★オンラインゲームレビュー★

物語はクライマックス、神々の戦いが始まる!
大砲のような錬金シリンダーなど楽しい新要素

「マビノギ Generation12 Return of the Hero」

  • ジャンル:MMORPG
  • 開発元:NEXON
  • 運営元:ネクソン
  • 利用料金:無料(アイテム課金)
  • 対応OS:Windows XP
  • 発売日:4月22日アップデート実施

 ネクソンは4月22日、MMORPG「マビノギ」において新アップデート「Generation12: Return of the Hero」(以下、「G12」)を実装した。このアップデートはG9から続く「Chapter3」の最後であり、目玉となるメインストリームでは、“神々の戦い”という壮大なテーマが描かれる。プレーヤーにはおなじみのモリアンが今まで閉じていた目を見開き、女神の力を解放するのだ!

 そして、Chapter3で導入された結晶をシリンダーで発動させ様々な効果を及ぼす「錬金術」は「G12」でさらにパワーアップする。砲台のような巨大なシリンダー「タワーシリンダー」、そしてこれまでの錬金術をフォローする「チェーンシリンダー」、追加攻撃が可能な「ヒートバスター」が追加された。今回のアップデートはまさにChapter3の集大成とも言える。レビューでは新スキルの他、様々な新要素も紹介したい。



■ 封じられた神ヌアザの帰還。モリアンは目を開きその力を解放する!

人間に裏切られ、封じられたヌアザが復活を遂げる。彼の目的は何か?
これまで閉じていた目を見開き、その力を解放するモリアン

 「マビノギ」は充実したストーリー展開を楽しめる“メインストリーム”に大きな魅力がある。「マビノギ」にはChapterという大きな流れがあり、1つのChapterはいくつかのGeneration(G)で区切られており、それぞれ重厚なストーリーが展開していった。Chapter1は3人の英雄の軌跡をたどり、この世界に混乱を巻き起こそうとする巨大な陰謀を暴くというストーリーが展開し、Chapter2では「イリア大陸」という新たな世界が登場して、エルフとジャイアントという新種族と新たな冒険要素がもたらされた。

 そしてChapter3では“錬金術”という新たな技術体系が持ち込まれ、メインストリームではこの世界と似て非なる「影の世界」で進行する魔族の暗躍、そして神々達の思惑が語られていった。Chapter3ではケイとレイモアという2人の錬金術師と、女戦士のジュナという3人のキャラクターを中心に、様々なキャラクターがドラマを繰り広げていった。

 Chapter3はG9から始まり、今回のG12で完結となる。魔族達が進行する「影世界」、“生命の創造”という究極を目指そうとする錬金術、そして人間達の活動に呼応するように動き出す神々……。最終章であるG12ではついに神々の戦いが描かれる。プレーヤーはこの中でどんな役目を果たしていくのだろうか。

 G12ではプレーヤーに向かって大きな疑問が投げかけられる。G9からプレーヤーキャラクターには次々と強大な力が与えられている。ドラゴンを呼び出す角笛、限定されてはいるが神の力を宿らせることができる「半神化スキル」、そしてG11では神を倒すことさえできる武器「ブリューナク」。神に近付く強大な力を持ったプレーヤーキャラクターは、この世界で何をなすのか? それがG12の大きなテーマとなる。

 G12のストーリーは前回のメインストリームで取り上げられた「謎の錬金術師集団」が事の発端となる。彼らの実験は思わぬ方向に暴走し、かつて人間に裏切られ、封印された神ヌアザを復活させる。そのヌアザはプレーヤーに向かってこういうのだ。「私の復活はおまえの運命の選択した必然から始まったのだ。おまえに私のような、神族の地位を与えよう」。プレーヤーは本当に神になれるのだろうか、ヌアザの思惑はどこにあるのだろうか?

 G12では2つにわかれた錬金術師達の戦い、ケイとレイモア、ジュナ達の活躍など見所のあるシーンが連発する。そして最大の目玉は「力を解放するモリアン」にある。これまでプレーヤーを見守ってきた女神モリアンはずっと目を閉じ、その強大な力をほとんどふるわなかった。そのモリアンが今回目を開き、戦いの女神としての力を解放するのだ。オフラインイベントのポスターにも描かれた「目を見開いたモリアン」は必見である。特にChapter1からモリアンを助けてストーリーを進めてきたユーザーにとって感慨深いシーンだろう。

 一方、ゲーム的な側面から評価すると、今回の「G12」のメインストリームは「G10」から続くソロプレイが中心の展開だが、難易度はかなり押さえられている。Chapter3では特に「G11」が難しく、王政錬金術師の援助が必要なバランスになっていた。今回は、その反動もあってか、比較的サクサク進めることができた。いくつかのミッションではパーティープレイも可能なのもうれしい。今回は、難易度が押さえられているためソロでもクリア可能だが、やはり友人と進めるのは楽しかった。

