PCゲーミングデバイスレビュー

高い基本性能にロジクールの本気が見える
13ボタンを装備した高性能ワイヤレスマウス

「ロジクール ワイヤレスマウス G700」

  • ジャンル:マウス
  • 発売元:ロジクール
  • 開発元:Logitech
  • 価格:9,980円
  • 対応OS:Windows XP/Vista/7
  • 発売日:9月3日発売


 PCデバイスメーカーのロジクールが、1年半ぶりにゲーミンググレードの高性能マウスを発売する。9月3日に販売がスタートする「ロジクール ワイヤレスマウス G700(以下『G700』)」は、パッケージに「クリエイティブ プロフェッショナル仕様」と銘された製品。一見ゲーム向けではないように思えるかもしれないが、その性能は間違いなくゲーミンググレードだ。

 そもそも「G700」は、実は米Logitechにより先行発売されている海外ではゲーミングマウスの最新製品として販売されているモデル。ロジクールによれば、日本では「ロジクール ゲーミングマウス G500」の一般向けオプティカルバージョンである「MX518」の売れ行きがよく、また、ゲーマー層には既に「Gシリーズ」のブランドが浸透していることなどから、一般層へのさらなる浸透を狙い、今回「G700」を一般向けハイエンドマウスとしてブランディングした、ということのようだ。

 ワイヤレスマウスというと一部のゲーマーにはやや抵抗があるかもしれないが、Razerの「Mamba」やROCCATの「Pyra Wireless」の先例が既にあるように、近年の高性能無線マウスは有線マウスと変わらぬパフォーマンスを発揮するようになっている。「G700」もそのひとつであることは確かだ。



■ 総計13ボタンを装備。大きなボディのヘビー級ワイヤレスマウス

パッケージ内容物。マウス本体のほか無線レシーバー、延長ケーブル、充電用USBケーブルなどが付属
左サイドに多数のボタンを装備。プログラマブルボタン総数は13個
単三型の充電池が付属。これを含めて本体重量は151グラムと重め

 まず物理的な特徴から見ていこう。「G700」の外形寸法は79.8×126.3×45.9mm(幅×奥行×高さ)となっており、ゲーミングマウスの中でも特に大型なボディを持っている。形状的には同じロジクールの既存製品「MX1100」と共通のフォルムを持っており、中央部のくびれによりしっかりと全体をホールドすることができるようになっている。

 

 特筆すべきはそのボタン数と、配置だ。まず目立つのが左サイドに配置された4つのサイドボタン。通常のマウスではここに1つか2つのボタンが配置されることが多いが、普通はそれ以上ボタンを配置しても誤射しやすくなるだけという問題がある。「G700」では独特の尖ったボタン形状にすることで、親指を傾けるだけで確実に狙ったボタンを押せるようにしておりこの問題を解決している。

 さらにマウス上面部、左メインボタンの左脇には3つの小ボタンを配置。G8、G9、G10と刻印されたこれらのボタンには、デフォルトではそれぞれバッテリー残量表示、DPIダウン、DPIアップの機能が割り当てられている。こちらもボタンの凹凸がはっきりしているので、押し間違えることはまずなく、しっかりと使い使い分けることが可能だ。

 さらに中央にはG11と刻印されたボタンがあり、これに左右メインボタン、ホイール、ホイールの左右チルトボタンを合わせてボタン数は総計13個だ。G11ボタンの上にはロジクール独自の高速ホイール回転「ハイパーファストスクロール」をON/OFFするためのトグルボタンを配置されているが、こちらは機械式のボタンとなっており、プログラマブルではない。

 無線マウスということで、電源として内部に単三型ニッケル水素電池を標準で実装している。「Razer Mamba」のように独自方式のバッテリーではないため、市販の単三型充電池に置き換えることも可能だ。電池を含めた本体重量は151グラム。軽量な有線ゲーミングマウスに慣れた身にはびっくりするほどの総重量となる。まずはこの大きさ、重さが好みにあうかどうかが評価のポイントになるだろう。

 マウスは大きいが無線レシーバーは小さい。本製品に付属する小指の先ほどの大きさのUSB無線レシーバーは独自方式で、他のデバイスの接続には使えないが、レポートレート最大1,000Hz/秒という高い通信速度を実現している。普通に操作する限りにおいてはもちろん、反射神経計測ソフトで遊ぶようなシーンでも有線マウスに対する遅延の大きさというのは全く感じられない。

 無線レシーバーをPC本体のUSB端子に接続する際、マウスとの距離が離れて通信状況が悪くなるのを防ぐために、専用のUSB延長ケーブルが付いているというのもありがたいところだ。また付属の専用USBケーブルにより、本製品を「有線化」して、充電しつつ常用することが可能となっている。ただこのケーブル、そこらのキーボード用ケーブルほどの太さと硬さがあり、ゲーム中に使うのは辛い。もっと細いケーブルであれば充電中も問題なく使えるのだが、この点は少々残念である。


形状はロジクールの一般向けワイヤレスマウス「MX1100」に酷似。中央部のくびれにより大型ながらしっかりとホールドできる。ホイール部はスーパーファストスクロール対応。左側面にはLEDインジケーターが見える
無線レシーバーは非常に小型。延長ケーブルによりPC本体からデスクトップに引き出すことができる。充電ケーブルは通信ケーブルも兼ねており、装着時は有線マウスとして動作。ただし、コードは非常に太く、取り回しが悪いのが珠にキズ



