2018年1月19日 12:00
現在でも続く人気格闘ゲーム「KOF」シリーズは94年に1作目がリリース。それ以降「KOF2003」まで毎年夏に新作がアーケードで稼動した。「KOF」シリーズは格ゲーファンにとって夏の祭典ともいえるタイトルだった。当時小学生だった筆者も、学校からダッシュで帰宅し、ランドセルを投げてはNEOGEOの筐体が置いてあった近所のスーパーに走って行ったものだ。小学生の筆者にとってはゲームセンターはちょっと怖く、スーパーか駄菓子屋をホームにしていた。
筆者にとってそんなノスタルジックな思い出を蘇らせてくれる「KOF」シリーズだが、今回取り上げる「ザ・キング・オブ・ファイターズ '98」は、ファンから“シリーズ最高傑作”と言われる作品である。本作の特徴は「KOF94」から「KOF97」までのキャラクターが総登場しており、その数50人(ボスキャラ、裏キャラクター含む)以上。そしてそのキャラの多さにもかかわらず、キャラクター性能などのバランス調整もシリーズ屈指の出来栄えで、今なお格ゲーマーから愛され続けているタイトルだ。
現在、格闘ゲームが活気を取り戻しつつあり、eスポーツなどで熱い盛り上がりを見せている。それに伴い新規の格ゲープレーヤーも徐々に増えている。今回紹介する「アケアカNEOGEO ザ・キング・オブ・ファイターズ '98」は、最近格ゲーデビューをして全盛期の作品に触れたことのない読者にも注目してもらいたい1本だ。もちろんリアルタイムで遊んできた人も、当時の熱が少しでも蘇ってもらえたら幸いである。
魅力的なキャラがぶつかり合う3on3バトル
「KOF」の最大の特徴といえば当時は革命的であった3on3で戦うチームバトル。相手チームのメンバー全員をKOさせれば勝利となる。そして、もうひとつのウリは中二心をくすぐるキャラクター設定やストーリー……なのだが、前作「ザ・キング・オブ・ファイターズ '97」で1800年に渡る長き戦いの物語「オロチ編」が完結してしまい、本作にはストーリーが一切無かったりする。
少し残念ではあるのだが、しかしストーリーが無いことにより物語上の理由で削除されてしまった過去作のキャラクターたちも参戦している。物語の枠をとっぱらったまさに夢のオールスターバトルなのだ。とことんキャラを詰め込み、純粋に対戦を楽しむことに特化した作りになっている。
まず、「アケアカ」シリーズ全般の特徴をまとめておきたい。「アケアカ」シリーズの大きな特徴の1つに「オンライン対戦がない」というところがある。ここは残念な部分だ。その代わり、オンラインでスコアが競える要素があるので、シングルプレイを極める楽しさがある。オンライン対戦はできないが、コントローラを2つ用意しての対戦は可能だ。
コマンドに関しては通常のコントローラでも可能だが、筆者はホリの格闘ゲーム用のゲームパッドを使っている。格闘ゲームはやっぱりコマンド入力が大事だ。筆者は来客用も考え格闘用ゲームパッド2つとアーケードゲームコントローラも持っている。「アケアカ」シリーズは標準のゲームコントローラでもプレイできるが、コマンド入力にミスることもあるので、できるだけミスが少ない環境を心がけている。今回も、友達を家に呼んで楽しんだ。「ザ・キング・オブ・ファイターズ '98」の対戦は今遊んでも当時と遜色なく熱くなれた。
ではまず、シングルプレイをじっくり語っていきたい。最初はキャラクターの選択だ。キャラクターセレクト画面を見たときの感想は、ただただ懐かしかった。使いたいキャラが沢山いて悩むところだが、当時一番使っていたお気に入りのメンバーでプレイすることにした。1人目は本作の主人公「草薙京」。炎を操る草薙流古武術の継承者で、天才的格闘センスの持ち主というカッコいい設定のキャラクターだ。高校を留年し続けて“20歳を過ぎても学ランを着ている”という残念な点を除けば完璧なのだが……。
そして2人目は「八神庵」をセレクト。草薙流と対をなす八神流古武術の使い手で、京と同じく炎を使う。ライバルである京のことを殺す殺す言っているような冷酷な男だ。しかしそんな言動に反して、プロフィール欄の嫌いなものという項目には“暴力”と書かれており全力でツッコミたくなる。
最後に選んだのは「矢吹慎吾」。妄信的なまでに京を崇拝しており、弟子という名の体のいいパシリをされている。格闘技経験も無い凡人という位置づけの慎吾なのだが、CVが大御所声優の子安武人ということもあり、設定に反してイヤに存在感があったりする。
格闘ゲームの主人公といえば暗黙のルールで「飛び道具を持っている」、「初心者向けのお手軽キャラ」などの決まりごとがあるのだが、その常識を完全にぶっ壊したのが京だ。飛び道具は持っていないゴリゴリのインファイター。そして1つの技からコマンドを追加入力することで別の技へと派生するというテクニカルな操作感。主人公でありながらこの尖った性能を持つキャラクターなのだ。
