「マビノギ:Generation12」開発/運営チームインタビュー
ファリアスや新錬金術スキル、そしてChapter4は?


4月13日収録


 株式会社ネクソンは、MMORPG「マビノギ」において4月22日に新アップデート「Generation12: Return of the Hero」(以下、G12)を実装する。今回、アップデートに先がけ開催されたオフラインイベントのため来日した開発スタッフにインタビューを行なった。

 今回話を聞いたのは「マビノギ」のプロデューサーを務める韓国NEXONdevCATライブ室リーダーのイ・ヒヨン氏、ディレクターを務める「マビノギ」開発チームリーダーのムン・ソンジュ氏、「マビノギ」海外ライブチームリーダーのソン・ミンソン氏、そして日本の運営のネクソン運用部ゲーム運用3チーム平原亮太氏だ。

 ムン・ソンジュン氏は韓国で予定されている次のアップデート「G13」の開発のため、新たにリーダーに任命された。ムン氏はこれまで「マビノギ」チームで企画を担当していたが、今回リーダーとして昇格したという。今回のインタビューはG12の概要と共に、「G13」への意気込みや、「月曜の臨時メンテナンスが定番になっているが、何をしているのか」といった突っ込んだ質問もぶつけてみた。




■ “神々の戦い”がテーマとなるG12、錬金術がさらに協力になる新要素も

「マビノギ」のプロデューサーを務める韓国NEXONdevCATライブ室リーダーのイ・ヒヨン氏
ディレクターを務める韓国NEXON「マビノギ」開発チームリーダーのムン・ソンジュ氏
韓国NEXON「マビノギ」海外ライブチームリーダーのソン・ミンソン氏
「マビノギ」の日本の運営担当のネクソン運用部ゲーム運用3チーム平原亮太氏

編集部: 最初に、G12の概要を教えてください。

ムン・ソンジュン氏: G12は錬金術や影の世界が登場したChapter3の最後となります。これまでは“神と人間”をテーマに物語を薦めてきましたが、今回は“神々の対立”がメインとなります。

編: 今回の物語では、プレーヤーとこの世界を見守り続けていたモリアンと、今回新たに登場する神「ヌアザ」が大きな鍵を握るとのことですが、ヌアザこれまで登場していなかった全く新しい神なんでしょうか。

ムン氏: ヌアザは「マビノギ」のモチーフとなるケルト神話に登場する神であり、ゲーム内でも図書館や伝承でその名を見ることができます。ケルト神話には多くの神々がいて、「マビノギ」にはまだ登場していない神も多いです。

編: この神々の戦いが語られるメインストリームの舞台となるのが「神々の都市ファリアス」とのことですが、ここは新しい街のようなイメージでしょうか。

ムン氏: 過去のエリンの神々がとどまった都市であるファリアスにはメインストリームを進めたプレーヤーだけがその扉を開くことができる。ファリアスは「マビノギ」のダンジョンの様なインスタンス空間で、リーダーであるプレーヤーがG11で入手したブリューナクとあるアイテムを使うことで入ることができます。

 ファリアスには宝物を守るモンスターがいて、彼らを倒し宝物を集めることで、今回新たに開放されるスロットに入れることができるアイテムを作成できるのです。この宝物を入手するためには何度もファリアスに挑戦しなくてはいけません。ファリアスに何度も挑戦するには、メインストリームをクリアして、アイテム入手という条件をクリアしなくてはいけないのです。リーダー以外はメインストリームを進めてなくても入ることができます。

イ・ヒヨン氏: ファリアスはメインストリームを進めていく上で重要な場所ですが、そうでないプレーヤーはあまり訪れる機会のない場所になるかもしれません。

編: 次に「ファミリーシステム」を聞きたいと思います。家長が決めることができる「家訓」のメリット、デメリットを教えてください。また、結婚をせずに養子縁組などはできるのでしょうか。

ムン氏: ファミリーシステムの「家訓」は“ロールプレイ”を楽しむためのもので、ゲーム上でのメリットはありません。家訓を破ると“天罰”が下ったり、家長に怒られたりするのですが、韓国ではむしろそれを破っていろいろなリアクションを楽しむ、というプレーヤーも多かったです。

