2020年8月14日 00:00
ポケットペアが開発するPC用最新作「Craftopia / クラフトピア」(以下、クラフトピア)。国産インディー開発タイトルということで、「Minecraft」に代表されるサンドボックスゲームのファンから高い期待が寄せられている。アーリーアクセス版の数度のリリース延期を経て、ついに遊べるバージョンとして7月27日から本作のαテストが実施された。“全部盛り”な本作が一体どんな作品なのか、本稿ではαテストのプレイレポートをお送りする。
興味深いのは、本作の多様性だ。クラフト・農業・ハクスラ・自動化・建築・サバイバル・アクションなどが本作のジャンルとしてあげられており、何でもアリのサンドボックスゲームとして開発が進められている。本稿では、クラフトピアでどんな冒険ができるのか、拠点の設営はそこそこにダンジョンの探索や冒険の舞台となる島々の探検に焦点を当てたい。
「クラフトピア」とは?
「クラフトピア」は、“全部盛り”をうたう国産の3Dサンドボックスゲーム。ジャンルはクラフト農業ハクスラ自動化建築マルチ対応オープンワールドサバイバルアクションとされ、既存のさまざまなタイトルにあったシステムを融合させたような作品となる。「Overdungeon」を制作したポケットペアが開発しており、αテストを7月27日から8月3日まで実施。アーリーアクセス版をSteamにて9月4日にリリース予定だ。
ゲームとしての最終目標はなく、畑を拡大して気ままに農業を楽しむこともできれば、その畑にスプリンクラーや伐採マシーンなどを置いて自動化することもできる。世界各所にはダンジョンが点在しており、その攻略を目標と定めることも可能だ。ダンジョンはモンスターの巣窟と化したものもあり、その攻略には魔法やスキルを修得し、自動化された拠点で効率的に武器や防具、回復薬などを準備することも必要になる。
オンラインでの多人数協力プレイにも対応。αテスト時点ではオンライン機能は同期が不安定だったが、最大4人まで、ホストのワールドへ他のプレーヤーがアクセスする形で実装されていた。今後同時プレイ人数の増加など機能の拡張が予定されている。
本作のシステムそれぞれはどこかで見た要素でありながら、それらが絡み合うことで本作独自のものとして成立させている。αテスト段階では荒削りな部分も多いが、アーリーアクセスを経て完成を迎えれば、数あるサンドボックスの中でも特に自由な生活が送れる作品として期待できる。
αテストプレイレポート
ここからはαテストで体験できた範囲でのプレイレポートをお送りする。内容としてはチュートリアル島での拠点構築、初期の島を脱した第2島ではお約束の全ロス(すべての所持品を失うこと)、さらに遠方の島で高レベルのダンジョンに挑戦したことを伝える。
柔軟すぎるキャラクターメイク
「クラフトピア」での冒険はキャラクターメイクから始まる。自分の分身としてゲームへの没入感を高めたり、友人たちから笑いを取ったりというためにもキャラクターメイクは重要だ。選択肢が多ければ多いほどいいが、本作は特に個性を演出するという需要に対しては120%満たしてくれる。
本作のキャラメイクは、キャラクターの髪型や色、顔の形、や肌の色といったものを選択式で変更し組み合わせていく方式。スライダーなどでの細かな指定は今のところできない。
ユニークな点は、全パーツが男女で共通であることだ。そもそも性別の概念がフレーバーとして「男」、「女」、「不明」、「適用不能」から選択できるのみで、人間で言うところの男女差は全く無視して自由にキャラを作れる。かわいい女の子でしかゲームをプレイしたくない人はもちろん、見た目は女の子だが設定上は男なキャラクターが好きな人やゲジゲジ眉毛のおじいさんにグラマラスボディーを与えてみたいという人の要望もすべて満たすことが可能だ。
また、αテスト時点では未実装だったが、人間以外にエルフ、悪魔などの種族も将来的に実装される予定。パーツを選び終わるとキャラクター名を決めてゲーム開始となる。
いざクラフトピアの世界へ
キャラメイクが終わるとちょっとしたムービー演出を挟んでクラフトピアの世界へ。平たく言うと、プレーヤーは地球からクラフトピア世界へ異世界転生することとなるのだが、経緯に関してはアーリーアクセス時に自身の目で確認頂きたい。
異世界転生を経て、青空の下でヒツジに囲まれた草原で目覚めた。荷物は何もなく、武器も衣服もない。完全に裸一貫の状態で冒険がスタートする。画面下部にはLifeとMana、右下には満腹度が示される。サバイバルのお約束として、満腹度を維持しながら暮らしていける生活基盤を確保するのが当面の目標となるわけだ。