 今回、特に楽しかったのは、宝物を探して、イリア大陸各地を回るところだ。エルフ達の地域の地下迷宮や、漁船、コール村……。Chapter2で追加されたイリア大陸は広大な冒険地域として実装されたが、効率的なプレイを目指すとあまり行かない場所も多い。筆者はこのイリア大陸を「観光ガイド」として友人を様々な場所に案内するのが好きなのだが、今回のメインストリームでは同じようにイリア大陸の様々な場所を旅する。古参プレーヤーにとっては懐かしく、最近プレイを始めた人には新鮮な体験ができたのではないだろうか。


メインストリームの序盤では、邪悪な錬金術師の活動を追うことに。彼らの真の目的は何だろうか?
復活したヌアザの思惑、そして錬金術師達の対立の激化、ストーリーは大きく盛り上がっていく。NPC達の意外な過去や関わり合いなども明らかになり、より世界に対する理解が深まっていくのが楽しい
ストーリーを進めていくと、イリア大陸各地を回ることに。かつての冒険の日々の記憶が蘇る



■ 新スキルで更に錬金術は使いやすく。タワーシリンダーで戦い方も変化

錬金術を強化するタワーシリンダー。種族や体格によって大きさが変化するのが面白い
タワーシリンダーを設置すると、キャラクターを背中から見た砲撃視点になる。これまでのゲームとは違った感触だ

 「G12」では錬金術スキルが2つ追加された。1つが「チェーンシリンダー」、もう1つが「ヒートバスター」だ。この2つのスキルの導入によって、戦い方を変えたプレーヤーも多いだろう。

 チェーンシリンダーは一定の確率でチャージ回数を増やしてくれるスキル。「ウォーターキャノン」、「フレイマー」、「サンドバースト」といったスキルを使うとき、チェーンシリンダーを発動させていると一定確率で1度で複数回チャージできる。これまでチャージの必要なスキルは連続使用が難しかったが、チェーンシリンダーの実装により使い勝手が良くなった。

 ヒートバスターはシリンダーを使用した錬金術によってシリンダーを“加熱”し、そのエネルギーを一気に放出させるスキル。使用するためには他の錬金術を連発しなくてはならないため、このスキルだけで戦うことはできないが追い打ちとして高い威力を発する。低ランクから高い威力を誇るスキルだ。上げるためのアビリティポイントを大量に要求するところと、自身の戦闘力が上昇するので他のスキル上げの修練に影響するところに注意が必要だ。

 また、タワーシリンダーという設置型の錬金術師の新兵器が追加された。タワーシリンダーは入手することで設置アクションを習得し、地面に設置できる。地面に設置した後はキャラクターを後ろから見た視点になり、敵に照準を合わせて錬金術を発射できる。ゴーレムを呼び出す「ゴーレム錬成」など一部のスキルは使用できないが、錬金術の威力を上げてくれる強力な武器だ。

 デメリットとしては設置中移動できないこと、一定のダメージを受けると設置状態が解除されてしまうことだ。設置にも時間がかかり、敵との距離が離れすぎてしまうと何もできなくなってしまう。パーティープレイでの援護射撃、という使い方が有効だと感じた。またダンジョンなど“屋内”で設置できないところもマイナスポイントだ。もう少し使い方に慣れればより有効に使えると感じた。

 今回はパーティーのメンバーのほとんどがタワーシリンダーを持って戦う、というシチュエーションに挑戦してみた。筆者はウォーターキャノン、フレーマーを連射し、使用可能になったらヒートバスターを撃つ、という戦い方をした。タワーシリンダーでの戦いはシューティングゲームのようで、これまでの「マビノギ」とは違った感触が面白かった。錬金術の攻撃が飛び交い、派手で楽しかった。これまで錬金では生産系や、ゴーレム錬成が人気が高かったが、今回、チェーンシリンダー、ヒートバスターの実装によって、より幅広い使い方をするプレーヤーも増えそうだ。


一定確率でチャージ数を増加させるチェーンシリンダー。発動すると身体の回りにしぶきが上がる。チャージした強力な攻撃を連射することが可能に
シリンダーを他のスキルで“加圧”し、そのエネルギーを一気に爆発させるヒートバスター。通常のシリンダーで撃つと、その威力でキャラクターはノックバックしてしまう
タワーシリンダーは使い方にコツがいるが、ミッションによっては有効に活用できる。大砲から弾を連射するのは、これまでの「マビノギ」にはないユニークな感触だ


■ 神々の都での攻防戦、オンラインゲームならではのアルバイトなど新要素も盛りだくさん

ブリューナクを活性化することで開かれる異次元への扉。使うには「ファリアスの欠片」というアイテムが必要
4月29日から始まった風船イベント。風船は今までになかったアイテムだけに、今後の展開も楽しみだ