 家訓には「生き物を殺してはならない」といったゲームでは守るのが難しいものもある。天罰はキャラクターの上に雷が落ちてくるのですが、この雷にダメージなどはないんです。家長に怒られるのは、家長を前にひれ伏すようなアクションですね。ファミリーシステムは結婚システムの拡張という位置づけなので、まず結婚しないと家族を作ることはできません。

編: 新要素の「タワーシリンダー」は従来の錬金術を強化させるシリンダーなのでしょうか。

ムン氏: その通りです。しかし、タワーシリンダーは錬金術師から購入できるのですが、実はそれだけでは真の能力を発揮することができないのです。メインストリームを進めることで「タワーシリンダーの創始者」に出会い、本当の使い方を学ぶことができます。タワーシリンダーで強化されるのはシリンダーから発射されるタイプの錬金術です。

 G12では新しい錬金術スキルも導入されます。これはタワーシリンダーを使わなくても使用可能なスキルです。1つは「ヒートバスター」。これは中級魔法のような強力な攻撃ができるスキルです。ヒートバスターを発動させるためにはシリンダーを“加熱”させなくてはなりません。様々な錬金術を駆使することでヒートバスター発動のためのポイントが貯まっていって、一気に発動させるというイメージで、錬金術中心で戦うプレーヤーに使いやすいスキルです。

 もう1つが「チェインシリンダー」。これは「ウォーターキャノン」、「フレイマー」、「サンドバスター」などチャージして使うことができる攻撃用の錬金術を強化するスキルで、チェインシリンダーを使ってから攻撃錬金術を使うと、一定の確率で次のスキル発動時に既にチャージした状態になっているというものです。このため、チャージの時間無しで強力な攻撃が可能になります。これまでのスキルを強化する補助的な錬金術スキルですね。

編: オフラインイベントでG12S2においてジャイアント男性のモデルが一新されるとのことですが、既存のモデルは残らないのでしょうか。

ムン氏: オフラインイベントでは「スリムになる」と紹介したため、誤解された部分があるかもしれません。今までのジャイアントの大きな体つきと、筋肉質の身体、という部分は継承しつつ、よりメリハリのきいたモデルになります。かっこいいシルエットとなるので期待して欲しいです。既存のモデルからは一新されます。

イ氏: 「バーチャファイター」シリーズの“ジェフリー”からより引き締まった“ウルフ”になった、という感じです。

編: 今回でG9のストーリーは完結を迎えるということで、G13からは全く新しいストーリーが始まるのでしょうか。

イ氏: G13からは新しいChapter4がはじまります。全く新しいテーマで、韓国でも夏に始まる予定です。日本では年内にスタートできればと思っています。Chapterが変わるということは単純に地域が増えるという意味とは異なっていると私は考えています。Chapterが変わることで全く新しい「ゲームプレイ」が楽しめる。現在、こういった要素を盛り込むために開発を進めています。これまでと違ったプレイ体験をユーザーの皆さんに提供していきたいと思います。

編: ムンさんは韓国のG13の開発からリーダーに就任したとのことですが、意気込みを聞かせてください。

ムン氏: 韓国ではオフラインイベントが行なわれないのですが、日本のイベントに参加してみて、改めて「マビノギ」が多くのユーザーに愛されているゲームであることを実感しました。ユーザーの「次はどんな面白さが体験できるのだろう」という期待に応えるために、ゲームを作っていきたいと思います。

編: プロデューサーのイさんの視点から、ムンさんを起用した理由をお聞かせ下さい。

イ氏: 「マビノギ」はChapterを変えるごとに、2年ごとにディレクターを交代させ、より新しい要素を取り入れていくという制作方針です。マンネリ化を防ぎたい、新しいゲームを提供していきたいと思っています。

