密度とレベリングの妙で魅せる爽快シューティング!「BLACK BIRD」レビュー
BLACK BIRD
ダークでコミカル。幻想的でテクニカル。繰り返しプレイ必至の作りが熱い!
- ジャンル:
- シューティング
- 発売元:
- Onion Games
- 開発元:
- Onion Games
- プラットフォーム:
- Nintendo Switch
- Windows PC
- 価格:
- 1,980円(税別)
- 発売日:
- 2018年10月18日
2018年10月25日 06:00
「BLACK BIRD」は爽快な横スクロールシューティングである。左右どちらにも移動できるステージには、バラエティ豊かな敵だけでなく、特定の場所を撃つことでギミックが動いたり、隠れキャラクターや隠しアイテムが登場する。撃てば撃つほど手応えがあって、やり込めばやり込むほど総得点が上昇していく。ステージの最後にはボスも待っていて、オーソドックスなシューティングゲームを踏襲しているのもプレイしやすさにつながっている。
「BLACK BIRD」は殺戮のゲームである。といっても表現に残酷さはない。プレーヤーが操作する「黒い鳥」は、人々を撃ち抜き、街を破壊し、ステージを跡形もなく粉砕していく。人々は慌てふためき、逃げるそばから死んでいく。黒い鳥はとにかく目の前のものを殲滅して、どんどん得点を稼ぎ、パワーアップしていく。敵は抵抗してくるが、黒い鳥の前には雑魚でしかない。
そして「BLACK BIRD」は、何度でも遊びたくなるゲームである。ステージは全部で4つのみとシンプルな構成だが、ゲームシステムとステージ作りが練られているため、繰り返すたびに発見があり、また上達もしていく。さらに、プレイを始めるとわかるストーリーは「少女が倒れ、そこから黒い鳥が生まれる」とそれだけ。物語に関する多くの謎もプレイ体験の独特さにつながっていて、興味深くプレイできることだろう。
Onion Gamesが10月18日に発売したNintendo Switch/PC(Steam版は近日配信予定)用循環型シューティング「BLACK BIRD」。「moon」の開発で知られるラブデリックのメンバーであり、Onion Games代表の木村祥朗氏がディレクターを務める本作は、不安を感じるダークな世界観と緻密に計算されたシューティング要素がミックスされたタイトルとなっている。以下では「BLACK BIRD」の魅力について、さらに詳しく述べていきたい。
画面いっぱいに迫りくるヒゲおじさんの密度と仕掛け
ゲームの根幹となっているシューティング部分の流れは非常にシンプルだ。操作は上下左右への移動と弾のショット、そしてボムだけ。ステージは輪っかのように繋がっており、左に進めば左方向に、右に進めば右方向に弾が発射される。
ステージにはいくつか敵の拠点が配置されており、この拠点をすべて破壊することが第1の目的となる。成功すればボスが出現し、ボスを倒せばステージクリアとなる。ステージによって敵やギミックは異なるが、流れ自体はすべてのステージで変わらない。
そして本作最大の特徴は、敵とギミックがぎっしりと詰まったステージ密度の高さと、黒い鳥を育てていくレベリングの楽しさにある。まずはステージについて。登場する敵とギミックの数々はかなりユニークだ。ステージ中に登場する敵は、多くがヒゲを生やしたおじさんをモチーフとしていて、おじさんが弓矢を放ってきたり、銃を撃ってきたり、拠点を守っていたりする。つまり本作において、被害者のほとんどはおじさんということになるが、そのバリエーションはとても多い。
風船で飛ぶおじさんに始まり、頭に砲台を乗せたおじさん、パトランプを乗せたおじさん、また鎧を着たおじさんなんかも登場する。中には戦いに参加せず、ただ横になって寝ているおじさんもいる。通常のおじさんたちはそこまで強い敵ではないが、時々他に比べて体の大きなおじさんも登場する。こうしたおじさんは弾の数も多く、動きもトリッキーなので注意が必要だ。倒せばそれなりに宝石を落とすので、戦いを挑む選択肢もありだろう。
敵の出現については、ステージで流れる楽曲とシンクロするように敵が登場するところが面白い。曲の盛り上がりのダダッ、ダダッ、というリズムに合わせておじさんが現われたり、リリリリン! というベルの音が鳴り響くときにはおじさんが連続して空中に現われるなど、戦況と音楽が一致していく。曲は架空言語のオペラとなっており、ダークな世界をより一層幻想的にしている。楽曲が一通り体に馴染んでくると、「このタイミングでこの出現パターン来る!」と敵の出現を先読みできるようにもなる。楽曲を覚えることも、プレイ上達の一助となるわけだ。
