PSPゲームレビュー

10年の集大成が無限大の魅力に!
豊富なミッションも育成もオンラインも、圧倒的なボリュームで楽しめる

「ファンタシースターポータブル2 インフィニティ」

  • ジャンル:RPG
  • 発売:セガ
  • 価格:UMD版 5,040円、ダウンロード版 4,500円
  • プラットフォーム:PSP
  • 発売日:2011年2月24日)
  • プレイ人数:1人~4人
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)


 いよいよ「ファンタシースターポータブル2インフィニティ」発売! 本作は「ファンタシースターポータブル2(以下、『ポータブル2』)」をベースにあらゆる要素をボリュームアップし、まさに“インフィニティ=無限”に遊べる内容となっている。

 すでにスペシャル体験版で基本的な魅力についてはレビューしているのでそちらをご覧いただきつつ、今回は製品版で、エピソード2の物語、インフィニティミッションの魅力やボスたち、転生システムなどの、もう一段つっこんだところを重点的に押さえつつ、今作全体のレビューをしていこう。


【オープニングムービー】


■ 悪夢を狩る剣士ナギサとの物語が楽しめる“エピソード2”! キャラクターの成長もうまく描かれている

新しい物語エピソード2と、ポータブル2に収録されていたエピソード1の両方を収録
新種族デューマンの誕生という異変、未知の物質の前にあらわれた謎の少女。消えない闇を狩る剣士“ナギサ”との物語がはじまる
 今作の大きな魅力のひとつが、新しい物語となる“エピソード2”と、ポータブル2で楽しめた“エピソード1”を両方とも1本に収録しているというところ。ポータブル2からデータ引き継ぎで本作を楽しむ人も、今作からプレイする人も、リトルウィングの物語を丸ごと楽しめる。NPCキャラクターがパーティーに参加してくれる「パートナーカード」などの収集もばっちりだ。

 「インフィニティ」で新たに展開される物語エピソード2は、エミリアと共に亜空間事件に立ち向かったエピソード1の半年後の物語だ。亜空間事件を経て平和が訪れたかにみえたグラール太陽系だったが、闇は消えず。終わらない悪夢のように広がっていた。そんな悪夢を狩る剣士、謎の少女ナギサとの物語となる。

 亜空間事件後のグラール太陽系には、新しい種族「デューマン」の誕生という異変が起きていた。遺伝子の変成によって別の種族のものがデューマンに変わってしまう。原因は不明で、突如デューマンになった者の苦悩や、その周囲にいる人々の困惑は隠せず、原因の究明が急がれていた。

 そんななかリトルウィングのエミリアと主人公は、GRM社の敷地内で発見されたという未知の物質の調査依頼を受け、GRM社の若き社長「ヒューガ・ライト」のもとを訪れる。だが、そこに謎の少女ナギサがあらわれ、物質をどこかへと消し去ってしまう。

 その後、リトルウィングに姿をみせたナギサ。彼女の中には旧文明人ワイナールが共生していて、2人で未知の物質を探してきたという。そして、リトルウィングを訪れたのは、そんな彼女の護衛を依頼したいからと語る。高い戦闘能力を持つナギサになぜ護衛が必要なのか? ナギサたちの行動の真意は?


力を秘めた謎の少女ナギサと、彼女と共生している旧文明人ワイナール。彼女たちは護衛を依頼してくるのだが、その真意はつかめない

 と、ここまでがスペシャル体験版でプレイが可能だったところ。この後、プレーヤーはナギサと行動を共にし、グラール太陽系の各地へと未知の物質を探し求めていく。エピソード1に登場したリトルウィングにまつわるキャラクターたちはもちろん、ヒューガをはじめとした「ファンタシースターユニバース」シリーズに登場したキャラクターも登場する。

倒れてもなお、次の未知の物質探しを急ごうとするナギサ。その姿には強い決意を感じさせる
世間知らずなナギサのよきパートナーであるワイナール。普段はナギサの変わった行動にツッコミを入れたりとおちゃらけているが、含みのあるシリアスな一面をみせることも