 私はオンラインゲームを「より高級な文化」としてユーザーに認めてもらいたいと思っています。映画などのコンテンツに比べ、オンラインゲームへの評価は低い。私が今回ディレクターであるムン氏に要望したのは、オンラインゲームを高級な文化へ押し上げて欲しいというものです。

編: 目標として大きなものですね、期待しています。


G12のスクリーンショット。左はファリアス。モンスターが様々な宝物を守っているという。中央はファミリーシステムの家訓設定画面、右は設置に時間がかかり移動できなくなる変わりに錬金術が強化されるタワーシリンダー。メインストリームを進めることで真の力が解放されるという



■ ハウジングの実装は未定、オリジナルコンテンツも企画中だが、年内のG13実装が課題

ムン氏のコメントに小さく付け足したり、助言するプロデューサーのイ氏。イ氏の言葉からは「マビノギ」のテーマや、提示するゲーム性に対しての強い理想が感じられる。ムン氏が作る「新しいゲームプレイ」とはどんなものになるのか、期待したい
各サーバーで100人任命されるという王政錬金術師は、専用の制服が支給され、腰に手をやる独得のポーズをとることができる。日本では知り合い以外ではあまり出会う機会がないのが正直なところだ。協力を頼む側も「こちらの都合に合わせてもらうのも……」と遠慮してしまうところもあり、日本のMMOプレーヤーならでは“気遣い”の問題も感じさせられる
友達の多いプレーヤー、積極的なギルドは楽しく「マビノギ」を楽しんでいる。プレーヤーの熱意と、開発・運営が提示するイベントなどで、「マビノギ」の世界は今も活気がある

編: 次に日本展開ですが、今回のオフラインイベントでは「猫島」の様な大きな日本オリジナルコンテンツは発表されませんでしたが、今後の予定はあるでしょうか。

ソン・ミンソン氏: 現地化コンテンツというのは、常に海外チームが考え、アプローチしているところです。日本のユーザーにより身近に感じてもらえるように、日本の運営チームとも話し合い、オリジナルコンテンツを作っていきたいと思っています。

 「マビノギ」は日本が最初に海外サービスを行ない、他国と比べても日本の人気が高いです。他国向けのコンテンツも開発していますが、日本の猫島ほどに大きなオリジナルコンテンツは他の国ではまだありませんし、私どもとしてもやはり日本向けのコンテンツ開発をまず優先させたいと考えています。

 日本のオリジナルコンテンツは開発中ですが、新しいプレイを提供するChapter4の開発が佳境であるため、日本のオリジナルコンテンツがいつぐらいに追加されるか、というのはまだお答えできません。日本でのG13実装後になるかと思います。

編: 先日のオフラインイベントでは日本では実装が見送られていたハウジングシステムを実装すると発表されました。どういったものが、いつ頃実装されるのでしょうか。

平原亮太氏: 日本独自仕様にしようと考えていた時期もあるのですが、海外と同じ韓国の仕様に準じたものになります。ウルラ大陸に3つの「住宅地」があって、そこにそれぞれ100棟の家があり、ユーザーは家賃を払ってレンタルするという形ですね。実装時期はまだ未定です。やることだけは確実です。300棟ということで競争は起こると思いますが、現在様々なコンテンツがあり、誰もが家を手に入れるために夢中になる、というわけではないと思います。

編: 日本のプレーヤーの動向で気になった部分だと、G11のメインストリームはソロプレイ中心ですが難易度が高く、高いスキルを持ったプレーヤーが志願してなれる「王政錬金術師」の支援を頼むことで助けてもらえるというバランスになっています。しかし、日本ではギルドや知り合いに王政錬金術師がいないと見つけられず、結果としてクリアできないというプレーヤーが多い印象があります。マッチングがうまくいっていないと感じるのですが、この問題に関してどう思われますか。

平原氏: ユーザーの細かい動向までチェックしきれないというところがありますので、すぐにできる対策というのは考えていません。顕著に見られる、という認識でもまだないので、ユーザーの意見を聞いて考えていきたいと思っています。

