「GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル」レビュー

GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル

配信者の「欲しい!」が詰まったプロ仕様の“配信特化ゲーミングPC”

ジャンル:
  • ゲーミングPC
発売元:
  • サードウェーブ
開発元:
  • サードウェーブ
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
539,980円(税込)

 PCゲームを快適にプレイするためにゲーミングPCを買うというのは、一般に根付いた感がある。最近は、TikTokなどの動画系SNSが人気で、気軽に動画を配信する人が増えている。動画配信においてもゲーム実況配信や攻略動画などは以前から人気のジャンルだが、コロナ禍で巣ごもり重要が増えたこともあり、ここ数年、ゲーム実況配信を行なう人がますます増えている。

 ただ、配信者にとって落とし穴なのは、ゲーム配信を行なうためには、通常のゲームプレイよりも高いスペックのPCが必要になるということだ。PCゲームの実況配信を行なうには、対象となるゲームを快適に動かしながら、OBS Studioなどの配信ソフトも動かす必要がある。また、VTuberとしてアバターを使って配信する場合は、アバターソフトも同時に動かさなくてはならない。つまり、その分だけ、ゲームを快適にプレイできる性能のPCよりも、より高い性能を持つPCが必要なのだ。そこで今回は、サードウェーブから発売された動画配信向けに設計されたGALLERIA(ガレリア)「GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル」を使って、最新PCゲームの実況配信を試しながら、その有効性を検証してみた。

【GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル】

動画配信に適したマザーボード「Z790 Livemixer」を採用

 サードウェーブは、以前から動画配信向けPCや配信機材に力を入れており、同社が運営するPCショップ「ドスパラ」でも、ここ数年オープンした新店には動画配信体験コーナーを設けており、Webカメラやキャプチャーデバイス、スイッチャーなど動画配信機材コーナーの品揃えも非常に充実している。同社のゲーミングPCブランド「GALLERIA」シリーズとして、今回登場した動画配信向けモデル「GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル」(以下ZA9C-R4x)と「GALLERIA ZA7C-R47 動画配信向けモデル」(以下ZA7C-R47 動画配信向けモデル)は、とことん動画配信向けにこだわった製品であり、パーツの選択から通常のゲーミングPCとは異なる。

【ドスパラの動画配信コーナー】
写真は、7月にオープンした新店ドスパラ宮崎恒久店のもの

 その最大の違いは、マザーボードである。ZA9C-R4xとZA7C-R47 動画配信向けモデルは、GALLERIAで初めて、ASRockの配信向けマザーボード「Z790 Livemixer」を採用している。Livemixerは、配信向けに特化したマザーボードであり、23基ものUSBポートをサポートするほか、多くのビデオキャプチャーデバイスの動作確認も行なっている。電源供給を強化し、高音質を実現する「Ultra USB Power」や低ジッターと低レイテンシーでマウスやキーボードに適した「Lightning Gaming Ports」なども備えている。高品位な動画配信を快適に行なうには、ヘッドホンやマイク、Webカメラ、スイッチャー、キャプチャーデバイス、照明用ライトなど、数多くの周辺機器をUSBポートに接続する必要があり、一般的なマザーボードではUSBポートが足りなくなることがある。しかし、Z790 Livemixerを採用したZA9C-R4xとZA7C-R47 動画配信向けモデルなら、そうした心配はない。

【GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル】
Livemixerを採用した動画配信向けハイエンドモデル「GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル」
【配信向けマザーボード「Z790 Livemixer」】
ASRockの配信向けマザーボード「Z790 Livemixer」を採用
Z790 Livemixerは多くのUSBポートを備えている(I/Oパネル部には合計14ポート)

インテル最新CPU「Core i9-13900KF」とNVIDIA最速GPU「GeForce RTX 4090」を搭載

 今回試用したZA9C-R4xは、GALLERIAのZ790 Livemixerを採用した動画配信向けモデル2製品の中でも上位に位置するモデルであり、ゲーミングPCのフラッグシップモデルと同等以上のスペックを誇る。まずは、スペックから見ていこう。

【GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル】
CPU:インテル Core i9-13900KF(24コア/32スレッド、3.00GHz~5.80GHz)
GPU:NVIDIA GeForce RTX 4090(24GB)
チップセット:インテル Z790
メインメモリ:32GB DDR5-4800MHz DIMM(16GB×2)
ストレージ:Seagate製1TB Gen4 NVMe SSD
光学ドライブ:なし
OS:Windows 11 Home
本体サイズ:220×440×480mm(幅×奥行き×高さ)
本体重量:約14㎏
価格:539,980円(税込)
製品ページ:https://www.dospara.co.jp/TC30/MC12592.html

