一部だったりと、ジックリ見回すことで新たな事実が見つかることも多い。横着せずに、見つけた資料は隅から隅まで調べておこう。特に、ヒントが散りばめられているドキュメントやボードが日本語で表示されるのはありがたく、これが英語のままだったらクリアするのは諦めていたと思われるだけに、ローカライズ作業をした方々には頭が下がる思いだ。
また、場所によっては○ボタンで調べた後に歯車のマークがつく場所もある。そこでは、何らかの道具を使用することでアクションを起こすことができ、新しいアイテムを手に入れたり、新展開が起きたりすることもあるのだ。ただし、見つけた直後に何とかなるということはほぼなく、想像力を働かせて必要となるアイテムを考え、それを見つけるという感じで行動することとなるだろう。
しばらく探索を続けると、突然ドアの向こうから物音が聞こえてきて、一気に全身からイヤな汗が……。洋物ホラーと言えば、突然ドアを突き破ってゾンビのような怪物が侵入してくるのが定番だが、本作ではそういう方向性ではなく、むしろ和製ホラーのように“何者かの気配を感じさせる”という、精神力を削ってくるような感じの演出が盛り込まれているのが特徴だ。おかげで、廊下の角を曲がろうとするだけでゾクゾクするし、ドアを開ける時は冷や汗が吹き出し、ましてや物音がしようものなら全身に鳥肌がブワッと立つほど。恐がりな人は、あっという間に投げ出してしまうかもしれない。
ある程度の部屋を探索すると、ドアに聞き耳を立てることとマップの閲覧が可能となる。この後は音を調べずにドアを開けてしまうと、ダークネスに襲われてジ・エンドということがあり得るので、耳アイコンが表示されたら必ず確かめておきたい。
ここからは、ついに謎の存在“それ”であるダークネスが、探索者に対して牙を剥いてくる。別の場所へ移動しようとすると突然ドアから黒いシミが現われ、それが部屋の中へと入ってこようとする事態が起きるのだ。ここでは、“○ボタンを連打してゲージをアップさせ、力が溜まったところでR2ボタンを押してドアを閉める”という操作を何度か行ない、相手が諦めるまでドアを開けさせないようにしなければならない。QTEがメインのアクションゲームとしてプレイしてきたのであれば造作も無いのだが、ここまでのプレイで恐怖感が増し増しとなっているため、どうしても焦ってしまいなかなかうまくいかないのが恐ろしいところ。しかも、いつこのシーンに遭遇するのかもわからないため、余計に怖さが募るのだ。
それ以外にも、探索中に突然ダークネスに追いかけ回されることもある。当然ながら捕まれば操作キャラクターは死亡となってしまうので、地図上に書かれたφ印の部分にある隠れ場所に身を潜める必要があるのだ。ところが、そこに入ったからといって、恐怖が過ぎ去るわけではない。次にダークネスはプレーヤーキャラの心を支配しようとするので、今度はタイミングに合わせてL2+R2ボタンを押し、その恐怖に打ち勝つ必要がある。
そんな本作の特徴の一つと言えるのが、死亡したプレーヤーキャラは生き返らないというもの。屋敷内を探索していれば、好奇心から扉を開けてしまったり、少々危なそうな場所に首を突っ込んでしまうこともあるだろう。しかし、そこでダークネスに捕まってしまうと、そのプレーヤーキャラは死亡となり、残ったキャラクターを選択しての継続プレイとなる。言ってしまえば、特徴の違う残機が3つあるゲームのようなものだ。
4人目が死亡してしまうと、なんとそれまでのセーブデータが跡形もなく消去され、最初からやり直しとなってしまう。例えるなら、コンティニューがないアクションゲームでゲームオーバーになったようなもの。もっとも、それであれば文句を言いつつも即座に再ゲームするのだが、本作はここまでで精神をゴリゴリと削られていたところへ追い打ちをかけての全滅→やり直しとなったため、すぐにはプレイ再開ができないほどのダメージとなった。もっとも、今の時代は死んで覚えるというゲームも数多いため、慣れている人ならばそれほど気にならないかもしれない。
仮にやり直しとなったとしても、それまでの経験を活かすことで2度目以降のプレイでは効率的に動けるようになるのだが、ダークネスはAIによってプレーヤーの動きに対応し予期せぬ方法で追い詰めてくるため、遊ぶたびに演出が異なってくる。つまり、各種仕掛に対しての攻略方法は同じもののダークネスの攻撃が変わってくるので、2度目以降といえども気を抜いてプレイすることはできないのだ。こうして筆者は恐怖に震えつつ、再びイチから屋敷を探索することになるのだった……。
恐怖と隣り合わせの探索。先の展開が知りたくなりついついハマる内容に
今回プレイして感じたのは、“恐怖”という空気感が非常にうまく表現されていること。一歩でも屋敷の中に入ると、ダークネスに襲われるかも!? という恐怖感に支配されるため、プレイ中はドキドキというよりもゾワゾワしっぱなしだった。真っ暗で右も左もわからないお化け屋敷に放り出され、寒気を感じつついつ妖怪が襲ってくるのかとビクビクしながら出口を探して彷徨う……そういった怖さが全編を通して漂っているのだ。
実際、40年弱ほど雑誌「ムー」を愛読するオカルトホラー好きの筆者でも、プレイ中は何か物音がするたびに鳥肌を立てたり、画面のどこかが反応すれば周囲に誰もいないのに大きな独り言で気を紛らわすなど、非常に怖い思いをしながらコントローラーを操作していたほど。ただし、仕掛けられている謎やパズルに不条理なものはなく、どれもこれも事前の調査さえ行なえば必ず解けるようになっている。そのため、怖い思いをしながらもついつい屋敷内を何度も行き来してしまい、余計に恐怖感が募るというハメになった。
厳しいのは、全滅時のセーブデータ消去だろう。2度目以降は攻略手順がわかっているとは言え、またあのゾワゾワした恐怖感を感じながら屋敷の中を探索しなければならないのか……と思うと、なかなかに気が滅入ってしまう。それでも、気づけば脳内に地図を表示して「あれ? 気づけばあそこを調べていないな」や「そういえば、あのアイテムはあの場面で使えるのでは?」などと考えてしまうほど熱中した。ある意味、怖さよりも謎解きの面白さにハマったと言えるかもしれない。
QTEライクな操作があるため若干のアクション要素は含まれているが、ホラーは好きでもそういったゲームが不得手という人は難易度を下げれば問題なく楽しめるし、ミステリ好きの人も謎解きを堪能できるだろう。この暑い夏に是非一度プレイして欲しいタイトルだ。
Publish by EXNOA LLC. © Raiser Games S.L. Developed by Protocol Games S.L. All rights reserved. Song of Horror is a trademark of Protocol Games S.L.