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「ロードス島戦記オンライン」クローズドβテストレポート
オーソドックスなシステムでパーンたちの冒険を追体験できるRPG
(2016/2/4 16:33)
「ロードス島戦記」といえば、月刊コンプティーク誌上で行なわれた「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のリプレイから発祥し、その後小説、アニメ、ゲームなどさまざまなメディアで展開された作品であることはいまさら語るまでもないだろう。水野良氏による小説は累計1000万部を超えるベストセラーであり、本作の舞台であるロードス島を含む架空世界「フォーセリア」からさまざまな作品が生まれた。
その「ロードス島戦記」を体験できるオンラインゲームとして開発されたのがゲームオンの「ロードス島戦記オンライン」だ。1月29日から2月1日までクローズドβテストが開催され、今回体験することができた。本稿では体験できた要素と、感触を語りたい。
本作では、小説版「ロードス島戦記」をベースに話が進んでいく。原作では、血気盛んな青年パーンとその仲間たちがロードスの歴史の陰で暗躍する灰色の魔女カーラの陰謀に巻き込まれ、それと対峙していく中で歴史に名を遺す伝説の存在へと昇華されていくのだが、プレーヤーはパーンたち一行を追う形でこれらのエピソードを追体験していく。
触った感触としては、オンラインゲームというよりは昔懐かしいコンピュータRPGの趣きを強く感じたが、もちろんオンラインならではの要素もしっかりと搭載されている。CBTから見えてきたもろもろについてレポートしていこう。
3人の固定キャラクターから1人を選び、辺境の村ザクソンからスタート
クローズドβテストでは、プレーヤーは騎士見習の「エスカイア」、戦いの神マイリーに使える神官「オラクル」、魔法使い「マジックユーザー」の3つの職業からひとりの“キャラクター”を選択できた。キャラクターという言い方をしたのは、クラスを選んでキャラクターモデルや性別を選択するのではなく、性別やアバターは固定であるためだ。
正直、これはちょっと寂しい。もともとのリプレイでプレイしていたフォーセリア世界から発生した「ソードワールド」のTRPGやコンピュータRPGでは、キャラクタークリエイションが楽しみのひとつだったからだ。キャラクターは装備変更によるグラフィックの変化も感じられなかった。このため、フィールドには同じキャラクターがひしめいてしまっていた。この点は今後自由度を持たせて欲しいと強く感じた。
ストーリーは「ロードス島戦記」そのまま、アラニアの北部、辺境の村ザクソンから始まる。促されるままに冒険者ギルドに登録し、その依頼の中で小説の主人公「パーン」と出会う。小説版をお読みの方はご存知だと思うが、ザクソンでパーンがゴブリン退治に出かけるのは序盤も序盤である。しかし、CBTではこのゴブリン退治のエピソードを終えることができなかった。
それというのもギルドや村人から依頼されるクエストがかなり膨大なのでパーンたちとの冒険に出かけている余裕がないこと、また、エリアによってわけられているモンスターがエリアを越えると加速度的に強くなるため、おいそれと先に進めないためだ。エピソード的にはパーンたちの冒険1に対してその他が9くらいの印象。急ぐ旅ではないし、依頼を受けることでもらえる報酬は確実にキャラクターを強くしてくれるので、気長にプレイするのがいいと感じた。
クエストは複数を同時に受けることができ、受けたクエストは絶えず画面右下に表示されるので、達成条件に迷うことはなかった。また、どのクエストから達成しても問題はないので、好きな順でクリアしくのがいい感じだ。進む先に関してもミニマップに行く先の指示がでるのでプレイしやすかった。
ゲームでは、クエストを達成するための物理的な移動が多いため、プレーヤーのストレスを高めない配慮が随所に見られたが、一方で村人の話を聞いて自分で行先を探すような昔のRPG感は薄れている。本作はプレイへのストレスへはかなり細かく配慮されていて、クエスト周りだけではなく、操作自体もほぼマウスひとつで済む。
数字とファンクションキーに振るスキルは、主に使うものが3つほどに限定されるのでボタンを割り振れる“プログラマブルマウス”があれば本当に片手で足りてしまうという快適操作が嬉しい。かなりサクサクとプレイできるゲームだと感じた。
村人から依頼されるもので、戦闘系のクエストは、フィールド上にいるモンスターを一定数倒すものがほとんどで、かつフィールド上のモンスターは自分から攻撃を仕掛けないと攻撃してこないという仕様になっていた。
このためLP(他のゲームでのHP)やMPの管理がしやすく、キャラクターが死亡することがほぼない。また、モンスターからの被ダメージでそこにいるモンスターを相手にするのが適正かどうかの判断もつきやすい。殴られて大ダメージを食らえば、それはまだ適正レベルではない、ということだ。