■ 完全にゲーミンググレードなセンサーとカスタマイズ機能

マウス背面。センサーは中央やや前方に位置している
現在のDPIやプロファイルモードはLEDインディケーターで判別できる

 次に「G700」の中身について触れていこう。核となるセンサーの性能は非常に高い。方式はレーザー、解像度は200~5,700DPIの可変式で、最大トラッキングスピードは165インチ/秒。リフトオフディスタンスは筆者実測で2mmほどで、センサー周りの性能はゲーミングマウスとして全く申し分ない。Gシリーズマウスの前製品「G9x」と比較してもさらに上を行く性能だ。

 

 DPI設定は最大で5段階をオンザフライで切り替えることができる。この設定は、ロジクールのサイトからダウンロードできるソフトウェア「SetPoint 6」で行なう仕組み。「SetPoint」側では各設定を100DPI刻みで調整できるほか、直線補正(マウスの垂直・水平移動のブレを補正して正確な直線に修正する機能)のON/OFFも可能だ。

 また、13個という多数のボタンは全てマクロ機能に割り当てることができる。この設定も「SetPoint」。マクロにはキーボードストローク、マウス操作、各操作のタイミングを個別に記録・編集することができるもので、他の高性能ゲーミングマウスと同等の機能が提供されている。作成したマクロに個別に名前をつけて、それを各ボタンに割り当てるという形。使いやすくまとめられている。

 DPI設定や各ボタンの設定は、マウス本体に記録される3つの「プロファイル」毎に別個の設定を保存することが可能だ。デフォルトでは各プロファイルに「Gaming」、「General」、「Productivity」と名付けられているが、名称・内容は変更可能なので、ゲームタイトル毎の設定に置き換えても面白い。プロファイルはデフォルトでマウスホイール下部のG11ボタンで切り替えが可能だ。

 現在のプロファイル番号は左サイドボタンの前方にるLEDインディケーターで確認することができる。またこのインディケーターはDPI切り替え時には現在のDPI設定、「バッテリー残量表示」のボタンを押せば現在のバッテリーレベルが示される仕組みで、通常時は消灯している。現在の設定を確かめるために設定を変えなければならないというジレンマはあるが、外形をシンプルにまとめるためには致し方ないところだろう。

 これだけのボタン数とマクロ機能があれば、MMORPGやストラテジーゲームなどで相当ヘビーにマクロを利用するユーザーでも物足りなさを感じることはほぼないだろう。ボタン数においてこれを超えるマウスはRazerの多ボタンマウス「Naga」くらいしか無い。


「SetPoint 6.x」での設定に対応。マウスボタンのカスタマイズのほか、DPI調整、マクロ作成、プロファイル管理など、ゲーミングマウスとして必要なことがひととおり揃っている



■ マウス本体の重さは感じるが、正確なコントロールが可能。水平感覚への慣れは必要

レポートレートの筆者環境での実測は500Hz前後となった
はじめ、マウスの水平方向に感覚を合わせるのに時間がかかったが、その後の操作安定感はバッチリ
充電ケーブルはキーボードケーブルなみの太さ。装着時は操作性が著しく落ちる

 「G700」を実際に使用してみた印象について語ろう。151グラムという重量は確かに負担を感じるところだが、その重さがあってのことか、予想以上に正確な操作ができるという感触がある。重さによる違和感が特に大きくなるのは手首をいっぱいに動かした直後にマウスを持ち上げて置き直すリフトオフの瞬間だが、その他の設置中の操作に関しては、しばらくプレイしていれば慣れてくる。

 

 使用開始当初に、重さよりも違和感があるのは、本製品の独特の水平キャリブレーション設定だ。筆者の場合、自然にマウスをホールドして、右方向に動かしてみると、マウスカーソルがやや右上よりに移動してしまう。つまりFPSで右を向こうとすればやや上を向いてしまい、左を向こうとすればやや下向きになってしまうという格好だ。

 昔のロジクールマウス製品のように水平・垂直のキャリブレーションを自分で調整するような機能が実装されていればよかったが、本製品ではしばらくプレイして慣れるしかない。いちど慣れてしまえばきちんと意図通りにカーソルを動かせるようになるため、もし店頭で触って違和感を感じたとしても、購入後手をなじませるための期間が充分に取るつもりならあまり気にする必要はないだろう。

 無線マウスということで気になる遅延は、動きの激しいFPS系ゲームでも筆者は全く感じることがなかった。昔の無線マウスにあったような突然の無通信状態や、それによる細かいカーソル跳びなどの現象も全くない。「G700」には無線マウスにつきものの無操作時スリープモードが実装されているが、これも「SetPoint」側の設定で、スリープ状態への移行を抑制するようにできる。

 問題はバッテリー切れ時の充電だ。付属のケーブルがあまりにも太く、抵抗が強いため、充電のためにケーブルをつけている間はゲームをプレイする気にならないほどだ。本製品はケーブル装着時、無線がOFFになり完全な有線マウスとして動作するようになっているが、それによる遅延の低減といった目に見えたメリットはないため、付属ケーブルは純粋に充電用と考えるのが妥当だろう。

 どうしてもケーブルを装着したくないというユーザーは、SANYO「eneloop」など別の充電池を併用して、バッテリーが切れたら交換して使うというように、無線のまま途切れなく使える環境を構築するといいかもしれない。

 付属ケーブルが太すぎる、という点以外には目に見えるほどの弱点がない「G700」。おそらく無線ゲーミングマウスとしてRazerの「Mamba」と双璧をなす存在になるだろう。大型で多少重め、安定感のある操作を好むユーザーであれば、「G700」はベストチョイス候補のひとつとしてオススメできる。





(2010年9月2日)

[Reported by 佐藤カフジ ]