画面上部に目を向けると、左上にはミニマップが表示され、周辺状況や方角を確認できる。右上には「ミッション」が表示され、この項目をクリアしていくことがチュートリアル代わりとなる。
まずはバトル。ということでこの世界で初めて出会った生物であるヒツジに戦いを挑む。素手での近接戦闘は左クリックで攻撃、連打するとコンボを繰り出すことができ、ダッシュやジャンプからは蹴りなどの特殊攻撃を繰り出すこともできる。この操作は武器を手にしても基本的には共通で、装備する武器によってリーチが異なったり強力なタメ攻撃が可能になったりする。また、盾を装備すれば攻撃を防御したりシールドバッシュでカウンターを見舞ったりと、戦闘システムはシンプルながらアクション性が高めだ。
クラフトピアデビュー戦の相手はヒツジ。正面から一発殴るとヒツジの突進によりダメージを受けた。どうやら動物は殴ると正面に走り出す習性があるようだ。その後追いかけて何発か蹴りを浴びせることで簡単に仕留めることができた。倒した羊は即座に羊毛と肉に変化。死体の解体作業は必要なく、地面に落下したアイテムは近くを歩くと自動で回収される。間引いた動物の解体や落ちたアイテムを拾う作業は、無駄なボタン操作を何万回と繰り返すことになるのでこの仕様はとてもありがたい。
チュートリアルのミッションクリアなどでスキルポイントを獲得すると、スキルを割り振ることでキャラクターを成長させられる。スキルには武器の扱いを強化するものから攻撃魔法、回復魔法などがある。そのほか、採集能力の強化もスキル取得で行なえる。未実装だが、MP消費で水などの資源を作り出す錬金術のような魔法も項目として用意されていた。
スキルはいくつかの段階に分かれており、初級のスキルに一定のポイントのを割り振ると上位のスキルの修得が可能になるという方式だ。ポイントの蓄積はカテゴリごととなっており、たとえば上位魔法を修得するならば魔法カテゴリに集中してポイントを割り振る必要がある。スキルポイントには限りがあるため、オールラウンダーにするもよし、一芸特化にするもよしと、好みの方針でキャラクターの育成を楽しめる。
チュートリアルで最初に学ぶのは、資源の採取方法。多くのサンドボックスの例に漏れずオーソドックスなシステムとなっており、斧やつるはしなどの採取ツールを使用することで効率的に資材を集めることができる。最初は木製・石製のツールだが、文明が進むと銅や鉄を用いた採取ツールも作成可能になり、それら上位ツールでは採取効率が上がるほか、下級ツールで採取できなかった素材も取れるようになる。
また、本作では一度作ったアイテムはいつでも修理が可能。見た目の耐久値以上に長い期間使えるのだが、修理にはこの世界の通貨であるゴールドが必要で、修理時に最大耐久値も減っていくため1つのアイテムを永久に使い続けることはできない。耐久度はあらゆる武器や防具にも設定されているため、生産のみでなく戦闘においても重要な要素となる。
斧やつるはしといった基本的な道具は素手で作れるが、本格的な建築物を作るには石の作業台が必要になる。作業台自体が建築物の一種で、最初に作ることになる建築でもある。
建築では建築物の土台や足場となる壁や床も作成できる。これらは地面に必ずしも設置している必要はなく、床を空に向かってつなげれば高所に登ったり空に拠点を築いたりということも可能だ。マップは基本的に島なので、ある程度高い場所まで登れば島内を一望することもできる。
この世界で生活していくうえで基本的な流れは、資源を採取して加工、建築物を設置してさらに多くのものを入手できるようにしたり、資源の加工方法を獲得したりという仕組みになる。そして、新たなツールや装置によって資源の獲得を効率化して、どんどんいろんなものが作れるようになるというのが基本だ。
αテスト時点で作れるものには、高所からの落下時に展開して空を滑空できるグライダー、陸上・水上を自在に高速移動できるホバーボードなどの基本的な移動手段を利用できた。ホバーボードではスケボーのようにジャンプ中にトリックを決めるなどの小技も。
また、建築できる施設としては持ち物を処分してゴールドを稼ぐための市場、金属製品を作るための炉と鍛冶場、料理用のかまどなどがある。いずれも素材を入れると自動的に加工を行なってくれるので、加工待ちの間に他の施設いじったり、一気に加工したいときは同じ施設をたくさん作ればいい。
