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初心者でも気軽に楽しめる 短時間でスリリングなシミュレーション 「クリスタル・ディフェンダーズ ヴァンガード・ストーム」 |
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今回紹介する「クリスタル・ディフェンダーズ ヴァンガード・ストーム」は、「ソルジャー」や「黒魔道士」などの味方ユニットを操作して、フィールド上に次々と出現する敵のモンスターと戦うシミュレーションゲーム。ユニットやモンスター、マップグラフィックスは、同社のニンテンドーDS用シミュレーションRPG「ファイナルファンタジータクティクスA2」に登場するもので、シリーズファンにはおなじみの世界観を楽しみながらプレイできる作品となっている。
同社からは本作の前に、タワーディフェンス「クリスタル・ディフェンダーズ」というゲームも配信されている。こちらは他のプラットフォームでも展開されており、名前からすると続編のようだが、ゲーム内容は大きく異なる別物であり、今回が初登場となる新作だ。ゲームとしての直接的なつながりはなく、本作からでも問題なく遊べるので安心してほしい。
■ シンプル設計&簡単操作で、初心者でもすぐに楽しめる
ゲームのルールは、味方のユニットを動かして画面内に次々と出現し進撃してくる敵のモンスターを攻撃し、敵が画面右端のラインに到達する前に全滅させればクリアとなる、いたってシンプルな内容。各マップごとに複数のステージ(本作品ではWAVEと呼ぶ。以下、WAVEと表記)で構成され、マップ内の全WAVEをクリアすれば次のマップへと進むことができるようになっている。
本作品の特徴は、自軍と敵軍とが交互にユニットを動かす交互のターン制ではなく、制限時間がゼロになると敵・味方が同時に行動を始めるところにある。ユニットによって攻撃範囲が決まっており、その攻撃範囲内に相手がいれば、自動的に攻撃する。画面の外周部分には導火線状のタイマーが存在し、これが画面内をちょうど1周すると全ユニットが行動を開始するので、プレーヤーはこの時間内にユニットの配置を決める。各ユニットが行動を終えたらタイマーがリセットされ、以後勝敗がつくまでこの動作を繰り返しながらゲームが進行していくという仕組みだ。
バトル時のフィールドは、どのWAVEでもタテ・ヨコ4マスずつに統一され、タイマーが進むたびにすべての敵が1マスずつ前進(2マス進む敵も一部存在する)してくる。フィールドは地形効果による能力補正などといった複雑な要素は一切存在しないので、各ユニットごとの攻撃および支援効果の発生する範囲さえ覚えてしまえば、すぐにゲームが楽しめるところが、本作の大きな魅力のひとつであるといえる。
外周のタイマーがゼロになる前に味方ユニットの配置を決め、時間になると自動的に全ユニットが行動を開始する。以降、勝敗がつくまでこれを繰り返していく | ||
敵のモンスターは画面左側から出現し、自陣に向かってどんどん前進してくる。味方ユニットがやられて戦闘不能になってもゲームは続行されるが、モンスターが1匹でも画面右端に到達するとゲームオーバーとなる |
本作品に登場するユニットは……
・「ソルジャー」:HPと攻撃力が高く、近接する正面3マス分の敵を1度に攻撃できる
・「黒魔道士」:魔法で正面の敵を遠方まで攻撃できる
・「白魔道士」:近くにいる味方の体力を回復させる
・「弓使い」:斜め前方に弓で攻撃する
・「魔砲士」:斜め前方に魔力を込めた大砲で攻撃する
・「竜騎士」:槍を使って正面の遠くの敵を攻撃できる
・「ビショップ」:近くにいる味方の攻撃力をアップさせる
・「パラディン」:攻撃はできないが、HPが高いので盾代わりに利用できる