 ZA9C-R4xは、CPUとしてインテルの第13世代Coreシリーズの中でもトップクラスとなる「Core i9-13900KF」を搭載している。Core i9-13900KFは、性能重視のPコアを8コア、電力重視のEコアを16コア搭載した24コアCPUで、最大32スレッドを同時実行可能だ。基本動作クロックも3.00GHzと高いが、ターボブーストにより最大5.80GHzまでクロックが向上し、非常に高いパフォーマンスを誇る。

 GPUとしては、NVIDIAのGeForce RTX 4090が採用されている(BTOによりGeForce RTX 4080やGeForce RTX 4070 Tiへの変更も可能)。NVIDIAの最新GPU「RTX 40シリーズ」の中でもフラッグシップに位置する現時点最速のGPUであり、搭載ビデオメモリも24GBと非常に大きい。CPUやGPUへの負荷が高い最新ゲームを4K最高画質でプレイしつつ、実況配信を行なうことも余裕にこなすスペックだ。

【内部パーツなど】
左サイドパネルを外したところ
「GeForce RTX 4090」搭載ビデオカードを採用
ビデオカードの出力はHDMI×1とDisplayPort×3という仕様だ
OSからは32コアCPUのように見えており、最大32スレッドの同時実行が可能

PCIe 4.0対応の超高速SSDを搭載。シーケンシャルリードは7,000MB/s超え

 メインメモリも32GBと大容量で、高速なDDR5メモリを採用している。ストレージは、Seagate製のPCIe 4.0対応NVMe 1TB SSDを搭載する。メモリもストレージも贅沢仕様であり、ゲームと配信ソフト、アバターソフトなどを同時に動かしても余裕だ。

 「CrystalDiskMark 8.0.4」を使ってストレージ性能を計測したところ、SSDのシーケンシャルリード(Q8T1)は7,045.98MB/s、シーケンシャルライト(Q8T1)が5,855.28MB/sと非常に高速であった。PCIe 3.0対応NVMe SSDと比べて、リード、ライトともに2倍以上高速になっており、ゲームの起動やデータサイズの大きなマップの読み込みも短時間で終わるので快適だ。もちろん、ストレージが高速なことは動画編集などにおいても威力を発揮する。

【「CrystalDiskMark 8.0.4」の結果】
「CrystalDiskMark 8.0.4」の結果

メンテナンス性や拡張性に優れたオリジナルケースを採用

 GALLERIAのデスクトップPCでは、オリジナルタワーケースが採用されている。サイズはいわゆるミドルタワーサイズで、左サイドパネルの一部が透明になっており、中が見える。スペースも広く拡張性も高い。フロントパネルの周囲にはRGB LEDが配置されており、電源を入れると美しく点灯する。

【フロントパネル周囲にLEDを搭載】
GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデルのフロントパネル
電源を入れるとフロントパネルの周囲に配置されたRGB LEDが青色に光る

 また、フロントパネルの上部手前側が斜め45度にカットされており、そこにフロントI/Oポートや電源スイッチなどが配置されていることも特徴だ。USBポートへのコネクタの脱着などがやりやすい。

 フロントI/Oポートとしては、USB 3.2 Gen1 Type-A×4とサウンド入出力端子が用意されている。背面のI/Oポートも充実しており、USB 2.0×10、USB 3.2 Gen1 Type-A×4、USB 3.2 Gen2 Type-A×2、USB 3.2 Gen2 Type-C×2、USB 3.2 Gen2x2 Type-C、サウンド入出力端子、2.5G LANポートが用意されている。

 本体底面には、電源ユニットファンへのホコリの吸い込みを防ぐフィルタが装着されている。フィルタは引き出せるようになっているので、掃除などのメンテナンスも楽に行える。最近は使われることが少なくなった光学ドライブは標準では非搭載だが、5インチオープンベイが用意されているため、BDドライブなどをBTOで追加搭載することも可能だ。

【本体外観など】
フロントパネルの上面が斜めにカットされており、USBポートなどへのアクセスがしやすい
GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデルの右サイドパネル
GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデルの左サイドパネル。中を覗ける透明な窓がある
GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデルのトップパネル。格子状の穴が空いた樹脂パネルとメッシュパネルから構成されている
GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデルのリアパネル
リアパネル部分のI/Oポート。USBポートの数が多い
拡張スロット部分にもUSBポートが5基用意されている
GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデルの底面
底面には電源ユニットファンへのホコリの吸い込みを防ぐフィルタが装着されている
底面のフィルタはこのように引き出せる