ライバルキャラである庵は飛び道具と対空技を兼ね備えていて、まさに主人公のようなスタンダードタイプの性能で初心者向きのキャラとなっている。そして慎吾の持ち技は師匠である京から学んだもので、炎は出ないものの基本的には京と同じ技を使う。派生技などは無いので京よりも使いやすさは上だ。
慎吾だけが持つ固有の“クリティカル”の概念も面白い。慎吾の技は一定確率でクリティカルヒットして通常よりダメージが上がる特性がある。格闘ゲームではあまり見ない、運で威力が上がるシステムは今でも斬新だ。
格闘ゲームの華ともいえる連続技で大ダメージを与えられるコンボ。このコンボの難しさが、そのゲーム自体の敷居の高さを決定づける基準になる。近年のコンボゲーといわれる種類の格闘ゲームはとにかくコンボが長い。呪文のようなコマンドを全て記憶して、頭で考えずとも手が勝手に動くほど練習を重ねてようやくスタート地点に立てる。
筆者はそういった格闘ゲームもプレイするので、長いコンボを叩き込む爽快感や面白さもわかる。しかし、中立的な立場で見たら敷居の高さはかなりのものだ。当然「KOF」もコンボは存在するのだが長いコンボは基本無く、通常攻撃→通常攻撃→必殺技→超必殺技といった程度の短いものばかりで敷居は低めである。
コンボは短いが、超必殺技までの1セットを食らわせればかなりの体力を奪えて爽快だ。ちなみに当時プレイしていた頃はコンボうんぬん以前に、ひたすら技を出しては「必殺技カッコいい!」、「超必殺技強えー!!」のがむしゃら技乱発プレイであった。そんなプレイスタイルでも普通に戦えるし、何より派手な技が多いので必殺技を繰り出しているだけで楽しかった。
圧倒的強さのラスボス、オメガ・ルガール
昔を懐かしみながらプレイすること5戦目。ここまでは難なく進んできたのだが、ここに来て雲行きが怪しくなる。開幕早々ジャンプからの奇襲でコンボを狙うも、うまい具合に対空技を入れられて落とされてしまう。その後何度ジャンプ攻撃を仕掛けてみても鉄壁ともいえる対空技で迎撃してくる。
相手を観察していると、こちらの跳び上がりモーションの出始めあたりで半ば食い気味で対空技を置きにきている。そう、SNKの格ゲーは後半戦になると難易度が急に上がり、時折ズルいくらいの“超反応”を見せるのだ。後半戦からは考えなしにただ攻めるだけじゃ通用しなくなってくる。出が早い攻撃や飛び道具で牽制して相手を揺さぶり、隙を見せたところで技を決めて着実にダメージを与えていかなければならない。
後半はかなりの苦戦を強いられたが、ついにラスボスの「オメガ・ルガール」までたどり着いた。格闘大会の主催者であり、過去作にもラスボスとして登場していた。プレーヤーキャラクターに“オメガ”ではない普通のルガールが存在するが、持っている技や性能は違い、全くの別キャラともいえる。
5戦目、6戦目の敵ですらも、人間では真似のできない超反応を見せていたのだが、オメガ・ルガールに至ってはそれを遥かに超えた動きをしてくる。攻撃発生3フレームの最速の攻撃を牽制で振っても、そこに重ねて必殺技を決めてくるという反則級なことを当たり前にやってくる。もはや普通に戦って勝てる相手ではないのだ。反応速度だけでも驚異なのに、それに加えて攻撃力と体力も桁違いに高い。
こっちが3人に対して相手は1人なのだが、正直言って1人で3人分以上の強さを誇っている。当時の小学生の頃の筆者は“ラスボスまでいけばゲームクリア”という自分独自のルールでこの理不尽さを無理やり納得させていたものだ。
弱パンチすらも潰され、文字通り手も足も出ず3人ともほぼパーフェクトで惨敗。このメンツでは勝つのはなかなか難しいと判断し、キャラを選びなおすことにした。相手がオメガ・ルガールならこちらもノーマルのルガールで対抗。ルガールVSルガールだ。オメガ・ルガールに勝つには、基本的には必勝パターンにハメて倒すしかない。(ノーマル)ルガールの必殺技「カイザーウェイブ」がキモとなる。
カイザーウェイブは巨大な衝撃波を飛ばす技で、強Pで発動すると他の飛び道具とは比べ物にならないくらいの弾速なのだ。敵のオメガ・ルガールは飛び道具に反応して、弾を反射させるダークバリアを発動してくる。本来ならこれで跳ね返されてダメージをもらってしまうのだが、弾が速いカイザーウェイブだけはバリアを張られる前にヒットさせることができる。
相手と近い位置で撃ってしまうと、攻撃を緊急回避でかわされつつ懐まで潜り込まれてしまうので距離感が重要。何度かかわされて危ない場面もあったが、カイザーウェイブ地獄のパターンに入り、何とかオメガ・ルガールを撃破することができた
