先行レビュー

「風燕伝:Where Winds Meet」先行レビュー

遊び方色々。1万人超えのNPCが出てくるリッチに再現された古代中国を旅する武侠アクション

【風燕伝:Where Winds Meet】
2025年 発売予定
利用料金:基本プレイ無料

 「風燕伝(ふうえんでん):Where Winds Meet」は、唐から宋にかけて中国大陸に多くの国が乱立した、動乱の五代十国時代を舞台に、若き剣士として自身の正体の謎を解きながら、裏切りや秘密に満ちた世界を旅していく、武侠スタイルのオープンワールド・アクションアドベンチャー。

 2025年にプレイステーション 5/PC向けに基本プレイ無料のサービス継続型作品として発売予定で、7月25日からファイナルβテストが開催されている。開発はストーリーテリングに強みを持つ中国の新進スタジオEverstone Studio。NetEase Gamesの内部スタジオで、武侠とオープンワールドが好きな若いスタッフが結集して、自分たちの好きなものを詰め込んだゲームを作っている。

【「風燕伝:Where Winds Meet」 - ファイナルβテストPV】

 今回、浙江省の州都である杭州市にあるNetEase本社を訪ねて、本作を試遊する機会を得た。この記事では、序盤や拠点都市の開封、様々なゲームのシステムについて紹介したい。

五代十国から宋初の風景を自由に冒険できるオープンワールド

 「風燕伝」の舞台となる五代十国時代は、唐が滅亡し、宋が中国を統一するまでの戦乱の時代だ。人によっては日本でも受験勉強でしか目にすることがないかもしれないマイナーな時代ではあるが、実は国内に群雄が割拠し、漢民族同士が戦った最後の時代だ。

美しく平和な桃源郷のような場所である「仙の渡り場」

 主人公は外界と隔絶された田舎の酒場「仙の渡り場」でおばさんや幼なじみと暮らしている。主人公は江湖に出たいと望んでいるが、周囲には許してもらえていない。この「江湖」は揚子江と洞庭湖を意味する言葉だが、武侠の世界では、武術を使って渡り歩く武侠的な社会のことを意味する。主人公も多少は腕に覚えがあるが、誰かに師事して修行を積んだことがなく、力を持て余している。

 だがある日、突然襲撃してきた黒装束の人物に叔父の玉佩を奪われてしまったことから、少しずつ運命が変わっていく。

主人公は己の武力を試すために江湖に出たいと夢見ている

 「風燕伝」はアクションゲームだが、カットシーンを多用したストーリーが展開していくRPG的な楽しみ方もできる。メインストーリーを進めることで、キャラクター強化に使える「天賦」ポイントを獲得できる。

戦闘をしなくても、メインストーリーを進めていくだけで「天賦」が貯まっていく

総勢1万人以上。物語を彩る個性的なNPCたち

 今回の試遊では序盤と中盤を少しずつ触れただけだが、その中には本当に多くのNPCが登場した。序盤に主人公をリードしてくれる幼なじみのホンシェン、酒場を切り盛りしている養母のハン、仙の渡り場に「離人涙」という銘酒を呑みに来た美女センヤや、突然襲撃してきてハンに合わせろと主人公に迫る暗殺者、死人刀など個性的なキャラクターが続々と登場する。

長馴染みで女侠を目指しているホンシェン
仙の渡り場を取り仕切っているセン
謎の美女、センヤ
突然の襲撃者、死人刀
ちゃっかりした性格のエイ

 ゲーム内には1万人を超えるNPCが登場するそうだが、大勢のNPCがそこで生きているかのように、生活をしている様子を訪れる場所すべてで目にする。話しかけると反応を返してくるNPCも多く、サブクエストを持っているNPCはもちろん、ぶつかると好感度が下がるNPCや対戦を挑めるNPCなど種類も多い。

馬を奪うチュートリアルとして登場する兄弟
典型的なやられ役たち
謎の亀おばあさん
太極拳を使う熊
やたらと強い白鳥
あちこちにいる猫

 人間だけではなく、ネコや白鳥、熊など動物も単なる敵ではなく個性的なキャラクターとして登場する。特に清河にいる白鳥は、序盤の敵としては異様に強く執拗に主人公を追いかけてくることから、すでにサービスの始まっている中国ではカルト的な人気キャラクターになっているそうだ。

武侠的パルクールで壁を走り、空を飛ぶ。自由度抜群の移動

 移動の自由度はかなり高く、見えている場所にはほとんど行くことができる。オープンワールドを武侠的パルクールで移動できるのは本作の特徴となっている。壁上りや二段ジャンプ、空中での前方ダッシュ移動などを駆使すれば、都市を囲う高い塀も軽々と超えることができる。

 ただし拠点となる開封のような都市には警備兵がいて、その詰め所に入ると捕まって追い出されてしまう。また開封にある巨大な歓楽施設「樊楼(はんろう)」は、入場するためのクエストをクリアしていなければ、入っても画面が暗転して外に連れ出されてしまう。