GALLERIAロゴ入り水冷ヘッドを採用

 CPUの冷却には、DEEPCOOLの水冷システムLS520が採用されている。LS520のラジエーターには、ARGBライティング対応の120mmファンが2個装着されている。水冷ヘッドはGALLERIAロゴ入りで、このモデルで初採用だと思われるが、なかなかかっこいい。さらに、リアに140mmファンが1つ、フロントには 140mmファンが2基搭載されており、十分なエアフローを実現している。

 マザーボードには、拡張スロットとして、PCIe 5.0 x16スロットが1基, PCIe 4.0 x16スロットが2基、PCIe 3.0 x1スロットが1基の合計4基が用意されている。GeForce RTX 4080搭載ビデオカードがPCIe 5.0 x16スロットに装着されており、3スロット分のスペースを占有しているほか、拡張スロットのブラケット部分を2基分使って追加USBポートが設けられているため、利用できるPCIeスロットは一番下の1基だ。さらに、6Gbps対応のSATAポートが4基とPCIe 5.0 x4対応のM.2スロットが1基、PCIe 4.0 x4対応のM.2スロットが4基マザーボード上に用意されている。

【CPUクーラーと冷却ファン】
CPUにはGALLERIAロゴ付きの水冷ヘッドが装着されている
リアには140mmファンが1つ搭載されている
水冷ユニットのラジエーターには、ARGBライティング対応の120mmファンが2基搭載されている
フロントにも140mmファンが2つ搭載されている

 また、ZA9C-R4xでは、大型ビデオカードをしっかり固定する独自機構「リジッドカードサポート」を採用しており、輸送時などにビデオカードが外れて内部を損傷することや、接触が悪くなって動作が不安定になるといった心配はない。

【「リジッドカードサポート」を採用】
「リジッドカードサポート」によりビデオカードをしっかり固定しており、輸送時に外れてしまう心配がない

VTuberとしてのゲーム実況配信も軽々こなせる

 それでは、動画配信向け最強マシンであるZA9C-R4xを使って、実際にゲーム実況配信に挑戦してみたい。

 ここでは、人気の対戦型格闘ゲーム「ストリートファイター6」を使って、ゲーム実況配信を行なってみた。「ストリートファイター6」は、対戦型格闘ゲームの元祖ともいえる「ストリートファイターシリーズ」の最新作で、ライト層を取り込むために簡略化した操作方法を選択できるようになったほか、シングルプレイ専用のオープンワールドRPGゲーム「WORLD TOUR」モードが追加されるなど、さまざまな強化が行なわれており、話題を集めているタイトルだ。

 まず、実際に「ストリートファイター6」をプレイする前に「ストリートファイター6 ベンチマーク」を実行してみた。「ストリートファイター6 ベンチマーク」では、「FIGHTING GROUND」「BATTLE HUB」「WORLD TOUR」の3つのシーンでの平均フレームレートから、100点満点でスコアを算出する。解像度を最高の3,840×2,160ドットにし、クオリティ詳細設定をすべて最高にして計測したところ、3つのシーンのスコアはすべて100点で、トータルスコアも100点満点となった。スコアが91~100点なら快適にプレイできるとされており、もちろん実際のゲームもとても快適にプレイできた。

【「ストリートファイター6ベンチマーク」の結果】
「ストリートファイター6ベンチマーク」のタイトル画面
解像度を3,840×2,160ドットに設定
クオリティ詳細設定をすべて最高に設定
ベンチマーク結果。3つのシーンとも100点満点となった

 今回は、単にゲーム画面を実況配信するよりも負荷が高い、VTuberとしてアバターを表示させながらのゲーム実況配信をやってみることにした。まず、3Dモデル作成ソフトの「VRoid Studio」を使ってアバターの3Dモデルを作った。VRoid Studioは、無料で利用できる3Dモデル作成ソフトだが、多くのパーツが用意されており、カスタマイズの自由度も高い。3Dモデルが完成したらVRM形式でエクスポートすればよい。

 アバターソフトとしては「Webcam Motion Capture」を利用した。Webcam Motion Captureは、Webカメラだけで顔の向きや表情などのフェイストラッキングはもちろん、指や手の動きまでリアルタイムにトラッキングできる優秀なソフトだ。Webcam Motion Captureは、無料で全ての動作を確認できるが、月額199円のサブスクリプションを購入しないと、メッセージとUIの表示をオフにすることはできない。Webcam Motion Captureに先ほど作成した3Dモデルを読み込ませ、Webカメラの前で顔を動かしたり、手を動かしたりして、動きを確認する。ゲーム画面の上にアバターを重ねて表示させるには、背景を透明にすればよい。