勝てない敵に出会った場合は、一定時間逃げることでモンスターはプレーヤーを追うのを止めるので、危なくなったら逃げるといい。LPとMPは時間で回復し、かつ各エリアには回復を促進する女神像が設置されているので、フィールドに留まりながら戦闘を継続することも難しくない。なんとも至れり尽くせりである。また、女神像のそばにはNPCがいて回復アイテムを販売してくれたり、LP、MPを有料で回復してたりもする。
CBTでは、モンスターからかなりの頻度で回復アイテムを拾えるのでアイテム不足に陥ることもなかった。冒険の自由度や危険度は低いが、とにかくプレーヤーにストレスを与えないように細心の注意が払われているし非常にこなれた印象を受けた。
クエストの中にはパーンたちに絡むものももちろんあるのだが、こういったクエストに対して、パーンたちNPCがパーティに加わることはない。あくまでイベントのNPCとしてその場に登場してくるだけで、一緒に戦うことはなかった。このため、ゲームの感触としては、物語に参加しパーン達と一緒に冒険していると言うより、パーンの冒険を傍観者的に見ているという感じが強かった。ここはもう少し一緒に戦う感じにして欲しいところだ。今後のイベントでは改善して欲しい。
手軽に組めるパーティーシステム。今後の要素にも期待
キャラクターの職業と性別が固定であるが、各クラスの装備とスキルは充実していた。装備に関しては、武器は各職業に由来するためマジックユーザーが剣を持つことはできないが、防具に関してはある程度自由で鎧のような重装備をマジックユーザーが装着することもできたのは新鮮だった。
ただし、マジックユーザーがソロプレイでどうしても防御力を上げたいということであれば選択肢のひとつにはなるかもしれないが、ローブに比べると魔法攻撃力といったパラメータに補正がつかない。キャラクターの個性化には繋がるが、あまりメリットは感じなかった。装備品にはレアリティが振られており、レアリティが高いほど数値の高い良い装備となる。また装備ごとにさまざまな特性をもっているので、戦略性とキャラクターの個性付けに役立つだろう。
スキルに関しては、冒険者レベルのほかにスキル経験値が設定されており、これが一定値になるとスキルポイントが付加される。このスキルポイントを使って冒険者ギルドでスキルを習得する。各職業にスキルマスターがおり、自分の職業以外のスキルを習得することはできない。スキルには「パッシブスキル」と「アクティブスキル」があり、パッシブスキルはスロットに装着すると自動で発動する。アクティブスキルは自分が使用することによって効果が発動するものになっている。
ゲームが進んでいくと、受けているクエストに対して、敵が強くなりひとりでは太刀打ちできないという場面も出てきた。こういった場合には、その場で他プレーヤーの協力を仰ぐこともできる。知り合いがプレイしていれば、その友人を呼ぶこともできるし、そうでなくても自分のレベルに近く、かつ近所にいるプレーヤーをマッチングしてくれる機能が本作には搭載されている。自分とレベルが近くその場にいるということは、やはりクエストに詰まっている可能性が高いだろうから協力を仰ぎやすいのはとても良かった。
なおパーティを組めるのは4人まで。パーティに関しては、自分で募る以外にも、狩猟やダンジョン攻略、ボス撃破など条件を限定してメンバー募集を行なっているパーティを探すこともできる。こういったパーティは一期一会の関係なので最低限のコミュニケーションで済むし、気が合えばフレンドに登録して以降も一緒に冒険することもできる。他のオンラインゲームにもあるシステムだが、手軽に使えるのは楽しかった。
このほか、本作をプレイしていて気になったのは、フィールドで敵を倒すと素材を落とすことがあるところ。現時点ではクエスト達成のための条件くらいの価値しかないのだが、先々これらの素材を組み合わせ、アイテムを作る機能などにも期待したい。
そして、筆者が特に期待しているのは、ストーリー要素だ。現時点で本作はストーリーは「灰色の魔女」までとのことなのだが、「ロードス島戦記」では、その後エピソードのスケールは大きく増し、「火竜の狩猟場」や「最も深き迷宮」など魅力的な冒険のフィールドはいくらでも出てくるからだ。ただ、現時点での本作の感触は「ロードス島戦記」の名が冠され、パーンたちの物語を体験できるものの、本作ではそれは実は主眼ではないのかもしれないのかな、という感触も持った。ゲームの感触は良好なものの、「ロードス島戦記」のゲームとしては物足りない。
筆者としては、やはりストーリー要素をもっと強くし、パーンたちの物語の裏で自分と仲間たちだけのロードスの物語を紡ぐことをゲームの中心にして欲しい。これが実現できれば、長く遊べる優秀なRPGになるのではないだろうか。