クリアしただけじゃ終わらない! 2つのモードで世界中のプレーヤーと競い合え
いろんなキャラでクリアして一通り遊び終わった頃、獲得トロフィーを確認すると、取れていないのが残り1つの状態だった。ここまできたらトロフィーコンプリートしたくなるのがゲーマーの性である。獲得条件は「ハイスコアモードでスコアをオンラインランキングに登録する」というものだった。
本作は世界中のプレーヤーとオンラインランキングでスコアを競うことができる「ハイスコアモード」と「キャラバンモード」の2種類のモードがある。トロフィーを取るためハイスコアモードに挑戦した。ルールは至ってシンプル。敵チームと連戦し、ゲームオーバーになるまでどれだけスコアを稼げるかを競っていく。
3人が負けたらその時点で終了。もちろんコンティニュー無しの1発勝負のサバイバルバトルだ。トロフィーの条件としてはスコアを登録するだけなので、どんな結果でもトロフィーは手に入るのだが、どうせやるなら高得点を記録してランキング上位に入りたいところだ。メンバーもオメガ・ルガールを倒すことを視野に入れたガチなメンツで挑むことにした。
アーケードモード同様に最初は敵の強さも緩やかなのだが、急激に難易度がグーンとあがるのがやはり5戦目だ。しかし、注意深く立ち回ればやられるほどではない…ハズなのだが、気がつけばお互い最後の一人に。もう後が無い。今まで以上に集中して戦ったファイナルラウンド。結果は……接戦ともいえないレベルで完膚なきまでやられてしまった。まさかの5戦目でゲーム終了。スコアを登録して念願のトロフィーはコンプリート。そしてランキングは66位。配信されてすぐということもあってか、残念な結果の割には上位にランクインできた。恐らく数日後には下位に引きずり下ろされていることだろう。
今回「アケアカNEOGEO ザ・キング・オブ・ファイターズ '98」をプレイして、当時みんなが何故あれほどまでに格闘ゲームに夢中になっていたのかが再確認できた。技コマンドを覚えるだけで普通に遊べる敷居の低さ。遊べば遊ぶほどキャラクターを思い通りに動かせる格ゲーの持つ楽しさ。格闘ゲーの醍醐味である対人戦もプレイしてみたが、やはり対戦は理屈抜きで盛り上がる。CPU戦では味わえない読み合いなどの駆け引きもとにかく熱い。これがゲームセンターだったら財布の中身がスカスカになっていたであろう、時間を忘れて対戦に没頭していた。
どうせレビューを書くのなら対人戦をやらない訳にはいかない。今は格ゲーから離れてしまった友達を呼んで久々に対戦プレイをした。事前にプレイをしている筆者が有利にならないよう、互いにキャラクターをランダムセレクトで決定した。もちろん選ばれたキャラは持ちキャラでも何でもないやつだった。友達も筆者も昔にチョロっと触った程度のキャラの技コマンドや立ち回りなどは当然全く覚えていない。
そんな中、対戦が始まり、開幕はお互い探り探りに技コマンドを確かめながら戦っていた。「技がわかんねー!」とか「コンボがうまく繋がらない!」など、最初はあーだこーだ言いながらの和やかなプレイだった。しかしゲーム自体がシンプルということもあり、遊んでいるうちに友人も段々と勝手を掴んでくる。そうなると本気で勝ち負けを競う対戦の空気になる。
そこから筆者は、使うキャラクターをシングルプレイで慣らした持ちキャラ3人に変えて戦った。汚いと思われようが勝てば良いのだ。緩く対戦するのも面白いが、同じくらいの実力同士でガチで対戦するのがやはり1番盛り上がる。生身の人間だからこその人それぞれのクセや立ち回りを読んで相手の裏をかいていく。これこそがCPU戦では味わえない格ゲーの醍醐味だ。
対戦の結果は、筆者が気持良いほどの連勝で終わった。1度この対人戦の面白さを味わってしまうと、やはりオンライン対戦機能は欲しかったなと思ってしまう。当時はシングルプレイのアーケードモードや友達同士での身内対戦が主だったので、世界中のいろんなプレーヤーと対戦して、自分の腕がどの程度なのかも試してみたくもある。PS4で配信中の同社のタイトル「月華の剣士」や「サムライスピッツ零SPECIAL」のように、オンライン対戦を実装した形でも是非発売して欲しいところだ。
「KOF」シリーズは純粋に格闘ゲームとしても面白い。そして対戦部分と同じぐらい筆者が推したいのは、本作には無いが重厚なストーリー部分なのだ。PS4の「アケアカNEOGEO」ではシリーズ原点の「KOF94」から「KOF98」まで配信中なので、ぜひそちらも触って「KOF」の世界にどっぷりと浸かってもらいたい。いつの日か「アケアカNEOGEO ザ・キング・オブ・ファイターズ '99」が配信された際には思う存分「ネスツ編」の話を語りたいと思う。