【VTuberの3Dモデルを作成する】
「VRoid Studio」を使って3Dモデルを作成する
服やアクセサリなども豊富に用意されている
3Dモデルが完成したらVRM形式でエクスポートする
「Webcam Motion Capture」はWebカメラだけで高精度なフェイストラッキングやハンドトラッキングができる優れたソフトだ
VRoid Stuidoで作成した3Dモデルを読み込ませたところ。サブスクリプション契約をすれば画像の上のメッセージや周囲のUIを消すことができる
サブスクリプション契約をしてログインした状態
ゲーム画面に重ねてアバターを表示させる場合は、背景を透明にする

 アバターの準備が完了したら、配信ソフトの「OBS Studio」を起動して、配信準備を行なう。ここでは、フルHD/60fpsでビットレート6000Kbpsに設定して、YouTubeにライブ配信を行なってみた。

 「ストリートファイター6」のゲーム画面とWebcam Motion Captureの画面をそれぞれゲームキャプチャで取り込み、ゲーム画面の上にアバター画面を重ねて背景を透過させる。このアバターは、配信者(プレイヤー)の画面には表示されないが、視聴者には見えるようになる。視聴者の邪魔にならないような位置とサイズにアバター画面をリサイズして配置すれば、配信準備は完了だ。

 実際に配信を開始し、他のPCからそのゲーム実況を見てみたが、画質も高く、動きも滑らかであり、快適にゲーム実況を楽しめた。配信者側もリアルタイムで配信を行なっている影響を全く感じず、通常にプレイしているのと同じ感覚で対戦を楽しめた。プレイ中は配信者が顔をそれほど大きく動かすわけではないが、アバターのトラッキング精度やレスポンスも優秀で、腕の動きなどもしっかり反映されていた。

 参考までに、CPU使用率とGPU使用率をチェックしてみたが、配信中のCPU使用率は23%前後、GPU使用率は44%前後とまだまだ余裕であった。GPUファンの音もそれほど大きくならず、配信の邪魔にはならなかった。

【「OBS Studio」を使ってゲーム実況配信を行なう】
配信設定で、映像エンコーダを「NVIDIA NVENC HEVC」にし、レート制御をCBR、ビットレートを6000Kbpsに設定した
出力解像度は1,920×1,080ドット、FPSを60に設定した
アバター画面をゲーム画面の上に配置。これだと視聴者の邪魔になるのでサイズをもっと小さくする
アバター画面を適当な位置とサイズに配置したところ
実際にYouTubeでライブ配信を行なっているところ
1080p60で配信が行なわれている
開始前に左腕を上に突き出してみた。ちゃんとアバターにその動きが反映されている
ドライブインパクトをドライブインパクトで返した様子
VTuberのアバターとしてゲームの実況配信を行なっても、CPU使用率はわずか23%しかない。GPU使用率も44%でまだまだ余裕がある

ゆくゆくはゲーム実況もしたいと考えている人にもおすすめ

 今回レビューしたZA9C-R4xは、サードウェーブが培ってきたノウハウを詰め込んだ動画配信向けハイエンドPCであり、配信者のあれもしたい、これもしたいという希望をすべて叶えてくれるマシンである。現行のゲームを実況配信するだけなら、ここまでのスペックはいらないともいえるが、将来登場する「Starfield」や「アーマード・コア6」といったAAAタイトルを4Kでプレイしながら同時に配信する場合でも、余裕でこなせるパフォーマンスを誇る。

【今後リリースされるタイトルも楽々対応】
「Starfield」
「アーマード・コア6」

 もちろん、純粋なゲーミングPCとしても非常に高性能だ。今は単にゲームをプレイしているだけだが、ゆくゆくはゲーム実況に挑戦してみたいと考えている人にもぴったりの製品だ。性能に余裕があるので、ゲーム以外の負荷が高い作業も快適にこなせる。ビデオメモリも24GBと大容量であり、今流行の生成AIを動かすPCとしても向いている。動画配信を考えている人で、予算的に厳しい場合は、GPUをGeForce RTX 4070 Tiに変更するか下位モデルの「ZA7C-R47」を選択するのもよいだろう。

【GALLERIA ZA9C-R4x 動画配信向けモデル】