ステージのギミックには、破壊して得点が稼げるものと、そこから隠しアイテムや隠れキャラクターが登場するものがある。たとえばステージ1で登場する建物はいくつか破壊できる場所があり、破壊するとさらにおじさんが登場して、点数を稼ぐチャンスとなる。また最初からプレイできる「ノーマルモード」のステージ1では何もなかった木に、「トゥルーモード」(ノーマルモードをクリアすると出現する上級モード。詳しくは後述)では黄色い鳥が潜んでいるなど、隠れキャラクターについては「トゥルーモード」の方が多く登場する。ギミックは自分でプレイして発見することが楽しいので、ぜひ色々試していただきたい。
またこうしたギミックの中でも、特に攻略上で大事になるのは「ツボ」だ。ツボはステージの特定の場所に隠されており、これを発見、破壊すると、中からステータスアップの虫型アイテムが出現する。この虫は弾を当てるたびに「スピードアップ」、「ライフアップ」、「ボムアップ」と変化する。どの効果を得るかで、その後のプレイに大きく影響する。プレイ中は特に注意したいアイテムだ
鳥の成長が攻略の鍵。リスク覚悟で宝石獲得を目指す
続いてレベリングについて。上で紹介したような敵を倒すと、緑に光る宝石のようなアイテムが落ちる。この宝石を集めていくと、黒い鳥のパワーが徐々に上がっていくという仕組みだ。最初は小さな弾だけだが、弾が大きくなったり、ダメージが上昇したり、さらに上下にも弾が出るようになる。弾の威力はそのままボスの倒しやすさにも繋がってくるので、ステージ1からどれほど鳥を育てられるかは攻略上も重要だ。
鳥を育てるコツはいくつかある。まず敵をたくさん倒すこと。雑魚敵からは小さな宝石が獲得でき、強いほど大きな宝石が期待できる。次に拠点を壊すこと。拠点を壊すとかなり大きな宝石が落ちる。ただし、大きな宝石ほど時間経過とともに小さくなってしまうので、出現したらすぐに獲得しないとメリットが少なくなってしまう。
最後はコンボ+ボム。本作では連続して敵を攻撃することで、コンボ数が計測されていく。コンボを重ねると得点も上がっていくが、コンボが「MAX」になったときにボムを使うと、コンボ数がリセットされる代わりにボーナス点を獲得し、拠点と同じくらいの大きな宝石も出現する。これらを意識してプレイすると、鳥はぐんぐん育ってくれるだろう。
ステージに登場する敵や拠点をどうやって破壊し、どうやって鳥を育てるかが、プレーヤーの腕の見せどころだ。しかし敵の弾に当たるなどのミスがあれば、コンボはリセットされ、残り体力は削られ、プレイのテンポは一気に崩れる。宝石獲得はリスクと隣合わせのため、いかにギリギリを攻めていけるかが本作のポイントとなっている。
不思議な世界にハマり、どこまでもテクニカルに遊べるシューティング作品
最後は「ノーマルモード」と「トゥルーモード」について詳しくご紹介したい。「トゥルーモード」は「ノーマルモード」を1度クリアすると登場するモードだが、「トゥルーモード」では敵と弾の数が多くなり、攻撃パターンも変化して難易度はグッと上がる。
「トゥルーモード」に到達してからは、今述べてきたような攻略ポイントをいかに押さえ、いかにミスしないかが何よりも大事となる。「ノーマルモード」ではあまり苦労しないでクリアできた筆者も、「トゥルーモード」では最終ステージに到達するのがやっとというほど厳しい戦いを迫られている。ステージごとの攻略手段に特に決められた方法やルートはないので、繰り返しプレイしながら少しずつパターンを作っていく、というのが本作におけるセオリーだろう。プレイする度に発見もあるので、ついつい何度もプレイをしたくなるような作りだ。
何度もプレイしたくなるという点では、プレイが進むたびに少しずつ明らかになるストーリーも非常に気になる。1つのステージをクリアすると10秒以下の短いアニメが見られるのだが、ここで少女と黒い鳥、そしてボスとの関係性がチラリとわかる。「トゥルーモード」のアニメは「ノーマルモード」の続きになっているので、この続きを知りたいという意味でも何度も挑戦してしまう。少女と禍々しく育った鳥の運命はいかに。
また本作には、スコアのランキングシステムもある。得点の基準にはタイムボーナスもあるので、コンボやボムを駆使しつつ、さらに短い時間でクリアすることも高得点への第1歩だ。上を目指そうと思うと、いくらでもやり込める余地があるということだ。最初はファンタジックな世界観に思わず目が行ってしまうが、やり込めばやり込むほどテクニカルなプレイイングも要求される、というストイックさもあわせ持ったゲームなのである。
「BLACK BIRD」は、「勇者ヤマダくん」、「Million Onion Hotel」といったOnion Gamesの他のタイトルと同じように、倉島一幸氏のドット絵がまず目に飛び込んできて、プレイを進めるとその不思議な世界に迷い込んだような独特の体験が待っている。ダークさが際立つという点では、ハロウィンのこの時期にもぴったりのタイトルだ。価格も1,980円(税込み)とお手頃なので、気になる方はぜひプレイしていただきたい。
©2018 Onion Games, K.K.