今回は素材不足で利用できなかったが、動物を捕まえるアイテムや捕まえた動物を利用した回し車式の発電装置などもあり、発電機で生産した電池を利用して採掘装置や伐採装置を作成。資源の採取をも自動化することができるようだった。
周辺環境は島によって異なる
初期の拠点に一通りの施設を建てれば、仕上げとして研究施設を建て、材料を揃えることで「時代進化」が可能になる。いくつかの資源を消費して、新たな装備や施設の生産をアンロックするというものだ。時代を進めると、いよいよ新たな島への移動も可能になる。
本作では、植生や鉱物資源など、島によって配置されているオブジェクトが異なり、採れる資源にも違いがある。αテストでは最初に訪れるチュートリアル島の他に2種の島を探索することができた。
島の移動を解放して最初の移動先は、島の中央に火山がそびえ立つ荒れ地がメインの島だった。火山に近づくと継続的にダメージを受け、満腹度が減少するのでマップ中央の広範囲が生活に適さない。動物の数も比較的少ないため一見食物の確保が難しいマップである。また、木材資源が少ないなどの欠点もあった。
一方で鉱物資源は豊富で、荒野にはそこら中にサボテンが生えていて取り放題だ。設備を整えればサボテンは食材として利用可能になり、上質なカロリー源になるなど工夫すれば意外と暮らしやすい島だった。
さらに2島を開放して現われたのが、広大な平原を有する大きな島。最初の島から離れるほどに配置された動物などのレベルが上がるようで、3つ離れたこの島ではただのウシやニワトリでさえレベル26以上と非常に高いレベルになっている。
高レベルのウシやニワトリが配置される中、これまでのマップでは見かけなかったバッファローが配置されており、ここで初めて畜産・発電のキーアイテムでもある骨を入手することができた。マップ全体は火山に比べると高低差が少なく探索しやすい。練り歩いてみるとマップ各所に謎の塔型オブジェクトが配置され、新たな鉱石「硫黄」も発見することができた。
今回多くの島を探索することはできなかったが、島という形で新たな地域がランダムで現われるので拡張性は非常に高いのではないだろうか。島と島の間は隣接しているかによらず一瞬で移動できるため、遠征の際にも移動時間がかからないのはいい点だ。反面、情緒に欠ける点でもあるので、次の島を目指して船で海に乗り出すような遊び方があってもいいのではないかと感じた。
ダンジョンに挑戦
最初の島でチュートリアルを進めていくと、ダンジョンに挑戦することとなる。ダンジョンにもいくつかの種類があるようだが、筆者が初期島で挑戦したダンジョンは謎解きタイプ。ダンジョンを守るクマを倒して中に入ると、ヒントをつぶやくNPCがおり、ダンジョンのクリア目標がわかった。ダンジョン内にモンスターはおらず、ここから出口を見つけて脱出すればいいらしい。
目標はすぐにわかったものの、攻略法がわからず一時撤退した。攻略できたのはαテスト最終日だ。このダンジョンはワープポータルがある入り口と奥の天井が高い部屋、そして偶然見つけた隠し部屋の3部屋構造。再度訪れた際に、天井が高い部屋の遙か上方に部屋の出口があることが確認できた。そこへたどり着く手段があれば先に進めるというわけだ。
このダンジョンの攻略法について、最初に試したのは垂直ジャンプで壁を掴みながら素手で登攀するという筋力全開の打開策。この方法は、出口の下部がねずみ返しとなっているため、いいところまで行ったが登り切ることはできなかった。いくつかの試行錯誤を経て、筆者は2つのやり方を発見できた。肝となるのはダンジョン内でも建築物を設置できるということだ。アーリーアクセスでダンジョンに挑戦される諸氏も頭を柔軟にして謎解きに当たっていただきたい。αテストの時点でもいくつかの種類のダンジョンが用意されていたので、謎解き要素には期待できる。
αテスト終盤に訪れた高レベルダンジョンについても紹介する。4番目の島で発見したダンジョンでは、入場するといきなりレベル30前後のゴブリンの集団に出迎えられ、最奥に至るまでモンスターの巣窟となっていた。レベルが高いので、たかがゴブリンといえど耐久力が高く、1、2体倒すと武器が破損。修理を行ないながら先に進んでいくのだが、倒して少し経つとモンスターが再配置されたり奥から増援が現われたりと実にハードな環境だった。