 エピソード2のテーマについてだが、今作のオープニングテーマの作曲には“ナギサの決意”に影響をうけたという小林サウンドディレクターの話が全国ファン感謝祭で聞けたが、エピソード2の物語はまさにそこがテーマになっている。ナギサは真意こそ明かさないが強い決意を感じさせるキャラクターで、まるで自らを決められた運命に縛り付けているかのよう。

 一方でナギサは、驚くほど世間知らずで、いわゆる常識がまったくない。そんな彼女のよきツッコミ役になっているのが旧文明人のワイナールで、テンションの高いノリのいいツッコミを入れてくる。ナギサもそうだがワイナールもまた、これまでのシリーズにはいなかったタイプのキャラクターだ。コミカルな場面も多く見せるものの、行動の真意は明かさず、意味深なやりとりもちらほらと見られる。コミカルさとミステリアスさを両方持っている2人だ。

 そんなナギサと接するのはエピソード1の物語を経て人間的にも成長したエミリアたちで、彼女たちの成長した姿を感じられるのもエピソード2の魅力。ナギサという新しい人物とのコミュニケーションがあることで、エミリアやユートをはじめとした様々なキャラクターたちの成長がうまく表現されている。

 このほか、エピソード1ではあまり描かれなかったクノーをはじめ、それぞれのその後も描かれている。こうしたところからも、今作にエピソード1が丸ごと収録されているのはうれしいし、エピソード2を楽しむには必要不可欠なものだと思える。未プレイの人はエピソード1からプレイしていくのがおすすめだ。

 エピソード2はエピソード1よりもボリュームは少なめで、少し駆け足気味に物語が展開するのは気になったところ。ただ、そのぶんストーリー展開のテンポは速くて中だるみしない良さはある。

 ちなみに、エピソード2もエピソード1同様に複数のエンディングがあって、それを左右するのはプレーヤーの選択次第になってくる。この選択は、ある意味素直だったエミリアとのやりとりよりも、真意をつかみづらいナギサのほうが少し難しく感じられるかもしれない。このあたりも、物語が少し駆け足気味で、ナギサというキャラクターの性格がうまく浸透してこないところが理由と思えた。


ナギサとともにグラール太陽系の各地を巡り、未知の物質を探していく。エピソード2のステージは、通常のミッションにはないギミックを使ったものが多い印象で、画像のように横スクロール風の視点や真上からの見下ろし視点のステージなどもある
ナギサやワイナールだけでなく、エピソード1に登場したキャラクターたちももちろん登場する。事件を乗り越えそれぞれに成長した姿がうまく表現されている



■ あのボスも、このボスも! いつまでも遊びこんでいける“インフィニティミッション”

インフィニティミッションはプレイすればするほどに新しいものが手に入り、バリエーションも非常に豊富
インフィニティミッションを合成させて新しいミッションを作ることもできる。まさに無限のバリエーションだ
なんといっても魅力なのは豊富なボス! ポータブルシリーズ以外にも様々なシリーズから、たくさんのボスが登場する

 “無限に遊べる”今作の象徴ともいえるのが「インフィニティミッション」だ。インフィニティミッションは“ミッションコード”を手に入れて登録すると種類を増やしていけるミッションで、ミッション同士を合成させてオリジナルのミッションを作ることもできる。

 ボスモンスター、フィールド、敵モンスター、敵の強さ、ドロップするアイテムの傾向の組み合わせでミッションが構成されていて、そこにモンスターのブースト率(通常よりも強く報酬も高いモンスター)、経験値アップのボーナス、アイテムドロップ率のボーナス、属性効果ボーナスなどの特殊効果もミッションごとに追加される。

 インフィニティミッションをクリアすることで新たなミッションコードが手に入り、ミッションを合成するためのポイントも手に入る。遊び、クリアし、作り、また遊びとやりこみながら、よりボーナス効果のおいしいミッションや、好みなボス、フィールド、ドロップアイテムの組み合わせを作り込んでいく。ミッションをプレーヤー同士で交換可能で、すれ違い通信のフレンドサーチでもやり取りできる。

 製品版でインフィニティミッションを遊びこんでみて驚いたのは、バリエーションの豊富さ。新しいミッションコードを手に入れるたびに、新しいフィールド、新しいモンスター、新しいボスのミッションが出てきたほどで、インフィニティミッション自体もまた、アイテム収集要素のひとつのように、収集、合成してコレクションしていくような魅力を持っている。