ムン氏: 王政錬金術師は専用のローブを支給され、シリンダーを持つことで、腰に腕をやった独得の立ちポーズをするので韓国ではとても人気が高く、王政錬金術師になりたいというプレーヤーが多いです。銀行前でポーズをとってアピールしたり、影ミッションを受ける祭壇の前で積極的に話しかけたりしています。

 日本でそういうプレーヤーが少なかったり、支援を受けられないためメインストリームが進められないプレーヤーがいるとすれば残念ですね。マッチングするシステムを作ったとしても、それを利用してくれるかどうかはわからないですし、やはりユーザーにもっと積極的になって欲しいと思います。助けよう、助けてもらいたい、というアピールがあってもいいと思います。

編: 料理ダンジョンは接近戦に強いプレーヤーが有利で、魔法中心のプレーヤーはかなり苦戦しています。また「食材と戦う」というユニークな要素なのにソロプレイのみのため、難しくて楽しめないという印象もあります。

イ氏: オンラインゲームは「全てのプレーヤーが全ての状況で楽しい」というものではなく、育て上げたキャラクターだからこそ活躍できる場所、苦手な場所というものが存在するゲームだと思っています。料理ダンジョンは「料理ポイント」を稼ぐ要素があるのでバランスが難しいですが、パーティーでも挑戦できるかどうかの検討はしたいと思います。もちろん、今はまずChapter4へ全力投球ですが。

編: 一方で、日本の運営に聞きたいのはやはり、「月曜日の臨時メンテナンスは何をやっているのか」というところです。「マビノギ」では木曜の定期メンテナンスに加え、月曜の昼に臨時メンテナンスを毎週行なっていますが、何をやっているかを開示しない部分でユーザーの不満があると思います。不正対策、機器の不具合、プログラム上の問題など様々な問題があると思いますが、大きな問題としては、何がありますか。

平原氏: 月曜日に実施している臨時メンテナンスではサーバー機器の調整を行なっています。プレーヤーの皆様がより快適に遊んでいただけるよう、今後、サーバー機器の入れ替えなども予定しており、そのための調査や調整を月曜日に集中的に行なっています。皆様には大変ご迷惑をお掛けしておりますが、ご理解いただけますようお願いいたします。

編: これは「マビノギ」に限った問題ではないのですが、ネクソンさんは情報開示に積極的なメーカーと比べて、ユーザーに情報を伝える部分でもう少しという印象があります。「マビノギ」担当として、ユーザーの「もっと情報を」という声に、どう答えていきたいと思いますか。

平原氏: 必要な情報はもちろん開示していきたいと思いますが、こちらが情報を出すことで不正ユーザーに利用されてしまうのではないかという危惧があります。今後もバランスを考えて情報開示を行なっていければと思っています。ユーザーの意見には耳を傾けて、今後のことを考えていきたいと思っています。

編: 最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。

ソン氏: これまで、「マビノギ」は5年という歳月サービスを続けてきました。止まらず成長し続けてこれたのは、ユーザーの皆さんが好意的に楽しくプレイしてくださったからです。これからも5年、10年、ずっと楽しんでいただけるように努力したいと思います。

ムン氏: インターネットの情報や、話だけで聞いていた日本のユーザーの皆さんに、オフラインイベントに参加させていただき出会うことができ、コンテンツが愛されていることを実感できて強く感動しました。これからも「ユーザーのために」という1番大事なことを忘れず、どんな期待にも、それ以上のコンテンツで答えていきたいと思います。

イ氏: 韓国で「マビノギ」の開発を始めてから、6年になり、Chapter4を迎えることになりました。ユーザーがどのようにプレイしていただけるか、とても楽しみです。これからどのくらい「マビノギ」をユーザーさんが楽しんでもらえるか、ムン氏と共にがんばっていきたいと思います。

平原氏: 日本で「マビノギ」は5周年を迎え、ユーザーさん同士の繋がり、コミュニティーも増えてきて、ユーザーさん自身がコンテンツの楽しみ方を見つけ出していますが、私たちはそれを一層応援できるように、イベント企画など積極的にアプローチしていきたいと思います。


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(2010年 4月 21日)

[Reported by 勝田哲也]