この戦闘の中で気づいたのだが、本作の近接戦闘の主軸は盾にある。右クリックで盾を構えることができ、構えている間は全方向からのダメージを軽減する。さらに、防御中に左クリックすることでシールドバッシュが可能。バッシュ中は防御扱いとなり、敵の攻撃モーションに合わせてバッシュを当てると、敵が5秒間程度行動不能になる。多数の敵が相手でも相手の行動をよく見てバッシュを当ててラッシュをかけ一体ずつ仕留める戦法で、ある程度までは打開が可能だった。
どうにか廊下にいる十数体を切り倒して奥の部屋へ到達すると、閉ざされた扉と共に室内のモンスターを指定数倒せというメッセージが。室内ではここまでに見なかった「ヒーラー」の名を冠したゴブリンを中心に大量の敵が配置されており、健闘するも装備の耐久値が限界となり文字通り刀折れ矢尽きダウン。手持ちの武器はほとんど破損したので攻略を断念した。
しかし、多勢に無勢な状況でも工夫次第である程度なんとかなるということはわかった。このダンジョンも予備の武器と盾を複数本持ち込んで、回復アイテムも万全に準備すればソロで攻略が可能だろう。アーリーアクセスでは是非リベンジに挑みたいところだ。
ダンジョン内で死亡するとダンジョンの外へと退場になる。フィールド・ダンジョン問わず死亡時にロストするのは所持ゴールドの10%のみ。持ち込んだ装備やアイテムをロストすることはない。ゴールドの損失があるのでノーダメージとはいかないが、ある程度無茶をしても大丈夫だ。
αテストゆえのバグも
ダンジョンから撤退した筆者を持ち受けていたのは空っぽの拠点だった。本作ではHP全損によるアイテムロストはシステム上存在しないのだが、αテスト特有のバグにより、第2の島に築いていたメイン拠点が完全に消失するという、全ロスよりも大分きつい状況になった。
泣く泣く初期島に帰還すると、今度はキャラクターの視界に入った木という木が瞬時に伐採されるバグに遭遇。ほかにも設置したテーブルが震動しながら吹っ飛んでいったり、たき火が縦になったりとある意味愉快なバグがいくつか確認できた。
こうしたバグは公式Discordでも報告が行なわれ、αテスト中にも数回のクライアントアップデートにより、修正が進められた。また、マルチプレイに関してはαテスト開始当初より不安定とされ、今後約1か月の開発期間を挟んだアーリーアクセスまでにこれらの改善を行なう予定だ。
未完成だがコンセプトには期待できる新作
以上、「クラフトピア」のαテストについてまとめた。テスト期間が短かったこともあり、牧畜や自動化といった要素には辿り着けなかったが、サンドボックスゲームとしては懐の深い戦闘システムや、ダンジョンが単なるモンスターハウスではない点など本作ならではの冒険要素を確認することができた。設定画面を開くとヘリや戦闘機の操作設定も用意されており、αテストで体験できた範囲はその全体像からするとほんの一端に過ぎないものだろう。アーリーアクセス以降の進化にも大いに期待できる作品だと言える。
αテストで感じた不便さとしては操作性の問題が挙げられる。クラフトでアイテムを選ぶ際やインベントリを確認する際など、あらゆる画面がスクロールバー付きの縦長仕様となっており、マウスホイールを回す回数がやたらと多いことが目立った。UIの大きさを可変とするか、ドラッグ移動という選択肢が欲しいところだ。
サバイバル要素に関しては現状ヌルいバランスと感じた。温度に対してはほとんど制約がなく、火山島でさえ住めない環境は島の一部だけで、そのエリアからの離脱も容易だ。食料はそこら中に落ちており、キャラクターは食べ物の味について一切文句を言わないので人糞でも牛糞でも加熱すればカロリー源になる。農業も半自動化が簡単にできるため、環境に殺される可能性は極めて低く全体的に「生きる」という実感は薄い。序盤の難易度としては現状でも適切かもしれないが、今後追加される島の中に、選択肢としてもっと極限環境の島があるとより楽しめそうだ。
本作は今後、9月4日にアーリーアクセス版としてリリースし、配信開始後も開発が継続される予定となっている。αテストは8日間と短い期間だったものの、その間にもユーザーのフィードバックを基にした3回のバージョンアップが行なわれており、ユーザーの意見を入れつつ柔軟に開発を進めていく姿勢を取るようだ。まだまだ荒削りな部分も残る同作だが、可能性を感じる作品だ。興味のある方はアーリーアクセスに参加し、国産タイトルとして「共に育て上げる」という姿勢で臨んでいただきたいところだ。ゲームをプレイしてのフィードバックは公式サイト下部からアクセスできる公式Discordなどで受け付けている。
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