 なんといっても“どんなボスがどれだけ出てくるのか”が楽しみなところと思うが、種類は豊富で、新しいミッションを入手するたび「こいつも出てくるのかー! 」と驚かされたほど。「インフィニティ」で初登場のボスのほか、「ポータブル2」のボスももちろんとして、「ファンタシースターオンライン」シリーズ、「ファンタシースターユニバース」シリーズに登場していたボスもいる。今作は「ファンタシースターオンライン」10周年を迎えての作品だけに、あらゆるシリーズの特徴的なボスが限界ギリギリまで詰め込まれた、まさに集大成だ。

 インフィニティミッション自体は、敵の強さやボス次第ではあるが、基本的には10分程度でクリアできる。サクサクと連続してプレイしていけるものだ。それだけに、遊んでクリアしてドロップやレベルアップを喜びつつ、たまに新しいミッションをチェックしたり合成したりといったエンドレスな魅力を、テンポよく楽しんでいける。果てしない育成とアイテム収集が魅力の本作にとって相性抜群な、まさに無限に遊べる要素になっている。

 また、インフィニティミッションは他のミッションと違って、「C、B、A、S、インフィニティ」のモンスターレベルが50区切りで変わるランク以外に、ミッションごとに敵モンスターのプラスレベルという要素があるのもポイント。たとえばプレスレベルが20でBランクミッション(レベル50)なら、レベル70のモンスターが基準になる。50区切りだと上も下も合わないような谷間のレベルでもプレイしやすい。


懐かしいPSOからのボスや、PSUからのボスも盛りだくさん。なかにはちょっと変わったあのキャラクターもボスとして登場! インフィニティミッション自体も、いろんな種類を集めたくなる魅力がある
手軽に、そしていつまでも遊べてしまうのがインフィニティミッションの魅力。バリエーション豊富なモンスター、ドロップアイテム、ミッションに付与される特殊効果など、自分好みのものを作り込んでいける



■ いくらでも育成できる“転生”システムをチェック! バランス調整や不満点の解消もうれしい

 今作での無限に遊べるポイントは育成にもある。それが“転生”だ。転生はレベル50以上で可能になるもので、ボーナスポイントをステータスに割り振つつレベルは1になる。基礎のステータスを高められるので、最大レベルである200以上にも、無限に育成していける。

 転生のボーナスポイント割り振りは以下のようになっていた。

転生でのボーナスポイント
ステータス項目必要ポイント上昇値
HP15pt+50
PP5pt+5
基本攻撃力20pt+35
基本防御力8pt+30
基本命中力25pt+20
基本回避力25pt+8
基本法撃力20pt+50
基本精神力8pt+40
基本持久力2pt+2
エクステンドコード5pt1個

 上記のように項目ごとに必要ポイントが異なるほか、エクステンドコードとの交換も可能だ。

 転生時のボーナスポイントはレベル50以降に少しずつ増えていくもので、自分のキャラクターのポイントを見てみると、レベル65だと11pt、レベル84では32ptになっていた。上の表のように、必要ポイントの大きい項目もあるので、十分にボーナスポイントを貯めてからにするか、それとも早めに転生するかは悩みどころだ。

 またそれ以外に、転生するとアビリティポイントの最大値が増える。試してみたところ、8だったポイントが12ポイントに増加していた。これは非常にありがたいので、ひとまず気分を一新して楽しむ意味でも転生してしまうのはありと感じた。


ボーナスポイントを割り振ってステータスを強化し、レベル1に戻る“転生”。レベル上限は200だが、それ以上にも成長させられる。どれぐらいのタイミングで転生するかは考えどころだが、転生すればアビリティポイントの上限もあがるので、早い段階で転生してみるのも手だ

目玉要素以外にも、様々なバランス調整や見直しがされている。ソードは攻撃モーションがかなり速くなって扱いやすくなっている
テクニック関連もかなり変わった。発動が速くなり、移動しながらテクニックを使うことも可能に。ロッドではガードも可能になり、かなり扱いやすくなっている

 目玉となる要素以外にも、ステータスの変更、攻撃モーションの調整、装備やテクニックの性能見直し、バランスの調整、細かな不満点の改良など、数多くの変更点があるのが重要なポイントだ。