の合計8種類。とは言っても、いきなり最初のマップから8人がいっぺんに登場するわけではなく、先のマップに進むにつれて徐々にユニットが増えるようになっているので、ゲームを始める前からユニットの性能をすべて覚える必要はまったくない。最初のWAVEで出てくるのは「ソルジャー」と「黒魔道士」の2人だけで、なおかつ新ユニットが登場するたびにわかりやすいチュートリアル画面が表示されるため、ヘルプ画面を見ずにいきなりゲームを始めても問題なく遊べる。また、バトル中はいつでもヘルプ画面を開いてユニット性能などの各種ルールを確認でき、シミュレーションゲームの初心者にも十分配慮した設計になっている。
ちなみに最初のマップでは、WAVE3(3面)に進むと増援ユニットが1人(『ソルジャー』または『弓使い』のいずれか一方を選択)登場する。以後、特定のWAVEをクリアするごとに新たな増援ユニットが1人ずつ出てくるようになっているので、その都度ユニットの性能を覚えていけば、遊んでいくうちに自然と8種類の特徴を覚えられるだろう。筆者の体感では、将棋やチェスなどの駒の動かし方を覚えるよりもはるかに楽だ。
操作方法も実に簡単。戦闘中はユニットにタッチして動かしたい場所へスライドするだけでよく、「攻撃」、「防御」などのコマンド入力は全く存在しない。いずれのユニットも自陣内であればどこでも自由に移動が可能で、なおかつ制限時間内であれば何度でも配置変更ができるので、うっかり目標とは別のマス目にユニットを動かしてしまっても心配いらない。
ほとんどの敵モンスターは攻撃を数回ヒットさせるだけで倒せるので、他のRPG作品などによくありがちな、HPのやたらに高い巨大モンスターとダラダラ戦って間延びするような場面が全くない。画面内には次々と新たな敵が出現して刻々と状況が変化する中、プレーヤーは毎回15秒から20秒程度の間に応手を考えなくてはいけないため、スピード感のあるスリルを味わえる。
シミュレーションゲームと聞くと、1ステージをプレイするだけでもかなりの時間がかかるというイメージを持つ人も少なくないだろう。だが、本作品においてはどのWAVEをプレイしても勝敗に関わらず2、3分程度で終了するので、ちょっとした空き時間でも気軽に楽しめるモバイル用コンテンツにふさわしい構成になっている。たとえバトルの最中であっても、「中断」コマンドを実行すれば、いつでもその時点でのデータをセーブすることができるのも嬉しいところだ。
次々と迫りくる敵をいかに効率よく倒せるか、あるいは制限時間までに最適なユニットのポジションを素早く見つけ出し、的確に操作することができるのか。囲碁や将棋の早指し(秒読み)戦にもよく似たスリリングなバトルを楽しめるところが、本作の1番の醍醐味である。
同一マップ内の全WAVEをクリアすると次のマップに進めるようになる。1度クリアしたマップを繰り返しプレイすることも可能だ | ||
新たな増援ユニットが登場するたびにチュートリアル画面でその特徴を教えてくれるので、これさえきちんと読んでおけばルールが途中でわからなくなるようなことはないハズだ |
■ 敵の特徴を見極めながら戦う戦略性と、繰り返し何度でも遊べるスコアシステムを搭載
敵のモンスターは、種類によってHPや攻撃力がそれぞれ異なるのはもちろん、たとえば打撃攻撃に強い耐性を持つ「レッドマシュマロ」や、魔法攻撃に強い「トンベリ」などのようなキャラクターも存在する。また空中に浮いている「ボム」などの敵は、「ソルジャー」だと手が届かずダメージを与えられないので、「黒魔道士」の魔法などを使って戦う必要がある。味方とモンスターの特徴を頭に入れたうえで、制限時間とも戦いながら毎回最適なユニットの配置を考える戦略性が本作品ならではの魅力である。
モンスターは全部で十数種類が存在するが、HPなどの各種データは各WAVE開始時に必ず表示されるので、味方ユニットと同様、出現したらその都度特徴を覚えていけば問題ない。なお、モンスターの移動パターンはどれも出現位置から真っ直ぐ前に進むだけなので、打撃・魔法攻撃への耐性と空中を飛行するタイプなのかどうかさえ頭に入れておけば、おのずと味方ユニットの最適な配置場所を考え出せるだろう。
後半のマップに進むと、まったく異なる特徴を持ったモンスターが同時に出現したり、7、8人の味方ユニットを1度に操作する場面も登場して難易度がどんどんアップする。ユニットがモンスターの攻撃を受け、HPがゼロになった場合は戦闘不能となってしまうが、そのWAVEをクリアして次のWAVEに進めばすぐ復活するので、ゲームの途中でユニットが足りなくなり、クリアが絶望的になってしまうような状況は発生しない。