壁上り
二段ジャンプ
パルクールで屋根を移動

 馬に乗ることもできる。乗ったまま弓を引いたりといった騎乗攻撃も可能。馬は永続的に所有しているものと、一時的にNPCなどから奪って手に入れるものがある。

 フィールドには馬で移動しているNPCがいるのだが、彼らを馬から引きずり降ろして乗っている馬を奪うことができる。だがNPCもやられっぱなしというわけではなく、馬を奪った後もたもたしていると、今度はNPCが主人公を馬から引きずり降ろして馬を取り返されてしまった。

NPCの馬を奪い取る
しかしじっとしていると奪い返されてしまった
ド派手な光る馬もいるようだ

戦闘アシスト機能が豊富でアクションゲームが苦手な人も安心

 本作は剣、槍、斬馬刀、双刀、鞭、扇、傘という7つの武器から2種類と弓を使った戦闘ができる。武器には1種類から3種類の系統があり、同じ武器でもアタッカーよりの立ち回りができるものや、ヒーラーのような立ち回りが可能なものなど異なる役割を演じることができる。

序盤に出会うヒョウ・ケイショウという男が弓を教えてくれる
「明鏡止水」という技も修得できる

 さらに「奇術」という武器以外の攻撃方法がある。これは相手を遠くに投げ飛ばしたり、火を噴いたりとよりトリッキーな戦闘を可能にする。ジャストガードでの反撃技もあり、攻守を切り替えつつ素早く華麗に攻撃することができる。

相手を投げ飛ばす奇術
エフェクトを纏いながら空中から敵を急襲する奇術

 だが本作では戦闘が苦手な人も、ストーリーや世界の探索を楽しみたいという人も楽しめるように、4段階の難易度とバトルアシストを用意している。アシストには反撃のタイミングで時間がゆっくり流れて避けやすくなるものや、アシスタントUIが操作を指示してくれるものなど複数が用意されている。筆者のようなアクションゲームが苦手なプレーヤーでもこれらのアシストのおかげで自分が強くなったような気分を存分に味わうことができた。

アシストUIによって戦闘が苦手な人でもプレイしやすくなる

モーションキャプチャーを利用した武術やダンス

 武術アクションは専門の武術家の協力を得て、モーションキャプチャーで作られている。剣の切っ先で首にかけた玉佩を切り取るという、武侠ものの映画に出てくるような動きや、女性の舞踊の動きなどがリアルに再現されており、カットシーンは武侠映画のような仕上がりになっている。

樊楼のカットシーンにもモーションキャプチャーが使われている

 フィールドは時間帯や天気、プレーヤーの状況によって光が動的に変化する。さらにフィールドには1,000箇所以上のインタラクティブポイントが用意されており、たくさんのミニゲームが待ち受けている。

道端で仏像を揃えると、ネコが報酬をくれた
開封にいたカードゲームをしている人たちに話しかけるとゲームに誘われる

キャラクターカスタマイズで自分だけの主人公を作り出す

 本作は細かいキャラクタークリエイションの機能を有している。男女や多彩なプリセットが存在するほか、見た目をよりデフォルメの効いたものにできる「風雅」と、フォトリアル路線の「リアリズム」という項目もある。

プリセットのキャラクター
風雅
リアリズム

 装備も頭、身体、アクセサリー、マスク、マントなど8カ所をカスタマイズできる。アンロックされていない装備も試着することできるので、キャラクターの着せ替えをしているだけでも楽しめる。

世界を探索して情報を集め、真実を追求していく

 「風燕伝」のストーリーは序盤から謎が多く、あまり丁寧な説明がないまま謎が積み重なっていく。これは考察という楽しみ方をコミュニティに提供するための手法でもある。

 ゲーム内には、訪れた場所や出会った人物を一覧できる図鑑のような機能があり、プレーヤーの知識を補完してくれる。これらゲーム内のストーリーや秘密を集めていくというプレイは、世界を探索する人にとっては楽しみになるはずだ。

動乱の時代を描いた意欲作。武侠と敬遠せずに遊んでみて

 オープンワールドのアクションゲームは数あれど、古代中国が舞台の武侠もののアクションとなるとすぐには思いつかない。「風燕伝」はそういうニッチなカテゴリーを埋めるべく登場してきた。

 三国志や日本の戦国時代など動乱の時代には人を惹きつけるドラマがある。本作が舞台としている五代十国時代はマイナーではあるが、この時代にも多くの英雄や梟雄、名君や暴君、忠臣や佞臣がいて、彼らの想いや欲望が時代を大きく動かしていく。本作では五代十国の時代に没入して、この時代を体感することができる。これは他のゲームにはない本作ならではの大きな魅力となっている。

 武侠には、武術だけではなく儒教、仏教、道教の思想を融合した哲学的な側面もある。そのため文化的なバックグラウンドがなければ理解しがたい部分があるのも確かだ。しかし、そこで難しそうと敬遠してしまうのはもったいない。まずは単純に中国武術アクションとして楽しみつつ、その根底に流れる武侠の思想に触れ、そして緻密に再現された開封の街など、古代中国の歴史にも触れることで、新たな楽しみ方に出会えるはずだ。

 まるで本当に人が生きているかのように見える賑やかな開封の風景など、リッチで意欲的なグラフィックスやサウンドにも見どころは多い。今回もプレイの最中いろいろなものを見つけたが、何しろ時間がなく多くの要素を無視してしまった。発売後にはぜひあの時見逃してしまった要素を尋ね歩いてみたい。