 新ストーリー、新スキルの他にも追加された要素は様々だ。コアプレーヤーにとって注目なのが神々の都市「ファリアス」だ。この場所はこれまでのアップデートのような街やフィールドのように、自由に行き来できる場所ではない。まずプレーヤーはG12のストーリーを進めることでこの場所に降り立つことになる。

 ファリアスはかつて神々が住んでいた都といわれているが、現在は円形の広大な遺跡しか残っていない場所だ。G12をクリアした後、プレーヤーは「ファリアスの欠片」というアイテムを使ってこの場所に出入りできる。ここでは狼に翼が生えたような怪物アンヴァルがいて、祭壇を封印しようとする。この魔物を一定時間祭壇に近付かさせなければ宝物が入手できる。似たようなクエストで「レネスプレイ」というものがあったが、ファリアスも多くのプレーヤーで力を合わせることが必要なバランスだと感じた。

 次々と襲ってくるアンヴァルはそれほど強くないがとにかく数が多く、プレーヤー達の研究と攻略が必要だ。ファリアスで一定時間アンヴァルから祭壇を守り切れれば宝物を手に入れられる。この宝物は半神化スキルやブリューナクを強化したり、プレーヤーキャラクターの足を速くする効果があるという。

 ファリアスの欠片を手に入れるためには今回実装されたタラの銀行員キースのアルバイトに挑戦する必要がある。このアルバイトは受けたときにログインしているプレーヤーがランダムで送り主に指定され、アルバイトを受けたプレーヤーはそのプレーヤーに実際に会いに行くというものだ。オンラインゲームならではの面白いアイデアだが、対象のプレーヤーが離席中だったり、クエスト中だと成功させるのが難しい。またファリアスの欠片が報酬として指定されていない日も多く、現在ファリアスの欠片はかなり値の張る貴重品としてプレーヤー間で取引されている。

 もう1つ追加されたのが法皇庁でのアルバイト。こちらは「聖火」という新アイテムが手に入る。武器の耐久度の減少を減らす「祝福ポーション」と同じ扱いのアイテムで、こちらは耐久度を保護する代わりに、攻撃力を上げるアイテムになっている。また法皇庁では寄付を募っており、上位者にはファリアスの宝物を装備できるスロットが開放されるということもあって、コアプレーヤー達が熾烈な寄付合戦を繰り広げている。筆者のいるマリーサーバーでは合計で数億ゴールドという寄付が行なわれ、コアプレーヤー達の競争心、そして資産に改めて驚かされた。

 この他、オフラインイベントでも反応の大きかったファミリーシステムも人気で、娘や妹など、家族としての繋がりを称号につけるプレーヤーも多い。家族は家訓が決められるがもっぱら破ることで空から雷が降って来るという「天罰」をパフォーマンスとして楽しんでいる。ファミリーは養子を6人まで登録でき、大家族を作っているプレーヤーも多い。


 「G12」はこれまでと比べると新フィールドの実装がなく、一見地味なアップデートの印象も受ける。しかしメインストリームのスケールと迫力はかなりのもので、錬金術のパワーアップなどまさにChapter3の集大成という要素が詰まっている。特にメインストリームの盛り上がりは非常に楽しい。筆者の知り合いにはG11の難易度の高さにメインストリームを進めていない人も多いが、G12のためにも王政錬金術師を紹介してもらうなどして体験してもらいたいと感じた。もちろんG11も神を倒す武器「ブリューナク」を巡る戦いで大きく盛り上がる。

 「マビノギ」の次のアップデートはS(シーズン)2、そしてその後は「G13」となるという。「G13」は韓国では夏頃、日本でも年内に実装する予定だという。この「G13」からChapter4が始まる。Chapter2の新大陸と発見、Chapter3の錬金術と影の世界というような、全くの新しい要素が盛り込まれるということで、今後の展開がとても楽しみだ。


神々の都市ファリアスでの防衛戦。神秘的なフィールドで、祭壇を封印しようとする怪物を撃退する。パーティープレイ、そして息のあった連携が必須だ
「G12」をクリアすることで習得できる新半神化スキル。左がカラスを召喚して攻撃する「レイジオブウィングス」、中央がカラスで結界を作る「イクリプスオブウィングス」だ。右はファミリーシステムでわざと家訓を破り、天罰を受けたところ。雷を受けたキャラクターはしばらく黒い煙をまとう。ちなみに、彼らが破った家訓は「金持ちへの第一歩」。アイテムをフィールドに捨てると罰せられる
左は銀行アルバイト。中央は先週の寄付の合計だ。右は「G12」クリア後の告解室。罪を懺悔する場所だが、意外なキャラクターが罪を告白しに来る
プレーヤーイベントに刺激を受けて合奏を楽しんでみた。こういった楽しみかたができるのも「マビノギ」の魅力だ

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(2010年 5月 6日)

[Reported by 勝田哲也 ]