また、各WAVEをクリアすると味方全員がレベルアップしてHPなどが上昇するが、なんと戦闘不能になったユニットであっても、他の生き残った仲間と一緒にレベルアップしてしまうという親切ぶり。初心者にも極力ストレスを与えず、気軽に楽しんでもらおうという配慮が随所に見受けられて非常に好感が持てた。
筆者は本記事の執筆にあたり全マップをクリアしてみたが、普段あまりシミュレーションゲームを遊ばない筆者であっても、難易度の上がった最終面でも特に理不尽さや過剰なストレスを感じることなく、とても気持ちよく遊べた。マップが進むにつれて徐々に難しくなるゲームバランスにも、これといった偏りがなく、うまく調整ができているという印象だ。欲を言えば、制限時間に迫ってきたらカウントダウンが表示されたり、警告音が鳴るようなシステムを追加すれば、なおよかったようにも思える。
本作品ではプレーヤーの実力を計る指標として、スコア(得点)システムを取り入れている。スコアはクリアまでの所要時間や味方ユニットのHP残量などによって算出され、各マップごとに全WAVEクリア時点での合計点がハイスコアとして自動的にセーブされるようになっている。ただし途中でゲームオーバーになった場合は、コンティニュー時にそれまで獲得したスコアがゼロになってしまうので、より高いスコアを出すためには全WAVEを1発でクリアする必要がある。
バトル終了後にマップが分岐したり、会話や選択肢によってストーリが変化するようなイベントなどは一切存在しないが、このスコアシステムを取り入れたことによって、1度クリアしたマップであっても繰り返しチャレンジできる余地をプレーヤーに与えている。さらに、ある条件を満たすと高難易度のハードモードが新たにプレイ可能となるので、初期モード(ノーマルモード)では物足りないという人にも、より長く遊べるようにフォローしてあるのも嬉しいところだ。
なお筆者がプレイした限りでは、ハードモードはノーマルとは比較にならないほど格段に難しくなっているように思えた。無理して短時間で一気に全マップを制覇しようなどとは思わずに、新聞などに載っている詰将棋を1日かけてじっくりと解いていくような感覚で、ゆっくりとマイペースで楽しむようにするのがベストだろう。
スコアは各WAVEクリアごとに途中経過が表示され、マップ単位でハイスコアが自動的に保存されるようになっている。どこまでスコアを伸ばせるのか、己の限界にチャレンジするのも楽しみ方のひとつだ | ||
これがハードモードのゲーム画面。敵の耐久力がアップしているため、最初のマップから非常に難しくなっている |
■ シミュレーションの入門用としてもおすすめの1本
コアなゲームファンであれば、スクウェア・エニックスのシミュレーションと聞けば「ファイナルファンタジータクティクス」などのように、ゲームシステムおよびストーリを細かく練り込んだ作品を連想する人も少なくないだろう。本作も同社の作品ということで、「きっとマニアックで難しい内容なのでは?」と敬遠している人もいるかもしれない。実は筆者も最初にこの作品を知ったときには、いざ始めたらクリアするまでに相当の時間と労力がかかるものと覚悟をもって挑んだ。
だが本作に関しては、そんな心配は一切ご無用。途中でシナリオが複雑に分岐したり、何十種類もあるアイテムの性能を覚えたりする必要は全くなく、操作上のテクニックも特に必要としないので、シミュレーション初心者向けの入門用としても安心しておすすめできる作品である。詰将棋や数独と同じ感覚で、通勤・通学中などの空き時間を利用してこのスリリングな作品をぜひ楽しんでいただきたい。
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□「クリスタル・ディフェンダーズ ヴァンガード・ストーム」のページ
http://www.cd-vanguardstorm.com/jp/index.html
(2009年 6月 22日)