 非常に数が多いので目立つところをピックアップしていくと、まずソードの攻撃モーションが高速化されている。「ポータブル2」では重量感たっぷりに「ぶーん、ぶーん」と振って、攻撃後の硬直も大きかった。正直なところとっつきがよくなかったが、今作では「ぶん、ぶん」というぐらいにモーションが速くなり、硬直もかなり少なくなっている。圧倒的に扱いやすくなった。

 ロッドもモーションが速くなったほか、テクニックのリンクを2つまでにしておけばガードもできるようになった。移動しながらのテクニック発動もできるようになり、かなり扱いやすくなっている。このほかにも、各種フォトンアーツの威力調整、消費PPの見直しなども非常に多く行なわれている。総じて威力や性能が高まったものが多いが、一方でトラップは威力が控えめになったようだ。

 システム面では、スケープドールを2個まで所持できるようになるアビリティ「エスケープマスター」が追加されたほか、スケープドールがドロップしても持ちきれないときは自動で共有倉庫に送られるようになった。「ポータブル2」だと手動で倉庫に送ってから獲得しなければいけなかったので、「レアがでたと思ったらスケープドールさんですか……あー、カバンも空けなきゃ……」というような、なんだか2重に憎い存在になっていたが、今回の変更でそうした印象もだいぶ薄れた。

 このほかにも、大事なアイテムを間違えて売ってしまったり捨ててしまったりしないようロックできる仕組みの追加や、共有倉庫の最大数も2,000個に増加している。元からとっつきのよい遊びやすいゲームだったが、不満点がさらに解消されたことで、より快適になったという印象だ。




■ やりこみの魅力を無限に広げるシステム、不満点を解消した遊びやすさ、まさにインフィニティ!

シリーズの大きな魅力をインフィニティミッションや転生により、いつまでも楽しめるものに広げている。さらに、携帯機ならではの通信機能でのやりとりも加わって、やりこみと広がりはまさにインフィニティ級だ

 プレイ前は「ポータブル2」のボリュームアップ版、進化版と想像していたのだが、あのキャラも、このキャラも。あのボスも、このボスも登場するオールスターなテイストは、「PSO」、「PSU」、「PSZ」、そして「ポータブル」シリーズと、10年の集大成的な作品と感じさせるところがあった。

 「PSO」から続くシリーズの1番の魅力として、キャラクター育成とアイテム収集という、いつまでもまったりとやりこんでいける魅力が大きいが、「インフィニティ」では、“多彩なボス”、“3,000を超えるアイテム”と、圧倒的なボリュームに、それをより楽しくやりこめる“インフィニティミッション”、“転生による育成”という新機能が加わった。それにより、やりこみの魅力をまさに無限大のものにしてくれている。本質的な魅力を伸ばす、最良の追加要素と感じる。

 スペシャル体験版でのレビューにも書いたが、「ポータブル」シリーズはPSPという携帯ゲーム機でありながら、インターネットマルチモード、テキストチャットでのコミュニケーション、マイルームでの家具のやりとりなど、オンラインゲームの醍醐味を存分に楽しめる作品。それでいて携帯ゲーム機ならではなプレイの手軽さも大きな魅力。

 そこに、たっぷりのボリューム、いつまでも遊びこめる新機能、細かな不満点の解消やバランス調整が加わったことで、“手軽に一緒に遊べる魅力を実現しつつ、いつまでも楽しんでいける”という、隙のないものに仕上がった。

 さらに、それらのやりこんだ自分のキャラクターデータやインフィニティミッションのデータを、新たに搭載したすれ違い通信機能の“フレンドサーチ”などでやりとりもできる。受け取ったデータでさらに魅力が膨らんでいく。つながっていく。

 携帯ゲーム機ならではの機能までも存分に活かしていて、ほかに例のない充実ぶりや広がりはまさに“インフィニティ”。シリーズファンの人はもう当然として、手軽にまったり、それでいて、じっくり、たっぷりとやりこんでいけるゲームを求めている人に、ぜひ触れてみて欲しい作品だ。


(C) SEGA

(2011年2月25日)

[Reported by山村智美 ]